オムニチャネル対応|電話とLINEを一つに
お客様が会社に問い合わせる方法は、電話だけではなくなりました。メール、問い合わせのフォーム、チャット、LINEなどのメッセージのアプリ、SNSのダイレクトメッセージ。窓口が増えるのは、お客様にとっては便利なことです。自分に合った方法で、好きな時間に連絡できるからです。
一方で、受ける側の会社では、困ったことが起きがちです。電話は電話の担当、メールはメールの担当と分かれていて、同じお客様がメールを送った後に電話をかけてきても、電話の担当はメールの内容を知らない。LINEで届いた問い合わせが、誰にも気づかれないまま数日放置される。お客様から見ると、「前にも説明したのに」「返事がない」という不満につながります。
こうした問題を解決する考え方が、オムニチャネルの問い合わせ対応です。窓口がいくつあっても、お客様とのやりとりを一つにつなげて扱い、どの窓口から連絡しても、話が途切れないようにします。
この記事では、オムニチャネルの問い合わせ対応について、基本の考え方から、窓口が分かれることで起きる問題、受信箱をまとめる方法、顧客の履歴をつなぐ方法、担当とステータスの管理、段階的な進め方までを解説します。窓口の棚卸しのシートや、ステータスの決め方の例も紹介します。
オムニチャネルの問い合わせ対応とは
マルチチャネルとの違い
窓口がいくつもあることを、マルチチャネルと呼びます。電話、メール、チャットを用意していれば、マルチチャネルです。ただし、マルチチャネルでは、窓口ごとに仕組みも担当も分かれていて、やりとりの記録もばらばらのことがよくあります。
オムニチャネルは、窓口がいくつもあることに加えて、それらがつながっている状態を指します。どの窓口から届いた問い合わせも、同じ場所で見られ、同じお客様の過去のやりとりを確認できる。お客様がメールで始めた話を、電話で続けても、担当者は話の流れを知っている。こうした状態を目指すのが、オムニチャネルの考え方です。
| 観点 | マルチチャネル | オムニチャネル |
|---|---|---|
| 窓口の数 | 複数ある | 複数ある |
| 受ける場所 | 窓口ごとに別々の仕組み | まとめて見られる |
| やりとりの記録 | 窓口ごとにばらばら | お客様ごとにつながっている |
| 担当 | 窓口ごとに分かれる | 窓口をまたいで担当できる |
| お客様の体験 | 窓口を変えると説明し直し | どの窓口でも話が続く |
窓口を増やすことが目的ではない
オムニチャネルというと、窓口を増やすことだと思われがちですが、目的は窓口の数ではありません。大切なのは、お客様がどの窓口を使っても、同じように問題を解決できることです。
窓口を増やしたのに、それぞれの窓口の対応がばらばらで、返事が遅れたり、内容が食い違ったりすれば、かえってお客様の不満が増えます。窓口を増やす前に、今ある窓口がつながっているかを見直すことが先です。
オムニチャネルで良くなること
窓口をつなげると、次のようなことが良くなります。
- お客様が説明し直さなくてよい:前のやりとりを担当者が確かめられるため、同じ説明を繰り返してもらわずに済みます。
- 返事の漏れが減る:すべての窓口の問い合わせが一つの場所に集まるため、気づかれずに放置される問い合わせが減ります。
- 担当の偏りが減る:電話が混んでいるときはメールの担当が電話を手伝う、といった調整がしやすくなります。
- 全体の状況が見える:どの窓口に、どんな問い合わせが、どのくらい来ているかを、まとめて見られます。
- 回答がそろう:同じ質問に、窓口によって違う答えをしてしまうことが減ります。
オムニチャネルに向いている会社
どんな会社でも、窓口をつなげることには意味があります。特に、次のような会社では効果が大きくなりやすいでしょう。
- 電話とメールなど、複数の窓口で問い合わせを受けていて、同じお客様が複数の窓口を使うことがある
- 窓口ごとに担当が分かれていて、担当どうしの情報の共有に手間がかかっている
- 問い合わせの返事の漏れや遅れが起きている
- 問い合わせの数が増えて、担当の負担の偏りが目立ってきた

窓口が分かれる問題
よくある困りごと
窓口がつながっていないと、次のような困りごとが起きます。説明のための架空の例で見てみます。
あるお客様が、商品の不具合について、問い合わせのフォームから連絡しました。フォームの担当は、確認のためにいくつか質問を返信しました。お客様は返信を待つ間に、急いでいたので電話もかけました。電話の担当は、フォームのやりとりを知らないため、一から状況を聞き直しました。その後、フォームの担当が、電話で解決したことを知らずに、再度メールを送りました。お客様は、二つの窓口から別々の連絡を受け、「この会社は中で話が通じていない」と感じました。
この例では、どの担当も、自分の窓口の中では正しく対応しています。問題は、窓口どうしがつながっていないことです。
窓口が分かれることで起きる問題の一覧
| 問題 | 起きること |
|---|---|
| 説明のし直し | お客様が窓口を変えるたびに、同じ説明を繰り返す |
| 対応の重なり | 同じ問い合わせに、複数の担当が別々に対応する |
| 返事の漏れ | 担当が決まっていない窓口の問い合わせが放置される |
| 回答の食い違い | 窓口によって、違う答えをしてしまう |
| 状況が見えない | どの窓口に、どのくらいの問い合わせが来ているか分からない |
| 担当の偏り | 混んでいる窓口と空いている窓口の差が大きいのに、調整できない |
原因は仕組みと運用の両方にある
窓口が分かれる原因は、仕組みだけではありません。
- 仕組みの原因:電話、メール、チャットがそれぞれ別の仕組みで動いていて、記録がつながっていない
- 運用の原因:窓口ごとに担当とルールが決まっていて、ほかの窓口の状況を確認する習慣がない
- 組織の原因:窓口ごとに管理する部署が違い、まとめて見る人がいない
仕組みをまとめても、運用と組織が変わらなければ、窓口は分かれたままです。逆に、仕組みがすぐにまとめられなくても、運用の工夫で改善できることもあります。
今の窓口を棚卸しする
オムニチャネルに取り組む最初の一歩は、今の窓口の棚卸しです。次の表を、窓口ごとに埋めてみてください。
| 項目 | 書き込む内容 |
|---|---|
| 窓口 | 電話、メール、フォーム、チャット、LINE、SNSなど |
| 受ける仕組み | どの仕組みで受けているか |
| 担当 | 誰が受けているか |
| 受付の時間 | いつ受けているか。時間外はどうしているか |
| 件数の目安 | どのくらいの問い合わせが来ているか(分かる範囲で) |
| 返事の目安 | どのくらいで返事をしているか |
| 記録の場所 | やりとりの記録がどこに残るか |
| ほかの窓口とのつながり | ほかの窓口のやりとりを確認できるか |
棚卸しをすると、担当が決まっていない窓口や、記録が残っていない窓口が見つかることがあります。そうした窓口から手当てしていきます。
受信箱をまとめる
一つの受信箱とは
オムニチャネルの土台になるのが、すべての窓口の問い合わせを一つの場所で見られる受信箱です。共有の受信箱、統合の受信箱などとも呼ばれます。電話の記録、メール、チャット、メッセージのアプリの問い合わせが、一つの一覧に並び、担当者はそこから問い合わせを選んで対応します。
一つの受信箱があると、担当者はいくつもの画面を行き来する必要がなくなります。管理者は、まだ誰も対応していない問い合わせが、どの窓口にどのくらいあるかを、一目で確認できます。
受信箱に入れるもの
受信箱にどの窓口をつなげられるかは、使う仕組みによって違います。つなげる窓口を決めるときは、次の点を考えます。
- 件数の多い窓口から:問い合わせが多い窓口ほど、まとめる効果が大きくなります。
- 漏れが起きている窓口から:担当が決まっていない、確かめる習慣がない窓口は、まとめることで漏れを防げます。
- 電話の扱い:電話は、通話そのものを受信箱に入れるというより、通話の記録や要約、ボイスメール、折り返しの依頼などを、一つのやりとりとして並べる形が多くなります。
受信箱の並べ方と絞り込み
すべての問い合わせが一つの一覧に並ぶと、件数が多い場合、かえって見にくくなります。次のような絞り込みや並べ方を用意しておきます。
| 絞り込み・並べ方 | 使う場面 |
|---|---|
| まだ担当が決まっていないもの | 新しい問い合わせを振り分けるとき |
| 自分が担当のもの | 自分の対応を進めるとき |
| ステータスごと | 返事待ち、お客様の返事待ち、などで分けて見るとき |
| 窓口ごと | 特定の窓口の様子を確認するとき |
| 届いてからの時間が長い順 | 返事が遅れているものを先に片付けるとき |
| 問い合わせの種類ごと | 専門の担当に回すとき |
振り分けのルール
受信箱に届いた問い合わせを、誰が受け持つかを決めるルールも必要です。
- 手で振り分ける:管理者や当番の担当者が、一覧を見て担当を決める。件数が少ないうちは、この方法で十分です。
- 自分で取る:担当者が一覧から自分で問い合わせを選んで受け持つ。取り合いや、取り残しが起きないよう、取る順番のルールを決めておきます。
- ルールで振り分ける:問い合わせの種類や窓口、キーワードなどのルールで、自動で担当やチームを決める。使える機能は仕組みによって違います。
どの方法でも、「誰の担当でもない問い合わせ」が残らないように、毎日の確認の時間を決めておきます。
返事の目安を窓口ごとに決める
窓口によって、お客様が期待する返事の速さは違います。電話はその場で、チャットは数分以内、メールやフォームは営業日の内に、といった具合です。窓口ごとに返事の目安を決め、受信箱で目安を過ぎそうな問い合わせが分かるようにしておくと、遅れを防げます。
| 窓口 | 返事の目安の考え方 |
|---|---|
| 電話 | その場で対応。出られなかった電話は、折り返しの目安を決める |
| チャット | お客様が画面の前で待っているため、早めの返事が求められる |
| メッセージのアプリ | チャットほどではないが、早めの返事が期待されやすい |
| メール・フォーム | 営業日の内など、目安を決めて案内しておく |
| SNS | 公開の場でのやりとりは、ほかの人の目にも触れるため、慎重さと早さの両方が必要 |
目安は、お客様にも案内しておくと、返事を待つ間の不安が減ります。例えば、フォームの送信後の画面や自動の返信のメールで、「〇営業日以内にご連絡します」と伝えます。
顧客履歴をつなぐ
お客様ごとにやりとりをまとめる
受信箱をまとめるだけでは、オムニチャネルは完成しません。同じお客様が、別の窓口から連絡してきたときに、そのお客様の過去のやりとりをまとめて見られることが大切です。これを顧客の履歴と呼びます。
顧客の履歴があると、担当者は、問い合わせを受けた時点で、次のことを確認できます。
- このお客様は、以前にも問い合わせたことがあるか
- 前の問い合わせは何で、解決しているか
- 今、ほかの担当が対応中の問い合わせはないか
- 前回、どんな約束をしたか(折り返しの予定、送る予定の書類など)
同じお客様だと分かる手がかり
窓口が違うと、お客様を見分ける手がかりも違います。電話なら電話番号、メールならメールのアドレス、メッセージのアプリならアプリの上のアカウントです。同じお客様でも、窓口ごとに手がかりが違うため、何もしなければ別の人として記録されてしまいます。
つなげる方法には、次のようなものがあります。
- お客様の情報に複数の手がかりを登録する:一人のお客様の情報に、電話番号、メールのアドレス、アカウントなどをまとめて登録する
- 問い合わせの中で確認する:電話で「以前メールでお問い合わせいただきましたか」と聞き、該当する履歴を結びつける
- 会員の番号や注文の番号を使う:会員の番号や注文の番号を聞き、その番号で履歴をまとめる
自動でまとめる機能があるかどうかは、使う仕組みによって違います。自動でまとめられない場合でも、担当者が手で結びつける運用で、履歴をつなげることはできます。
履歴に残すこと
履歴に残す内容は、次の担当者が読んで状況が分かるように書きます。
| 残すこと | 例 |
|---|---|
| 用件 | 商品の不具合の相談 |
| 確かめたこと | 購入の時期、症状、試してもらったこと |
| 案内したこと | 交換の手続きの方法を案内した |
| 約束したこと | 交換の品を送る。届く日の目安を伝えた |
| 次にやること | 発送の手配を確認し、お客様に連絡する |
| 状態 | 対応中、お客様の返事待ち、完了など |
電話の場合は、通話の要約の仕組みを使うと、履歴を残す手間を減らせます。通話の要約は、担当者が確かめて直してから残すようにしましょう。
引き継ぎのメモのひな形
担当が不在のときや、担当を変えるときに残すメモは、形を決めておくと、書く人も読む人も迷いません。
【用件】請求の内容についての質問(〇月分)【これまでの経緯】フォームで質問を受け、明細の確認のための質問をメールで送った。お客様から電話で返事があった【確かめたこと】明細の中の〇〇の項目についての質問。契約の内容は確かめ済み【約束したこと】本日中に、項目の説明をメールで送る【次にやること】説明のメールを送り、ステータスを「お客様の返事待ち」にする
短くても、この形で残っていれば、次の担当は履歴をすべて読み直さずに、すぐに対応を続けられます。
個人の情報の扱い
顧客の履歴には、名前、連絡先、問い合わせの内容など、個人の情報が多く含まれます。窓口をつなげると、多くの担当者が多くの情報を見られるようになるため、誰がどこまで見られるか、どのくらいの期間残すかを、会社のルールで決めておきます。個人の情報の扱いについては、個人情報保護委員会のウェブサイトで法律やガイドラインの内容を確認できます。この記事の内容は一般的な情報の紹介であり、法的助言ではありません。自社に当てはまるルールは、専門家や社内の担当部署に確認してください。
自動の返信で伝えること
メールやフォーム、メッセージのアプリで問い合わせを受けたときの自動の返信には、次のことを入れておくと、お客様が安心して待てます。
- 問い合わせを受け付けたこと
- 返事の目安(〇営業日以内など)
- 受付の時間と、休みの日
- 急ぎの場合の連絡先(電話の番号と受付の時間など)
- 同じ内容をほかの窓口から送り直さなくてよいこと
- 返事が届かない場合の確認方法(迷惑メールのフォルダを確認してほしい、など)
最後の一文があると、返事を待ちきれずに別の窓口から同じ問い合わせが届く、といった重なりを減らせます。
自動の返信の文は、窓口ごとに用意しつつ、返事の目安や受付の時間が変わったときに、すべての窓口の文をまとめて直せるよう、一覧で管理しておきましょう。
担当とステータスの管理
なぜ担当とステータスが必要か
窓口をまとめると、一つの受信箱に、多くの問い合わせが集まります。その中で、どの問い合わせを誰が受け持っているか、どこまで進んでいるかが分からなければ、対応の重なりや漏れが起きます。そこで、問い合わせごとに担当とステータス(進み具合)を管理します。
ステータスの決め方の例
ステータスは、少なすぎると進み具合が分からず、多すぎると担当者が使い分けに迷います。次の例を土台に、窓口に合わせて調整してください。
| ステータス | 意味 | 次に動く人 |
|---|---|---|
| 新規 | 届いたばかりで、担当が決まっていない | 振り分ける人 |
| 対応中 | 担当が決まり、対応を進めている | 担当者 |
| お客様の返事待ち | お客様に質問や案内を送り、返事を待っている | お客様 |
| 社内の確認待ち | ほかの部署に確認を頼んでいる | ほかの部署 |
| 完了 | 解決した | なし |
「お客様の返事待ち」と「社内の確認待ち」を分けておくと、自社の側で止まっている問い合わせを見つけやすくなります。
担当の決め方のルール
- 一つの問い合わせに一人の担当:担当が二人以上いると、お互いが相手の対応を待って、止まってしまうことがあります。担当は一人に決め、手伝ってもらう場合も、担当は変えずに記録を残します。
- 窓口をまたいでも同じ担当:お客様が別の窓口から連絡してきたときも、進行中の問い合わせがあれば、同じ担当が受け持つのが基本です。担当が不在のときは、履歴を見たほかの担当が対応し、担当に引き継ぎます。
- 担当の変更は記録に残す:担当を変えるときは、なぜ変えたか、どこまで進んでいるかを記録に残します。
担当者が不在のときの扱い
担当者が休みの日や、長い時間の会議に入っているときに、その人の問い合わせにお客様から連絡があることもあります。次のように決めておくと、お客様を待たせずに済みます。
- 休みの予定がある担当者は、前日までに、対応中の問い合わせの引き継ぎメモを残す
- 担当者が不在のときは、当番や同じチームの人が、履歴を見て対応する
- 対応した人は、何をしたかを履歴に残し、担当者が戻ったときに分かるようにする
- 担当を変えるかどうかは、担当者が戻ってから決める(長い休みの場合は、その場で変える)
止まっている問い合わせを見つける
ステータスを決めても、運用の中で問い合わせが止まることがあります。次のような問い合わせを、毎日確かめる習慣をつけましょう。
- 「新規」のまま、決めた時間を過ぎているもの
- 「対応中」のまま、長い間更新がないもの
- 「お客様の返事待ち」のまま、長い間返事がないもの(もう一度連絡するか、完了にするかを決める)
- 「社内の確認待ち」のまま、確認が返ってこないもの
管理者が見る画面で、こうした問い合わせを一覧にできると、確かめの手間が減ります。管理者が日々見るべき画面についてはコールセンター管理者の見るべき画面で紹介しています。
窓口をまたぐ受け渡しの例
説明のための架空の例で、窓口をまたいだ受け渡しの流れを示します。
- お客様が、問い合わせのフォームで、請求の内容について質問する。受信箱に「新規」として届く
- 当番の担当者が、請求の担当のAさんに振り分ける。ステータスは「対応中」
- Aさんが、確認のための質問をメールで返す。ステータスは「お客様の返事待ち」
- お客様が、メールではなく電話で返事をする。電話を受けたBさんは、電話番号から履歴を確認し、Aさんの対応中の問い合わせがあることを知る
- Bさんは、お客様の返事の内容を聞き取り、同じ問い合わせの履歴に記録する。Aさんが席にいたため、その場でAさんに電話を回す
- Aさんが請求の内容を説明し、お客様が納得する。ステータスを「完了」にする
この流れでは、お客様は窓口を変えても、説明し直す必要がありませんでした。Bさんが履歴を確認したことと、同じ問い合わせに記録をまとめたことが鍵になっています。
SNSでの問い合わせの扱い
SNSで届く問い合わせには、ダイレクトメッセージのように一対一で届くものと、公開の投稿やコメントとして届くものがあります。公開の場でのやりとりは、ほかの人の目にも触れるため、ほかの窓口とは違う注意が必要です。
- 個人の情報は公開の場で扱わない:注文の番号や連絡先などが必要な用件は、ダイレクトメッセージやフォームなど、非公開の窓口に案内します。
- 最初の返事は早めに:公開の場で返事がないと、ほかの人からも「対応していない会社」と見られることがあります。まず受け止めたことを伝え、詳しいやりとりは非公開の窓口で進めます。
- 答えをそろえる:公開の場での答えは、記録として残り続けます。ナレッジにもとづいて、ほかの窓口と同じ答えをします。
- 担当と判断の範囲を決める:誰が返事をするか、どんな投稿に返事をするか、判断に迷うときに誰に相談するかを決めておきます。
SNSの問い合わせも、非公開の窓口に移った後は、ほかの問い合わせと同じように受信箱で担当とステータスを管理します。
窓口ごとの対応の書き方をそろえる
書き方がばらばらになる理由
窓口をまとめても、窓口ごとの書き方がばらばらだと、お客様の体験はそろいません。メールでは丁寧な長い文章、チャットでは短い言葉、電話では口頭の説明。窓口に合わせた書き方の違いは必要ですが、伝える中身はそろえる必要があります。
中身をそろえるための工夫
- 答えの元を一つにする:よくある質問の答えや手順を、一つのナレッジにまとめ、どの窓口の担当もそこを見て答えるようにします。ナレッジの作り方は問い合わせ対応のナレッジベースの作り方で紹介しています。
- 窓口ごとの言い方の例を用意する:同じ答えを、電話ではどう言うか、メールではどう書くか、チャットではどう短くするかの例を用意します。
- 定型の文の管理:よく使う返信の文は、窓口ごとに用意しつつ、中身が変わったときにはすべての窓口の文をまとめて直します。
同じ答えを窓口ごとに表す例
返品の受付の期限についての質問を例に、窓口ごとの表し方を示します。
| 窓口 | 表し方の例 |
|---|---|
| 電話 | 「返品は、商品がお手元に届いてから〇日以内に承っております。今日お手続きいただければ間に合いますので、手順をご案内しますね」 |
| メール | 返品の期限、手続きの手順、必要なものを、見出しと箇条書きで整理して書く。ホームページの案内へのリンクを添える |
| チャット | 「返品は、お届けから〇日以内に承っています。手続きの手順をお送りしますね」と短く返し、続けて手順を送る |
どの窓口でも、期限という大切な中身は同じです。違うのは、伝え方だけです。
窓口ごとの受付時間と時間外の扱い
窓口が増えると、窓口ごとに受付の時間が違うことがよくあります。電話は平日の日中だけ、メールやフォームはいつでも送れる、チャットは担当者がいる時間だけ、といった具合です。お客様が迷わないよう、窓口ごとの受付の時間と、時間外の扱いを整理しておきます。
| 窓口 | 時間外の扱いの例 |
|---|---|
| 電話 | 時間外の案内を流し、ボイスメールや折り返しの依頼を受け付ける。受付の時間と、ほかの窓口を案内する |
| チャット | 担当者がいない時間は、チャットの画面に受付の時間を表示し、フォームやメールへ案内する |
| メッセージのアプリ | 自動の返信で受付の時間と、返事の目安を伝える |
| メール・フォーム | 自動の返信で受け付けたことと、返事の目安を伝える |
時間外に届いた問い合わせは、翌営業日の始めに受信箱でまとめて確かめ、届いた順や急ぎの度合いで対応します。週明けや長い休みの後は件数が多くなるため、その日の担当の人数を多めにしておくとよいでしょう。営業時間の設定はIVRの営業時間ルーティングで詳しく紹介しています。
電話から別の窓口へ案内する
電話で受けた問い合わせの中には、別の窓口のほうが解決しやすいものもあります。例えば、長い説明や画像が必要な用件はメールのほうが、細かい手順を一つずつ進める用件はホームページの案内のほうが、お客様にとっても分かりやすいことがあります。
電話から別の窓口へ案内するときは、次の点に気をつけます。
- たらい回しにしない:「メールでお問い合わせください」とだけ伝えて切ると、お客様は突き放されたと感じます。電話で受けた内容を履歴に残し、メールを送ってもらったときに話が続くようにしておきます。
- 送り先と書いてほしいことを伝える:どのアドレスやフォームに、何を書いて送ればよいかを具体的に伝えます。
- 返事の目安を伝える:いつごろ返事が届くかを伝えます。
- 急ぎの用件は電話で続ける:急ぎの用件や、お客様が電話を望んでいる場合は、無理に別の窓口へ案内しません。
問い合わせそのものを減らす
窓口をつなげると、どの窓口に、どんな問い合わせが多いかが、まとめて見えるようになります。この情報は、問い合わせそのものを減らすことにも使えます。
- 同じ質問が多い場合は、ホームページのよくある質問や、注文の後の案内のメールに答えを載せる
- 特定の手続きの後に問い合わせが増える場合は、手続きの画面や案内の文章を分かりやすくする
- 窓口をまたいだ問い合わせが多い用件は、最初の窓口で解決できない理由を調べる
問い合わせが減れば、担当者は一つひとつの問い合わせに、より丁寧に向き合えるようになります。
管理者が毎日確かめること
一つの受信箱で窓口をまとめた後、管理者が毎日確かめておきたいことを、チェックリストにまとめます。
- [ ] 担当が決まっていない「新規」の問い合わせが残っていないか
- [ ] 窓口ごとの返事の目安を過ぎている問い合わせがないか
- [ ] 長い間更新のない「対応中」の問い合わせがないか
- [ ] 「社内の確認待ち」のまま止まっている問い合わせがないか
- [ ] 特定の担当者に問い合わせが偏っていないか
- [ ] 時間外に届いた問い合わせを、朝のうちに振り分けたか
- [ ] 同じお客様の問い合わせが、別々の担当に分かれていないか
数分で確認できるよう、絞り込みの条件を保存しておくなど、画面を整えておくと続けやすくなります。
仕組みを選ぶときに確かめること
一つの受信箱や顧客の履歴の仕組みを選ぶときは、次の点を確認します。
| 確かめること | 問いの例 |
|---|---|
| つなげられる窓口 | 自社が使っている窓口を、受信箱につなげられるか |
| 電話とのつながり | 通話の記録、要約、ボイスメール、折り返しの依頼を、同じ場所で扱えるか |
| 履歴のまとめ方 | 同じお客様のやりとりを、窓口をまたいでまとめられるか。手で結びつけられるか |
| 担当とステータス | 担当とステータスを、自社のルールに合わせて設定できるか |
| 絞り込みと一覧 | 止まっている問い合わせを、すぐに一覧にできるか |
| 権限 | 担当者ごとに、見られる範囲を決められるか |
| ほかの仕組みとの連携 | 顧客の情報の仕組みなどと、APIなどでつなげられるか |
| レポート | 窓口ごとの件数や返事の時間を確認できるか |
試用できる場合は、架空の問い合わせをいくつかの窓口から送り、窓口をまたいだ受け渡しの流れを実際に試してみましょう。
段階的な進め方
一度にすべてを変えない
オムニチャネルに取り組むとき、すべての窓口を一度につなげようとすると、仕組みの準備、運用のルールの変更、担当者の教育が同時に必要になり、混乱が起きやすくなります。段階を分けて進めるのが安全です。
段階の例
| 段階 | やること | 確かめること |
|---|---|---|
| 1 棚卸し | 今の窓口、担当、記録の場所を書き出す | 担当のない窓口、記録のない窓口 |
| 2 担当を決める | すべての窓口に担当を決め、返事の目安を決める | 漏れがなくなったか |
| 3 受信箱をまとめる | 件数の多い窓口から、一つの受信箱にまとめる | 担当者が迷わず使えるか |
| 4 ステータスを決める | ステータスと担当のルールを決め、運用を始める | 止まっている問い合わせが見つかるか |
| 5 履歴をつなぐ | お客様ごとの履歴をまとめ、窓口をまたいで確認できるようにする | 説明のし直しが減ったか |
| 6 答えをそろえる | ナレッジを整え、窓口ごとの言い方の例を用意する | 回答の食い違いが減ったか |
| 7 見直す | 数字とお客様の声を見て、ルールと仕組みを調整する | 返事の速さ、解決までの時間 |
段階1と2は、仕組みを変えなくても始められます。まずはここから取り組み、効果を確認しながら次の段階に進みましょう。

窓口を増やすのは最後に
新しい窓口(例えば、メッセージのアプリでの受付)を加えたい場合も、今ある窓口がつながってから加えるのが安全です。つながっていない状態で窓口を増やすと、漏れや食い違いが増えるだけになりがちです。
新しい窓口を加えるときは、次の点を先に決めておきます。
- 誰が担当するか
- 受付の時間と、時間外の案内
- 返事の目安
- 受信箱にどうつなげるか
- その窓口で受けない用件(例えば、本人の確認が必要な手続き)と、その場合の案内
担当者の教育
一つの受信箱で、複数の窓口の問い合わせを受けるようになると、担当者には、これまで扱っていなかった窓口の対応も求められます。
- 窓口ごとの書き方の違い(電話の話し方、メールの書き方、チャットの短い返し方)
- 受信箱の使い方、絞り込みの方法
- ステータスと担当のルール
- 履歴の確認方法と残し方
いきなりすべての窓口を受け持ってもらうのではなく、得意な窓口から始めて、少しずつ広げていくと、担当者の負担を抑えられます。
小さな会社でのオムニチャネル
小さな会社こそ漏れが起きやすい
数人の会社では、電話もメールもメッセージのアプリも、同じ人が受けていることが多くあります。担当が同じなら、窓口をつなげる必要はないように思えるかもしれません。しかし、一人で複数の窓口を見ていると、かえって確かめ漏れが起きやすくなります。電話の対応に追われている間に、メッセージのアプリの問い合わせに気づかない、といったことです。
小さな会社の例
説明のための架空の例として、3人で運営している雑貨のネットショップを考えます。問い合わせは、電話、メール、メッセージのアプリ、ショップの問い合わせのフォームの四つの窓口に届きます。これまでは、それぞれの窓口を、気づいた人が確かめていました。
棚卸しをすると、メッセージのアプリは一人しかログインしておらず、その人が休みの日は誰も見ていないことが分かりました。また、同じお客様がメールとメッセージのアプリの両方で問い合わせ、二人が別々に返事をしていたこともありました。
そこで、次のように変えました。
- すべての窓口を、毎朝と夕方の決まった時間に、当番が確かめることにした
- 窓口ごとの問い合わせを、共有の一覧(表計算のシート)に書き写し、担当とステータスを記入することにした
- 返事をする前に、一覧で同じお客様の問い合わせがないかを確認することにした
仕組みを変えなくても、こうした運用の工夫で、漏れや重なりを減らせる可能性があります。件数が増えて、書き写す手間が大きくなってきたら、一つの受信箱にまとめる仕組みを検討する目安になります。
よくある失敗
| よくある失敗 | 起きること | 避け方 |
|---|---|---|
| 窓口を先に増やす | 担当のいない窓口が生まれ、返事の漏れが増える | 今の窓口をつなげてから増やす |
| 仕組みだけ入れる | 受信箱はまとまったが、担当とステータスの運用がなく、止まる問い合わせが残る | 担当とステータスのルールを同時に決める |
| ステータスを増やしすぎる | 使い分けに迷い、正しく更新されない | 少ないステータスから始める |
| 履歴を残さない | 窓口をまたいだときに、説明のし直しが起きる | 残す項目を決め、短くても必ず残す |
| 答えの元がばらばら | 窓口によって違う答えをしてしまう | ナレッジを一つにまとめる |
効果の確認方法
見る数字
オムニチャネルに取り組んだ効果は、次のような数字で確認します。
| 数字 | 分かること |
|---|---|
| 窓口ごとの件数 | どの窓口に、どのくらいの問い合わせが来ているか |
| 最初の返事までの時間 | 窓口ごとに、目安どおりに返事ができているか |
| 解決までの時間 | 問い合わせが届いてから、完了になるまでの時間 |
| 一度で解決した割合 | 追加のやりとりなしで解決した問い合わせの割合 |
| 窓口をまたいだ問い合わせの数 | 同じ用件で、複数の窓口から連絡があった数 |
| 止まっている問い合わせの数 | 目安を過ぎて更新がない問い合わせの数 |
窓口をまたいだ問い合わせの数は、お客様が一つの窓口で解決できずに別の窓口に移った数とも言えます。この数が減っていけば、それぞれの窓口で問題を解決できるようになっている、と考えられます。指標の詳しい意味はコールセンターのKPI一覧で紹介しています。
お客様の声
数字だけでなく、お客様の声も大切です。「前にも説明した」「返事がない」「窓口によって言うことが違う」といった声が減っているかを確認します。担当者からも、「ほかの窓口の状況が分かるようになった」「対応の重なりが減った」といった変化を聞いてみましょう。
AI-SNS.IO Callについて
AI-SNS.IO Callは、ブラウザで使えるクラウド型の電話の仕組みです。日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。設定した窓口をまとめる受信箱に加えて、IVRと着信のルーティング、営業時間に合わせた切り替え、キュー、キューごとのボイスメール、IVRのメニューからの折り返しの依頼、名前で担当者を呼び出すディレクトリ、ブラウザのソフトフォン、AIによる通話の要約、REST API、レポートと分析、品質管理や要員管理の機能などを備えています。受信箱につなげられる窓口など、現在利用できる機能は機能一覧で、設定の手順は使い方ガイドで確認してください。窓口の見直しを含めたコールセンター全体の進め方はコンタクトセンターDXの進め方で紹介しています。
よくある質問
オムニチャネルとマルチチャネルは何が違いますか?
マルチチャネルは、窓口が複数ある状態を指します。オムニチャネルは、複数の窓口がつながっていて、どの窓口から連絡しても、お客様とのやりとりが一つの流れとして扱われる状態を指します。窓口の数ではなく、つながっているかどうかが違いです。
オムニチャネルにするには、専用の仕組みが必要ですか?
一つの受信箱や顧客の履歴をまとめる仕組みがあると進めやすくなりますが、最初から必要というわけではありません。窓口の棚卸し、担当の決定、返事の目安、共有の一覧での管理といった運用の工夫から始められます。
LINEなどのメッセージのアプリも、受信箱にまとめられますか?
まとめられるかどうかは、使う仕組みが、そのアプリとつなげられるかによって変わります。仕組みの機能の一覧や説明書で、つなげられる窓口を確かめてください。つなげられない場合も、当番が確かめて共有の一覧に書き写す、といった運用で漏れを防げます。
電話の問い合わせは、どのように受信箱に入れればよいですか?
通話そのものではなく、通話の記録や要約、ボイスメール、折り返しの依頼などを、一つのやりとりとして受信箱に並べる形が多くなります。電話で受けた内容を履歴に残しておくと、お客様が後でメールなどで連絡してきたときにも、話を続けられます。
同じお客様の問い合わせを、どうやって結びつければよいですか?
一人のお客様の情報に、電話番号、メールのアドレス、アカウントなどの手がかりをまとめて登録する方法があります。自動で結びつける機能がない場合は、問い合わせの中で以前の問い合わせの有無を確かめ、担当者が手で結びつけます。会員の番号や注文の番号も手がかりになります。
担当者は、すべての窓口に対応できなければいけませんか?
必ずしもその必要はありません。得意な窓口から始めて、少しずつ広げていく方法がとれます。ただし、ほかの窓口の履歴を確かめて、状況を把握できるようにしておくことは、全員に必要です。
ステータスはいくつくらいがよいですか?
決まった数はありませんが、少ない数から始めるのがよいでしょう。新規、対応中、お客様の返事待ち、社内の確認待ち、完了の五つ程度を土台にし、運用しながら必要なものを加えます。
窓口ごとに返事の目安を変えてもよいですか?
変えてよいですし、むしろ変えるのが自然です。お客様が期待する返事の速さは窓口によって違うためです。目安はお客様にも案内しておくと、返事を待つ間の不安が減ります。
新しい窓口を加えるタイミングはいつがよいですか?
今ある窓口に担当が決まり、返事の漏れがなく、履歴がつながってから加えるのが安全です。加える前に、担当、受付の時間、返事の目安、受信箱へのつなぎ方、その窓口で受けない用件を決めておきましょう。
窓口をまとめると、個人の情報の扱いで気をつけることはありますか?
多くの担当者が多くの情報を見られるようになるため、誰がどこまで見られるか、どのくらいの期間残すかを、会社のルールで決めておく必要があります。法律やガイドラインの内容は個人情報保護委員会のウェブサイトで確かめ、自社に当てはまるルールは専門家や社内の担当部署に確認してください。
効果はどの数字で確認すればよいですか?
窓口ごとの件数、最初の返事までの時間、解決までの時間、一度で解決した割合、窓口をまたいだ問い合わせの数、止まっている問い合わせの数などを見ます。あわせて、お客様の声や担当者の感想も確かめましょう。
まとめ
オムニチャネルの問い合わせ対応は、窓口を増やすことではなく、窓口をつなげて、どの窓口からでも話が続くようにする取り組みです。
- マルチチャネルとの違いは、窓口がつながっているかどうか
- 窓口が分かれると、説明のし直し、対応の重なり、返事の漏れ、回答の食い違いが起きる
- 一つの受信箱で問い合わせをまとめ、絞り込みと振り分けのルールを決める
- お客様ごとに履歴をつなぎ、次の担当が読んで分かるように残す
- 担当は一人に決め、少ないステータスで進み具合を管理する
- 棚卸しと担当の決定から始め、段階的に進める。新しい窓口を加えるのは最後に
まずは、今の窓口の棚卸しのシートを埋めるところから始めてみてください。窓口をまとめる受信箱や通話の要約は、AI-SNS.IO Callで試せます。アカウント登録から始めてみましょう。



