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ACD(着信呼自動分配)とは|ルーティング方式と設計のコツ

AI-SNS.IO 編集部 · 公開

ACD(着信呼自動分配)とは|ルーティング方式と設計のコツ(AI-SNS.IO Call ブログ)

電話の窓口に何人かのオペレーターがいると、「かかってきた電話を、誰が受けるか」を決める必要があります。全員の電話を一斉に鳴らして、手の空いた人が取る。そんなやり方でも、電話が少ないうちは回ります。しかし、電話の数が増え、問い合わせの種類が増えてくると、特定の人に電話が偏る、詳しくない人が難しい問い合わせを受けてしまう、待っているお客様の順番が分からなくなる、といった問題が出てきます。

こうした問題を解決するのが、ACD(着信呼自動分配)です。ACDは、かかってきた電話を、決めたルールに従って自動でオペレーターに振り分ける仕組みです。誰も空いていないときは、電話を順番に並べて待ってもらい、空いた人から順に渡していきます。

この記事では、ACDによる着信のルーティングについて、仕組みの基本から、主なルーティング方式、キューの設計、スキルベースルーティング、待ち時間の扱い、設定した後の見直しまでを順に解説します。設計のときに使えるワークシートや、試験の電話のチェックリストも紹介します。

ACDとは

着信を自動で振り分ける仕組み

ACDは、Automatic Call Distributionの略で、日本語では「着信呼自動分配」と呼ばれます。電話の窓口にかかってきた電話を、あらかじめ決めたルールに従って、受けられるオペレーターに自動で振り分ける仕組みです。

ACDがない場合、電話は代表番号に設定された電話機を一斉に鳴らすか、決まった順番で鳴らすか、受付の担当者が手で転送することになります。ACDがあると、次のようなことが自動でできるようになります。

IVRとACDの関係

ACDとよく一緒に使われるのが、IVR(自動音声応答)です。IVRは、電話をかけてきた人に「〇〇の方は1を、△△の方は2を押してください」と案内し、ボタンの操作で用件を聞き分ける仕組みです。

役割を分けると、IVRは「用件を聞き分けて、どの窓口に回すかを決める」部分、ACDは「決まった窓口の中で、誰に渡すかを決める」部分です。例えば、IVRで「注文について」を選んだ電話は、注文の窓口のキューに入り、ACDがその窓口のオペレーターの中から受けられる人を選んで電話を渡します。

IVRのメニューの作り方はIVRのメニュー設計で詳しく紹介しています。

ACDを構成する要素

ACDの設定は、主に次の要素の組み合わせでできています。

要素役割
キュー電話を受ける窓口の単位。電話はキューに入り、順番を待つ
オペレーター(エージェント)キューに所属し、電話を受ける人
ルーティングのルールキューの中で、誰に電話を渡すかを決める規則
状態オペレーターが今、電話を受けられるかどうか(受付可、通話中、後処理中、休憩中など)
待ちの扱い待っている間の案内、待ち時間の上限、上限を超えたときの対応
記録電話の数、待ち時間、応答の割合、放棄の数など

この記事では、これらの要素を一つずつ取り上げ、どう設計すればよいかを考えていきます。

オペレーターの状態がACDの前提になる

ACDが電話を正しく振り分けられるのは、オペレーターの状態が正しく分かっているときだけです。例えば、席を外しているのに「受付可」のままになっていると、ACDはその人に電話を渡してしまい、誰も出ないまま呼び出しが続きます。逆に、電話を受けられるのに「休憩中」のままになっていると、お客様の待ち時間が無駄に延びます。

そのため、ACDを使うときは、オペレーターが自分の状態を正しく切り替える習慣が欠かせません。席を離れるときは休憩や離席に切り替える、戻ったら受付可に戻す、通話の後に記録を書く時間が必要なら後処理の状態を使う、といったルールを決めて、チームで守ります。

一斉に鳴らす方式との違い

小さな窓口では、着信のたびに全員の電話を一斉に鳴らす方式がよく使われます。この方式は設定が簡単で、誰かが取ればよいので応答も早くなりがちです。一方で、次のような問題が出やすくなります。

ACDでは、ルールに従って一人ずつ電話を渡すため、こうした偏りや見送りを減らせます。ただし、一斉に鳴らす方式にも「早く出られる」という利点があるため、小さな窓口では、あえて一斉に鳴らす方式を選ぶこともあります。どちらが合うかは、窓口の人数や電話の数によって変わります。

IVRは用件を聞き分けて窓口を決め、ACDは窓口の中で誰に渡すかを決める
図1:IVRとACDの役割

主なルーティング方式

キューの中で、どのオペレーターに電話を渡すかを決める規則を、ルーティング方式と呼びます。製品によって呼び方や選べる方式は違いますが、代表的なものを紹介します。

順番に回す方式(ラウンドロビン)

オペレーターに決まった順番で電話を渡していく方式です。Aさん、Bさん、Cさんの順に渡し、Cさんの次はまたAさんに戻ります。電話を受ける回数が均等になりやすく、特定の人に偏りにくいのが特徴です。

一方で、通話の長さは問い合わせごとに違うため、回数が均等でも、通話の時間の合計は人によって差が出ることがあります。また、順番が来た人がちょうど別の作業をしているときに、電話が渡されることもあります。

一番長く待っている人に渡す方式

最後に電話を終えてから、一番長く時間が経っているオペレーターに電話を渡す方式です。「一番手が空いている人」に渡すので、作業の量が平準化されやすくなります。多くの窓口で、基本の方式として使われています。

決まった順番で優先する方式

いつも決まった順番でオペレーターを探し、最初に空いている人に電話を渡す方式です。例えば、「まずAさん、Aさんが通話中ならBさん、Bさんも通話中ならCさん」という順番です。

特定の人に優先して電話を受けてもらいたいとき、例えば「ベテランに先に回し、手が回らないときだけ新人に回す」という使い方ができます。ただし、順番の最初の人に電話が集中するため、負担の偏りに注意が必要です。

一斉に鳴らす方式

キューに所属する、受付可のオペレーター全員を同時に呼び出し、最初に出た人が電話を受ける方式です。応答は早くなりやすいものの、前の章で触れたように、電話を取る人が偏りやすくなります。

受けた件数が少ない人に渡す方式

その日やその時間帯に受けた電話の件数が一番少ない人に電話を渡す方式です。件数を均等にしたいときに使います。

方式の比べ方

方式向いている場面注意したい点
順番に回す件数を均等にしたい、同じくらいの経験の人がそろっている通話の長さの差で、負担に差が出ることがある
一番長く待っている人作業の量を平準化したい後処理の時間をどう扱うかを決めておく
決まった順番で優先特定の人に先に受けてほしい順番の最初の人に負担が集中する
一斉に鳴らす人数が少なく、とにかく早く出たい取る人が偏る、全員の作業が止まる
件数が少ない人件数を均等にしたい途中から入った人に電話が集中することがある

どの方式が選べるか、どう呼ばれているかは製品によって違います。使っている、または検討している仕組みの説明書で確認してください。

方式を選ぶときに考えること

方式を選ぶときは、「何を公平にしたいか」を最初に決めると考えやすくなります。

迷ったときは、まず「一番長く待っている人に渡す方式」で始め、偏りや待ち時間の様子を見ながら調整するのが無難です。

ルーティング方式の例:ある窓口で考える

説明のための架空の例で考えてみます。5人のオペレーターがいる通販の問い合わせ窓口で、電話の多くは「注文の状況の確認」で、通話は短めです。一部に「返品や交換の相談」があり、こちらは通話が長くなりがちです。

この窓口で順番に回す方式を使うと、件数は均等になりますが、たまたま返品の相談が続いた人は、通話の時間の合計が長くなり、休む間がなくなります。一番長く待っている人に渡す方式に変えると、長い通話を終えたばかりの人には次の電話が回りにくくなり、作業の時間が平準化されます。

さらに、返品や交換の相談をIVRで分けて、返品に詳しい2人が先に受けるようにすると、長い通話を得意な人がまとめて受けられるようになります。このように、ルーティング方式とキューの分け方を組み合わせて、窓口の実情に合わせていきます。

キューの設計

キューとは

キューは、電話を受ける窓口の単位です。かかってきた電話は、IVRや番号のルールによってどれかのキューに入り、そのキューに所属するオペレーターが受けられるようになるまで、順番に並んで待ちます。

キューをどう分けるかは、ACDの設計の中でも特に大切な部分です。分け方によって、お客様の待ち時間、オペレーターの負担、管理者が見られる数字が大きく変わります。

キューを分ける軸

キューを分けるときの軸には、次のようなものがあります。

分ける軸例
問い合わせの種類注文、配送、返品、請求、技術的な相談
お客様の種類個人のお客様、法人のお客様、取引先
言語日本語の窓口、英語の窓口
商品やサービス商品Aの窓口、商品Bの窓口
対応の段階一次の受付、専門の担当への引き継ぎ
時間帯営業時間内の窓口、時間外の受付

一つの軸だけで分けることもあれば、複数の軸を組み合わせることもあります。

キューを細かく分けすぎない

キューを細かく分けると、お客様の用件に合った人が受けられるようになる一方で、問題も出てきます。

一般に、同じ人数なら、大きなキューにまとめたほうが待ち時間は短くなりやすいとされます。複数のキューに分けると、空いている人がいても、別のキューの電話は受けられないためです。キューを分けるのは、「分けないと対応の質が保てない」理由がある場合に限るのがよいでしょう。

一つのオペレーターが複数のキューに所属する

キューを分けたうえで、一人のオペレーターを複数のキューに所属させる方法もあります。例えば、注文と配送の両方に詳しい人は、両方のキューに所属させておけば、どちらの電話も受けられます。こうすると、キューを分けた利点を保ちつつ、空いている人がいるのに電話を受けられない、という問題を減らせます。

複数のキューに所属する人には、どちらのキューの電話を先に受けるかという優先の順番を決めておくことも大切です。次の章で紹介するスキルベースルーティングは、この考え方を発展させたものです。

キューの設計ワークシート

キューを設計するときに、次の表を埋めてみてください。キューごとに一行ずつ書き出します。

項目書き込む内容
キューの名前例:注文の窓口
受ける電話どのIVRのメニュー、どの番号からの電話が入るか
所属するオペレーター誰が受けるか。複数のキューに所属する人も書く
ルーティング方式どの方式で電話を渡すか
営業時間いつ電話を受けるか。時間外の電話をどうするか
待ちの上限何分待ったら、別の対応に切り替えるか
上限を超えたときボイスメール、折り返しの依頼、別のキューへの転送など
待っている間の案内どんな案内や音楽を流すか
目標応答の割合、待ち時間などの目標

書き出してみると、所属する人が少なすぎるキューや、上限を超えたときの対応が決まっていないキューが見つかることがあります。

キューの設計の例

説明のための架空の例として、10人ほどのオペレーターがいる、家電の販売とサポートの窓口のキューを考えてみます。

注文と配送のキューに全員が所属しているのは、この窓口で一番多い問い合わせだからです。修理と故障のキューの人は、修理の電話を先に受け、修理の電話がないときに注文と配送の電話を受けます。

スキルベースルーティング

スキルで電話を振り分ける考え方

スキルベースルーティングは、オペレーターごとに「スキル」を登録し、電話に必要なスキルを持った人に優先して振り分ける方式です。スキルは、例えば「英語での対応」「商品Aの知識」「法人のお客様の対応」「請求の手続き」のように、対応に必要な知識や能力を表します。

キューで分ける方法は「どの窓口で受けるか」を決めるのに対し、スキルベースルーティングは「その電話に一番合う人は誰か」を考えて振り分けます。キューの数を増やさずに、用件に合った人に電話を回せるのが利点です。

スキルの段階

製品によっては、スキルに段階をつけられるものがあります。例えば、英語の対応のスキルに「1:簡単なやりとりができる」「2:一般的な問い合わせに対応できる」「3:複雑な相談にも対応できる」と段階をつけ、まず段階の高い人に回し、空いていなければ段階の低い人に回す、という使い方です。

段階をつけると、得意な人に先に回しつつ、得意な人が全員ふさがっているときは、ある程度できる人が受けられるようになります。

スキルの登録の例

説明のための架空の例として、ソフトウェアのサポート窓口でのスキルの登録を示します。

オペレーター製品A製品B英語法人の契約
Aさん31-2
Bさん232-
Cさん123-
Dさん22-3

数字はスキルの段階で、「-」はスキルを持っていないことを表します。製品Aの電話は、まずAさんに、Aさんが通話中ならBさんかDさんに回ります。英語で製品Bの相談があった場合は、英語と製品Bの両方のスキルを持つBさんかCさんに回ります。

スキルベースルーティングの注意点

スキルベースルーティングは便利な一方で、設計を誤ると、かえって待ち時間が延びることがあります。

スキルを広げていく

スキルベースルーティングを使うと、「誰がどのスキルを持っているか」が一覧で見えるようになります。この一覧は、研修の計画にも役立ちます。例えば、英語のスキルを持つ人が少なく、英語の電話の待ち時間が長くなっているなら、英語の対応ができる人を増やす研修を考えるきっかけになります。

スキルの一覧を定期的に見直し、特定のスキルを持つ人が一人だけ、という状態をなくしていくと、その人が休んだときにも窓口が回りやすくなります。

小さな窓口ではどうするか

数人の窓口では、スキルベースルーティングまでは必要ないことが多いでしょう。その場合は、キューを少しだけ分け、決まった順番で優先する方式を組み合わせることで、似たような効果を得られます。例えば、「技術の相談」のキューでは、技術に詳しい人を順番の最初に置き、ほかの人をその後ろに置きます。

待ち時間の扱い

待っている間にお客様が感じること

誰も空いていないとき、電話はキューに入って順番を待ちます。待っている間、お客様には何も見えません。どのくらい待つのか、本当につながるのか、このまま待つべきかどうかが分からないまま、保留の音楽を聞き続けることになります。

待ち時間の長さそのものだけでなく、「待っている間に何が起きているか分からない」ことが、お客様の不満につながりやすくなります。待ち時間の扱いを設計するときは、待ち時間を短くする工夫と、待っている間の不安を減らす工夫の両方を考えます。

待っている間の案内

待っている間に流す案内には、次のようなものがあります。

案内は、短く、繰り返しても嫌にならない内容にします。同じ案内を何度も聞かされると、かえって不満が増えることがあります。定期的な案内の間隔は、長すぎず短すぎない程度に調整しましょう。

待ち時間の上限を決める

キューごとに、待ち時間の上限を決めておきます。上限を超えたら、待ち続けてもらうのではなく、別の対応に切り替えます。

上限を超えたときの対応向いている場面
ボイスメールに切り替える用件を残してもらい、後で折り返せばよい
折り返しの依頼を受け付ける電話番号を残してもらい、順番に折り返す
別のキューに回すほかの窓口でも対応できる
案内して終える混み合う時間を伝え、別の時間にかけ直してもらう

上限の長さは、問い合わせの内容や、お客様がどのくらい待てるかによって変わります。急ぎの問い合わせが多い窓口では短めに、じっくり相談したい問い合わせが多い窓口では長めにする、といった調整が考えられます。

ボイスメールと折り返しの設計はIVRの折り返しとボイスメールで詳しく紹介しています。

待っている電話を途中で抜け出せるようにする

待っている間に、ボタンを押してボイスメールや折り返しの依頼に切り替えられるようにしておく方法もあります。例えば、「このままお待ちいただくか、折り返しをご希望の方は1を押してください」と案内します。お客様が自分で選べるので、急いでいない人は待たずに済み、キューの電話の数も減らせます。

応答の目標を決める

待ち時間の扱いを考えるときは、窓口としての目標を決めておくと判断しやすくなります。よく使われる考え方に、「決めた秒数以内に応答した電話の割合」を目標にするものがあります。例えば「〇秒以内に〇割の電話に応答する」という形です。

目標の数字は、業種や窓口によって大きく違い、決まった正解はありません。今の数字を測るところから始め、お客様の声や、無理のない人数で達成できる水準かどうかを考えて決めましょう。

待ち時間に関連する指標には、次のようなものがあります。

指標意味
平均応答時間電話がキューに入ってから、オペレーターが出るまでの平均の時間
応答の割合決めた秒数以内に応答した電話の割合
放棄の割合お客様が待ちきれずに切った電話の割合
最も長い待ち時間その時間帯で、最も長く待たせた時間

指標の詳しい意味と使い方はコールセンターのKPI一覧で紹介しています。

混み合う時間を減らす工夫

待ち時間を短くするには、人数を増やすだけでなく、電話そのものを減らしたり、ずらしたりする工夫もあります。

オペレーターの状態と後処理の設計

状態の種類を決める

前に触れたように、ACDはオペレーターの状態をもとに電話を渡します。製品によって選べる状態は違いますが、よく使われるのは次のような状態です。

状態意味ACDの扱い
受付可電話を受けられる電話を渡す
通話中電話で話している電話を渡さない
後処理中通話の記録や手続きをしている電話を渡さない
休憩・離席席を外している電話を渡さない
ほかの作業メールの返信や研修など電話を渡さない

状態の種類が多すぎると、オペレーターが切り替えに迷い、正しく使われなくなります。窓口で本当に区別したい状態だけに絞りましょう。

後処理の時間をどう扱うか

通話が終わった後、オペレーターは対応の記録を書いたり、手続きを進めたりします。この時間を後処理と呼びます。後処理の間に次の電話が渡されると、記録が中途半端になったり、手続きを忘れたりするおそれがあります。

後処理の扱いには、次のような考え方があります。

決まった時間で戻す方式は、受付可に戻し忘れることがない一方で、後処理が長くかかる電話では時間が足りなくなります。自分で戻す方式は柔軟ですが、戻し忘れや、後処理が長くなりすぎることがあります。窓口の問い合わせの内容に合わせて選びましょう。

後処理を短くする工夫

後処理の時間が長いと、その分だけ電話を受けられる人が減り、お客様の待ち時間が延びます。後処理を短くするには、次のような工夫があります。

通話の要約を使った後処理の短縮はAI通話要約の使い方で紹介しています。

ACDを設定する手順

ここまでの内容をもとに、ACDを設定する手順をまとめます。

手順1:問い合わせの種類と量を把握する

まず、どんな問い合わせが、どのくらい、いつかかってくるかを把握します。過去の通話の記録や、オペレーターへの聞き取りをもとに、問い合わせの種類ごとの件数と、通話の長さの目安を書き出します。時間帯や曜日による違いも見ておきます。

手順2:キューを決める

問い合わせの種類と量をもとに、キューを決めます。前の章のワークシートを使い、キューごとに受ける電話、所属する人、営業時間を書き出します。分けすぎていないか、所属する人が少なすぎるキューがないかを確認します。

手順3:ルーティング方式とスキルを決める

キューごとに、ルーティング方式を決めます。スキルベースルーティングを使う場合は、オペレーターごとのスキルを登録します。

手順4:待ちの扱いを決める

キューごとに、待っている間の案内、待ち時間の上限、上限を超えたときの対応を決めます。営業時間外の扱いもここで決めます。

手順5:状態と後処理のルールを決める

オペレーターの状態の種類と、後処理の扱いを決めます。状態の切り替えのルールを、チームに説明します。

手順6:試験の電話で確認する

設定ができたら、実際に電話をかけて確かめます。次の章のチェックリストを使ってください。

手順7:始めて、見直す

運用を始めたら、数字とお客様の声を見ながら、設定を見直していきます。見直しの方法は後の章で紹介します。

把握、キュー、方式とスキル、待ちの扱い、状態、試験、見直しの七つの手順
図2:ACDを設定する手順

試験の電話のチェックリスト

設定を変えたら、本番で使う前に試験の電話で確認します。次の項目を一つずつ確かめましょう。

試験の電話は、複数のオペレーターに協力してもらい、状態を切り替えながら行うと、実際の運用に近い形で確認できます。

設定後の見直し

見直しに使う数字

ACDの設定は、一度決めたら終わりではありません。問い合わせの内容や量、オペレーターの人数やスキルは変わっていくため、定期的に見直す必要があります。見直しには、次のような数字を使います。

見る数字分かること
キューごとの電話の数どの窓口に電話が集まっているか
キューごとの平均応答時間どの窓口でお客様を待たせているか
キューごとの放棄の割合どの窓口で、お客様が待ちきれずに切っているか
時間帯ごとの電話の数いつ混み合うか
オペレーターごとの受けた件数と通話の時間負担に偏りがないか
後処理の時間後処理が長すぎないか
上限を超えて切り替わった電話の数ボイスメールや折り返しに回った電話がどのくらいあるか
転送の数最初のキューで解決できず、別のキューに回した電話がどのくらいあるか

よくある問題と見直しの例

数字を見ると、次のような問題が見つかることがあります。

特定のキューだけ待ち時間が長い

そのキューの電話の数に対して、所属する人が足りていない可能性があります。ほかのキューの人を、そのキューにも所属させる、混み合う時間帯だけ所属させる、といった見直しを考えます。キューの分け方そのものを見直し、ほかのキューとまとめることも選択肢です。

転送が多い

最初に入ったキューで解決できず、別のキューに回している電話が多い場合は、IVRのメニューが分かりにくく、お客様が違うメニューを選んでいる可能性があります。メニューの言葉を見直す、転送の多い組み合わせのキューをまとめる、といった対応を考えます。

特定の人に電話が偏っている

ルーティング方式が偏りやすいものになっている、またはその人だけ多くのキューに所属している可能性があります。方式を変える、所属を見直す、といった対応を考えます。

放棄の割合が高い時間帯がある

その時間帯の人数が足りていない可能性があります。シフトを見直す、その時間帯は折り返しの依頼を案内する、混み合う時間をホームページで案内する、といった対応を考えます。

後処理の時間が長い

記録の項目が多すぎる、手続きが複雑、といった原因が考えられます。記録の項目を見直す、通話の要約を使う、といった対応を考えます。

管理者がその場で見ること

数字の見直しとは別に、窓口が動いている最中にも、管理者は次のような点を見ておくと、問題に早く気づけます。

電話がたまり始めたら、休憩の時間をずらす、ほかの作業をしている人に電話を受けてもらう、ほかのキューの人に一時的に所属してもらう、といった対応をその場で行います。

その場で行った対応も、後で見直しの記録に残しておくと、同じ問題が繰り返し起きていないかを確認できます。

見直しの頻度

見直しの頻度の目安は次のとおりです。

見直しのたびに、何を変えたか、なぜ変えたかを記録しておくと、変えた後の数字の変化を確認しやすくなります。

見直しの記録の例

日付変えたこと理由確かめる数字
〇月〇日修理のキューに2人を追加で所属させた修理のキューの待ち時間が長かった修理のキューの平均応答時間
〇月〇日IVRのメニュー2の言葉を変えた配送のキューから注文のキューへの転送が多かった転送の数
〇月〇日待ち時間の上限を短くし、折り返しの依頼を案内するようにした夕方の放棄の割合が高かった夕方の放棄の割合、折り返しの件数

よくある設定の間違い

ACDの設定でよく見られる間違いを、確かめ方と一緒にまとめます。

間違い起きること確かめ方
誰も所属していないキューがある電話が誰にも渡されず、上限まで待たされるキューごとに所属する人の一覧を見る
営業時間の設定がキューごとにずれている一部のメニューだけ、時間外の案内にならない時間外に各メニューを選んで試す
上限を超えたときの対応が決まっていないお客様が延々と待たされる全員を休憩中にして試験の電話をかける
退職した人や異動した人が所属したまま誰も出ない呼び出しが続く所属する人の一覧を、人事の変更のたびに見直す
祝日の扱いが決まっていない休みの日なのに、営業時間内の案内が流れる祝日の設定を、年の初めにまとめて確かめる

祝日の日付は、内閣府の「国民の祝日」についてで確認できます。

在宅勤務とACD

オペレーターが在宅で働く場合も、クラウド型の仕組みなら、事務所と同じようにACDで電話を受けられることが多くなります。ただし、在宅ならではの注意点もあります。

在宅での窓口の運営は在宅コールセンターの始め方で詳しく紹介しています。

AI-SNS.IO Callについて

AI-SNS.IO Callは、ブラウザで使えるクラウド型の電話の仕組みです。日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。IVRと着信のルーティング、営業時間に合わせた切り替え、キュー、キューごとのボイスメール、IVRのメニューからの折り返しの依頼、名前で担当者を呼び出すディレクトリ、ブラウザのソフトフォン、AIによる通話の要約、設定した窓口をまとめる受信箱、REST API、レポートと分析、品質管理や要員管理の機能などを備えています。選べるルーティング方式など、現在利用できる機能は機能一覧で、設定の手順は使い方ガイドで確認してください。コールセンター全体の見直しの進め方はコンタクトセンターDXの進め方で紹介しています。

よくある質問

ACDとIVRは何が違いますか?

IVRは、自動音声でお客様の用件を聞き分け、どの窓口に回すかを決める仕組みです。ACDは、決まった窓口の中で、どのオペレーターに電話を渡すかを決める仕組みです。多くの窓口では、IVRで用件を聞き分けた後、ACDでオペレーターに振り分ける、という形で組み合わせて使います。日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。

小さな窓口でもACDは必要ですか?

数人の窓口では、一斉に鳴らす方式でも十分に回ることがあります。ただし、特定の人に電話が偏る、誰が取るか曖昧で見送りが起きる、といった問題が出てきたら、ACDで順番に振り分けることを考えるとよいでしょう。

どのルーティング方式から始めればよいですか?

迷ったときは、一番長く待っている人に渡す方式から始めるのが無難です。作業の量が平準化されやすいためです。運用を始めた後、偏りや待ち時間の様子を見ながら調整しましょう。

キューはいくつに分ければよいですか?

決まった数はありません。同じ人数なら、大きなキューにまとめたほうが待ち時間は短くなりやすいため、分けないと対応の質が保てない理由がある場合だけ分けるのがよいでしょう。一人のオペレーターを複数のキューに所属させる方法も組み合わせられます。

スキルベースルーティングは必ず使うべきですか?

必ずしも必要ではありません。問い合わせの種類が多く、対応できる人が限られている窓口では役立ちますが、数人の窓口では、キューを少し分けて順番を工夫するだけで十分なことも多くあります。

待ち時間の上限はどのくらいにすればよいですか?

問い合わせの内容や、お客様がどのくらい待てるかによって変わり、決まった正解はありません。今の待ち時間と放棄の様子を測り、お客様が切ってしまう前に、ボイスメールや折り返しに切り替えられるよう調整しましょう。

応答の目標はどう決めればよいですか?

まず今の数字を測ります。そのうえで、お客様の声と、無理のない人数で達成できる水準かどうかを考えて決めます。ほかの会社の数字をそのまま目標にするより、自社の数字を少しずつ良くしていくほうが現実的です。

オペレーターが受付可に戻し忘れるのを防ぐには?

後処理を決まった時間で自動的に終える設定にする、後処理や休憩が一定の時間を超えたら管理者に分かるようにする、といった方法があります。あわせて、状態の切り替えのルールをチームで共有しておきましょう。

特定の人に電話が偏るのはなぜですか?

決まった順番で優先する方式や、一斉に鳴らす方式では、特定の人に電話が集まりやすくなります。また、その人だけ多くのキューに所属していることも原因になります。オペレーターごとの件数と通話の時間を見て、方式や所属を見直しましょう。

在宅のオペレーターにもACDで電話を回せますか?

クラウド型の仕組みであれば、在宅のオペレーターにも事務所と同じように電話を回せることが多くあります。在宅では、状態の切り替え、回線と端末、相談のしかたについて、事務所とは別のルールを用意しておきましょう。

ACDの設定はどのくらいの頻度で見直すべきですか?

毎日の確認、毎週の小さな調整、毎月の全体の見直しを目安にし、新しい商品を始めた、人数が大きく変わった、といった大きな変化があったときは、その都度見直します。

まとめ

ACD(着信呼自動分配)は、かかってきた電話を、決めたルールに従ってオペレーターに自動で振り分ける仕組みです。

まずは、今の問い合わせの種類と量を書き出し、キューの設計ワークシートを埋めるところから始めてみてください。キューとルーティングの設定は、AI-SNS.IO Callで試せます。アカウント登録から始めてみましょう。

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