IVRメニュー設計のコツ|階層・選択肢数・案内文の作り方
この記事はIVRメニュー設計の実践手順に焦点を当てています。IVRの基本概念はIVRとはをご覧ください。
IVRメニュー設計の出来は、電話をかけてきたお客様の最初の数十秒の体験を決めます。同じIVRの仕組みを使っていても、メニューの組み立て方ひとつで、「すぐに担当につながって助かった」と感じてもらえることもあれば、「何度も番号を押させられて疲れた」と思われてしまうこともあります。
IVRの基本的な仕組みについてはIVR(自動音声応答)とは?で解説しました。この記事では一歩進んで、実際にメニューを作る、あるいは今のメニューを作り直すときに使える具体的なテクニックに焦点を当てます。階層の深さ、選択肢の数と並べ方、案内文の言い回し、オペレーターへの出口、そして改善の進め方まで、設計の現場で迷いやすいポイントを順に取り上げます。
手元に紙とペンを用意して、自社のメニューを書き出しながら読み進めていただくと、より具体的に役立てられるはずです。
良いIVRメニューの条件
テクニックに入る前に、「良いIVRメニュー」とは何かを定義しておきましょう。基準があいまいなまま設計を始めると、社内の意見がまとまらず、結果としてあれもこれも詰め込んだメニューになりがちです。
条件1:迷わずに選べる
良いメニューの第一の条件は、電話をかけてきた人が、自分の用件にあたる選択肢を迷わずに選べることです。選択肢の言葉が相手の頭の中にある言葉と一致していれば、人は迷いません。逆に、社内でしか通じない言葉や、範囲のあいまいな言葉が並んでいると、相手は「どれだろう」と考え込んでしまいます。
条件2:短い時間で目的にたどり着ける
第二の条件は、目的の行き先までの時間が短いことです。最初のあいさつから、自分が選ぶべき選択肢の案内が流れるまでの時間、そしてボタンを押してから担当につながるまでの時間の合計が、相手が感じる「待たされ感」になります。階層が深いほど、選択肢が多いほど、この時間は長くなります。
条件3:間違えても戻れる
第三の条件は、間違えたときにやり直せることです。押し間違えた、案内を聞き逃した、選んだ先が違っていた。そうしたときに、もう一度案内を聞く、一つ前のメニューに戻る、人につながる、といった道が用意されていれば、相手は安心して操作できます。
条件4:どこからでも人に届く
第四の条件は、どの段階からでも、人や折り返しの依頼にたどり着けることです。メニューの選択肢にどうしても当てはまらない用件は必ずあります。そのときに行き場がないと、相手は電話を切るか、適当な選択肢を選んで違う担当につながってしまいます。
条件5:会社の運用と合っている
最後の条件は、メニューの行き先が、実際の会社の運用と合っていることです。メニュー上は「営業担当につながる」と案内していても、営業担当が日中ほとんど外出していて電話に出られないなら、そのメニューは機能していません。メニューは、電話を受ける側の体制とセットで設計する必要があります。
この五つの条件を、設計の判断に迷ったときの物差しにしてください。社内で意見が分かれたときも、「相手にとってどうか」という同じ物差しで話し合えば、結論を出しやすくなります。
階層は浅く保つ
IVRメニューの設計でまず考えるのが、階層の深さです。一つのメニューで選択肢を選び、その先でさらに選択肢を選ぶ、という構造が深くなるほど、相手が目的にたどり着くまでの時間は長くなります。

一段で収まらないか考える
最初に検討したいのは、メニューを一段で収められないかということです。電話の用件を棚卸ししてみると、件数の大部分は少数の用件に集中していることがよくあります。その主要な用件だけを一段目の選択肢にし、残りの用件は「その他」としてまとめて人につなぐ、という構成にすれば、多くの相手は一回の操作で目的にたどり着けます。
用件の棚卸しは、電話を受けたスタッフに用件をメモしてもらうだけでも十分です。数週間分を集計すれば、どの用件が多いのかが見えてきます。
二段目を作るときの考え方
用件の種類が多く、どうしても一段では収まらない場合は、二段目のメニューを作ります。このとき、一段目は「大きな分類」、二段目は「細かい用件」という関係になるように整理すると、相手は迷いにくくなります。
たとえば、一段目で「はじめてご利用を検討中の方」と「すでにご利用中の方」を分け、二段目で「ご利用中の方」の中を「使い方のご質問」「契約内容の変更」「請求について」に分ける、といった構成です。一段目の分類が相手にとってわかりやすい区切りになっていれば、二段目でも迷うことは少なくなります。
三段目以降は作らない
三段目以降のメニューは、原則として作らないことをおすすめします。階層が三段になると、相手は自分がメニューのどこにいるのかを見失いやすくなり、間違えたときに戻るのも難しくなります。三段目が必要になりそうなときは、一段目や二段目の分類を見直すか、細かい振り分けは担当者につながってから行う、という判断をしましょう。
「浅く広く」と「深く狭く」の間で
階層を浅くしようとすると、一つのメニューの選択肢が増えます。選択肢を少なくしようとすると、階層が深くなります。この二つはトレードオフの関係にあり、どちらかを極端に追求するとうまくいきません。
目安としては、「一段目は主要な用件を少数に絞り、二段目までで全体を収める」ことを目指し、それでも収まらない用件は人の対応やほかの窓口に任せる、というバランスが現実的です。
選択肢の数と順番
階層の方針が決まったら、各メニューに並べる選択肢の数と順番を決めます。
選択肢は「覚えていられる数」に
電話の案内は、目で見返すことができません。相手は案内を聞きながら、自分の用件にあたる選択肢を頭の中で探し、その番号を覚えておく必要があります。選択肢が多すぎると、最後の選択肢を聞き終えたころには最初の選択肢の番号を忘れてしまい、もう一度聞き直すことになります。
選択肢の数に絶対的な正解はありませんが、「全部聞き終えても、自分が選ぶべき番号を覚えていられるか」を基準に考えましょう。設計したメニューを実際に読み上げてみて、聞いている人が番号を覚えていられるかを試すのが確実です。
件数の多い用件を先に
選択肢の順番は、件数の多い用件を先に並べるのが基本です。最初のほうで自分の用件が出てくれば、相手は残りの選択肢を聞かずに番号を押せます。全体として、相手が案内を聞いている時間が短くなります。
ただし、件数の多さだけで順番を決めると、相手にとって不自然な並びになることもあります。たとえば、「はじめての方」と「ご利用中の方」のように対になる選択肢は、件数にかかわらず続けて並べたほうがわかりやすいでしょう。
緊急の用件は最初に
件数は少なくても、緊急性の高い用件がある場合は、最初に案内することを検討します。設備の故障、事故、急な体調の変化など、急いでいる相手を長く待たせることは避けたいからです。緊急の選択肢を最初に置くことで、「この会社は緊急の連絡を大切にしている」という姿勢も伝わります。
ただし、緊急の選択肢を最初に置くと、緊急でない用件の相手もつい選んでしまうことがあります。「水漏れなど、お急ぎの修理のご依頼は」のように、緊急の具体例を添えて範囲をはっきりさせておくとよいでしょう。
番号の割り当てにはルールを
番号の割り当てにも、一定のルールを設けておくと使いやすくなります。よく使われるルールには、次のようなものがあります。
- 選択肢は1から順に割り当て、番号を飛ばさない
- 「もう一度聞く」は、どのメニューでも同じ番号(たとえば9)にする
- 「人につなぐ」や「その他」も、どのメニューでも同じ番号(たとえば0)にする
- 「一つ前のメニューに戻る」も、どのメニューでも同じ番号(たとえば米印)にする
どのメニューでも同じ操作が同じ番号に割り当てられていれば、相手は一度覚えた操作を使い回せます。
「その他」の扱いに気をつける
「その他のお問い合わせ」という選択肢は、どんなメニューにもほぼ必ず必要です。ただし、「その他」を選んだ電話の件数が多い場合は、メニューの分類が実際の用件と合っていない可能性があります。「その他」を選んだ電話の用件を定期的に確認し、件数の多い用件があれば、独立した選択肢として加えることを検討しましょう。
案内文の書き方
選択肢が決まったら、案内文を書きます。同じ選択肢でも、案内文の書き方によって、聞き取りやすさは大きく変わります。

「用件→番号」の語順
案内文は、「〇〇の方は1を」のように、用件を先に、番号を後に言う語順が基本です。相手はまず自分の用件にあたるかどうかを聞き、あたっていればその直後の番号を覚えればよいからです。
「1番、〇〇の方」という語順だと、相手は番号を聞いた時点では、それが自分に関係あるかどうかわかりません。関係あるとわかったときには、番号を聞き逃していることもあります。
相手の言葉で書く
選択肢の言葉は、社内の部署名や業務用語ではなく、電話をかけてくる相手が使う言葉で書きます。
- 「営業部」より「新しくご利用を検討中の方」
- 「カスタマーサクセス」より「ご利用中のサービスの使い方について」
- 「経理部」より「請求書やお支払いについて」
- 「業務課」より「配送の状況について」
相手の言葉で書かれた選択肢は、聞いた瞬間に「自分のことだ」とわかります。
範囲がはっきりわかる言葉を選ぶ
「各種お手続き」「サービスについて」のような、範囲の広すぎる言葉は避けましょう。何が含まれるのかがわからず、相手は迷ってしまいます。どうしても広い範囲をまとめる必要がある場合は、「住所の変更、契約内容の変更など、各種お手続きは」のように、具体例を一つか二つ添えると範囲が伝わりやすくなります。
一文に一つの情報
案内文は、一文に一つの情報だけを入れるようにします。「ご予約の相談、変更、キャンセル、営業時間のご確認は1を」のように、一つの選択肢に多くの情報を詰め込むと、聞き取りにくくなります。選択肢を分けるか、言葉を絞りましょう。
冒頭の前置きは短く
メニューの前に流れるあいさつや前置きは、短くまとめます。会社の紹介や宣伝、キャンペーンの案内などを長く流すと、相手は用件にたどり着く前に疲れてしまいます。録音の告知など、必ず伝えなければならない情報だけを短く伝え、すぐにメニューに入りましょう。この内容は一般的な情報であり、法的助言ではありません。
案内の長さを測ってみる
案内文が書けたら、あいさつから最後の選択肢までを実際に読み上げ、かかった時間を測ってみましょう。測ってみると、想像していたよりも長いことに気づくはずです。特に、二段目のメニューに進む相手は、一段目と二段目の案内を続けて聞くことになります。合計の時間が長いと感じたら、前置きを削る、選択肢をまとめる、言葉を短くする、といった見直しを行います。
時間を測るときは、普段の話す速さよりも少しゆっくり読むのがポイントです。電話の向こうの相手は、初めてその案内を聞きます。社内の人が読み慣れた速さで読むと、実際の相手にとっては速すぎることがあります。音声合成を使う場合も、読み上げの速さを調整して、聞き取りやすい速さを探しましょう。
書いたら声に出して読む
案内文を書いたら、必ず声に出して読んでみます。文字で読むとわかりやすくても、耳で聞くとわかりにくいことはよくあります。似た音の言葉が続いていないか、早口にならないと読めない長さになっていないか、聞き終えたときに番号を覚えていられるかを確認しましょう。案内の音声の作り方は、IVR音声ガイダンスの作り方で解説しています。
発話で選ぶメニューを設計するときのポイント
ボタンではなく、相手の発話で選択肢を選ぶメニューを設計する場合は、プッシュ式とは少し違う配慮が必要です。
選択肢の言葉を「言いやすく」する
発話で選ぶメニューでは、選択肢の言葉を相手がそのまま口にすることになります。「ご契約内容の変更」のような長い言葉よりも、「契約の変更」「予約」「請求」のように、短く言いやすい言葉にしておくと、相手は迷わずに話せます。似た音の選択肢が並ぶと聞き間違いの原因になるため、選択肢同士の音が似すぎていないかも確かめましょう。
聞き返しの回数を決めておく
発話は、周囲の雑音や話し方によって、うまく聞き取れないことがあります。聞き取れなかったときに何回まで聞き返すかを決めておきましょう。聞き返しは一回程度にとどめ、それでも判断できなければ、ボタンでの選択に切り替えるか、人につなぐのが現実的です。何度も「もう一度お話しください」と繰り返されると、相手は強いストレスを感じます。
ボタンでも選べるようにしておく
発話で選ぶメニューでも、ボタンでの選択を併用できるようにしておくと安心です。騒がしい場所からかけている方、声を出しにくい場所にいる方、話すのが苦手な方は、ボタンを使えます。「ご用件をお話しいただくか、番号を押してください」と案内すれば、相手が選べます。
確認のひと言を入れる
発話から判断した行き先に送る前に、「請求についてのお問い合わせですね」と短く確認を入れると、聞き間違いによる誤った振り分けを防げます。ただし、すべての選択で確認を入れると時間がかかるため、聞き取りの確からしさが低いときだけ確認する、といった工夫も考えられます。
多言語の相手への配慮
外国語を話すお客様からの電話が多い場合は、メニューの冒頭で言語を選んでもらう構成も検討します。最初の案内で「For English, press 9」のように、その言語で短く案内するのが一般的です。言語を選んだ先のメニューも、同じ構成と同じ番号のルールにそろえておくと、案内を作り直す手間が減ります。多言語対応の考え方は、多言語の電話対応をAIで行う方法で紹介しています。
オペレーターへの出口
IVRメニューの設計で、もっとも軽視されやすく、もっとも不満につながりやすいのが、人への出口です。
出口はどのメニューにも
人につながる選択肢、あるいは折り返しを依頼できる選択肢は、一段目だけでなく、二段目以降のすべてのメニューに用意しておきましょう。二段目に入ってから「やはり自分の用件はここにない」と気づいた相手が、一段目に戻らなくても人に届けるようにするためです。
出口の番号を統一する
先ほども触れたように、人につながる番号は、どのメニューでも同じ番号にしておくと、相手が覚えやすくなります。最初のメニューで「オペレーターとお話しになりたい方は0を」と一度案内しておけば、二段目以降でも0を押せば人につながる、と相手は推測できます。
出口を隠さない
「人につながる選択肢をわかりにくくすれば、IVRで解決する電話が増える」と考えて、出口を案内の最後に小さく置いたり、案内しなかったりする設計を見かけることがあります。しかし、この考え方はおすすめできません。出口を探して何度もメニューを聞き直した相手は、ようやく人につながったときには不満を抱えており、その後の会話にも影響します。出口がはっきりしていることは、相手の安心につながります。
人が出られないときの出口
出口の先で人が出られない場合の扱いも決めておきます。担当者がすべて通話中、あるいは営業時間外の場合は、ボイスメールやコールバックの依頼、AIによる用件の聞き取りなどに案内します。出口の先が呼び出し音の鳴り続けるだけの状態にならないよう、受け皿まで含めて設計しましょう。受け皿の設計については、IVRのコールバックとボイスメール活用法で詳しく解説しています。
入力がないとき、間違えたとき
相手がボタンを押さなかった場合や、メニューにない番号を押した場合の扱いも、出口の設計の一部です。
- 入力がない場合:一度だけ案内を繰り返し、それでも入力がなければ、人につなぐか、受け皿に案内します。
- メニューにない番号が押された場合:「入力された番号は受け付けられません」と短く伝え、もう一度案内します。繰り返し間違える場合は、人につなぎます。
ボタンの操作が苦手な方や、電話機の操作がうまくいかない方もいます。何度も同じ案内を繰り返すより、早めに人につなぐほうが、結果としてお互いの時間を節約できます。
業種・目的別のメニュー設計例
ここでは、目的の異なる三つのメニューを、設計の考え方とあわせて紹介します。
例1:予約制の店舗(一段構成)
予約制の店舗では、予約に関する電話とそれ以外を分けるだけの、一段構成のメニューが向いています。
お電話ありがとうございます。〇〇です。ご予約の相談、変更、キャンセルは1を。営業時間とアクセスのご案内は2を。その他のお問い合わせは0を押してください。
1はスタッフにつなぎ、施術中などで出られないときは、予約の希望を聞き取るか折り返しの依頼を受け付けます。予約の確定は、スタッフが空き状況を確認してから行います。2は営業時間と所在地の案内を流して終了します。0はスタッフにつなぎます。
この構成のポイントは、件数の多い予約の相談を最初に置き、案内だけで済む用件を二番目に置いて、スタッフが出る電話を減らしていることです。
例2:サービス提供会社(二段構成)
サービスを提供している会社では、新規と既存のお客様を一段目で分け、既存のお客様の中を二段目で分ける構成が考えられます。
一段目:サービスのご利用を検討中の方は1を。ご利用中の方は2を。その他のお問い合わせ、またはオペレーターとお話しになりたい方は0を押してください。
二段目(2を選んだ場合):使い方のご質問は1を。ご契約内容の変更は2を。請求やお支払いについては3を。オペレーターとお話しになりたい方は0を。最初のメニューに戻る場合は米印を押してください。
一段目の分類が相手にとってわかりやすい区切りになっており、二段目でも0で人に届くようになっている点がポイントです。
例3:緊急の連絡がある業種(緊急を最優先)
設備修理や賃貸管理など、緊急の連絡がある業種では、緊急の選択肢を最初に置きます。
お電話ありがとうございます。〇〇です。水漏れや停電など、お急ぎの修理のご依頼は1を。お見積もりや工事のご相談は2を。工事日程の確認や変更は3を。その他のお問い合わせは0を押してください。
1は当番の担当者に直接つなぎ、ほかの選択肢は通常の窓口につなぎます。緊急の具体例を添えることで、緊急でない用件が1に流れ込むのを防いでいます。
予約制の店舗や修理業など、業種ごとの電話の特徴と受け方は、歯科医院や飲食店向けのガイドでも具体的に取り上げています。
メニュー設計を社内で進める体制
IVRメニューは、電話を受ける現場、サービスを企画する部署、システムの設定を担当する人など、複数の立場の人に関わります。設計を一人で抱え込まず、社内で役割を分けて進めると、運用に合ったメニューになりやすくなります。
現場の担当者を巻き込む
電話を日々受けている担当者は、どんな用件の電話が多いのか、どんな言葉で問い合わせが来るのか、どの用件で相手が迷いやすいのかを、もっともよく知っています。用件の棚卸しや選択肢の言葉選びには、必ず現場の担当者に参加してもらいましょう。現場の言葉で書かれた選択肢は、相手にとってもわかりやすいことがほとんどです。
決める人を一人にする
一方で、メニューの最終的な判断は、一人の担当者に任せることをおすすめします。関係者全員の要望を取り入れようとすると、「うちの部署の選択肢も一段目に」という要望が重なり、選択肢が増えてしまいます。決める人は、相手の立場に立った五つの条件を物差しに、要望の優先順位をつけます。
変更の手順を決める
メニューを変更するときの手順も決めておきます。誰が変更を提案し、誰が判断し、誰が設定を変え、誰が動作を確認するのか。変更した日時と内容をどこに記録するのか。手順が決まっていれば、急な変更にも落ち着いて対応できますし、変更の履歴があとから追えるようになります。
新しく入ったスタッフに共有する
メニューの構成と、各選択肢の行き先、出口の先の受け皿は、新しく入ったスタッフにも共有しておきましょう。相手がどの選択肢を経てつながってきたのかがわかれば、担当者は最初から用件に沿って話を始められます。メニューの全体像を一枚にまとめたワークシートは、この共有にも役立ちます。
電話をかける相手を想定してテストする
メニューが完成したら、本番で使い始める前に、さまざまな相手を想定してテストします。設計した本人がテストすると、メニューの構成を知っているため、迷うことなく目的の選択肢を選べてしまいます。できれば、メニューの設計に関わっていない人にテストをお願いしましょう。
想定する相手の例
テストでは、次のような相手を想定して、何度か電話をかけてもらうとよいでしょう。
- はじめて電話をかける新規のお客様
- すでに利用していて、契約内容を変更したいお客様
- 急ぎのトラブルを抱えて焦っているお客様
- 電話の操作が苦手で、ボタンを押すのに時間がかかるお客様
- 周囲が騒がしい場所からかけているお客様
- メニューのどの選択肢にも当てはまらない用件を持つお客様
それぞれの相手になりきって電話をかけ、目的の行き先にたどり着くまでにかかった時間、迷った場面、不安に感じた場面を記録してもらいます。
確かめる操作
あわせて、次の操作が想定どおりに動くかも確かめます。
- すべての選択肢を押し、正しい行き先につながるか
- もう一度聞く番号、戻る番号、人につなぐ番号が、どのメニューでも同じように動くか
- 何も押さなかったとき、メニューにない番号を押したときの動き
- 営業時間外にかけたときの動き
- 人が出られないときに、受け皿に案内されるか
テストで見つかった問題を直してから、本番の運用を始めましょう。
メニューを改善する方法
IVRメニューは、一度作ったら終わりではありません。電話の用件は、季節、新サービスの開始、Webサイトの変更などによって変わっていきます。定期的にメニューを見直し、改善を重ねていくことが大切です。
記録から「迷い」の跡を探す
メニューの改善点を見つけるには、IVRの記録を見るのが近道です。特に注目したいのは、相手が迷った跡です。
- 同じメニューを何度も聞き直している:選択肢の言葉がわかりにくいか、選択肢が多すぎる可能性があります。
- 一つ前のメニューに戻っている:一段目の分類が相手の思っていたものと違っていた可能性があります。
- 特定のメニューで電話が切られている:そのメニューの案内が長すぎるか、目的の選択肢が見つからなかった可能性があります。
- 「その他」や出口の選択が多い:メニューの分類が、実際の用件と合っていない可能性があります。
こうした跡が見つかったメニューから、優先して見直しましょう。IVRの記録の読み方は、IVRの分析と改善方法で詳しく解説しています。
担当者の声を聞く
IVRで振り分けた先の担当者は、メニューの問題に気づきやすい立場にいます。「この窓口に、本来は別の窓口の用件がよく来る」「この用件の電話は、最初に〇〇を確認してから回してほしい」といった声は、メニューの分類や言葉を見直す手がかりになります。
一度に一つずつ変える
メニューを改善するときは、一度にたくさんの部分を変えず、一つずつ変えて効果を確認しましょう。選択肢の言葉を変えたら、しばらく記録を見て、迷いの跡が減ったかを確認します。複数の変更を同時に行うと、どの変更が効いたのかがわからなくなります。
変更の前後で比べる
改善の効果を確認するには、変更の前後で同じ指標を比べます。たとえば、特定のメニューで電話が切られた件数、「その他」が選ばれた割合、担当者につながるまでにかかった時間などです。変更した日時を記録しておくと、比較がしやすくなります。
見直しのタイミングを決めておく
メニューの見直しは、気づいたときに行うだけでなく、定期的なタイミングを決めておくと続けやすくなります。たとえば、四半期ごとに記録を確認する、新しいサービスを始めたときや組織を変えたときに必ず見直す、といったルールです。
AIとの組み合わせ方
近年は、IVRメニューと会話型のAIを組み合わせる設計も増えています。メニュー設計の観点から、組み合わせ方のパターンを紹介します。
パターン1:メニューの先でAIが聞き取る
一段目のメニューで大まかに振り分けたあと、選んだ先でAIが用件を詳しく聞き取るパターンです。たとえば、「ご予約の相談」を選んだ相手に対して、AIが希望の日時や人数を聞き取り、記録してスタッフに引き継ぎます。メニューは浅いまま、細かい用件の把握をAIが担うため、階層を深くせずに済みます。
パターン2:「その他」の先をAIにする
「その他のお問い合わせ」を選んだ相手の用件を、AIが聞き取るパターンです。メニューの選択肢に当てはまらない用件は内容がさまざまで、人が対応すると時間がかかりがちです。AIが先に用件を聞き取り、内容に応じて担当につなぐ、あるいは折り返しの依頼として記録することで、担当者の負担を減らせます。
パターン3:メニューの代わりにAIが用件を聞く
メニューを使わず、最初からAIが「ご用件をお話しください」と聞き、話の内容から行き先を判断するパターンです。相手はメニューを聞く必要がありませんが、聞き取りの誤りへの備えが必要です。緊急の連絡など確実に振り分けたい用件だけはメニューで分け、それ以外をAIに任せる、という組み合わせも考えられます。
どのパターンでも、AIに任せる範囲を決め、予約や契約の確定、専門的な判断は人が行うように設計することが前提です。IVRとAIの違いと使い分けは、IVRと音声AIエージェントの違いで詳しく比較しています。
メニュー設計のワークシート
最後に、実際にメニューを設計するときに使えるワークシートの項目を紹介します。紙や表計算ソフトに、次の項目を書き出してみてください。
ステップ1:用件の一覧
- 電話でよくある用件を、相手の言葉で書き出す
- それぞれの用件のおおよその件数(多い・普通・少ない)を書く
- 緊急性の高い用件に印をつける
- 担当者が決まっている用件には、担当を書く
ステップ2:一段目の選択肢
- 件数の多い用件と緊急の用件から、一段目の選択肢を選ぶ
- 残りの用件を「その他」にまとめるか、二段目に回すかを決める
- 選択肢の順番を決める(緊急→件数の多い順)
ステップ3:二段目の選択肢(必要な場合のみ)
- 一段目の選択肢ごとに、二段目が必要かを判断する
- 二段目の選択肢と順番を決める
ステップ4:共通の操作
- 人につなぐ番号、もう一度聞く番号、戻る番号を決める
- 入力がないとき、間違えたときの扱いを決める
ステップ5:行き先と受け皿
- 各選択肢の行き先(担当者、キュー、案内の再生など)を決める
- 行き先で人が出られないときの受け皿を決める
- 営業時間外の扱いを決める
ステップ6:案内文
- 「用件→番号」の語順で、相手の言葉を使って案内文を書く
- 声に出して読み、長さと聞き取りやすさを確認する
このワークシートを埋めていけば、メニューの全体像が一枚にまとまります。社内で共有すれば、メニューの意図を全員が理解したうえで運用できます。
メニュー設計でよくある迷いと考え方
実際にメニューを作っていると、判断に迷う場面がいくつも出てきます。よくある迷いと、考え方の目安を紹介します。
部署ごとに分けるか、用件ごとに分けるか
社内の部署の分け方に合わせてメニューを作りたくなることがありますが、相手は会社の部署の分け方を知りません。メニューは用件ごとに分け、その用件をどの部署が担当するかは、行き先の設定で対応するのが基本です。複数の部署にまたがる用件がある場合は、最初に受ける部署を決めておき、必要に応じて社内で引き継ぎます。
新規のお客様と既存のお客様を分けるべきか
新規のお客様と既存のお客様では、必要な対応が大きく違うことが多いため、一段目で分ける構成はわかりやすい選択肢です。ただし、両者で対応が変わらない業種では、分ける必要はありません。分けることで相手に一つ余計な操作を求めることになるため、分けた先で対応が変わるかどうかを基準に判断しましょう。
案内だけで終わる選択肢を作るべきか
営業時間やアクセスなど、案内を流すだけで終わる選択肢は、人が出る電話を減らすのに役立ちます。一方で、案内を聞いたあとに追加の質問がある相手もいます。案内の最後に「ほかにご用件のある方は0を押してください」と添えて、人に届く道を残しておくと安心です。
メニューの冒頭でWebサイトを案内するべきか
「Webサイトでも受け付けています」とメニューの冒頭で案内すると、電話の件数を減らせる可能性があります。ただし、すでに電話をかけてきた相手にとっては、長い前置きは負担です。Webサイトの案内は短く一言にとどめるか、案内だけで終わる選択肢の中で伝えるほうが、相手の負担を抑えられます。
季節や期間限定の選択肢をどう扱うか
キャンペーンや繁忙期など、一定の期間だけ電話が増える用件がある場合は、その期間だけ選択肢を追加する方法があります。ただし、期間が終わったら必ず元に戻すことを忘れないようにしましょう。期間限定の選択肢を追加するときは、削除する日もあわせて決めておくと安心です。
AI-SNS.IO CallでのIVRメニュー設定
私たちAI-SNS.IOのCallでは、管理画面からIVRメニューの選択肢と行き先を設定できます。日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。行き先には、キュー、転送、ボイスメール、コールバック依頼、名前で担当者を呼び出すダイヤル・バイ・ネームなどを組み合わせられ、曜日や時間帯ごとの営業時間ルールと組み合わせて、時間外の案内にも切り替えられます。振り分けた先の通話は通話履歴とAIによる通話要約で確認でき、メニューの見直しにも役立てられます。
設定の流れはCallでIVRと営業時間を設定する手順で、各機能の提供状況はCallの機能一覧で、画面ごとの操作はCallの使い方ガイドでご確認ください。
「IVRメニュー設計のコツ|階層・選択肢数・案内文の作り方」の続きとして、製品全体はAI-SNS.IO Callのトップで確認でき、アカウント登録は月額0円から始めるから進められます。
あわせて読みたい記事:電話の自動応答(IVR)を設計するときの五つのポイント。
まとめ
IVRメニュー設計のコツは、電話をかけてきた相手の立場に立つことに尽きます。迷わずに選べる、短い時間で目的にたどり着ける、間違えても戻れる、どこからでも人に届く、会社の運用と合っている。この五つの条件を物差しに、階層は二段までに抑え、選択肢は覚えていられる数に絞り、件数の多い用件と緊急の用件を先に並べます。
案内文は「用件→番号」の語順で、相手の言葉を使い、一文に一つの情報だけを入れます。人への出口はすべてのメニューに同じ番号で用意し、出口の先の受け皿まで含めて設計しましょう。
そして、メニューは作って終わりではありません。記録から迷いの跡を探し、担当者の声を聞き、一つずつ変えて効果を確認する。その積み重ねが、相手にとっても会社にとっても使いやすいIVRを育てていきます。
IVRメニューは、お客様が会社と最初に交わす会話のようなものです。案内の一言、選択肢の一つが、その会社の印象をつくります。完璧なメニューを一度で作ろうとするよりも、相手の立場で何度も電話をかけ、記録を読み、少しずつ直していく。その地道な繰り返しこそが、迷わせないメニューへのいちばんの近道です。まずは今のメニューを紙に書き出し、五つの条件に照らして、直すべき一か所を見つけることから始めてみてください。
よくある質問
IVRメニューの階層は何段までがよいですか?
目安として、二段までに収めることをおすすめします。三段以上になると、相手は自分がメニューのどこにいるのかを見失いやすく、間違えたときに戻るのも難しくなります。主要な用件を一段目に絞り、細かい振り分けは担当者につながってから行う、あるいはAIが用件を聞き取る、といった方法で階層を浅く保ちましょう。
一つのメニューに選択肢はいくつまで並べてよいですか?
決まった正解はありませんが、相手が案内を全部聞き終えても、自分が選ぶべき番号を覚えていられる数に絞ることが大切です。設計したメニューを実際に読み上げて、聞いている人が番号を覚えていられるかを試してみましょう。収まらない用件は「その他」にまとめるか、二段目に回します。
選択肢の順番はどのように決めればよいですか?
件数の多い用件を先に並べるのが基本です。最初のほうで目的の選択肢が出てくれば、相手は残りを聞かずに番号を押せます。ただし、緊急性の高い用件がある場合は、件数にかかわらず最初に案内することを検討しましょう。対になる選択肢は続けて並べるなど、相手にとっての自然さも考えます。
案内文の語順はどうすればよいですか?
「新規のお問い合わせは1を」のように、用件を先に、番号を後に言う語順が基本です。相手はまず自分の用件にあたるかを聞き、あたっていればその直後の番号を覚えればよいため、聞き取りやすくなります。一文に一つの情報だけを入れ、相手が使う言葉で書くことも大切です。
オペレーターにつながる選択肢は必要ですか?
必要です。人につながる選択肢、または折り返しを依頼できる選択肢を、すべてのメニューに同じ番号で用意しておきましょう。出口がないIVRは、相手に強いストレスを与えます。出口の先で人が出られない場合は、ボイスメールやコールバックの依頼などの受け皿に案内します。
相手がボタンを押さなかった場合はどうすればよいですか?
一度だけ案内を繰り返し、それでも入力がなければ、人につなぐか、ボイスメールなどの受け皿に案内するのが一般的です。何度も同じ案内を繰り返すと、相手は電話を切ってしまいます。ボタンの操作が苦手な方もいるため、早めに人につなぐほうがお互いの時間を節約できることもあります。
「その他」が選ばれることが多い場合はどうすればよいですか?
メニューの分類が、実際の用件と合っていない可能性があります。「その他」を選んだ電話の用件を記録から確認し、件数の多い用件があれば独立した選択肢として加えることを検討しましょう。選択肢の言葉がわかりにくいために「その他」が選ばれている場合もあるため、言葉の見直しもあわせて行います。
IVRメニューはどのくらいの頻度で見直せばよいですか?
四半期ごとなど、定期的なタイミングを決めて記録を確認するのがおすすめです。あわせて、新しいサービスを始めたとき、組織を変えたとき、Webサイトを大きく変えたときなど、電話の用件が変わりそうなタイミングでも見直しましょう。変更は一度に一つずつ行い、効果を確かめます。
IVRメニューとAIはどのように組み合わせればよいですか?
メニューの先でAIが用件を詳しく聞き取る、「その他」を選んだ相手の用件をAIが聞き取る、緊急の用件だけはメニューで確実に分けてそれ以外をAIに任せる、といった組み合わせがあります。どの場合も、AIに任せる範囲を決め、予約や契約の確定、専門的な判断は人が行うように設計することが前提です。
既存のメニューを作り直すときは、何から始めればよいですか?
まず、今のメニューを紙に書き出し、記録から迷いの跡(聞き直し、戻る操作、途中で切られる電話、「その他」の多さ)を確認します。あわせて、電話を受けている担当者に困っていることを聞きます。そのうえで、この記事のワークシートに沿って用件の一覧から作り直し、変更は一つずつ反映して効果を確かめましょう。
発話で選ぶメニューとボタンで選ぶメニューは、どちらがよいですか?
確実さと操作のわかりやすさを重視するならボタン、相手に自分の言葉で選んでもらいたいなら発話が向いています。発話で選ぶ場合は、選択肢の言葉を短く言いやすくし、聞き取れなかったときの聞き返しは一回程度にとどめて、ボタンでも選べるようにしておくと安心です。両方を受け付ける設計にすれば、相手が自分に合った方法を選べます。
小さな会社でも、メニュー設計にここまで手間をかける必要がありますか?
選択肢が二つか三つの小さなメニューであれば、設計にかかる時間はそれほど多くありません。ただし、選択肢の言葉、人への出口、営業時間外の扱い、出口の先の受け皿という基本は、規模にかかわらず大切です。小さなメニューほど一つひとつの選択肢の役割が大きいため、この記事のワークシートの項目だけでも一度書き出してみることをおすすめします。小さな会社での始め方は、小さな会社こそIVRを使うべき理由でも紹介しています。



