AI電話受付の導入手順とチェックリスト|準備から本番運用まで
AI電話受付を導入しようと決めたものの、何から手をつければよいのかわからない。設定画面を開いてはみたけれど、案内の文章をどう書けばよいのか、どの電話をAIに任せてよいのか、判断がつかない。こうした声は少なくありません。AI電話受付は、契約して電話を転送すればすぐに働いてくれる、という種類の道具ではないからです。
AI電話受付がうまく働くかどうかは、導入前の準備でほぼ決まります。何のために導入するのか、どの電話を任せるのか、AIに何を話させ、何を話させないのか、人にはどのタイミングでつなぐのか。これらを決めずに始めると、AIが答えられない質問ばかりが届いたり、担当者への引き継ぎが漏れたりして、「やっぱり人が出たほうが早い」という結論になりがちです。
この記事では、AI電話受付を導入するときの手順を、準備、設計、テスト、本番運用の順に整理し、各段階で確認したい項目をチェックリストとしてまとめます。特定のサービスに限らず使える内容にしていますので、自社の状況に合わせて項目を足したり削ったりしながら使ってください。AI電話受付そのものの仕組みについては、AI電話受付とはで解説しています。
導入の全体像
最初に、導入の流れ全体を見ておきましょう。大きく分けると、次の六つの段階があります。
- 目的と範囲を決める:何のために導入するのか、どの電話を対象にするのかを決めます。
- 問い合わせを棚卸しする:今かかってきている電話の用件を洗い出し、分類します。
- スクリプトとナレッジを整える:AIが話す案内の文章と、AIが参照する情報を用意します。
- 引き継ぎのルールを決める:どの場面で、誰に、どうやって引き継ぐかを決めます。
- テスト通話で確認する:本番の前に、想定される場面で電話をかけて確かめます。
- 本番運用と改善:小さな範囲から始め、記録を見ながら改善を続けます。
この順番には理由があります。目的が決まらなければ、棚卸しのどこに注目すべきかがわかりません。棚卸しができていなければ、スクリプトに何を書けばよいかが決まりません。スクリプトと引き継ぎのルールがそろって初めて、テストで確認するべき観点が見えてきます。急いでいるときほど、前の段階を飛ばしたくなりますが、飛ばした分は後で手戻りとして返ってきます。

導入前に決める目的と範囲
最初の段階は、導入の目的と範囲を決めることです。ここがあいまいなままだと、後のすべての判断がぶれてしまいます。
目的を一文で書く
まず、AI電話受付を導入する目的を、一文で書いてみましょう。たとえば、次のような形です。
- 「診療中に出られない電話を取りこぼさず、予約の変更を確実に受け付けたい」
- 「営業時間外にかかってくる問い合わせを記録し、翌朝の折り返しを早くしたい」
- 「営業時間や場所などの同じ質問に、スタッフが何度も答える手間を減らしたい」
- 「代表電話にかかってくる電話を用件ごとに振り分け、担当者に早くつなぎたい」
目的が一文で書けると、後で迷ったときの判断基準になります。「この機能を使うべきか」「この用件をAIに任せるべきか」と迷ったら、目的に照らして考えればよいのです。
目的が複数ある場合は、優先順位をつけておきましょう。すべてを一度に達成しようとすると、設計が複雑になり、どれも中途半端になりがちです。
対象とする電話の範囲を決める
次に、AI電話受付で受ける電話の範囲を決めます。範囲は、次のような観点で決められます。
- 電話番号:代表番号だけか、部署ごとの番号も対象か
- 時間帯:営業時間外だけか、昼休みだけか、営業時間中も含めるか
- 用件:すべての用件か、特定の用件だけか
- 相手:お客様からの電話だけか、取引先からの電話も含めるか
最初は範囲を狭く設定するのがおすすめです。たとえば「営業時間外の代表番号」だけから始めれば、万が一うまく動かない場面があっても、影響は限られます。慣れてきたら、範囲を少しずつ広げていけばよいのです。
成功の目安を決める
導入がうまくいったかどうかを判断するための目安も、この段階で決めておきます。目安がないと、導入後に「よくなったのかどうか」が判断できません。
- 出られなかった電話の件数が減ったか
- 営業時間外の問い合わせのうち、記録が残った件数はどれくらいか
- 折り返しまでの時間が短くなったか
- スタッフが電話で手を止める回数が減ったか
- かけてきた人から、わかりにくいという声が出ていないか
導入前の数字を把握しておくと、比較がしやすくなります。次の段階の棚卸しで、あわせて記録しておきましょう。
関係者を決める
AI電話受付の導入には、複数の人が関わります。誰が何を担当するかを、最初に決めておきましょう。
- 責任者:導入の判断と、最終的な設計の承認をする人
- 設計の担当:スクリプトやメニュー、引き継ぎのルールを作る人
- 情報の担当:AIが参照する情報(営業時間、よくある質問など)を用意し、更新する人
- 現場の代表:実際に電話を受けているスタッフの代表として、意見を出す人
- 記録の確認と折り返しの担当:本番運用で、AIが受けた用件を確認し、対応する人
小さな会社では、一人が複数の役割を兼ねることになるでしょう。それでも、役割を言葉にしておくだけで、抜け漏れが減ります。特に「情報の担当」と「記録の確認の担当」は、導入後も続く仕事なので、必ず決めておきましょう。
チェックリスト:目的と範囲
- [ ] 導入の目的を一文で書いた
- [ ] 目的が複数ある場合、優先順位をつけた
- [ ] 対象とする電話番号、時間帯、用件、相手を決めた
- [ ] 最初に試す範囲を、狭く設定した
- [ ] 成功の目安を決め、導入前の数字を把握する方法を決めた
- [ ] 責任者、設計、情報、現場の代表、記録の確認の担当を決めた
よくある問い合わせの棚卸し
二つ目の段階は、今かかってきている電話の棚卸しです。AIに何を任せるかを決めるには、まず、どのような電話がかかってきているのかを知る必要があります。
記録の取り方
一週間から二週間ほど、かかってきた電話を簡単に記録します。記録する項目は、次のようなもので十分です。
- 電話がかかってきた日時
- 用件(大まかな分類でよい)
- その場で答えられたか、折り返しや担当者への引き継ぎが必要だったか
- 対応にかかったおおよその時間
- 出られなかった電話かどうか
記録の負担が大きいと続きません。紙の一覧表に正の字で数えるくらいの簡単な方法でもかまいません。電話の仕組みに着信の記録が残っている場合は、それを活用すると、日時や出られなかった電話の件数を手で記録する手間が省けます。
用件を分類する
記録がたまったら、用件を分類します。分類の仕方は業種によって異なりますが、AI電話受付の導入を考えるうえでは、次の四つに分けると整理しやすくなります。
- 決まった答えで完結する用件:営業時間、場所、持ち物、手続きの方法など。答えを事前に用意しておけば、AIの案内で完結できる可能性があります。
- 聞き取って記録すれば足りる用件:予約の変更の希望、折り返しの依頼、資料の請求など。その場で完結しなくても、必要な情報を聞き取って担当者に渡せば対応できます。
- 人がその場で対応すべき用件:急ぎの相談、苦情、個別の事情を詳しく聞く必要がある相談など。AIは用件を見極めて、人につなぐ役割に徹します。
- 対応の必要がない電話:営業の電話、間違い電話など。
この四つの分類のうち、どれがどれくらいの割合を占めるかで、AI電話受付で期待できる効果が見えてきます。一つ目と二つ目が多ければ、AIに任せられる部分が大きいといえます。三つ目が多い場合は、AIの役割は振り分けと引き継ぎが中心になります。
用件ごとに「聞くこと」と「答えること」を書き出す
分類した用件ごとに、AIが相手から聞き取るべきことと、AIが答えてよいことを書き出します。
たとえば、「予約の変更」という用件であれば、聞き取るべきことは「名前」「連絡先」「今の予約の日時」「希望する日時の候補」です。答えてよいことは「担当者が確認して折り返すこと」と「折り返しの目安の時間」で、「変更を確定しました」とは答えません。
この書き出しが、次の段階のスクリプトとナレッジの土台になります。
時間帯の偏りを見る
記録からは、用件の種類だけでなく、時間帯の偏りも見えてきます。朝の始業直後に問い合わせが集中する、昼休みに予約の変更が多い、夕方以降は折り返しの依頼が多い、といった傾向がわかれば、どの時間帯からAI電話受付を使い始めるべきかの判断材料になります。
チェックリスト:棚卸し
- [ ] 一週間から二週間、電話の用件と時間帯を記録した
- [ ] 出られなかった電話の件数を把握した
- [ ] 用件を「決まった答え」「聞き取りと記録」「人がその場で対応」「対応不要」に分類した
- [ ] 用件ごとに、聞き取るべきことと、答えてよいことを書き出した
- [ ] 時間帯ごとの偏りを確認した
応答スクリプトとナレッジの整備
三つ目の段階は、AIが話す案内の文章(スクリプト)と、AIが参照する情報(ナレッジ)を整えることです。AI電話受付の品質を左右する、もっとも重要な段階といえます。
スクリプトとナレッジの違い
スクリプトとナレッジは、似ているようで役割が違います。
- スクリプト:電話の流れに沿って、AIが何をどの順番で話すかを決めたものです。最初の名乗り、用件の聞き方、復唱の仕方、電話の終え方などが含まれます。
- ナレッジ:AIが質問に答えるときに参照する情報です。営業時間、休業日、住所、よくある質問とその答えなどが含まれます。
スクリプトが「話し方の台本」だとすれば、ナレッジは「答えの辞書」です。どちらが欠けても、AI電話受付はうまく働きません。
最初の名乗りを決める
電話がつながったときに最初に流れる名乗りは、かけてきた人の第一印象を決めます。次の点を意識して決めましょう。
- 会社名や店名を、最初にはっきり伝える
- 自動の案内であることがわかるようにする
- 長くしすぎない
- 次に何をすればよいか(用件を話す、番号を押す)を伝える
たとえば、「お電話ありがとうございます。○○事務所の自動受付です。ご用件をお話しください。」といった形です。名乗りや案内の例文は、電話の自動応答メッセージ例文集でも多く紹介しています。
用件ごとの流れを作る
棚卸しで書き出した用件ごとに、電話の流れを作ります。
- どのような言葉で用件を確認するか
- どの順番で情報を聞き取るか
- 聞き取った内容をどう復唱して確認するか
- 最後に何を伝えて電話を終えるか(折り返しの目安など)
聞き取りの順番は、相手が答えやすい順にするのがコツです。いきなり連絡先を聞くより、まず用件を聞き、次に名前、最後に連絡先、という順番のほうが自然です。
復唱は、名前、日時、連絡先などの大事な情報について必ず行いましょう。AIの聞き取りには誤りが起こりうるため、復唱して相手に確かめてもらうことで、誤りに気づく機会を作れます。
ナレッジを用意する
AIが答える情報を、一つの文書にまとめます。最低限、次のような情報を用意しましょう。
- 正式な会社名・店名と、読み方
- 営業時間(曜日ごと)と、休業日
- 祝日、年末年始、夏季休暇などの扱い
- 住所、最寄り駅からの道順、駐車場の有無
- よくある質問とその答え
- 答えてはいけないこと(価格の個別の見積もり、専門的な判断など)
祝日の扱いは見落としやすい項目です。国民の祝日は内閣府が公表しているので、確認したうえで、祝日に営業するかどうかを決めて書いておきましょう(参考:国民の祝日について(内閣府))。
「答えないこと」を決める
ナレッジを用意するときに、意外と忘れがちなのが「AIに答えさせないこと」を決めておくことです。AIは、知らないことについても、もっともらしい答えを作ってしまうことがあります。答えてはいけない質問を受けたときに、どう返すかを決めておきましょう。
- 予約や契約の確定(「担当者が確認して折り返します」と伝える)
- 個別の見積もりや料金の相談(担当者からの折り返しにする)
- 医療、法律、お金などの専門的な判断(担当者につなぐか、折り返しにする)
- ナレッジに書かれていないこと(推測で答えず、折り返しを案内する)
AIにできないことと、人に引き継ぐべき場面については、AI電話受付にできないことで詳しく解説しています。
言葉づかいを統一する
スクリプトとナレッジの言葉づかいは、そろえておきましょう。ある場面では「担当者」、別の場面では「スタッフ」、さらに別の場面では「係の者」と言い方がばらばらだと、かけてきた人が混乱します。会社として使う言葉を決めて、一覧にしておくと便利です。
また、電話は耳で聞くものなので、書き言葉としては自然でも、耳で聞くとわかりにくい表現があります。漢字の熟語を続けすぎない、同じ音の言葉に注意する、数字は区切って読むなど、聞き取りやすさを意識しましょう。
チェックリスト:スクリプトとナレッジ
- [ ] 最初の名乗りを決めた(会社名、自動の案内であること、次にすること)
- [ ] 用件ごとに、確認、聞き取り、復唱、終わり方の流れを作った
- [ ] 名前、日時、連絡先などの大事な情報は復唱する設計にした
- [ ] 営業時間、休業日、祝日の扱い、場所などのナレッジを一つの文書にまとめた
- [ ] AIに答えさせないことと、そのときの返し方を決めた
- [ ] 言葉づかいを統一し、耳で聞いてわかりやすい表現にした
引き継ぎ・エスカレーションのルール
四つ目の段階は、AIから人への引き継ぎのルールを決めることです。AI電話受付は、人に引き継ぐことを前提にした仕組みです。引き継ぎのルールがしっかりしていれば、AIが対応しきれない場面があっても、かけてきた人に迷惑をかけずに済みます。
引き継ぎの三つの形
AIから人への引き継ぎには、大きく分けて三つの形があります。
- その場で人につなぐ:電話を担当者やスタッフの電話に転送します。急ぎの用件や、人がその場で対応すべき用件に向いています。
- 折り返しの依頼として記録する:用件と連絡先を記録し、担当者が後から電話をかけます。その場で人が出られない場合や、急ぎでない用件に向いています。
- 留守番電話でメッセージを残してもらう:相手に自由にメッセージを話してもらいます。用件が分類しにくい場合の受け皿になります。
どの用件をどの形で引き継ぐかを、棚卸しの分類に合わせて決めておきましょう。
引き継ぎのきっかけを決める
次に、AIの対応の途中で、どのようなときに人への引き継ぎに切り替えるかを決めます。
- 相手が「人と話したい」「担当者につないでほしい」と言ったとき
- 急ぎの用件だとわかったとき
- 苦情や強い不満が伝えられたとき
- 聞き取りがうまくいかない状態が続いたとき(聞き返しが何度も続くなど)
- ナレッジにない質問を受けたとき
- 答えてはいけない質問を受けたとき
特に、「人と話したい」という希望には、必ず応えられるようにしておきましょう。人につなぐ道がないと、かけてきた人は閉じ込められたように感じ、強い不満を持つことがあります。その場でつなげない時間帯でも、折り返しの依頼を受け付けるなど、人に届く道を残しておくことが大切です。
引き継ぎ先を決める
引き継ぎ先は、用件と時間帯によって変わります。
- 用件ごとの担当者や担当部署
- 担当者が不在のときの代わりの担当者
- 営業時間外の引き継ぎ先(折り返しの依頼として記録し、翌営業日に担当者が確認するなど)
担当者が一人しかいない用件は、その人が休みのときにどうするかも決めておきましょう。引き継ぎ先が決まっていない用件があると、記録がたまったまま放置されることになります。
引き継ぐ情報を決める
引き継ぐときに担当者に渡す情報を決めます。担当者が、かけてきた人に同じことを聞き直さなくて済むようにするのが目標です。
- 相手の名前と連絡先
- 用件の分類と内容
- AIが聞き取った情報(日時の希望、数量など)
- 急ぎかどうか
- 電話がかかってきた日時
- 通話の要約や文字起こし(ある場合)
折り返しの約束を守る仕組み
折り返しの依頼として記録した用件は、確実に対応しなければなりません。AIが「担当者から折り返します」と伝えたのに連絡がなければ、かけてきた人の信頼を大きく損ないます。
- 記録を誰が、いつ確認するかを決める
- 折り返しの目安の時間を決め、AIの案内とそろえる
- 対応が済んだ記録には、対応済みの印をつける
- 対応されていない記録が残っていないか、定期的に確かめる
チェックリスト:引き継ぎ
- [ ] 用件ごとに、その場で人につなぐ、折り返し、留守番電話のどれで引き継ぐかを決めた
- [ ] 「人と話したい」という希望に必ず応える道を用意した
- [ ] 引き継ぎのきっかけ(急ぎ、苦情、聞き取りの失敗、ナレッジ外の質問など)を決めた
- [ ] 用件と時間帯ごとの引き継ぎ先と、不在時の代わりを決めた
- [ ] 引き継ぐ情報の項目を決めた
- [ ] 折り返しの確認担当、目安の時間、対応済みの記録の方法を決めた
記録と個人情報の扱いを決めておく
導入の手順の中で後回しにされがちなのが、通話の記録と個人情報の扱いです。AI電話受付を使うと、録音、文字起こし、要約、聞き取った名前や連絡先など、さまざまな記録が残ります。本番を始める前に、次の点を決めておきましょう。
- 何を記録するか:録音を残すのか、文字起こしや要約だけにするのか。
- 録音をどう伝えるか:録音する場合、最初の案内でそのことを伝えるかどうか、どう伝えるか。
- 誰が見られるか:記録を確認できる人の範囲を、役割ごとに決める。
- どれくらい残すか:保存期間と、期間が過ぎた記録の扱い。
- どこに保存されるか:記録がどのような環境に保存されるのかを、サービスの説明で確認する。この内容は一般的な情報であり、法的助言ではありません。
聞き取る情報は、用件の対応に必要な分だけにしておくのが基本です。必要以上の情報を聞かないことは、管理の負担を減らすことにもつながります。個人情報の扱いについての公的な情報は、個人情報保護委員会のウェブサイトで確認できます。判断に迷う場合は専門家に相談してください。
チェックリスト:記録と個人情報
- [ ] 録音、文字起こし、要約のどれを残すかを決めた
- [ ] 録音する場合の伝え方を決めた
- [ ] 記録を見られる人の範囲を決めた
- [ ] 保存期間と、期間が過ぎた記録の扱いを決めた
- [ ] 聞き取る情報を、対応に必要な分に絞った
テスト通話のやり方
五つ目の段階は、本番の前のテスト通話です。設計がどれだけ丁寧でも、実際に電話をかけてみると、思わぬところでつまずくことがあります。テストは、問題を本番の前に見つけるための大切な機会です。
テストのシナリオを作る
まず、テストで試す場面(シナリオ)を書き出します。棚卸しで分類した用件ごとに、典型的な場面と、つまずきやすい場面の両方を用意しましょう。
典型的な場面の例
- 営業時間を聞く
- 予約の変更を依頼する
- 折り返しを依頼する
- 担当者に用件を伝えたい
つまずきやすい場面の例
- 名前の読み方が難しい
- 日付を「来週の火曜日」のようにあいまいに伝える
- 途中で言い直す、話がそれる
- 周りが騒がしい場所からかける
- ナレッジにない質問をする
- 「人と話したい」と言う
- 何も話さずに黙っている
- 怒った口調で話す
複数の人でテストする
テスト通話は、できれば複数の人で行いましょう。話し方、声の高さ、話す速さは人によって違い、聞き取りの結果も変わります。設計を担当した人だけでテストすると、「どう話せばAIが聞き取れるか」を知っているため、問題を見落としがちです。現場のスタッフや、AI電話受付の設計に関わっていない人にも協力してもらうと、実際のお客様に近いテストができます。
携帯電話、固定電話など、かける端末を変えてみることも大切です。屋外や車の中など、環境を変えてかけてみると、雑音の影響も確かめられます。
テストで確認する観点
テスト通話では、次の観点を確認します。
- 案内のわかりやすさ:最初の名乗りで何をすればよいかわかるか、案内が長すぎないか
- 聞き取りの正確さ:名前、日時、連絡先などが正しく記録されるか
- 答えの正確さ:ナレッジに沿って正しく答えているか、推測で答えていないか
- してはいけないことをしないか:予約を確定したと伝えていないか、専門的な判断をしていないか
- 引き継ぎ:決めたきっかけで人につながるか、折り返しの依頼として記録されるか
- 記録:担当者が確認する場所に、必要な情報がそろって届いているか
- 会話の自然さ:返事までの間が不自然でないか、話をさえぎらないか
テストの結果を記録して直す
テストで見つかった問題は、シナリオごとに記録し、スクリプト、ナレッジ、引き継ぎのルールのどこを直すべきかを判断します。直したら、同じシナリオでもう一度テストして、問題が解決したかを確認しましょう。
すべての問題を完全になくしてから本番を始める必要はありません。ただし、「してはいけないことをしない」と「人と話したい希望に応える」の二つは、本番の前に必ず確認しておきましょう。
チェックリスト:テスト
- [ ] 用件ごとに、典型的な場面とつまずきやすい場面のシナリオを作った
- [ ] 設計に関わっていない人を含む、複数の人でテストした
- [ ] 端末や環境を変えてテストした
- [ ] 案内、聞き取り、答え、禁止事項、引き継ぎ、記録、自然さを確認した
- [ ] 見つかった問題を記録し、直したあとに再テストした
- [ ] 予約などを確定しないこと、人につなぐ道があることを確認した
本番運用と改善サイクル
六つ目の段階は、本番運用です。AI電話受付は、本番を始めてからが本当のスタートです。実際の電話の記録をもとに改善を続けることで、少しずつ自社に合った形に育っていきます。
小さく始める
本番は、最初に決めた狭い範囲から始めます。たとえば、営業時間外の代表番号だけ、昼休みの時間帯だけ、といった形です。範囲を絞ることで、問題が起きたときの影響を小さく抑えられ、記録を丁寧に読む余裕も生まれます。
本番を始める前に、社内に周知しておくことも忘れないでください。どの電話がAIにつながるのか、記録はどこで確認できるのか、折り返しは誰が担当するのかを、関係するスタッフ全員が知っている状態にしておきます。頻繁に電話をかけてくる取引先には、案内が変わることを一言伝えておくと、戸惑いを減らせます。
最初の一週間は毎日記録を読む
本番を始めた直後は、問題が見つかりやすい時期です。最初の一週間は、できれば毎日、AIが受けた電話の記録を読みましょう。
- 聞き取りの誤りがなかったか
- ナレッジにない質問が来ていないか
- 案内の途中で切られている電話が多くないか
- 引き継ぎが漏れていないか
- 折り返しが約束どおりの時間にできているか
通話の要約がある場合は、まず要約を一覧で読み、気になる電話だけ文字起こしや録音で詳しく確かめると、効率よく確認できます。
改善のサイクルを回す
記録から見つかった問題は、スクリプト、ナレッジ、引き継ぎのルールのどれを直すべきかを判断して、直していきます。
- よく聞かれるのにナレッジにない質問 → ナレッジに答えを追加する(答えてよい内容の場合)
- 聞き取りの誤りが多い項目 → 聞き方を変える、復唱を丁寧にする、選択肢から選んでもらう
- 途中で切られることが多い場面 → 案内を短くする、順番を変える
- 人への引き継ぎが多すぎる用件 → AIで対応できる範囲を見直す、あるいは最初から人につなぐ
- 引き継ぎが少なすぎる用件 → 引き継ぎのきっかけを見直す
直したら、その変更でよくなったかを、次の記録で確認します。この「記録を読む、直す、確かめる」のサイクルを回し続けることが、AI電話受付の品質を上げる一番の近道です。
ナレッジを最新に保つ
営業時間の変更、臨時休業、新しいサービスの開始など、事業の情報は変わっていきます。ナレッジが古いままだと、AIは古い情報を案内してしまいます。
情報が変わるときに、ナレッジも一緒に更新する手順を決めておきましょう。ホームページの更新と同じタイミングでナレッジも更新する、と決めておくと忘れにくくなります。年末年始や夏季休暇など、毎年決まって発生する変更は、カレンダーに更新の予定を入れておくと安心です。
範囲を広げる
小さな範囲での運用が安定してきたら、範囲を広げることを検討します。営業時間外から昼休みへ、昼休みから営業時間中の混み合う時間帯へ、というように、一段階ずつ広げていきましょう。範囲を広げるたびに、新しい範囲で想定される場面をテストしてから始めると安心です。
定期的に振り返る
月に一度程度、最初に決めた成功の目安に照らして、導入の効果を振り返りましょう。出られなかった電話の件数、折り返しまでの時間、スタッフの負担の変化などを確認し、目的に近づいているかを判断します。
振り返りには、現場のスタッフにも参加してもらいましょう。「この用件はAIに任せても大丈夫そう」「この案内はお客様が戸惑っているようだ」といった現場の感覚は、記録の数字だけでは見えない改善のヒントになります。
チェックリスト:本番運用
- [ ] 最初に決めた狭い範囲から本番を始めた
- [ ] 社内と、必要に応じて取引先に周知した
- [ ] 最初の一週間は、毎日記録を読んだ
- [ ] 記録から見つかった問題を、スクリプト、ナレッジ、引き継ぎのどれで直すか判断して直した
- [ ] ナレッジを更新する手順と担当を決めた
- [ ] 範囲を広げるときは、事前にテストした
- [ ] 月に一度程度、成功の目安に照らして振り返った
AI電話受付の導入手順を進めるスケジュールの例
六つの段階を、実際にどのような順序で進めるのか、一つの例を示します。期間は事業者の規模や電話の量によって大きく変わるため、ここでは順序と、各段階で区切りにするとよい目印だけを示します。
- 第一の区切り:目的を一文で書き、対象の範囲と担当者が決まった。
- 第二の区切り:電話の記録がたまり、用件の分類と、用件ごとの「聞くこと」「答えること」が書き出せた。
- 第三の区切り:スクリプト、ナレッジ、引き継ぎのルールの最初の版ができた。
- 第四の区切り:テスト通話で見つかった問題を直し、禁止事項と人につなぐ道が確認できた。
- 第五の区切り:狭い範囲で本番を始め、最初の一週間の記録を読んで手直しした。
- 第六の区切り:最初の振り返りを行い、範囲を広げるかどうかを判断した。
各区切りで、責任者が内容を確認して次に進む、という形にしておくと、段階を飛ばしてしまうことを防げます。とくに第三から第四の区切りの間は、テストと手直しを何度か繰り返すことになるため、余裕を持って計画しておきましょう。

業種別に見る導入のポイント
導入の手順は共通でも、業種によって注意すべき点は変わります。いくつかの例を挙げておきます。
予約制の店舗やクリニック
予約の変更やキャンセルの電話が多い業種では、聞き取りの項目(名前、今の予約日時、希望の日時の候補、連絡先)をそろえることが、導入の効果を大きく左右します。予約の確定は必ずスタッフが行い、AIは「確認して折り返します」と伝える設計にします。医療機関では、症状についてAIが判断しないこと、急ぎの相談を人につなぐことを、テストで重点的に確かめましょう。
士業の事務所
相談の内容が個別で、慎重な扱いが必要な情報が含まれやすい業種です。AIには、相談の申し込みの受け付けと、営業時間や相談の流れの案内を任せ、相談の内容そのものに踏み込ませない設計が向いています。記録の閲覧範囲と保存期間も、導入前に決めておきましょう。
工事・修理の事業者
担当者が現場に出ていて電話に出られない時間が長い業種です。急ぎの修理の依頼をどう見分け、誰の電話に直接つなぐかを、引き継ぎのルールの中心に置きます。依頼の内容(場所、症状、希望の訪問日時)を聞き取る項目をそろえておくと、折り返しの電話が短く済みます。
ネットショップ・通信販売
注文の状況や配送、返品の手続きなど、決まった答えのある問い合わせが多い業種です。ナレッジの整備が効果を生みやすい一方、個別の注文の内容を確認する必要がある問い合わせは、担当者への引き継ぎにします。支払いや返金の手続きの確定は、必ず人が行います。
導入でよくあるつまずき
ここまでの手順を踏んでも、導入の途中でつまずくことはあります。よくあるつまずきと、その対処を紹介します。
最初から完璧を目指してしまう
すべての用件、すべての場面に対応できる設計を作ろうとすると、準備に時間がかかりすぎて、いつまでも本番を始められません。AI電話受付は、本番の記録を見ながら直していくものです。最初は狭い範囲で、よくある場面に対応できれば十分だと考えましょう。
案内を詰め込みすぎる
伝えたいことが多いと、最初の名乗りや案内に情報を詰め込みたくなります。しかし、耳で聞く案内は、長くなるほど聞き取りにくくなります。最初の案内は短くし、詳しい情報は用件ごとの流れの中で伝えるようにしましょう。
記録を読む人がいない
導入直後は熱心に記録を読んでいても、時間がたつと読まなくなることがあります。記録を読む担当と時間を決めておかないと、問題に気づかないまま運用が続いてしまいます。
ナレッジの更新が止まる
ナレッジの担当者が決まっていても、忙しい時期には更新が後回しになりがちです。情報が変わるたびに更新する手順を、業務の流れの中に組み込んでおきましょう。
AIに任せすぎる
うまく動いているように見えると、つい範囲を広げすぎてしまうことがあります。予約や契約の確定、専門的な判断、苦情への対応など、人が担うべきところは、範囲を広げても人に残しておきましょう。
AI-SNS.IO Callで導入を進める
AI-SNS.IO Callでは、IVRのメニューと着信のルーティング、営業時間に合わせた応答の切り替え、キューごとの留守番電話、IVRのメニューからの折り返しの依頼、AIによる通話の要約などを組み合わせて、この記事で紹介した手順に沿った設計ができます。IVRの仕組みについては、IVRとはで解説しています。日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。
AIによる一次応答を含め、現在利用できる機能は機能一覧で確認できます。設定の手順は使い方ガイドを、詳しい仕様はドキュメントをご覧ください。実際に試してみたい場合は、アカウント登録から始められます。予約や契約の確定は、どの設計でも自社のスタッフが行います。
よくある質問
AI電話受付の導入には、どれくらいの期間がかかりますか?
電話の量や用件の種類、対象とする範囲によって大きく変わるため、一概には言えません。目的と範囲を決め、問い合わせを棚卸しし、スクリプトとナレッジを整え、引き継ぎのルールを決め、テストする、という手順を踏む必要があります。最初は狭い範囲で始めれば、準備の量を抑えられます。
導入前に、まず何をすればよいですか?
導入の目的を一文で書くことから始めましょう。そのうえで、一週間から二週間ほど、かかってきた電話の用件と時間帯を記録します。目的と電話の実態がわかれば、どの電話をAIに任せるべきか、どこから始めるべきかが見えてきます。
スクリプトとナレッジは何が違いますか?
スクリプトは、AIが電話の流れに沿って何をどの順番で話すかを決めた台本です。ナレッジは、AIが質問に答えるときに参照する情報で、営業時間やよくある質問の答えなどが含まれます。スクリプトが話し方を、ナレッジが答えの中身を決めます。
AIに答えさせてはいけないことはありますか?
予約や契約の確定、個別の見積もり、医療・法律・お金などの専門的な判断、ナレッジに書かれていないことは、AIに答えさせないようにしましょう。こうした質問を受けたときは、担当者からの折り返しを案内するか、人につなぐように設計します。
テスト通話は何回くらい行えばよいですか?
回数よりも、想定される場面を網羅できているかが大切です。用件ごとに典型的な場面とつまずきやすい場面のシナリオを作り、複数の人、複数の端末と環境で試しましょう。問題を直したら、同じシナリオでもう一度テストして、解決したかを確かめます。
本番を始めたあと、何をすればよいですか?
最初の一週間は、できれば毎日、AIが受けた電話の記録を読みましょう。聞き取りの誤り、ナレッジにない質問、途中で切られた電話、引き継ぎの漏れなどを見つけ、スクリプト、ナレッジ、引き継ぎのルールを直していきます。その後も、定期的に記録を読み、改善を続けます。
「人と話したい」と言われたらどうすればよいですか?
必ず人に届く道を用意しておきましょう。その場で担当者につなぐ、つなげない時間帯は折り返しの依頼を受け付ける、といった形です。人につなぐ道がないと、かけてきた人は強い不満を感じます。テスト通話でも、この場面は必ず確かめてください。
ナレッジはどれくらいの頻度で更新すればよいですか?
情報が変わるたびに更新するのが基本です。営業時間の変更、臨時休業、新しいサービスなどがあれば、ホームページの更新と同じタイミングでナレッジも更新しましょう。年末年始や夏季休暇など、毎年決まって発生する変更は、カレンダーに更新の予定を入れておくと忘れにくくなります。
小さな会社でも、この手順をすべて行う必要がありますか?
手順の考え方は同じですが、規模に合わせて簡略化してかまいません。一人が複数の役割を兼ねる、記録を簡単な方法で取る、テストのシナリオを主な用件に絞る、といった形で進められます。ただし、目的を決めること、答えさせないことを決めること、人につなぐ道を残すことは省かないようにしましょう。
導入の効果はどうやって確かめればよいですか?
導入前に決めた成功の目安(出られなかった電話の件数、折り返しまでの時間、スタッフが手を止める回数など)を、導入前と導入後で比べます。数字だけでなく、現場のスタッフの感覚や、かけてきた人からの声もあわせて確かめると、効果をより正しく判断できます。
導入の途中で目的が変わったらどうすればよいですか?
棚卸しやテストを進めるうちに、当初の目的より大切な課題が見つかることがあります。その場合は、目的を書き直し、範囲や優先順位を見直してかまいません。ただし、目的を変えたときは、スクリプトやナレッジ、成功の目安もあわせて見直しましょう。
社内のスタッフが新しい仕組みに不安を感じています。どうすればよいですか?
導入の目的と、AIに任せることと人が担うことの線引きを、最初にスタッフと共有しましょう。現場の代表に設計の段階から参加してもらい、テスト通話にも協力してもらうと、仕組みへの理解が深まります。小さな範囲から始めて、効果を一緒に確かめていくことも、不安を和らげる助けになります。
テストで見つかった問題が多すぎて、本番を始められません。
すべての問題をなくす必要はありません。まず、予約などを確定しないこと、専門的な判断をしないこと、人につなぐ道があることの三点が守られているかを確かめます。そのうえで、影響の大きい問題から順に直し、残りは対象の範囲を狭めることで本番から外す、という進め方ができます。
複数の拠点がある場合は、どう進めればよいですか?
まず一つの拠点で導入の手順を一通り進め、うまくいった設計を他の拠点に広げるのがおすすめです。拠点ごとに営業時間や担当者、よくある問い合わせが違う場合は、ナレッジと引き継ぎ先を拠点ごとに用意し、共通のスクリプトと組み合わせて使います。
AI-SNS.IO Callでは、予約の確定は誰が行いますか?
自社のスタッフが行います。AI-SNS.IO Callを使った設計でも、予約や契約の確定は自社のスタッフが行います。電話の仕組みは、用件を聞き取り、記録し、担当者に引き継ぐところまでを担います。現在利用できる機能は機能一覧で確認してください。日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。
まとめ
AI電話受付の導入は、目的と範囲を決める、問い合わせを棚卸しする、スクリプトとナレッジを整える、引き継ぎのルールを決める、テスト通話で確認する、本番運用で改善を続ける、という六つの段階で進めると、抜け漏れを防げます。
どの段階でも大切なのは、AIに任せることと、人が担うことの線をはっきりさせることです。AIには、決まった答えの案内と、用件の聞き取り・記録を任せ、予約や契約の確定、専門的な判断、感情への配慮が必要な対応は人が担う。そして、かけてきた人が人に届く道を必ず残しておく。この線が守られていれば、AI電話受付は、スタッフの負担を減らしながら、電話の取りこぼしを防ぐ心強い仕組みになります。
この記事のチェックリストを手元に置き、自社の状況に合わせて項目を調整しながら、一つずつ進めてみてください。



