AI電話受付の基礎

AI電話対応とは?仕組みと向く会社を解説

AI-SNS.IO 編集部 · 公開

AI電話対応とは?仕組みと向く会社を解説(AI-SNS.IO Call ブログ)

「電話が鳴るたびに作業が止まる」「営業時間外の電話に出られず、翌朝の折り返しで一日が始まる」「少人数なので受付専任の人を置けない」。こうした悩みから、AI電話受付に関心を持つ会社が増えています。AI電話受付とは、かかってきた電話にAIが最初に応答し、用件を聞き取って案内したり、記録を残したり、担当者に引き継いだりする仕組みのことです。

ただし、AI電話受付は「電話対応をすべてAIに任せる魔法の箱」ではありません。得意なこともあれば、任せてはいけないこともあります。導入して満足している会社と、思ったように使いこなせなかった会社の差は、多くの場合、ツールの性能よりも「どこまでをAIに任せ、どこからを人が受け持つか」という線引きの設計にあります。

この記事では、AI電話受付をはじめて検討する方に向けて、仕組み、人の受付や留守番電話との違い、できること・できないこと、向いている会社の特徴、導入前に決めておくことを順番に解説します。特定の数字や他社事例に頼らず、電話対応の現場で実際に判断するときに役立つ考え方を中心にまとめました。読み終えたときに、「自社の電話のどの部分にAIを使えそうか」を具体的に書き出せる状態になることを目指しています。

AI電話受付とは何か

AI電話受付は、電話の「最初の数十秒から数分」をAIが受け持つ仕組みです。人の受付スタッフが行っている仕事を分解すると、だいたい次のような流れになっています。

  1. 電話に出て、会社名を名乗る
  2. 相手が誰で、何の用件なのかを聞き取る
  3. その場で答えられることなら答える
  4. 答えられないことなら、担当者につなぐか、折り返しを約束する
  5. 聞いた内容をメモに残し、関係者に共有する

AI電話受付は、この流れのうち、1から3、そして5の一部を自動化するものだと考えるとわかりやすいでしょう。4の「担当者につなぐ」「折り返しを約束する」も、仕組みとしては用意できますが、実際に対応するのは人です。

「電話の一次対応」を自動化するという考え方

電話対応には、大きく分けて「一次対応」と「二次対応」があります。一次対応とは、電話を受け、用件を把握し、適切な行き先に振り分けるまでの部分です。二次対応とは、専門的な質問に答えたり、手続きを進めたり、判断を下したりする部分です。

AI電話受付が担うのは、基本的に一次対応です。営業時間や所在地、よくある質問への回答、用件の聞き取りと記録、担当部署への振り分けといった、パターン化しやすい仕事が中心になります。一方で、契約内容の変更、見積もりの確定、クレームへの謝罪と判断、医療や法律に関する個別の相談といった二次対応は、人が受け持つべき領域です。

この「一次対応はAI、二次対応は人」という役割分担を最初に頭に入れておくと、AI電話受付の評価を誤りにくくなります。AIに二次対応まで期待すると「使えない」と感じやすく、一次対応だけに絞って設計すると「思った以上に楽になった」と感じやすいのです。

自動音声応答(IVR)との関係

AI電話受付とよく比較されるのが、IVR(自動音声応答)です。IVRは「〇〇の方は1を、△△の方は2を押してください」という、プッシュボタンで用件を選んでもらう仕組みです。IVRについてはIVR(自動音声応答)とは?で詳しく解説していますが、ここでは違いを簡単に整理しておきます。

IVRは、あらかじめ決めた選択肢の中から相手に選んでもらう方式です。案内が決まっているので誤案内が起きにくく、設定もシンプルです。その代わり、選択肢に当てはまらない用件には対応しにくく、メニューが深くなると相手を疲れさせてしまいます。

AI電話受付は、相手が話した言葉をそのまま理解しようとする方式です。「来週の火曜日って営業してますか」「駐車場はありますか」といった自由な問いかけに、登録された情報をもとに答えられます。その代わり、聞き取りの誤りや、登録されていない内容への対応といった、IVRにはない難しさがあります。

実際の現場では、どちらか一方を選ぶというより、IVRで大まかに振り分けてからAIが用件を聞く、あるいはAIが用件を聞いたうえでIVRのような定型の行き先に送る、といった組み合わせがよく使われます。

AI電話受付の仕組み

AI電話受付の内部では、いくつかの技術が連携して動いています。専門的な詳細は音声AIの仕組みで解説していますので、ここでは導入を検討する方が知っておきたい範囲に絞って説明します。

着信から記録・引き継ぎまでのAI電話受付の流れ
図1:AI電話受付の基本的な流れ

電話回線とAIがつながる流れ

まず、お客様がかけた電話は、電話会社の回線を通じて、AI電話受付のシステムに届きます。多くのサービスでは、クラウド上の電話基盤(通話を扱うためのサービス)を使って電話番号を用意し、その番号への着信をシステムが受け取ります。既存の代表番号から転送する形で使うこともあります。

着信を受け取ったシステムは、営業時間の設定や着信ルールを確認し、「AIが応答するのか」「スタッフの電話を鳴らすのか」「時間外の案内を流すのか」を決めます。この判断の部分は、AIというより、あらかじめ設定したルールに従って動くことがほとんどです。

聞く・考える・話すの三段階

AIが応答する場合、システムの中では次の三つの処理が繰り返されます。

聞く(音声認識):お客様の声を文字に変換します。音声認識、あるいは英語の略でSTT(Speech to Text)と呼ばれる処理です。

考える(言語モデル):文字になった発話の意味を読み取り、登録されている情報や会話の流れをもとに、どう返すかを決めます。ここで大規模言語モデル(LLM)が使われることが多くなりました。

話す(音声合成):返す内容を音声に変換して、電話の向こうに流します。音声合成、あるいはTTS(Text to Speech)と呼ばれる処理です。

この三段階が、一回のやりとりごとに、できるだけ短い時間で行われます。三つの処理が直列につながっているため、どこか一つが遅れると、相手には「返事が遅い」と感じられます。自然な会話に聞こえるかどうかは、各処理の精度だけでなく、この待ち時間の短さにも大きく左右されます。

電話の音声ならではの難しさ

対面やチャットと比べて、電話にはAIにとって難しい条件がいくつか重なっています。導入前に知っておくと、期待値を適切に設定できます。

一つ目は、音質です。電話の音声は、対面で聞く声と比べて伝わる音の幅が狭く、回線の状態によっては途切れたり、こもったりします。屋外や車内、にぎやかな店内からかけてくる方もいて、周囲の音が混ざることも珍しくありません。

二つ目は、話し方の多様さです。早口の方、ゆっくり話す方、方言のある方、言いよどみの多い方など、話し方は人によってさまざまです。電話では相手の口元や表情が見えないため、AIは音声だけを手がかりに理解しなければなりません。

三つ目は、固有名詞と数字です。人名、地名、商品名、日付、電話番号などは、聞き間違えると対応に直接影響します。「いちがつ」と「しちがつ」のように音が似ている言葉もあります。

こうした難しさがあるからこそ、AI電話受付の設計では「聞き取った内容を復唱して確認する」「大事な情報は一つずつ聞く」「うまく聞き取れないときは無理をせず人につなぐ」といった工夫が欠かせません。聞き取りの精度を高める工夫は、電話の音声認識の精度を上げるにはで詳しく紹介しています。

AIが「知っていること」はどこから来るのか

導入を検討するときに必ず押さえておきたいのが、「AIは何をもとに答えているのか」という点です。AI電話受付のAIは、何もしなくても自社の営業時間や料金体系を知っているわけではありません。答えの元になるのは、主に次の二つです。

登録した情報が古かったり、あいまいだったりすると、AIも古い情報やあいまいな案内をしてしまいます。逆に、情報が整理されていれば、AIの応答も安定します。AI電話受付の品質は、AIそのものの性能と同じくらい、事業者が用意する情報の質に左右されるのです。社内の情報を整える方法については、問い合わせ対応のナレッジベースの作り方も参考にしてください。

通話の記録と要約

AI電話受付のもう一つの大切な役割が、記録です。通話の内容を文字起こしし、要点を短くまとめた要約を残しておけば、あとから担当者が電話の内容を確認できます。「誰から、何の用件で、どんな対応を約束したか」が残っていれば、折り返しの際に同じことを聞き直す必要がなくなります。

通話要約の活用についてはAI通話要約とはで詳しく解説していますが、AI電話受付を検討するなら、応答の部分だけでなく、記録がどう残り、誰がどこで確認できるのかも必ず確認しておきましょう。

人の受付・留守番電話・代行サービスとの違い

AI電話受付を検討するとき、比較対象になるのは主に三つです。社内のスタッフが電話に出る方法、留守番電話(ボイスメール)、そして外部の電話代行サービスです。それぞれの特徴を、AI電話受付と並べて見ていきましょう。

社内スタッフ・留守番電話・電話代行・AI電話受付の比較表
図2:電話の受け方の比較

社内スタッフが電話に出る場合

社内のスタッフが電話に出る最大の強みは、柔軟さです。相手の声の調子から事情を察したり、その場で上司に確認したり、例外的な対応を判断したりできます。自社のことをよく知っている人が出るので、答えの正確さも期待できます。

一方で、電話が鳴るたびに目の前の仕事が中断されるという負担があります。接客中、施術中、運転中、会議中など、電話に出られない時間帯も必ず生まれます。少人数の会社では、受付専任の人を置くこと自体が難しい場合も多いでしょう。

AI電話受付は、スタッフの代わりになるというより、スタッフが出られない時間帯や、パターン化された問い合わせを肩代わりする存在だと考えると位置づけがはっきりします。スタッフが電話に出る体制はそのまま残し、出られなかった電話や時間外の電話をAIが受ける、という使い方が現実的です。

留守番電話(ボイスメール)の場合

留守番電話は、もっとも手軽に「電話に出られない時間」を補う方法です。費用もかからず、設定も簡単です。

ただし、留守番電話にはいくつかの弱点があります。まず、メッセージを残さずに切ってしまう人が少なくありません。要件を録音することに抵抗がある人や、急いでいる人は、そのまま別のお店や会社に電話をかけ直してしまうかもしれません。また、残されたメッセージを聞くには、録音を一件ずつ再生する必要があり、件数が多いと確認だけで時間がかかります。

AI電話受付は、相手に話しかけ、質問を返しながら用件を聞き取れる点が、録音を待つだけの留守番電話と大きく違います。「営業時間は何時までですか」といった簡単な質問なら、その場で答えて電話を終えることもできます。用件が記録として文字で残れば、確認の手間も減らせます。

電話代行サービスの場合

電話代行サービスは、外部のオペレーターが自社の名前で電話を受け、用件をメールやチャットで知らせてくれるサービスです。人が対応するため、受け答えの自然さや柔軟さでは安心感があります。

一方で、オペレーターは自社の業務を深く知っているわけではないため、答えられる範囲は限られます。多くの場合、「担当者から折り返します」と伝えて用件を記録するところまでが仕事になります。対応時間や受けられる件数は契約内容によって異なり、細かな案内の変更を頻繁に行うには、そのたびに依頼が必要になることもあります。

電話代行とAI電話受付の比較は、電話代行とAI電話受付の違いで7つの軸に分けて詳しく整理しています。どちらが優れているかではなく、自社の電話の性質に合うのはどちらか、あるいは併用するのか、という視点で考えるのがおすすめです。

AI電話受付でできること・できないこと

概要のみ触れ、詳細はAI電話受付にできないことに譲ります。

ここからは、AI電話受付で「できること」と「できないこと(任せるべきでないこと)」を具体的に整理します。この線引きが、導入の成否を分けるもっとも重要なポイントです。

できること1:よくある質問への回答

営業時間、定休日、所在地、アクセス、駐車場の有無、取り扱っている商品やサービスの種類など、答えが決まっている質問への回答は、AI電話受付がもっとも得意とする仕事です。こうした質問は、件数が多いわりに一件あたりの内容は単純で、スタッフにとっては「わざわざ手を止めて答えるのが負担」になりやすい問い合わせでもあります。

ポイントは、AIに答えさせる内容を事前にきちんと登録しておくことです。「年末年始の営業日」「臨時休業」など、時期によって変わる情報は、更新を忘れると誤案内の原因になります。情報を更新する担当と頻度を決めておきましょう。

できること2:用件の聞き取りと記録

「誰から」「何の件で」「どうしてほしいのか」を聞き取り、記録として残すことも、AI電話受付の大切な役割です。名前、連絡先、用件の概要、希望する折り返しの時間帯などを聞き取って記録すれば、担当者は電話に出られなかったとしても、あとから状況を把握できます。

聞き取りの精度を上げるには、質問を一つずつ区切ること、聞き取った内容を復唱して確認すること、聞き取りにくい情報(固有名詞や数字)は言い方を変えて確認することが効果的です。

できること3:適切な行き先への振り分け

用件を聞いたうえで、「この内容なら営業部」「この内容なら折り返し」「緊急ならこの番号」というように、行き先を振り分けることもできます。IVRのように番号を押してもらうのではなく、話した内容から振り分けられるため、相手にとってわかりやすいのが利点です。

ただし、振り分けのルール自体は事業者が決める必要があります。どの用件をどこに送るのか、緊急時はどうするのか、担当者が不在のときはどうするのかを、あらかじめ整理しておきましょう。

できること4:時間外・混雑時の受け皿

営業時間外や、電話が集中してスタッフが出られない時間帯に、AIが代わりに応答することで、「つながらない」状態を減らせます。電話の取りこぼしを減らす考え方については、電話の取りこぼしを減らす方法で詳しく解説しています。

できないこと1:予約・契約・支払いの確定

AI電話受付に任せるべきでない代表例が、予約や契約、支払いなどの「確定」です。予約の希望を聞き取ることはできても、実際に枠を押さえて確定するかどうかは、在庫や人員の状況、例外的な事情を知っているスタッフが判断するほうが安全です。

AIが「ご予約を承りました」と伝えたのに、実際には枠が埋まっていた、という事態が起きれば、信頼を大きく損ないます。AIは「ご希望を承りました。担当者が確認のうえ、改めてご連絡します」と伝え、確定はスタッフが行う、という流れにしておくのが基本です。

できないこと2:専門的な判断や個別の相談

医療、法律、税務、保険など、専門的な判断が必要な相談に、AIが個別の答えを返すのは避けるべきです。一般的な案内(受付時間、相談の予約方法など)にとどめ、個別の内容は専門家につなぐように設計しましょう。

できないこと3:感情的な対応が必要な場面

強い不満を抱えている方、困りごとで動揺している方、謝罪や配慮が必要な場面では、AIよりも人が対応するほうが適しています。こうした場面を検知したら、すぐに担当者へ引き継ぐか、折り返しを約束するように設計しておくことが大切です。AIに任せない範囲の決め方は、AI電話受付にできないことでさらに詳しく解説しています。

「できない」を前提にした設計が信頼をつくる

AI電話受付の設計で大切なのは、「できないことを隠す」のではなく、「できないことをはっきり伝える」ことです。AIが答えられない質問を受けたときに、もっともらしい答えを作ってしまうより、「その件は担当者からご案内します」と正直に伝えるほうが、結果的にお客様の信頼につながります。

また、電話に出ているのがAIであることを、最初の名乗りで伝えておくことも大切です。「AIの受付がご用件をお伺いします」と一言添えるだけで、相手は心構えができ、聞き取りに失敗したときにも理解を得やすくなります。AIであることの伝え方については、AIが電話に出ることを伝えるべきかで詳しく扱っています。

AI電話受付が向いている会社・向いていない会社

AI電話受付は、どんな会社にも同じように効果があるわけではありません。電話の性質によって、向き不向きがはっきり分かれます。ここでは、判断の目安になる特徴を整理します。

向いている会社の特徴

同じような質問の電話が多い会社:営業時間、場所、取り扱い内容、手続きの方法など、答えが決まっている質問が電話の多くを占めている場合、AIに任せられる範囲が広くなります。まずは一週間ほど、どんな電話がかかってきたかを簡単にメモしてみると、自社の電話の傾向がつかめます。

電話に出られない時間帯がはっきりある会社:施術や接客、現場作業、運転などで手が離せない時間がある業種では、AIがその時間の受け皿になります。飲食店のランチタイム、美容室の施術中、工務店の現場作業中などが典型的です。業種ごとの考え方は、歯科医院や飲食店など、業種別ガイドでも紹介しています。

営業時間外にも電話がかかってくる会社:夜間や休日にも問い合わせがある業種では、留守番電話よりも一歩進んだ受け方としてAIが役立ちます。夜間・休日の受け方は営業時間外の電話対応ガイドで詳しく解説しています。

少人数で電話を回している会社:受付専任のスタッフを置けない会社では、電話のたびに誰かの手が止まります。AIが一次対応を受け持つことで、本来の仕事に集中できる時間を増やせます。

電話の内容を記録・共有したい会社:電話の内容が担当者の頭の中にしか残らず、引き継ぎがうまくいかないという悩みがある場合、AIによる記録と要約が役に立ちます。

向いていない、または慎重に検討したい会社

一件ごとの電話が複雑で、個別判断が必要な会社:電話のほとんどが専門的な相談や個別の交渉である場合、AIが受け持てる範囲は狭くなります。この場合は、AIを応答の主役にするのではなく、受付時間の案内や折り返しの受付にとどめるほうがよいでしょう。

電話の件数がごく少ない会社:一日に数件しか電話がかからない場合、AIを導入して設定や情報の更新を続ける手間に見合わないこともあります。留守番電話や転送設定の見直しで十分な場合もあります。

電話そのものが重要な接客体験になっている会社:電話での会話そのものがサービスの一部になっている業種(たとえば、長年のお得意様との関係を電話で築いている会社など)では、AIの導入範囲を慎重に決める必要があります。常連のお客様には直通の番号を案内する、といった工夫も考えられます。

判断に迷ったら「時間帯」と「用件」で切り分ける

向き不向きの判断に迷ったら、電話を「時間帯」と「用件」の二つの軸で切り分けてみましょう。たとえば、「営業時間内で、専門的な用件」はスタッフが対応する、「営業時間内で、定型的な用件」はAIが答える、「営業時間外のすべての用件」はAIが聞き取って翌営業日に折り返す、といった具合です。

このように切り分けると、AIの導入を「すべてか、ゼロか」で考えずに済み、効果が出やすい部分から小さく始められます。

導入前に決めておくこと

AI電話受付を導入する前に、社内で決めておきたいことを整理します。ここをあいまいにしたまま始めると、導入後に「思っていたのと違う」となりやすい部分です。導入の具体的な手順は、AI電話受付の導入手順とチェックリストで詳しく解説しています。

目的を一つに絞る

最初に、AI電話受付を導入する目的を一つに絞りましょう。「営業時間外の取りこぼしを減らしたい」「定型的な問い合わせでスタッフの手が止まるのを減らしたい」「電話の内容をきちんと記録したい」など、目的によって設計の重点が変わります。目的が複数ある場合も、まず一つから始めて、うまくいったら広げるほうが失敗が少なくなります。

AIに任せる範囲と、任せない範囲を書き出す

次に、AIに任せる範囲と任せない範囲を、具体的な用件ごとに書き出します。たとえば次のような表を作ってみるとよいでしょう。

用件AIの対応人の対応
営業時間・所在地の質問登録情報をもとに回答不要
予約の希望希望日時と連絡先を聞き取り記録空き状況を確認し、確定の連絡
料金の質問料金表のページを案内、詳細は担当者から個別の見積もり
苦情・トラブルお詫びと用件の聞き取り、すぐに引き継ぎ対応と判断
専門的な相談相談の受付方法を案内専門家が対応

この表があれば、AIに登録する情報や会話のルールを決めるときの土台になりますし、スタッフにとっても「AIがどこまでやってくれるのか」がはっきりします。

引き継ぎのルールを決める

AIが対応しきれない電話を、どう人に引き継ぐかを決めておきます。主な選択肢は次の三つです。

どの方法を選ぶにしても、「誰が」「いつまでに」対応するのかを決めておくことが大切です。折り返しを約束したのに誰も対応しない、という状態がもっとも信頼を損ないます。

情報の更新担当を決める

AIが答える内容は、登録した情報に依存します。営業時間の変更、臨時休業、新しいサービスの開始などがあったときに、誰が情報を更新するのかを決めておきましょう。更新が漏れると、AIは古い情報を案内し続けてしまいます。

個人情報と録音の扱いを確認する

AI電話受付では、通話の内容が文字や音声として記録されます。名前や電話番号などの個人情報も含まれるため、利用目的、保存期間、閲覧できる人の範囲を決めておく必要があります。通話を録音する場合は、その旨を相手に伝える案内も検討しましょう。個人情報の扱いについては電話対応と個人情報保護法、録音の告知については通話録音の告知はどうする?で解説しています(いずれも一般的な情報であり、法的助言ではありません)。

テストの方法を決める

本番で使い始める前に、社内で何度もテスト通話を行いましょう。よくある質問を一通り投げかけてみる、わざと聞き取りにくい話し方をしてみる、登録していない質問をしてみる、途中で話をさえぎってみる、といったテストで、思わぬ弱点が見つかります。テストの観点は音声AIのテスト方法にまとめています。

小さく始めるための三つの型

最後に、AI電話受付を小さく始めるときの代表的な型を三つ紹介します。自社の状況に近いものから試してみてください。

型1:営業時間外だけAIが受ける。営業時間内はこれまでどおりスタッフが電話に出て、営業時間外の着信だけをAIが受けます。AIは営業時間の案内と用件の聞き取りを行い、翌営業日にスタッフが折り返します。日中の業務に影響を与えずに始められるため、もっとも導入しやすい型です。

型2:スタッフが出られなかった電話だけAIが受ける。一定時間呼び出しても誰も出なかった場合に、AIへ切り替わるようにします。忙しい時間帯の取りこぼしを補う使い方で、スタッフは出られるときには出る、という今の働き方を変えずに済みます。

型3:よくある質問だけAIが答え、それ以外はすぐ人へ。電話の冒頭でAIが用件を聞き、営業時間や場所などの定型的な質問だけに答えます。それ以外の用件は、すぐにスタッフへつなぐか、折り返しを約束します。定型的な質問が多い業種で、スタッフが電話に出る回数そのものを減らしたい場合に向いています。

どの型から始めても、記録を読みながら範囲を調整していけば、自社に合った形に近づいていきます。最初から完璧な設計を目指すより、まず動かしてみて、実際の電話から学ぶ姿勢が大切です。

導入でよくあるつまずきと避け方

AI電話受付の導入でつまずく会社には、いくつかの共通点があります。あらかじめ知っておくことで、同じ失敗を避けやすくなります。

つまずき1:最初からすべての電話をAIに任せようとする

もっとも多いのが、最初からすべての電話をAIに受けさせようとするケースです。すべての用件に対応できるようにしようとすると、登録すべき情報が膨大になり、設定が終わらないまま導入が止まってしまいます。仮に始められても、想定外の質問が多く、AIが答えられない場面が続いて、スタッフもお客様も不満を抱えることになりがちです。

避け方はシンプルで、「営業時間外だけ」「よくある質問の上位だけ」など、範囲を狭く区切って始めることです。範囲が狭ければ、登録する情報も少なく、テストも短時間で済みます。うまくいったことを確認してから、少しずつ範囲を広げていきましょう。

つまずき2:ナレッジを一度登録したら終わりにしてしまう

導入時には丁寧に情報を登録したのに、その後は誰も更新しない、というケースもよくあります。営業時間の変更や新サービスの開始を反映しないまま運用を続けると、AIは古い情報を案内し続けます。お客様から見れば、それは「会社が間違った案内をした」のと同じです。

避け方は、情報を更新するタイミングを業務の流れに組み込むことです。たとえば、「Webサイトのお知らせを更新したら、同じ日にAIの情報も更新する」「月初めに登録情報を見直す」といったルールを決めておくと、更新漏れを減らせます。

つまずき3:引き継ぎ先が決まっていない

AIが用件を聞き取って記録しても、その記録を誰が見て、誰が折り返すのかが決まっていなければ、電話は結局取りこぼされたのと同じです。「AIが受けたのだから大丈夫だろう」と全員が思い込み、誰も対応しないまま時間が過ぎる、という事態は避けなければなりません。

避け方は、記録の確認担当と、折り返しの期限を明確にすることです。担当者が休みの日の代わりの担当も決めておきましょう。記録が届いたことを通知で知らせる仕組みがあれば、見落としを減らせます。

つまずき4:テストが社内の人だけで終わっている

社内の人だけでテストをすると、自社の言葉づかいや略語に慣れているため、AIが実際のお客様の話し方にどう反応するかを見落としがちです。お客様は、社内では使わない言い回しをしたり、質問の前に事情を長く説明したり、途中で話題を変えたりします。

避け方として、家族や知人など、自社の業務をよく知らない人にテスト通話をお願いする方法があります。実際のお客様に近い話し方で試してもらうことで、思わぬ弱点が見えてきます。

つまずき5:効果の測り方を決めていない

導入したものの、効果があったのかどうかがわからない、という声もよく聞かれます。導入前の状態を記録していなければ、比べようがありません。

避け方は、導入前に「今の状態」を簡単に記録しておくことです。一日に何件の電話があり、そのうち何件に出られなかったのか、営業時間外の着信はどのくらいあるのか、といった基本的な数字を、数週間分でも残しておけば、導入後の変化を確認できます。

運用を始めてから大切にしたいこと

AI電話受付は、導入した日がゴールではありません。むしろ、使い始めてからの数週間で、どれだけ細かく調整できるかが品質を左右します。運用を始めてから意識したいポイントを紹介します。

通話の記録を定期的に読む

最初のうちは、AIが対応した通話の記録や要約を、できれば毎日、少なくとも週に一度は読み返しましょう。「この質問には答えられていない」「この言い回しは誤解を招きそう」「この用件はAIに任せず最初から人につないだほうがよい」といった改善点が、記録の中から見えてきます。

記録を読むときは、うまくいかなかった通話だけでなく、うまくいった通話にも目を通すことをおすすめします。どんな質問にうまく答えられているのかを知ることで、AIに任せる範囲を広げる判断がしやすくなります。

「答えられなかった質問」をナレッジに足していく

AIが答えられなかった質問は、ナレッジを充実させるための貴重な材料です。同じ質問が何度も来ているなら、答えを用意して登録しましょう。逆に、AIに答えさせるべきでない質問なら、「担当者からご案内します」と伝えるルールを明確にします。

この「答えられなかった質問を拾って、答えを足す」という作業を続けることで、AI電話受付は少しずつ自社に合った形に育っていきます。

スタッフの声を聞く

AI電話受付の影響を一番よく知っているのは、引き継ぎを受けるスタッフです。「折り返しの記録がわかりにくい」「この用件はもっと早くつないでほしい」「この質問はAIに任せても大丈夫そう」といった現場の声を、定期的に集めましょう。

導入の目的が「スタッフの負担を減らすこと」であれば、スタッフ自身が「楽になった」と感じているかどうかが、もっとも大切な評価軸になります。

お客様の反応に注意を払う

AIが応答することに戸惑うお客様もいます。「人と話したい」という要望があったときに、すぐに人へ切り替えられる道を用意しておくことは、AI電話受付を運用するうえでの基本的な配慮です。お客様からの指摘や要望は、設計を見直すきっかけとして記録しておきましょう。

数字で振り返る

運用が落ち着いてきたら、数字でも振り返ってみましょう。たとえば、AIが対応した件数、そのうち人に引き継いだ件数、折り返しまでにかかった時間、営業時間外の着信の件数などです。導入前の状態と比べることで、効果があったのか、どこを改善すべきかが見えてきます。電話対応の指標については、コールセンターのKPI一覧で基本的な考え方をまとめています。

AI-SNS.IO Callでの位置づけ

最後に、私たちAI-SNS.IOが提供しているCallで、ここまで説明してきた考え方がどのように形になっているかを簡単に紹介します。

Callは、電話の受け方と記録をまとめて扱うためのサービスです。管理画面では、IVR(自動音声応答)と着信ルーティング、曜日や時間帯ごとの営業時間ルール、キューごとのボイスメール、IVRメニューからのコールバック依頼、通話履歴とAIによる通話要約などを設定・確認できます。AIエージェントの画面では、ファイルやWebサイト、Q&A、Notionといったナレッジソースを登録し、プレイグラウンドで応答を試すことができます。

Callでは、予約や契約の確定は事業者のスタッフが行うことを前提にしています。通話の記録とAIによる通話要約で、スタッフが用件を確認してから対応する、という役割分担です。日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。電話回線でのAI応答を含む各機能の提供状況はCallの機能一覧でご確認ください。

設定の手順はCallの使い方ガイドにまとめていますので、あわせてご覧ください。

「AI電話対応とは?仕組みと向く会社を解説」の続きとして、製品全体はAI-SNS.IO Callのトップで確認でき、アカウント登録は月額0円から始めるから進められます。

AI電話受付のよくある質問30もあわせてご覧ください(AI電話対応とは?仕組みと向く会社を解説からの関連案内)。

あわせて読みたい記事:業種別のAI電話対応ガイド|28業種の受け方、電話の自動応答メッセージ例文集|営業時間外・混雑時・休業日、電話の顧客体験を良くする7つのポイント|CX改善、中小企業の電話対応を効率化する方法|少人数でも回る仕組み。

まとめ

AI電話受付は、電話の一次対応をAIが受け持つ仕組みです。よくある質問への回答、用件の聞き取りと記録、行き先への振り分け、時間外や混雑時の受け皿といった役割を担える一方で、予約や契約の確定、専門的な判断、感情的な配慮が必要な場面は、人が受け持つべき領域です。

導入を成功させるカギは、ツールの性能よりも、「AIに任せる範囲」と「人が受け持つ範囲」をはっきり決めること、そして使い始めてから記録を読み、ナレッジを足し続けることにあります。

まずは、自社にかかってくる電話を一週間ほど記録し、「時間帯」と「用件」で分類してみてください。どの電話をAIに任せられそうか、具体的なイメージが見えてくるはずです。

電話は、お客様が「今すぐ話したい」と思ったときに選ぶ窓口です。その気持ちに応えられる時間と範囲を少しでも広げることが、AI電話受付を導入するいちばんの意味だといえます。AIに任せられる部分はAIに任せ、人にしかできない対応に人の時間を使う。その配分を自社に合わせて考えることが、これからの電話対応づくりの出発点になります。

よくある質問

AI電話受付とは何ですか?

かかってきた電話にAIが最初に応答し、よくある質問に答えたり、用件を聞き取って記録したり、担当者に引き継いだりする仕組みです。電話の一次対応を自動化するもので、専門的な判断や予約・契約の確定などは、引き続き人が受け持つのが基本的な考え方です。

AI電話受付と留守番電話の違いは何ですか?

留守番電話は相手がメッセージを録音するのを待つだけですが、AI電話受付は相手に話しかけ、質問を返しながら用件を聞き取れます。営業時間などの簡単な質問であればその場で答えることもでき、聞き取った内容を文字の記録として残せる点も異なります。

AI電話受付で予約を受け付けることはできますか?

予約の希望日時や連絡先を聞き取って記録することはできますが、予約の確定はスタッフが空き状況を確認してから行うのが安全です。AIが確定を伝えてしまうと、実際には枠が埋まっていた場合にトラブルになるため、「担当者が確認のうえご連絡します」と伝える設計がおすすめです。

どんな会社にAI電話受付は向いていますか?

同じような質問の電話が多い会社、施術や接客などで電話に出られない時間帯がある会社、営業時間外にも電話がかかってくる会社、少人数で電話を回している会社などに向いています。一方、ほとんどの電話が個別の判断を必要とする場合は、AIの役割を受付時間の案内や折り返しの受付に絞るのが現実的です。

AIが答えられない質問を受けたらどうなりますか?

あらかじめ決めたルールに従って、担当者に転送する、折り返しを約束して用件を記録する、別の窓口を案内する、といった対応をとります。もっともらしい答えを作らせるのではなく、「担当者からご案内します」と正直に伝えるように設計することが、信頼を保つうえで大切です。

導入前に準備しておくべきことは何ですか?

導入の目的を一つに絞ること、AIに任せる用件と任せない用件を書き出すこと、引き継ぎのルールと担当者を決めること、AIに登録する情報(営業時間やよくある質問など)を整理すること、個人情報や録音の扱いを確認すること、そして本番前のテスト通話の方法を決めておくことが挙げられます。

電話に出ているのがAIだと伝えたほうがよいですか?

伝えることをおすすめします。最初の名乗りで「AIの受付がご用件をお伺いします」などと一言添えておくと、相手は心構えができ、聞き取りに失敗したときにも理解を得やすくなります。また、人と話したいという要望にすぐ応えられるよう、人へ切り替える道も用意しておきましょう。

AI電話受付の導入にはどれくらいの準備期間が必要ですか?

準備期間は、AIに任せる範囲によって大きく変わります。営業時間外の受付や、よくある質問の上位数件への回答など、範囲を狭く絞れば、情報の整理とテスト通話を中心に比較的短い期間で始められます。範囲を広げるほど、登録する情報や引き継ぎのルールが増えるため、まずは小さく始めて、記録を見ながら段階的に広げるのがおすすめです。

方言や早口の電話にもAIは対応できますか?

音声認識の性能は向上していますが、方言や早口、周囲の雑音、回線の状態によっては、聞き取りを誤ることがあります。そのため、名前や日時、電話番号などの大切な情報は復唱して確認する、うまく聞き取れないときは無理をせず担当者に引き継ぐ、といった設計で補うことが大切です。本番前に、さまざまな話し方でテスト通話をしておくと安心です。

AI電話受付の費用はどのように考えればよいですか?

費用の体系はサービスによって異なり、月額の基本料金、通話時間に応じた料金、電話番号の利用料などが組み合わさっていることが一般的です。比較するときは、金額だけでなく、AIに任せる範囲でどれだけスタッフの手が止まらなくなるか、取りこぼしていた電話をどれだけ受けられるようになるか、といった効果とあわせて考えましょう。Callの料金や提供条件については、公式サイトで最新の情報をご確認ください。

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