クラウド型コールセンターとオンプレミスの違い|選び方のポイント
コールセンターや電話窓口のシステムを新しくするとき、最初に考えることになるのが「クラウド型にするか、オンプレミス型にするか」という選択です。クラウドPBXやクラウド型のコールセンターシステムを選ぶ会社が増えている一方で、自社で設備を持つオンプレミス型を使い続ける理由がある会社もあります。
どちらが優れているかは、一概には言えません。導入までの期間、人数の増減への対応、保守の負担、セキュリティの考え方、在宅勤務との相性など、比べる観点ごとに得意・不得意があり、自社にとって何が大切かによって答えが変わるからです。
この記事では、クラウドPBXとオンプレミスの比較を、二つの方式の基本から、導入までの期間、拡張と縮小のしやすさ、保守と運用の負担、セキュリティの考え方、在宅勤務との相性まで、観点ごとに整理します。自社に合う方式を判断するためのチェックリストや、移行を進めるときの手順も紹介します。
クラウドPBXとオンプレミスの基本
PBXとは
PBX(構内交換機)は、会社の中の電話をつなぐ仕組みです。外からかかってきた電話を内線に振り分ける、内線どうしで通話する、保留や転送をする、といった機能を担います。コールセンターでは、PBXに加えて、着信を順番にオペレーターに振り分ける仕組み、待っている電話を並べるキュー、自動音声の案内(IVR)、通話の録音、管理者向けのレポートなどが組み合わされます。
オンプレミス型とは
オンプレミス型は、PBXやコールセンターのシステムの機器を、自社の建物の中やデータセンターに設置して使う方式です。機器もソフトウェアも自社で持ち、自社または委託先が保守します。
クラウド型とは
クラウド型は、PBXやコールセンターのシステムの機能を、提供元がインターネット上で提供し、利用する会社はそれをサービスとして使う方式です。自社で機器を持たず、パソコンのブラウザや専用のアプリ、対応した電話機から利用します。クラウドPBXと呼ばれるものは、このクラウド型のPBXを指します。
二つの方式の違いの全体像
| 観点 | オンプレミス型 | クラウド型 |
|---|---|---|
| 機器 | 自社で持つ | 提供元が持つ |
| 費用の形 | 機器の購入など初期の費用が大きくなりやすい | 月額など、使った分や人数に応じた費用が中心になりやすい |
| 導入までの期間 | 機器の調達と設置、工事が必要 | 契約と設定で始められることが多い |
| 拡張と縮小 | 機器の追加や入れ替えが必要なことがある | 契約の変更で増減しやすいことが多い |
| 保守 | 自社または委託先が行う | 提供元が行う部分が多い |
| 機能の更新 | 機器やソフトウェアの更新が必要 | 提供元が更新する |
| 自由度 | 自社の要件に合わせて作り込みやすい | 提供元の機能と設定の範囲で使う |
| 働く場所 | 社内での利用が前提になりやすい | インターネットにつながる場所から使いやすい |
この表は一般的な傾向をまとめたものです。実際には、オンプレミス型でも外から使える構成にできるものや、クラウド型でも作り込みの自由度が高いものがあります。個々の製品やサービスの条件は、それぞれの説明で確認してください。

どちらかを選ぶ前に整理すること
方式を比べる前に、次の点を整理しておくと、判断がしやすくなります。
- 今の課題:つながりにくい、人数の増減に追いつかない、保守の負担が大きい、在宅勤務に対応したい、など、今の仕組みで困っていること
- これからの計画:窓口の人数や拠点の増減、在宅勤務の方針、新しい窓口(チャットなど)の追加の予定
- 社内の体制:電話の設備を保守できる担当者や委託先がいるか
- 社内のルール:通話の録音や顧客の情報をどこに保存してよいか、外部のサービスを使うときの決まり
- 今の契約:今の設備の保守の終了時期、リースや契約の期間
コールセンター全体の仕組みの見直しの進め方は、コールセンターDXの進め方で紹介しています。
導入までの期間
オンプレミス型の導入の流れ
オンプレミス型を導入するときは、一般的に次のような流れになります。
- 要件の整理と、機器・ソフトウェアの選定
- 見積もりと契約
- 機器の調達
- 設置する場所の準備(電源、空調、回線、配線など)
- 機器の設置と設定
- 試験と切り替え
機器の調達や設置の工事が必要なため、準備に時間がかかることがあります。自社の要件に合わせて作り込む場合は、設計と試験にさらに時間がかかります。
クラウド型の導入の流れ
クラウド型の場合は、一般的に次のような流れになります。
- 要件の整理と、サービスの選定
- 契約とアカウントの作成
- 電話番号の準備(新しく取得する、今の番号を使えるようにする、など)
- メニュー、振り分け、営業時間、ユーザーなどの設定
- 端末(パソコン、ヘッドセット、電話機など)の準備
- 試験と切り替え
機器の設置が不要なため、比較的短い期間で始められることが多いとされます。ただし、今の電話番号をそのまま使う場合の手続き、ほかの仕組みとのつなぎ込み、オペレーターの教育などには、別に時間がかかります。電話番号の扱いは、サービスや今の契約によって異なるため、早めに確かめておきましょう。
期間を左右する要素
どちらの方式でも、導入までの期間を左右するのは、次のような要素です。
- 要件の複雑さ:メニューや振り分けのルールが複雑なほど、設計と試験に時間がかかります。
- ほかの仕組みとのつながり:顧客の情報や対応の記録の仕組みとつなぐ場合は、その開発や試験の期間が必要です。
- 電話番号の手続き:番号を移す手続きには、一定の期間がかかることがあります。
- 社内の調整:情報管理のルールの確認、関係部署への説明、教育の準備など。
「クラウド型ならすぐに始められる」と考えて計画を立てると、こうした要素で予定がずれることがあります。余裕を持った計画を立てましょう。
拡張と縮小のしやすさ
人数の増減への対応
コールセンターの人数は、季節や事業の状況によって変わります。繁忙期だけオペレーターを増やす、新しい窓口を立ち上げる、拠点を統合して人数を減らす、といった変化に、仕組みがどれくらい柔軟に対応できるかは大切な観点です。
オンプレミス型
- 機器が対応できる人数や回線の数に上限があり、上限を超える場合は機器の追加や入れ替えが必要になることがあります。
- 繁忙期に合わせて設備を用意すると、閑散期には使わない設備を持ち続けることになります。
- 人数を減らしても、すでに購入した機器の費用は戻りません。
クラウド型
- 契約の変更で、利用する人数を増やしたり減らしたりしやすいことが多いとされます。
- 繁忙期だけ人数を増やし、閑散期に減らす、といった使い方がしやすくなります。
- ただし、契約の条件(最低の利用期間、変更できる時期など)はサービスによって異なります。
拠点の追加・統合
新しい拠点を開く、拠点を統合する、といった場合も、方式によって手間が変わります。
| 場面 | オンプレミス型 | クラウド型 |
|---|---|---|
| 新しい拠点を開く | 拠点に機器を置くか、本社の機器とつなぐ構成が必要 | インターネットにつながれば、同じ仕組みを使いやすい |
| 拠点を統合する | 機器の移設や撤去が必要になることがある | 設定の変更で対応しやすい |
| 一時的な窓口を作る | 機器や回線の準備が必要 | アカウントの追加と設定で対応しやすい |
機能の追加
新しい機能を使いたくなったときの対応も違います。
- オンプレミス型:ソフトウェアの追加や更新、場合によっては機器の入れ替えが必要です。自社の要件に合わせた機能を作り込める自由度がある一方、そのための開発の費用と期間がかかります。
- クラウド型:提供元が機能を追加・更新していくため、新しい機能を使い始めやすいことが多いとされます。一方で、提供元が用意していない機能は使えず、自社だけのための作り込みには限界があります。外部の仕組みとつなぐためのAPIが用意されているかどうかも、確かめておきたい点です。
拡張と縮小で確認すること
- 自社の人数の増減の幅(繁忙期と閑散期の差、今後の計画)
- 増やすとき、減らすときの手続きと、反映までの期間
- 増減したときの費用の変わり方
- 最低の利用期間や、解約の条件
保守と運用の負担
保守で発生する作業
電話の仕組みを使い続けるには、さまざまな保守の作業が発生します。
| 作業 | 内容 |
|---|---|
| 障害への対応 | 機器やソフトウェアの故障、通話ができないなどの問題に対応する |
| 更新 | ソフトウェアの更新、セキュリティの修正の適用 |
| 機器の管理 | 機器の点検、部品の交換、保守の期限が切れる機器の入れ替え |
| 設定の変更 | メニュー、振り分け、ユーザー、営業時間などの変更 |
| 監視 | 正常に動いているかを見守る |
オンプレミス型の保守
オンプレミス型では、これらの作業の多くを、自社または委託先が担います。
- 障害が起きたときは、自社の担当者か委託先が原因を調べて対応します。夜間や休日の障害に備えた体制も必要です。
- 機器には保守の期限があり、期限が近づくと入れ替えを検討する必要があります。
- 電話の設備に詳しい担当者が社内にいない場合は、委託先への依存が大きくなります。
一方で、保守の作業を自社で管理できるため、更新のタイミングを自社の都合に合わせて決められる、という利点もあります。
クラウド型の保守
クラウド型では、機器の管理、ソフトウェアの更新、基盤の監視などを、提供元が担う部分が多くなります。
- 自社で機器の点検や入れ替えをする必要がありません。
- 機能の更新は提供元が行うため、自社で更新の作業をする必要は少なくなります。ただし、更新のタイミングを自社で選べない場合もあり、画面や操作が変わることもあります。
- 障害が提供元の側で起きた場合、自社でできることは限られ、提供元の復旧を待つことになります。
クラウド型でも、メニューや振り分けの設定、ユーザーの追加と削除、営業時間の変更などの運用の作業は、自社で行います。管理画面で、自社の担当者が設定を変えられるかどうかは、日々の運用の負担を左右する大切な点です。
障害に備える
どちらの方式でも、障害がまったく起きないということはありません。障害に備えて、次の点を決めておきましょう。
- 障害の連絡先:誰に、どのように連絡するか
- お客様への案内:電話がつながらないときに、ホームページなどでどう案内するか
- 代わりの手段:電話が使えない間、メールやチャットなど別の窓口で受けられるか
- 提供元や委託先の対応の範囲:対応の時間帯、復旧までの目安、障害の報告の方法
クラウド型では、提供元の障害の情報がどこで公開されるか、障害のときにどのように連絡が来るかを確認しておきます。オンプレミス型では、委託先の対応の時間帯と、部品の手配にかかる期間を確認しておきます。
セキュリティの考え方
※この章は一般的な考え方の整理であり、法的助言ではありません。個人情報の扱いや契約の内容は、社内の規程や専門家の助言にあわせて判断してください。個人情報の扱いに関する公的な情報は、個人情報保護委員会のウェブサイトで確認できます。
「どちらが安全か」ではなく「誰が何を守るか」
セキュリティについては、「自社で持つオンプレミス型のほうが安全」「専門の提供元が管理するクラウド型のほうが安全」という、正反対の意見を聞くことがあります。実際には、どちらの方式でも、適切に管理されていれば安全性を高められ、管理が不十分であればリスクが生まれます。
大切なのは、「誰が、何を守る責任を持つのか」を明確にすることです。
| 守るもの | オンプレミス型 | クラウド型 |
|---|---|---|
| 機器と設置場所 | 自社または委託先 | 提供元 |
| 基盤のソフトウェアの更新 | 自社または委託先 | 提供元 |
| アカウントと権限の管理 | 自社 | 自社 |
| パスワードや認証の設定 | 自社 | 自社(提供元の機能を使って) |
| 端末(パソコンなど)の管理 | 自社 | 自社 |
| 録音や記録の扱いのルール | 自社 | 自社 |
クラウド型でも、アカウントの管理、権限の設定、端末の管理、記録の扱いのルールは、自社の責任です。「クラウドだから提供元がすべて守ってくれる」と考えるのは危険です。
確かめておきたい点
方式にかかわらず、次の点を確認しておきます。
データの保存
- 通話の録音、文字起こし、要約、顧客の情報は、どこに保存されるか
- 保存期間を設定できるか、削除はどのように行うか
- データを書き出せるか
アクセスの管理
- ユーザーごとに、見られる情報や使える機能を設定できるか
- ログインの方法(多要素の認証など)を強くできるか
- 誰がいつ何を見たか、変更したかの記録が残るか
通信の保護
- 通話やデータのやり取りが、どのように保護されているか
提供元や委託先の体制
- セキュリティの取り組みや、第三者による認証などの情報が公開されているか
- 障害やセキュリティの問題が起きたときの連絡の方法
クラウド型を検討する場合は、提供元が公開しているセキュリティやプライバシーの説明、利用規約を確認し、不明な点は問い合わせましょう。
社内のルールとの照らし合わせ
業種によっては、顧客の情報の扱いについて、社内や業界のルールが定められていることがあります。たとえば、医療、金融、公共の分野では、情報の保存場所や管理の方法について、慎重な判断が求められることがあります。方式を選ぶ前に、社内の情報管理の担当者と、守るべきルールを確認しておきましょう。
在宅勤務との相性
在宅勤務で必要になること
オペレーターが在宅で電話を受けるには、次のことが必要になります。
- 自宅から、会社の電話番号の着信を受け、会社の番号で発信できること
- 着信の振り分けやキューに、自宅のオペレーターも含められること
- 管理者が、在宅のオペレーターの状況(通話中、待機中、休憩中など)を見られること
- 通話の録音や品質の確認が、社内と同じようにできること
- 顧客の情報や対応の記録に、安全にアクセスできること
クラウド型と在宅勤務
クラウド型は、インターネットにつながる場所から利用することを前提にしているため、在宅勤務と組み合わせやすいとされます。ブラウザで使える電話(ソフトフォン)があれば、自宅のパソコンとヘッドセットで電話を受けられます。管理者も、同じ管理画面から在宅と社内のオペレーターの状況を見られます。
ただし、在宅勤務では、自宅のインターネット回線の品質が通話の品質に影響します。回線の速度や安定性の目安を決め、在宅で働くオペレーターの環境を確認しておきましょう。
オンプレミス型と在宅勤務
オンプレミス型でも、外部から社内の仕組みにつなぐ構成にすれば、在宅勤務に対応できる場合があります。ただし、外からつなぐための仕組み(安全な接続の方法など)の準備や、そのための機器の追加が必要になることがあります。既存の設備がどこまで対応できるかを、製品の提供元や委託先に確かめましょう。
在宅勤務で決めておくルール
方式にかかわらず、在宅勤務では次のルールを決めておく必要があります。
- 通話の内容が家族などに聞こえない環境で働くこと
- 顧客の情報を画面に表示したまま席を離れないこと、メモを残さないこと
- 会社が認めた端末だけを使うこと
- 困ったときに、管理者や同僚にすぐ相談できる方法
在宅でのコールセンターの運営については、在宅コールセンターの始め方で詳しく解説します。
災害や緊急時の備え
地震や台風、感染症の流行などで、事務所に出社できなくなることがあります。電話の窓口を止めないためには、方式を選ぶときに、緊急時にどう窓口を続けるかも考えておく必要があります。
方式ごとの考え方
- オンプレミス型:機器が事務所にある場合、事務所が使えなくなると、電話の窓口も止まるおそれがあります。別の拠点への転送や、外から使える構成をあらかじめ用意しておけるかを確認します。
- クラウド型:インターネットにつながる場所から使えるため、事務所に出社できなくても、自宅や別の拠点から窓口を続けやすいとされます。ただし、オペレーターの自宅の端末や回線の準備ができていなければ、すぐには切り替えられません。
緊急時の計画で決めておくこと
- 事務所が使えないとき、誰が、どこから、どの電話を受けるか
- 自宅や別の拠点で使う端末と回線の準備
- 電話を受けきれないときの案内(受付を縮小していることの案内、ボイスメール、ほかの窓口への誘導など)
- 管理者が状況を確認し、オペレーターと連絡をとる方法
計画は作るだけでなく、年に一度など、実際に自宅や別の拠点から電話を受ける訓練をしておくと、いざというときに慌てずに済みます。
費用の考え方
具体的な費用は、製品やサービス、規模、構成によって大きく異なるため、ここでは費用の「構造」の違いと、比べるときの考え方を整理します。
費用の種類
| 費用の種類 | オンプレミス型 | クラウド型 |
|---|---|---|
| 初期の費用 | 機器の購入、設置の工事、設計・構築 | 初期設定の費用がかかる場合がある |
| 継続の費用 | 保守の契約、回線、電気代、設置場所 | 月額の利用料(人数や機能に応じて)、回線、通話料 |
| 更新の費用 | 機器の入れ替え、ソフトウェアの更新 | 利用料に含まれることが多い |
| 社内の人の費用 | 保守や障害の対応にかかる担当者の時間 | 設定や運用にかかる担当者の時間 |
比べるときの注意
- 一定の期間の合計で比べる:オンプレミス型は初期の費用が大きく、クラウド型は継続の費用が中心になりやすいため、ある時点だけで比べると判断を誤ります。数年など、一定の期間で合計して比べます。
- 人数の増減を含めて比べる:繁忙期と閑散期で人数が変わる場合は、その変化を含めて計算します。
- 社内の人の時間も含める:保守や障害の対応に、社内の担当者がどれくらいの時間を使っているかも、費用の一部として考えます。
- 見えにくい費用を洗い出す:設置場所の電気代や空調、機器の入れ替えのときの切り替え作業、教育の費用なども含めます。
検討しているサービスや製品の最新の料金と条件は、それぞれの公式の案内や見積もりで確認してください。
日々の運用で何が変わるか
方式によって、管理者や情報システムの担当者の日々の作業も変わります。よくある作業で比べてみます。
| 日々の作業 | オンプレミス型でよくある進め方 | クラウド型でよくある進め方 |
|---|---|---|
| 新しいオペレーターを追加する | 内線や端末の設定を、担当者や委託先が行う | 管理画面でユーザーを追加し、ブラウザやアプリでログインしてもらう |
| 営業時間を変える | 設定の変更を、担当者や委託先に依頼する | 管理画面で営業時間のルールを変える |
| メニューを変える | 設定の変更と試験を、担当者や委託先が行う | 管理画面でメニューを変え、試験の電話で確認する |
| 席替え・拠点の移動 | 配線や電話機の移設が必要なことがある | ログインする場所が変わるだけで済むことが多い |
| 状況を確認する | 専用の画面や、社内の端末で確認する | ブラウザの管理画面で、社外からも確かめられることが多い |
どちらの方式でも、設定を変えたら試験の電話で確認すること、変更の記録を残すことは欠かせません。自社の担当者が変更できる範囲が広いほど、日々の小さな変更に素早く対応できます。一方で、誰でも設定を変えられる状態は事故のもとにもなるため、変更できる人を決めておきましょう。
検討の進め方とスケジュールの例
方式の検討から切り替えまでの流れを、スケジュールの例として示します。期間はあくまで目安で、規模や要件によって大きく変わります。
| 段階 | やること |
|---|---|
| 準備 | 今の課題、計画、体制、ルール、契約を整理する。今の設備の保守の期限を確認する |
| 情報収集 | 候補の方式と製品・サービスを調べ、資料を集める。質問の一覧を送る |
| 比較 | 比較表に回答を書き込み、デモや試用で操作を確認する |
| 試験 | 一部の窓口で試し、通話の品質、操作のしやすさ、つながりを確認する |
| 決定 | 試験の結果と費用を比べて方式と製品を決め、社内の承認を得る |
| 移行 | 設定の移行、番号の手続き、教育、お客様への案内を進める |
| 切り替え | 切り替えて、古い仕組みを片付ける |
今の設備の保守の期限から逆算して、準備を始める時期を決めると、期限に追われて慌てて決める事態を避けられます。
状況別の検討の例
三つの架空の状況で、どのように方式を検討するかを紹介します。
例1:設備の保守の期限が近い、中規模のサポート窓口
今の設備の保守の期限が近づき、入れ替えを検討しています。繁忙期に人数が増え、在宅勤務の希望も出ています。この場合、入れ替えの機会にクラウド型を検討する価値があります。人数の増減と在宅勤務への対応が、検討の中心になります。今の設定の棚卸しを早めに始め、保守の期限より前に試験を終えられるよう計画します。
例2:既存の設備が新しく、社内の仕組みと深くつながった窓口
数年前に入れ替えた設備が順調に動いていて、顧客の情報の仕組みとも深くつながっています。この場合、すぐに方式を変える必要は低いかもしれません。ただし、在宅勤務や新しい窓口の追加の計画があれば、一部の窓口だけクラウド型を試す、機能ごとに補う、といった組み合わせの形を検討します。
例3:新しく窓口を立ち上げる小さなチーム
数名で新しく問い合わせの窓口を作ります。電話の設備を保守できる担当者はいません。この場合は、機器を持たずに始められ、人数に合わせて広げやすいクラウド型が検討の中心になります。必要な機能から始め、窓口が育つのに合わせて機能を加えていきます。
自社に合う方式を判断する
判断のためのチェックリスト
次の質問に答えて、当てはまる数が多い方式を検討の中心にするとよいでしょう。
クラウド型が向いている可能性が高い
- [ ] 早く始めたい、または今の設備の保守の期限が近い
- [ ] 人数の増減が大きい、または今後の人数が読みにくい
- [ ] 電話の設備を保守できる担当者が社内にいない
- [ ] 在宅勤務や、複数の拠点での運営を考えている
- [ ] 初期の大きな投資を避けたい
- [ ] 新しい機能を継続的に使いたい
オンプレミス型が向いている可能性が高い
- [ ] 既存の設備がまだ十分に使え、保守の体制も整っている
- [ ] 自社の要件に合わせた細かな作り込みが必要
- [ ] 社内や業界のルールで、データを自社の管理下に置く必要がある
- [ ] 社内の仕組みと密接につながっていて、切り離すのが難しい
- [ ] 人数が長期にわたって安定している
どちらにも当てはまる項目がある場合は、重要度の高い項目を優先して判断します。また、一部の機能だけをクラウド型にする、拠点ごとに方式を分ける、といった組み合わせの形も考えられます。
方式別の向いている組織の例
| 組織の状況 | 検討の中心になりやすい方式 |
|---|---|
| 新しく窓口を立ち上げる小規模なチーム | クラウド型 |
| 繁忙期に人数が大きく増える窓口 | クラウド型 |
| 在宅のオペレーターを含めて運営したい窓口 | クラウド型 |
| 既存の設備が新しく、保守の体制が整っている大規模な窓口 | オンプレミス型の継続も選択肢 |
| データの保存場所に厳しい決まりがある窓口 | 要件を満たせるかを両方式で確認する |
あくまで傾向であり、最終的には自社の課題と条件に照らして判断します。
社内で合意をとるための説明
方式を決めるときには、経営層、情報システム、窓口の責任者、オペレーターなど、立場の違う人の合意が必要です。立場ごとに気にする点が違うため、説明の中心も変えると伝わりやすくなります。
| 立場 | 気にしやすい点 | 説明の中心 |
|---|---|---|
| 経営層 | 費用、リスク、事業の計画との合い方 | 数年分の費用の見積もり、緊急時の備え、拡大や在宅勤務への対応 |
| 情報システム | 安全管理、保守の負担、ほかの仕組みとのつながり | 提供元の安全管理の資料、保守の分担、連携の方法 |
| 窓口の責任者 | 対応の品質、移行の影響、状況の見えやすさ | 試験の結果、移行の計画、管理画面やレポート |
| オペレーター | 操作のしやすさ、慣れるまでの負担 | 試用の感想、練習の計画、切り替え直後の支え |
試験の結果や比較表など、判断の材料を共有しておくと、立場が違っても同じ情報をもとに話し合えます。
移行を進める手順
オンプレミス型からクラウド型へ移行する場合を例に、手順を紹介します。逆の方向や、製品の入れ替えでも、考え方は共通です。
ステップ1:今の設定を棚卸しする
今の仕組みで使っているメニュー、振り分けのルール、営業時間、内線の番号、ユーザー、録音の設定、ほかの仕組みとのつながりを、すべて書き出します。長く使っている仕組みでは、誰も把握していない設定が残っていることがあります。
ステップ2:見直す機会にする
棚卸しした設定を、そのまま新しい仕組みに移す必要はありません。使われていないメニュー、古い振り分けのルール、退職者のユーザーなどを整理し、移行を見直しの機会にします。
ステップ3:電話番号の扱いを決める
今の電話番号を使い続けるか、新しい番号にするかを決めます。今の番号を使い続ける場合は、手続きの方法と期間を、提供元や今の契約先に確かめます。番号を変える場合は、お客様への案内の計画を立てます。
ステップ4:並行して試す
いきなりすべてを切り替えず、一部のチームや一部の窓口で新しい仕組みを試します。試す期間は、古い仕組みも使える状態にしておきます。
ステップ5:切り替えて、古い仕組みを片付ける
試験で問題がなければ、全体を切り替えます。切り替えの後、古い仕組みに残っている録音や記録の扱い(移す、保管する、削除する)を決め、機器や契約を片付けます。
移行のつまずき
- 設定の漏れ:棚卸しが不十分で、特定の時間帯や特定の番号の設定が移されていなかった。
- ほかの仕組みとのつながりの漏れ:顧客の情報の画面と電話がつながらなくなった。
- 教育の不足:画面や操作が変わり、オペレーターが戸惑った。
- お客様への案内の不足:番号やメニューが変わったことを知らせていなかった。

組み合わせる形
クラウド型かオンプレミス型か、どちらか一方を選ばなければならないわけではありません。次のような組み合わせの形もあります。
段階的に移る
今の設備の保守の期限までは、オンプレミス型を使い続け、その間に一部の窓口からクラウド型を試していく形です。いきなりすべてを切り替えるより、リスクを抑えられます。
拠点や窓口ごとに分ける
本社の大きな窓口はオンプレミス型を使い続け、新しく立ち上げる小さな窓口や、在宅のチームはクラウド型を使う形です。ただし、二つの仕組みを並行して使う間は、管理の手間が増え、レポートを合わせて見るのが難しくなることがあります。
機能ごとに分ける
電話の基本の機能は今の設備を使い、通話の録音の分析や要約、複数の窓口をまとめる受信箱など、一部の機能だけをクラウドのサービスで補う形です。仕組み同士をつなげられるかどうかを、事前に確かめる必要があります。
通話の品質を確認する
方式にかかわらず、オペレーターとお客様にとって最も大切なのは、通話がきちんと聞こえることです。クラウド型では、インターネットの回線を通じて通話するため、回線の状態が品質に影響します。
品質に影響する要素
- 回線の速度と安定性:社内や自宅のインターネット回線が混み合うと、声が途切れたり遅れたりすることがあります。
- 社内のネットワーク:大きなファイルのやり取りや動画の視聴などで社内のネットワークが混み合うと、通話に影響することがあります。
- 端末とヘッドセット:パソコンの性能や、ヘッドセットの品質も、聞こえ方に影響します。
導入の前に試す
試験の段階で、実際に使う場所と回線、端末で通話を試し、次の点を確認します。
- 声が途切れたり、遅れたりしないか
- 混み合う時間帯でも、品質が保たれるか
- 周囲の雑音が、お客様の側にどれくらい聞こえるか
問題がある場合は、回線の見直し、通話を優先する社内のネットワークの設定、ヘッドセットの変更などを検討します。
オペレーターから見た違い
方式の違いは、管理者や情報システムの担当者だけでなく、毎日電話を受けるオペレーターにも影響します。
電話の受け方
オンプレミス型では、机の上の電話機で受けることが多く、クラウド型では、パソコンの画面とヘッドセットで受けることが多くなります。電話機に慣れたオペレーターにとって、画面での操作は最初は戸惑うかもしれません。逆に、画面で受けると、着信と同時にお客様の情報を表示したり、通話の記録を同じ画面で書いたりしやすくなる、という利点もあります。
画面の数
電話、顧客の情報、ナレッジ、対応の記録が別々の画面に分かれていると、オペレーターは画面を行き来しながら対応することになります。どちらの方式でも、仕組み同士のつながりによって、画面の行き来を減らせるかどうかが変わります。試用のときには、オペレーターの代表に、実際の電話の流れで画面を操作してもらいましょう。
慣れるまでの支え
方式を変えると、操作の手順も変わります。切り替えの前に練習の時間をとる、よくある操作の手引きを用意する、切り替えの直後は質問に答えられる人を近くに置く、といった支えを用意しておきましょう。
端末とヘッドセットの準備
クラウド型を使う場合は、パソコン、ヘッドセット、回線といった端末の準備も必要です。
- パソコン:ブラウザで電話を使う場合、提供元が推奨するブラウザと、その動作の条件を確認します。
- ヘッドセット:雑音を抑える機能のあるヘッドセットを使うと、周囲の音がお客様に聞こえにくくなります。オペレーターが長時間つけても疲れにくいものを選びます。
- 回線:社内と在宅のそれぞれで、通話に十分な回線を用意します。
- 予備:ヘッドセットの故障に備えて、予備を用意しておきます。
端末の準備は、切り替えの日までに全員分をそろえ、試験の電話で確認しておきます。
乗り換えのしやすさ
方式や製品を選ぶときには、将来、別の仕組みに乗り換える場合のことも考えておきます。
- データを書き出せるか:通話の記録、録音、設定などを、決まった形式で書き出せるか
- 電話番号を移せるか:別の仕組みに乗り換えるときに、番号を持っていけるか
- 契約の条件:最低の利用期間、解約の手続き、解約の後のデータの扱い
導入のときに乗り換えのことまで考えるのは気が早いと感じるかもしれませんが、データや番号を自社の財産として扱えるかどうかは、長く使ううえで大切な点です。
提供元や販売元に聞いておきたい質問
方式や製品を比べるとき、提供元や販売元に、次のような質問をしておくと、比較がしやすくなります。
導入
- 導入までにかかる期間の目安と、その間に自社で準備すること
- 今の電話番号を使い続けられるか、その手続きと期間
- 今の設定(メニュー、振り分けなど)を移す支援はあるか
拡張と縮小
- 人数を増やす・減らすときの手続きと、反映までの期間
- 最低の利用期間や、解約の条件
保守と障害
- 保守や問い合わせの対応の時間帯
- 障害のときの連絡の方法と、情報が公開される場所
- 機能の更新はどのように知らされるか
セキュリティとデータ
- 録音や記録の保存場所と保存期間、削除の方法
- 権限の設定とログインの方法
- 操作の記録が残るか
- データを書き出せるか
つながり
- 顧客の情報や対応の記録の仕組みとつなげられるか
- 外部の仕組みとつなぐためのAPIがあるか
答えを比較表に書き込み、同じ観点で比べましょう。
判断を見直す時期
一度方式を決めても、それで終わりではありません。次のような変化があったときは、今の方式が合っているかを見直しましょう。
- 設備の保守の期限や、契約の更新の時期が近づいたとき
- 窓口の人数や拠点が大きく変わったとき
- 在宅勤務の方針が変わったとき
- 新しい窓口(チャット、メールなど)を加えるとき
- 安全管理のルールや、社内の仕組みが変わったとき
- 通話の品質や、障害についての苦情が続いたとき
- 費用が当初の見積もりから大きく変わったとき
見直しのときは、この記事のチェックリストや比較表をもう一度使い、今の状況で答え直してみると、変えるべきかどうかを判断しやすくなります。
AI-SNS.IO Callについて
AI-SNS.IO Callは、ブラウザで使えるクラウド型の電話の仕組みです。日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。IVRと着信のルーティング、営業時間に合わせた切り替え、キュー、キューごとのボイスメール、IVRのメニューからの折り返しの依頼、名前で担当者を呼び出すディレクトリ、ブラウザのソフトフォン、AIによる通話の要約、設定した窓口をまとめる受信箱、REST API、レポートと分析、品質管理や要員管理の機能などを備えています。現在利用できる機能は機能一覧で、設定の手順は使い方ガイドで確認してください。通話の要約の使い方はAI通話要約の使い方で紹介しています。
よくある質問
クラウドPBXとは何ですか?
PBX(構内交換機)の機能を、自社で機器を持たずに、インターネット上のサービスとして利用するものです。外線の着信を内線に振り分ける、転送する、保留する、といった機能を、パソコンのブラウザやアプリ、対応した電話機から使います。
クラウド型とオンプレミス型、どちらが安いですか?
規模、期間、構成によって変わるため、一概には言えません。オンプレミス型は初期の費用が、クラウド型は継続の費用が中心になりやすいため、数年など一定の期間の合計で比べます。人数の増減や、保守にかかる社内の時間も含めて比べましょう。
クラウド型はセキュリティが心配です。
どちらの方式でも、適切に管理されていれば安全性を高められます。クラウド型の場合は、提供元が公開しているセキュリティの説明や利用規約を確かめ、データの保存場所、権限の設定、操作の記録などを確かめます。アカウントや端末の管理は、どちらの方式でも自社の責任です。
今の電話番号は使えますか?
サービスや今の契約によって異なります。使い続けられる場合も、手続きに一定の期間がかかることがあります。早めに提供元や今の契約先に確かめましょう。
通話の音質は、オンプレミス型と比べて悪くなりませんか?
クラウド型では、インターネットの回線の状態が品質に影響します。導入の前に、実際に使う場所、回線、端末で通話を試し、混み合う時間帯でも品質が保たれるかを確かめましょう。
障害が起きたらどうなりますか?
クラウド型で提供元の側に障害が起きた場合は、提供元の復旧を待つことになります。オンプレミス型では、自社や委託先が対応します。どちらの場合も、障害の連絡先、お客様への案内、代わりの窓口を決めておきましょう。
小さな会社でもクラウド型を使えますか?
使えます。機器を持たずに始められるため、少人数の窓口でも導入しやすいとされます。必要な機能と人数から始め、成長に合わせて広げていく使い方ができます。
オンプレミス型からの移行はどのくらい大変ですか?
今の設定の量、ほかの仕組みとのつながり、電話番号の扱いによって変わります。今の設定を棚卸しし、一部の窓口で試してから全体を切り替えると、リスクを抑えられます。
両方を組み合わせて使えますか?
段階的に移る、拠点や窓口ごとに分ける、機能ごとに分ける、といった組み合わせが考えられます。ただし、二つの仕組みを並行して使う間は、管理の手間が増えることに注意が必要です。
在宅勤務にはどちらが向いていますか?
クラウド型は、インターネットにつながる場所から使うことを前提にしているため、在宅勤務と組み合わせやすいとされます。オンプレミス型でも、外からつなぐ構成で対応できる場合があります。どちらの場合も、在宅勤務の情報管理のルールを決めておく必要があります。
方式を決める前に、何をしておくべきですか?
今の課題、これからの計画、社内の体制、社内のルール、今の契約の五つを整理しておきます。これらが整理できていれば、方式を比べるときの判断の基準がはっきりします。
まとめ
クラウド型とオンプレミス型は、どちらが優れているかではなく、自社の状況に合っているかで選びます。
- 導入までの期間:クラウド型は機器の設置が不要で始めやすいが、番号の手続きやつなぎ込みの期間も見込む
- 拡張と縮小:クラウド型は契約の変更で増減しやすく、オンプレミス型は機器の上限に注意が必要
- 保守:オンプレミス型は自社や委託先が担い、クラウド型は提供元が担う部分が多い
- セキュリティ:どちらでも「誰が何を守るか」を明確にし、アカウントや端末、記録の扱いは自社で管理する
- 在宅勤務:クラウド型は組み合わせやすいが、回線の品質と情報管理のルールが欠かせない
まずは、今の課題と、今の設備の契約や保守の期限を書き出すところから始めてみてください。クラウド型の電話の仕組みは、AI-SNS.IO Callで試せます。アカウント登録から始めてみましょう。着信の振り分けの考え方はACD(着信呼自動分配)とはで、窓口の指標はコールセンターのKPI一覧で紹介しています。



