KPI・指標

コールセンターのKPI一覧|応答率・放棄率・AHTの見方

AI-SNS.IO 編集部 · 公開

コールセンターのKPI一覧|応答率・放棄率・AHTの見方(AI-SNS.IO Call ブログ)

電話の窓口を運営していると、「最近、電話がつながりにくいと言われる」「人を増やしたのに楽になった気がしない」「対応の質が落ちていないか心配だ」といった悩みが出てきます。こうした悩みを感覚だけで語っていると、打ち手が的外れになったり、関係者の間で話がかみ合わなかったりします。そこで役に立つのが、KPI(重要業績評価指標)です。

KPIは、電話の窓口の状態を数字で表し、関係者が同じものを見て話せるようにするための道具です。応答率、放棄率、平均処理時間(AHT)、一次解決率、顧客満足度など、コールセンターでよく使われるKPIはたくさんあります。ただ、指標の数が多いぶん、どれを見ればよいのか、どう計算するのか、数字をどう読めばよいのかで迷う人も少なくありません。

この記事では、コールセンターや電話窓口で使われる主なKPIを、「つながりやすさ」「効率」「品質」「顧客の声」の四つのグループに分けて、それぞれの意味、計算方法、読み方の注意点を解説します。大規模なコールセンターだけでなく、数人で電話を受けている小さな窓口でも使える考え方を中心に紹介します。

なお、この記事では、特定の数値を目標の目安として示すことはしていません。適切な目標は、業種、窓口の役割、お客様の期待、人員の体制によって大きく変わるためです。自社の過去の数字と比べながら、目標を決めていくことをおすすめします。

KPIを決める前に

KPIの一覧を見る前に、KPIを決めるときに押さえておきたい前提を確認しておきます。ここを飛ばしてしまうと、数字を集めても使い道がない、という状態に陥りがちです。

窓口の目的を言葉にする

KPIは、窓口の目的がどれくらい達成できているかを測るものです。目的があいまいなままでは、何を測ればよいのかも決まりません。まずは、自社の電話窓口が何のためにあるのかを言葉にしてみましょう。

目的によって、重視すべきKPIは変わります。取りこぼしを減らしたいなら、つながりやすさの指標が中心になりますし、一度で解決することを重視するなら、一次解決率などの品質の指標が重要になります。

指標は少なく始める

KPIは、たくさん集めればよいというものではありません。指標が多すぎると、どれを優先すべきかがわからなくなり、数字を眺めるだけで終わってしまいます。最初は、目的に直結する指標を三つから五つ程度に絞り、慣れてきたら必要に応じて増やしていくのがおすすめです。

指標どうしのつながりを意識する

KPIは、それぞれが独立しているわけではありません。たとえば、平均処理時間を短くしようとして通話を急がせると、解決しないまま電話を終えるケースが増え、同じお客様からの再度の電話が増えるかもしれません。その結果、着信数が増え、応答率が下がる、ということも起こりえます。

一つの指標だけを追いかけると、別の指標が悪くなることがあります。つながりやすさ、効率、品質、顧客の声の四つのグループから、バランスよく指標を選ぶことが大切です。

定義をそろえる

同じ「応答率」という名前でも、何を分母にするか、短い時間で切れた電話を含めるかどうかなどで、数字は変わります。定義がそろっていないと、月ごとの比較や、拠点どうしの比較ができません。KPIを決めるときは、計算方法と、どの電話を含めるのかを文書にしておきましょう。

数字は「傾向」と「内訳」で読む

ある日の数字だけを見て一喜一憂しても、あまり意味はありません。週ごと、月ごとの傾向や、曜日・時間帯ごとの内訳を見ることで、はじめて課題が見えてきます。数字が変わったときには、何がその変化を生んだのかを、内訳から探ることが大切です。

つながりやすさ、効率、品質、顧客の声の四つのグループと代表的な指標
図1:コールセンターKPIの四つのグループ

つながりやすさの指標

最初のグループは、お客様が電話をかけたときに、どれくらいつながりやすいかを表す指標です。電話窓口の入口の状態を示すもので、多くの窓口でまず確認される指標です。詳しくは応答率と放棄率の記事でも解説しています。

応答率

応答率は、かかってきた電話のうち、どれくらいの電話にスタッフ(またはその窓口の仕組み)が応答できたかを表す指標です。

計算方法の例:応答した件数 ÷ 着信件数

応答率は、窓口のつながりやすさを示すもっとも基本的な指標です。応答率が下がっているときは、人員が足りていない、特定の時間帯に電話が集中している、一件あたりの対応時間が長くなっている、といった原因が考えられます。

注意したいのは、「着信件数」に何を含めるかです。IVRの案内の途中で切られた電話、数秒で切られた電話、営業時間外の電話を含めるかどうかで、応答率は大きく変わります。定義を決めて、毎回同じ方法で計算するようにしましょう。

放棄率

放棄率は、かかってきた電話のうち、スタッフにつながる前に、かけた人が電話を切ってしまった割合を表す指標です。応答率の裏返しのような指標ですが、「待たされて切った」電話に注目している点が特徴です。

計算方法の例:放棄された件数 ÷ 着信件数

放棄率が高いということは、待ち時間に耐えられずに電話を切ったお客様が多いことを意味します。放棄された電話の中には、もう一度かけ直してくれる人もいれば、そのまま他社に流れてしまう人もいるでしょう。放棄率は、機会の損失を示すサインとして重要です。出られなかった電話がどのような影響を持つかは、取りこぼした電話の損失の記事で整理しています。

放棄率を見るときは、待ち時間の長さとあわせて見るのがおすすめです。待ち始めてすぐに切られた電話と、長く待たされた末に切られた電話では、意味が違うからです。ごく短い時間で切られた電話は、間違い電話やかけ直しの可能性もあるため、放棄に含めない定義にする窓口もあります。

サービスレベル

サービスレベルは、決められた時間以内に応答できた電話の割合を表す指標です。「○秒以内に応答できた電話の割合」という形で表されます。

計算方法の例:決められた時間以内に応答した件数 ÷ 着信件数

応答率が「応答できたかどうか」を見るのに対し、サービスレベルは「どれくらい早く応答できたか」を見る指標です。応答率が高くても、多くのお客様を長く待たせているなら、お客様の体験はよいとはいえません。サービスレベルを見ることで、待ち時間の面からつながりやすさを評価できます。

目標とする時間と割合は、窓口の性格によって変わります。緊急性の高い問い合わせを受ける窓口と、急ぎでない問い合わせが中心の窓口とでは、求められる速さが違います。

平均応答速度(ASA)

平均応答速度(ASA:Average Speed of Answer)は、電話がかかってきてから、スタッフが応答するまでの平均の待ち時間です。

計算方法の例:応答した電話の待ち時間の合計 ÷ 応答した件数

平均応答速度は、お客様がどれくらい待たされているかを直感的に示す指標です。ただし、平均値なので、一部のお客様がとても長く待たされていても、平均では目立たないことがあります。最長の待ち時間や、待ち時間の分布もあわせて見ると、実態をつかみやすくなります。

時間帯別の着信数

厳密にはKPIというより基礎データですが、時間帯別の着信数は、つながりやすさの指標を読むうえで欠かせません。応答率が下がった原因が、人員の不足なのか、特定の時間帯への着信の集中なのかを見分けるには、着信数の推移を見る必要があります。

時間帯別の着信数がわかれば、人員の配置を見直したり、混み合う時間帯に自動の案内を厚くしたりといった打ち手を考えられます。

効率の指標

二つ目のグループは、電話対応にかかる時間や、スタッフの稼働の効率を表す指標です。人員の計画や、業務の改善を考えるときに使われます。

平均処理時間(AHT)

平均処理時間(AHT:Average Handling Time)は、一件の電話対応にかかる時間の平均です。通話そのものの時間に加えて、保留の時間や、通話後の記録などの後処理の時間を含めて計算するのが一般的です。

計算方法の例:(通話時間の合計 + 保留時間の合計 + 後処理時間の合計)÷ 対応件数

平均処理時間は、必要な人員を見積もるときの基礎になる指標です。同じ着信数でも、一件あたりの処理時間が長ければ、それだけ多くの人員が必要になります。平均処理時間を短くする工夫については、AHTを短くする方法で詳しく解説しています。

ただし、平均処理時間は、短ければ短いほどよいというものではありません。お客様の困りごとが解決しないまま電話を終えてしまえば、処理時間は短くなっても、再度の電話が増えて、全体の負担はかえって大きくなります。平均処理時間は、一次解決率などの品質の指標とあわせて見ることが大切です。

平均通話時間

平均通話時間は、お客様と実際に話している時間の平均です。平均処理時間の内訳として見ることで、時間がどこにかかっているのかがわかります。

通話時間が長い場合は、説明に時間がかかる問い合わせが多い、スタッフが答えを探すのに時間がかかっている、本人確認の手順が長い、といった原因が考えられます。通話の内容を確認できる記録があれば、どの場面で時間がかかっているかを具体的に探れます。

平均保留時間

平均保留時間は、通話中にお客様を保留にしている時間の平均です。保留が長いということは、スタッフがその場で答えられず、資料を調べたり、ほかの担当者に確認したりしている時間が長いことを意味します。

保留時間が長い場合は、よくある質問の答えをまとめたナレッジを整える、確認が必要な事項の担当者をはっきりさせる、といった改善が考えられます。保留はお客様にとってストレスになりやすいため、品質の面からも注目したい指標です。

平均後処理時間(ACW)

平均後処理時間(ACW:After Call Work)は、電話を切ったあとに、通話の内容を記録したり、関係者に共有したり、次の対応を手配したりする時間の平均です。

後処理時間は、外からは見えにくいものの、積み重なると大きな負担になります。後処理の時間が長いと、その間スタッフは次の電話に出られないため、つながりやすさの指標にも影響します。通話の要約をAIで作る仕組みは、この後処理時間を減らす手段の一つです。詳しくはAI通話要約の記事をご覧ください。

稼働率と占有率

稼働率や占有率は、スタッフの勤務時間のうち、電話対応にどれくらいの時間を使っているかを表す指標です。定義は窓口によって違いがありますが、一般的には次のように使われます。

占有率が低すぎる場合は、電話の量に対して人員が多すぎる可能性があります。逆に、占有率が高すぎる状態が続くと、スタッフが息をつく間もなく電話を受け続けることになり、疲れや離職の原因になりかねません。数字が高いほどよい、という指標ではないことに注意しましょう。

一人あたりの処理件数

一人あたりの処理件数は、スタッフ一人が一定の時間内に対応した電話の件数です。わかりやすい指標ですが、スタッフの評価にそのまま使うのは注意が必要です。難しい問い合わせを多く担当しているスタッフほど、件数は少なくなりがちだからです。

処理件数は、個人の評価よりも、窓口全体の処理能力を把握したり、人員の計画を立てたりするのに使うのが向いています。

品質の指標

三つ目のグループは、電話対応の質を表す指標です。つながりやすさや効率がよくても、お客様の困りごとが解決していなければ、窓口の目的は果たせていません。

一次解決率(FCR)

一次解決率(FCR:First Call Resolution)は、お客様の問い合わせが、最初の電話で解決した割合です。

計算方法の例:最初の電話で解決した件数 ÷ 問い合わせ件数

一次解決率は、お客様の体験と、窓口の効率の両方に関わる重要な指標です。一度で解決すれば、お客様は何度も電話をかけずに済み、窓口も同じ問い合わせに何度も対応せずに済みます。

一次解決率の測り方には、いくつかの方法があります。スタッフが通話の終わりに「解決」「未解決」を記録する方法、一定期間内に同じお客様から同じ用件で再度の電話があったかどうかで判断する方法、お客様へのアンケートで尋ねる方法などです。どの方法にも長所と短所があるため、自社に合った方法を選び、定義を決めておきましょう。

再入電率

再入電率は、一度対応した問い合わせについて、一定期間内に同じお客様から再び電話がかかってきた割合です。一次解決率と裏表の関係にある指標で、システムの記録から計算しやすいのが利点です。

再入電率が高い場合は、説明がわかりにくかった、約束した対応が実行されていない、根本的な問題が解決していない、といった原因が考えられます。再度の電話の内容を確認すると、改善のヒントが見つかることがあります。

転送率・エスカレーション率

転送率は、最初に電話を受けたスタッフから、別の担当者や部署に電話を回した割合です。エスカレーション率は、上位の担当者や専門の部署に対応を引き継いだ割合です。

転送やエスカレーションが多いということは、最初に電話を受ける段階で、適切な担当者に振り分けられていない、または最初のスタッフが対応できる範囲が狭い、ということを示しているかもしれません。IVRのメニューの見直しや、スタッフが答えられる範囲を広げるための教育が、改善の手段になります。IVRのメニューの作り方は、IVRメニューの設計で解説しています。

ただし、専門的な判断が必要な問い合わせを、適切に専門の担当者へ引き継ぐのは、むしろ大切なことです。転送率を下げること自体を目的にしないよう注意しましょう。

品質評価のスコア

品質評価のスコアは、通話の録音や記録をもとに、評価の基準に沿って対応の質を採点したものです。挨拶や名乗り、本人確認、説明のわかりやすさ、正確さ、言葉づかい、次の対応の約束などの項目を評価します。

品質評価のスコアは、スタッフの育成に役立つ指標です。評価の基準を明確にしておき、評価する人によって点数がぶれないように、基準のすり合わせを定期的に行いましょう。評価の結果は、スタッフを責めるためではなく、よい対応を広げ、改善点を一緒に考えるために使うことが大切です。

誤案内の件数

誤った情報を案内してしまった件数も、品質を表す大切な指標です。誤案内は、お客様に不利益を与え、信頼を損なうだけでなく、後から訂正の連絡をする手間も生みます。

誤案内が起きた場合は、その原因(情報が古かった、ナレッジがわかりにくかった、確認の手順がなかったなど)を記録し、再発を防ぐ手当てをしておきましょう。

目的を決める、指標を絞る、定義をそろえる、内訳を読む、打ち手を試す、振り返るという流れ
図2:KPIを改善につなげる流れ

顧客の声の指標

四つ目のグループは、お客様が電話対応をどのように感じたかを表す指標です。つながりやすさ、効率、品質の指標は窓口の側から測るものですが、顧客の声の指標は、お客様の側から見た評価です。

顧客満足度(CSAT)

顧客満足度(CSAT:Customer Satisfaction)は、電話対応のあとにお客様にアンケートを行い、満足度を尋ねる指標です。「今回の対応にどれくらい満足しましたか」といった質問に、段階で答えてもらう形が一般的です。

計算方法の例:満足と答えた人数 ÷ 回答した人数

顧客満足度は、お客様の評価を直接測れる指標ですが、注意点もあります。アンケートに答えてくれるのは、とても満足した人か、とても不満を感じた人に偏りがちです。回答の数が少ないと、数字が大きくぶれることもあります。数字だけでなく、自由記述の内容もあわせて読むと、改善のヒントが得やすくなります。

NPS

NPS(ネット・プロモーター・スコア)は、「この会社やサービスを、友人や知人にすすめたいと思いますか」という質問に、0から10の段階で答えてもらい、その結果から算出する指標です。電話対応だけでなく、会社やサービス全体への評価を表す指標として使われることが多いものです。

電話対応のKPIとして使う場合は、電話対応以外の要素(製品やサービスそのものの評価など)が大きく影響することに注意が必要です。電話窓口の改善の効果を測るには、顧客満足度のように、対応そのものを尋ねる指標のほうが向いていることもあります。

顧客努力指標(CES)

顧客努力指標(CES:Customer Effort Score)は、お客様が問題を解決するために、どれくらいの手間がかかったと感じたかを尋ねる指標です。「今回の問題を解決するのは簡単でしたか」といった質問で測ります。

電話がつながるまでに何度もかけ直した、IVRのメニューが複雑で迷った、同じ説明を何度も繰り返した、といった体験は、お客様の手間を増やします。顧客努力指標は、こうした手間を減らす改善の効果を測るのに向いています。

苦情・ご意見の件数と内容

苦情やご意見の件数と、その内容も、顧客の声を表す大切な情報です。件数の推移を見るだけでなく、どのような内容が多いのかを分類しておくと、改善の優先順位を決めやすくなります。

「電話がつながらない」という声が多ければ、つながりやすさの指標を改善する必要がありますし、「説明がわかりにくい」という声が多ければ、品質の改善が必要です。顧客の声は、ほかの指標の数字の意味を読み解く手がかりにもなります。

通話の記録から読み取る声

アンケートに答えてくれるお客様は一部に限られます。通話の文字起こしや要約を読むと、アンケートでは拾えないお客様の声に触れることができます。よく出てくる質問、言いよどむ場面、不満が表れる言葉などは、数字には現れない改善のヒントになります。

KPIの使い方

ここまで、主なKPIを四つのグループに分けて紹介してきました。最後に、KPIを実際の改善につなげるための使い方を解説します。

目標は自社の過去と比べて決める

KPIの目標を決めるときに、業界の平均や他社の数字を参考にしたくなるかもしれません。しかし、業種、窓口の役割、問い合わせの内容、お客様の期待によって、適切な水準は大きく変わります。また、計算方法の定義が違えば、数字を比べること自体に意味がありません。

まずは自社の過去の数字を集め、現状を把握したうえで、無理のない改善の目標を決めるのが確実です。目標を決めたら、なぜその水準にしたのかも記録しておくと、後から見直すときに役立ちます。

数字の変化には理由を探す

KPIが大きく変わったときは、その理由を探ることが大切です。応答率が下がったのは、着信数が増えたからなのか、処理時間が長くなったからなのか、人員が減ったからなのか。理由によって、打つべき手は変わります。

理由を探るには、曜日や時間帯、問い合わせの種類、担当者などの内訳を見ます。新しい商品の発売、料金の変更、システムの障害、季節の要因など、窓口の外で起きた出来事が影響していることも多いため、出来事の記録もあわせて残しておきましょう。

打ち手とKPIを結びつける

改善の打ち手を実行するときは、どのKPIが変わることを期待しているのかを決めておきます。

打ち手を実行したあとは、期待したKPIが変わったかどうか、ほかのKPIに悪い影響が出ていないかを確認します。期待した変化が見られなければ、打ち手を見直すきっかけになります。

スタッフの評価に使うときは慎重に

KPIをスタッフ個人の評価に使う場合は、慎重に設計する必要があります。処理件数や平均処理時間だけで評価すると、スタッフが電話を早く終わらせることを優先し、対応の質が下がるおそれがあります。

個人の評価に使う場合は、品質の指標や顧客の声の指標とバランスをとり、担当している問い合わせの難しさも考慮しましょう。数字は、スタッフを比べるためよりも、育成や支援が必要な点を見つけるために使うのが望ましいといえます。

定期的に振り返る場をつくる

KPIは、集めるだけでは意味がありません。週に一度、月に一度など、定期的に数字を見て振り返る場をつくりましょう。振り返りでは、数字の変化と、その理由、次の打ち手を話し合います。現場のスタッフも参加すると、数字の裏にある実感を共有でき、改善のアイデアも出やすくなります。

小さな窓口でのKPIの使い方

数人で電話を受けている小さな窓口では、大規模なコールセンターのように多くの指標を管理する必要はありません。次のような指標から始めるとよいでしょう。

これだけでも、どの時間帯に人手が足りないのか、どの問い合わせを自動の案内に任せられそうか、といった判断ができるようになります。少人数で電話を受ける工夫は、小規模事業者の電話受付でも紹介しています。

KPIの計算に必要なデータ

KPIを計算するには、元になるデータが記録されていなければなりません。どのデータを残しておけば、どの指標が計算できるのかを整理しておきます。

通話ごとの記録

これらがあれば、応答率、放棄率、サービスレベル、平均応答速度、平均通話時間、平均保留時間、転送率などが計算できます。電話の仕組みの多くは、こうした記録を自動で残しています。

スタッフが残す記録

一次解決率や用件ごとの内訳を見るには、スタッフが通話ごとに用件や解決の有無を記録する必要があります。記録の手間が大きいと、記録そのものが続かなくなるため、選択式にするなど、短い時間で残せる工夫をしておきましょう。通話の要約を使えば、記録の手間を減らしやすくなります。

お客様から集める記録

顧客満足度や顧客努力指標は、お客様へのアンケートで集めます。電話のあとにアンケートを案内する、メールで依頼するなど、方法はさまざまです。どの通話のアンケートなのかを結びつけておくと、満足度の低い対応の内容を振り返ることができます。

自動応答やAIを取り入れたときのKPIの見方

IVRやAIによる一次応答を取り入れると、電話の流れが変わるため、KPIの見方も調整が必要になります。従来の定義のまま数字を比べると、改善したのか悪化したのかを誤って判断してしまうことがあります。

「誰が応答したか」を分けて数える

自動の案内で完結した電話と、スタッフが応答した電話を同じ「応答」として数えると、応答率は高く見えますが、スタッフの負担の変化は読み取れません。応答を「自動で完結」「スタッフが応答」「折り返しとして記録」などに分けて数えると、自動化がどれくらいスタッフの負担を減らしているのかがわかります。

自動の案内の途中で切れた電話を見る

IVRの案内の途中で切られた電話は、案内で用が済んで切った人なのか、案内がわかりにくくて諦めた人なのか、数字だけでは区別がつきません。どのメニューの、どの段階で切られているのかを見ると、案内の改善点が見えてきます。

折り返しの指標を加える

自動の案内やAIが用件を記録し、スタッフが折り返す流れを作った場合は、折り返しに関する指標を加えましょう。

折り返しまでの時間が長くなれば、お客様にとっては「つながらない」のと同じことになります。折り返しの指標は、自動化の効果を正しく評価するために欠かせません。

AIの対応の質を見る

AIによる一次応答を使っている場合は、AIの対応の質も確認します。

これらは、AIの設定や、AIが参照する情報を改善するための手がかりになります。AIにすべてを任せるのではなく、記録を読んで直していくことが、品質を安定させる近道です。AI-SNS.IO CallでAIによる一次応答がどこまで利用できるかは、機能一覧で最新の状況を確認してください。

KPIを見える化する

KPIは、必要なときにすぐ見られる状態にしておくことで、はじめて日々の運営に活かせます。

リアルタイムで見る指標と、あとで振り返る指標

KPIには、その場で見て対応を変えるための指標と、あとからまとめて振り返るための指標があります。

両者を混同すると、リアルタイムの数字に振り回されたり、振り返りの指標を見逃したりします。見る目的に合わせて、表示の仕方を分けましょう。

一枚で全体が見えるようにする

振り返りの場で使う資料は、主なKPIが一枚で見渡せるようにまとめておくと便利です。つながりやすさ、効率、品質、顧客の声の各グループから代表的な指標を一つか二つずつ選び、前の期間との比較とあわせて並べると、全体の状態がひと目でわかります。

Callでの見える化

AI-SNS.IO Callには、キューごとの電話の状況を確認できる機能や、レポート・分析の機能があります。通話の要約を使えば、数字だけでなく、どのような用件の電話が多いのかを把握する手がかりにもなります。どのような指標を確認できるかは機能一覧で、設定の手順は使い方ガイドで確認できます。実際に試してみたい場合は、アカウント登録から始められます。日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。

窓口のタイプ別に重視したいコールセンターのKPI

同じKPIでも、窓口のタイプによって重みづけは変わります。代表的なタイプごとに、重視したい指標の考え方を整理しておきます。

予約・受付の窓口

予約や注文、申し込みを受ける窓口では、電話を取りこぼすことが、そのまま機会の損失につながります。応答率、放棄率、サービスレベルなど、つながりやすさの指標を中心に見るとよいでしょう。折り返しの仕組みを使っている場合は、折り返しまでの時間も重要な指標になります。

サポート・問い合わせの窓口

製品やサービスの使い方、トラブルの相談などを受ける窓口では、問題を一度で解決できるかどうかが、お客様の体験を大きく左右します。一次解決率や再入電率、顧客努力指標など、品質と顧客の声の指標を重視しつつ、平均処理時間とのバランスを見ていきます。

緊急性の高い連絡を受ける窓口

設備の故障や事故など、緊急性の高い連絡を受ける窓口では、応答までの速さがもっとも重要です。サービスレベルや平均応答速度、最長の待ち時間を細かく見て、緊急の連絡が待たされていないかを確認します。緊急の連絡とそれ以外を分けて数えると、より実態に即した評価ができます。

少人数で兼務している窓口

専任の電話担当がおらず、ほかの業務と兼務している窓口では、電話に出られなかった件数と、その時間帯を把握することが第一歩です。どの時間帯に自動の案内や折り返しの仕組みを使うべきかが見えてきます。

KPI運用でよくある失敗

最後に、KPIを使い始めた窓口が陥りやすい失敗を挙げておきます。

数字を集めるだけで終わる

KPIを集計する仕組みを作っても、振り返る場がなければ、数字は改善に活かされません。集計と振り返りは、必ずセットで計画しましょう。

一つの指標だけを追いかける

応答率だけ、平均処理時間だけ、と一つの指標を追いかけると、ほかの指標が悪くなっても気づきません。四つのグループから代表的な指標を選び、全体のバランスを見るようにしましょう。

定義が途中で変わる

集計の仕組みを変えたり、担当者が変わったりしたときに、指標の定義が知らないうちに変わってしまうことがあります。定義が変わると、前の期間との比較ができなくなります。定義は文書にしておき、変える場合はその時期を記録しておきましょう。

数字の裏にある声を見落とす

数字が改善していても、お客様の不満が増えていることもあります。通話の記録や、お客様からの声に定期的に目を通し、数字だけではわからない変化に気づけるようにしておくことが大切です。

KPI用語の早見表

最後に、この記事で紹介した主なKPIを一覧で整理しておきます。

指標グループ何がわかるか
応答率つながりやすさかかってきた電話にどれくらい応答できたか
放棄率つながりやすさ待たされて切られた電話がどれくらいあるか
サービスレベルつながりやすさ決めた時間以内に応答できた割合
平均応答速度(ASA)つながりやすさ応答までの平均の待ち時間
平均処理時間(AHT)効率一件の対応にかかる時間
平均後処理時間(ACW)効率通話後の記録などにかかる時間
占有率効率対応可能な時間のうち実際に対応していた割合
一次解決率(FCR)品質最初の電話で解決した割合
再入電率品質同じ用件で再び電話があった割合
転送率品質別の担当者に回した割合
顧客満足度(CSAT)顧客の声対応への満足の度合い
顧客努力指標(CES)顧客の声解決までにお客様が感じた手間

よくある質問

コールセンターのKPIとは何ですか?

コールセンターのKPIとは、電話窓口の状態や成果を数字で表し、目標に対する進み具合を測るための指標です。応答率、放棄率、平均処理時間、一次解決率、顧客満足度などが代表的です。窓口の目的に合った指標を選び、定義をそろえて継続的に測ることで、改善の打ち手を考えやすくなります。

最初に見るべきKPIはどれですか?

窓口の目的によって変わりますが、多くの窓口では、つながりやすさを表す応答率や放棄率から始めるのがわかりやすいでしょう。あわせて、効率を表す平均処理時間と、品質を表す一次解決率を見ておくと、バランスよく状態を把握できます。最初は三つから五つ程度に絞るのがおすすめです。

応答率と放棄率はどう違いますか?

応答率は、かかってきた電話のうち応答できた割合で、放棄率は、応答する前にかけた人が電話を切ってしまった割合です。似た指標ですが、放棄率は「待たされて切った」電話に注目しているのが特徴です。どの電話を着信に含めるかなど、計算の定義をそろえておくことが大切です。

AHTは短いほどよいのですか?

必ずしもそうではありません。平均処理時間を短くしようとして通話を急がせると、問題が解決しないまま電話を終えるケースが増え、再度の電話が増えることがあります。平均処理時間は、一次解決率や再入電率などの品質の指標とあわせて見ることが大切です。

一次解決率はどうやって測ればよいですか?

スタッフが通話の終わりに解決したかどうかを記録する方法、一定期間内に同じお客様から同じ用件で再度の電話があったかで判断する方法、お客様へのアンケートで尋ねる方法などがあります。それぞれ長所と短所があるため、自社に合った方法を選び、定義を文書にしておきましょう。

KPIの目標値はどう決めればよいですか?

業種や窓口の役割、問い合わせの内容によって適切な水準は大きく変わるため、まずは自社の過去の数字を集めて現状を把握し、そこから無理のない改善の目標を決めるのが確実です。他社の数字と比べる場合は、計算の定義が同じかどうかに注意が必要です。

小さな窓口でもKPIは必要ですか?

多くの指標を管理する必要はありませんが、着信件数、応答できなかった電話の件数、折り返しまでの時間、よくある問い合わせの種類といった基本的な数字を見ておくだけでも、人手が足りない時間帯や、自動の案内に任せられる用件が見えてきます。

顧客満足度のアンケートは、どのくらいの頻度で行えばよいですか?

電話対応のたびにアンケートを行う方法もあれば、一定期間ごとにまとめて行う方法もあります。お客様の負担にならない頻度と方法を選びましょう。回答の数が少ないと数字がぶれやすいため、数字だけでなく自由記述の内容もあわせて読むことをおすすめします。

KPIをスタッフの評価に使ってもよいですか?

使うことはできますが、慎重な設計が必要です。処理件数や平均処理時間だけで評価すると、対応の質が下がるおそれがあります。品質の指標や顧客の声の指標とバランスをとり、担当している問い合わせの難しさも考慮しましょう。数字は、育成や支援が必要な点を見つけるために使うのが望ましいといえます。

IVRやAIを導入すると、KPIの見方は変わりますか?

変わります。自動の案内で完結した電話と、スタッフが応答した電話を分けて数えないと、スタッフの負担の変化を読み取れません。案内の途中で切れた電話の位置や、折り返しまでの時間、AIからスタッフに引き継いだ件数と理由なども加えて見ると、自動化の効果を正しく評価できます。

KPIはどのくらいの頻度で振り返ればよいですか?

リアルタイムで見る指標(待っている電話の数など)は日々の運営の中で確認し、応答率や平均処理時間などの指標は、週に一度や月に一度など、定期的に振り返るのが一般的です。振り返りでは、数字の変化とその理由、次の打ち手を話し合いましょう。

サービスレベルと応答率は、どちらを見ればよいですか?

両方を見るのがおすすめです。応答率は応答できたかどうかを、サービスレベルはどれくらい早く応答できたかを表します。応答率が高くても、多くのお客様を長く待たせていればお客様の体験はよくありません。窓口の性格に合わせて、どちらに重みを置くかを決めましょう。

放棄された電話にはどう対応すればよいですか?

放棄された電話の番号がわかる場合は、折り返しを検討します。あわせて、どの時間帯に、どれくらい待った末に切られているのかを確かめると、人員の配置や自動の案内の見直しにつなげられます。ごく短い時間で切られた電話は、間違い電話の可能性もあるため、放棄に含めるかどうかの定義を決めておきましょう。

占有率は高いほどよいのですか?

高すぎる状態が続くのは望ましくありません。占有率が高いということは、スタッフが休む間もなく電話を受け続けていることを意味し、疲れや対応の質の低下、離職につながるおそれがあります。つながりやすさの指標とスタッフの負担のバランスを見ながら、人員の計画を考えましょう。

AI-SNS.IO CallでKPIを確認できますか?

AI-SNS.IO Callには、キューごとの電話の状況を確認できる機能や、レポート・分析の機能があります。確認できる指標や設定の方法は、機能一覧と使い方ガイドで確認してください。

まとめ

コールセンターや電話窓口のKPIは、「つながりやすさ」「効率」「品質」「顧客の声」の四つのグループに分けて考えると整理しやすくなります。応答率や放棄率で入口の状態を、平均処理時間で効率を、一次解決率で品質を、顧客満足度でお客様の評価を見る。どれか一つだけを追いかけるのではなく、グループをまたいでバランスよく見ることが大切です。

KPIを決めるときは、窓口の目的を言葉にし、指標を少なく絞り、定義をそろえることから始めましょう。目標は自社の過去の数字と比べて決め、数字が変わったら内訳から理由を探り、打ち手とKPIを結びつけて効果を確認する。この繰り返しが、電話窓口を着実によくしていく道筋になります。

まずは、今の自社の窓口で測れている数字を書き出してみてください。何がわかっていて、何がわかっていないのかが見えれば、次に測るべき指標も自然と見えてきます。

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