AI電話受付の基礎

AI電話受付にできないこと|人に引き継ぐべき場面の見極め方

AI-SNS.IO 編集部 · 公開

AI電話受付にできないこと|人に引き継ぐべき場面の見極め方(AI-SNS.IO Call ブログ)

AI電話受付の説明を読むと、できることの一覧が並んでいます。営業時間を案内できる、用件を聞き取れる、記録を残せる、時間外も応答できる。けれども、導入を考える側が本当に知りたいのは、その裏側、つまり「何を任せてはいけないのか」ではないでしょうか。できないことを知らないまま導入すると、AIが答えるべきでない質問に答えてしまったり、人が対応すべき電話がAIの中で行き場を失ったりして、お客様の信頼を損ねかねません。

AI電話受付を上手に使っている事業者は、AIの能力を過大にも過小にも見積もっていません。AIが得意なことを任せ、苦手なことは最初から人に回す。その境目を、自社の電話に合わせて具体的に決めています。

この記事では、AI電話受付が苦手とする問い合わせの種類、誤った案内を防ぐための情報の整え方、人に引き継ぐべき合図(トリガー)の決め方、そして予約・契約・支払いを人が確定する理由を、具体例とチェックリストを交えて解説します。AI電話受付の全体像を先に知りたい方は、AI電話受付とはをあわせてご覧ください。

AIに任せる範囲を決める理由

まず、なぜ「任せる範囲」を先に決める必要があるのかを確認しておきます。

AIは「わからない」と言うのが苦手

AI電話受付で使われる言語モデルは、質問に対して、もっともらしい文章を作るのが得意です。裏を返せば、知らないことを聞かれたときにも、それらしい答えを作ってしまうことがあります。人であれば「ちょっと確認します」と言える場面で、AIは確認せずに答えてしまうおそれがあるのです。

この性質は、設定によってある程度抑えられます。登録した情報の範囲でだけ答える、情報にないことは答えずに担当者につなぐ、と指示しておくことです。ただし、その指示が効くのは、「どこまでが範囲か」が明確に決まっている場合に限られます。範囲があいまいなままだと、AIは境界線の上で迷い、答えるべきでない質問に答えてしまうことがあります。

一度の誤案内が、多くの正しい案内を帳消しにする

たとえほとんどの電話で正しく案内できていても、一件でも「その日時で予約が取れました」と誤って伝えてしまえば、そのお客様にとっての体験は最悪のものになります。予約したつもりで来店したのに予約が入っていない、という事態は、お店の信頼を大きく損ないます。

AI電話受付の評価は、平均点ではなく、最悪の一件で決まることがあります。だからこそ、誤りが起きたときの影響が大きい領域は、最初からAIに任せない、という判断が大切になります。

「任せない」と決めることで、AIは使いやすくなる

任せる範囲を絞ると、AIの役に立つ場面が減るように感じるかもしれません。実際には逆です。範囲が明確になると、AIに渡す情報を絞り込めるため、答えの正確さが上がります。テストすべき場面も明確になり、運用を始めてからの改善もしやすくなります。

決まった答えの案内や聞き取りはAI、判断や確定や感情への配慮は人が担う
図1:AIに任せること・人が担うこと

AIが苦手な問い合わせ

ここからは、AI電話受付が苦手とする問い合わせを、種類ごとに具体例とあわせて見ていきます。

1. 個別の状況を踏まえた判断が必要な問い合わせ

例

こうした問い合わせは、相手の事情を詳しく聞き、専門的な知識に照らして判断する必要があります。一般的な説明はできても、個別の判断をAIが下すのは危険です。特に、医療、法律、お金に関わる判断は、誤ったときの影響が大きいため、AIは用件を聞き取って担当者に引き継ぐ役割にとどめます。

AIの適切な返し方の例「ご状況に合わせたご案内が必要ですので、担当者から折り返しご連絡いたします。お名前とご連絡先をお聞かせください。」

2. 登録していない情報についての質問

例

事業者が登録していない情報について聞かれた場合、AIは答えを持っていません。それにもかかわらず推測で答えてしまうと、誤った情報を伝えることになります。登録していない質問には答えず、折り返しを案内するように設定しておくことが大切です。

なお、このような質問が何度も来るようであれば、それはナレッジに追加すべき情報の候補です。答えてよい内容であれば、確認したうえで登録しましょう。

3. 感情への配慮が必要な問い合わせ

例

感情がこもった電話では、言葉の内容よりも、相手の気持ちを受け止めることが大切になります。AIは丁寧な言葉で返すことはできても、相手の状況に寄り添った対応には限界があります。こうした電話は、早めに人に引き継ぐ条件として決めておきましょう。

4. あいまいで、何度もやりとりが必要な問い合わせ

例

人であれば、話を整理しながら聞き出すことができますが、AIは、あいまいな話から用件を正確に取り出すのが苦手な場合があります。何度聞き返しても用件が定まらないときは、無理にAIで続けず、人への引き継ぎや、メッセージを残してもらう形に切り替えるほうが、相手の負担は少なくなります。

5. 聞き取りの条件が悪い電話

例

AIの音声認識は、音の条件が悪いと誤りが増えます。聞き返しを繰り返すと、相手はいらだちを感じます。聞き取りがうまくいかない状態が続いた場合は、早めに切り替える設計にしておきましょう。

6. 本人確認が必要な問い合わせ

例

本人確認が必要な手続きは、確認の手順を誤ると、情報が本人以外に伝わるおそれがあります。AIに本人確認を任せるかどうかは慎重に判断し、基本的には担当者が対応する形にしておくのが安全です。

苦手な問い合わせの整理表

種類例AIの役割
個別の判断プラン選び、症状、契約聞き取って担当者へ
登録外の情報周辺情報、未発表の予定答えずに折り返しを案内
感情への配慮苦情、不安な相談早めに人へ
あいまいな用件複数の用件、話が飛ぶ切り替えて人かメッセージへ
聞き取り条件が悪い雑音、電波、小声聞き返しは控えめに切り替え
本人確認登録情報の確認・変更担当者が対応

誤案内を防ぐナレッジ設計

AIが誤った案内をする原因の多くは、AIが参照する情報(ナレッジ)の作り方にあります。ここでは、誤案内を防ぐためのナレッジの設計を、手順に沿って紹介します。

手順1:答えてよい質問を「一問一答」で書く

ナレッジは、長い説明文をそのまま登録するよりも、「質問」と「答え」の組み合わせで書くほうが、AIが正しく参照しやすくなります。

よくない例「当店は駅から近く、平日は十一時から営業していますが、土日は少し早く開けることもあり、祝日は日によって異なります。」

よい例

よくない例のように「こともある」「日によって異なる」といったあいまいな書き方をすると、AIがその部分を都合よく解釈して、断定的な答えを作ってしまうおそれがあります。確定していない情報は、「担当者から案内する」という答えとして書いておきましょう。

手順2:答えてはいけない質問を書く

答えてよい質問と同じくらい大切なのが、答えてはいけない質問を書いておくことです。

これらについて聞かれたときの返し方も、あわせて決めておきます。「その件は担当者からご案内します」のように、統一した返し方にしておくと、AIの対応がぶれにくくなります。

手順3:情報の「有効期限」を管理する

営業時間、キャンペーン、臨時休業など、時期によって変わる情報には、いつまで有効なのかを書いておきます。

有効期限が過ぎた情報が残っていると、AIは古い情報を案内してしまいます。ナレッジの担当者が、定期的に期限を確認して更新する流れを作っておきましょう。

手順4:同じことを二か所に書かない

同じ情報が複数の場所に書かれていると、片方だけ更新されて内容が食い違うことがあります。AIがどちらを参照するかによって、答えが変わってしまいます。一つの情報は一か所にだけ書き、他の場所からは参照する形にしておくと、更新漏れを防げます。

手順5:テストで「答えない」ことを確認する

ナレッジを作ったら、答えてはいけない質問を実際にAIに投げかけて、答えずに担当者への引き継ぎを案内するかを確認します。答えてよい質問のテストより、答えてはいけない質問のテストのほうが重要です。

テストで投げかける質問の例

チェックリスト:ナレッジ

引き継ぎのトリガー

AIの対応中に、人への引き継ぎに切り替える合図を「トリガー」と呼びます。トリガーをあらかじめ決めておくことで、AIが対応しきれない電話を、適切なタイミングで人に渡せます。

トリガー1:相手が人を希望した

「人と話したい」「担当者につないで」「オペレーターをお願いします」といった言葉が出たら、すぐに引き継ぎに切り替えます。言い方はさまざまなので、テストでいろいろな表現を試し、確実に反応するかを確認しておきましょう。

その場で人につなげない時間帯でも、「担当者から折り返しご連絡します」と伝えて連絡先を聞き取るなど、人に届く道を必ず用意しておきます。

トリガー2:急ぎの用件だとわかった

「至急」「今すぐ」「水が止まらない」「具合が悪い」など、急ぎを示す言葉や状況が出たら、人への引き継ぎを優先します。どのような用件を急ぎとみなすかは、業種によって異なるため、自社の急ぎの用件の例を具体的に挙げて設定しておきましょう。

トリガー3:感情の高まりを示す言葉が出た

「困っている」「納得できない」「何度も電話している」といった言葉は、相手が不満や不安を抱えているサインです。AIで対応を続けるより、人が受け止めるほうがよい場面です。

トリガー4:聞き取りの失敗が続いた

同じ質問を二回聞き返しても用件が聞き取れない場合は、三回目を聞き返すのではなく、人への引き継ぎや、メッセージを残してもらう形に切り替えます。聞き返しの回数に上限を決めておきましょう。

トリガー5:ナレッジにない質問、答えてはいけない質問が来た

AIが答えを持っていない質問や、答えてはいけない質問を受けたときは、担当者への引き継ぎを案内します。この場合、急ぎでなければ、その場で人につなぐより、折り返しの依頼として記録するほうが現実的なことも多いでしょう。

トリガー6:同じ相手から何度も電話がある

短い期間に同じ相手から何度も電話がかかってくる場合、前回の対応で用件が解決していない可能性があります。仕組みが対応していれば、そうした電話は最初から人につなぐ、あるいは記録で目立たせる、といった扱いを検討しましょう。

引き継ぎの形を決める

トリガーごとに、どの形で引き継ぐかを決めておきます。

トリガー引き継ぎの形の例
人を希望したその場で担当者へ。不在なら折り返しの依頼
急ぎの用件その場で担当者へ。つながらなければ目立つ記録で折り返し
感情の高まりその場で担当者へ
聞き取りの失敗メッセージを残してもらう、または折り返しの依頼
ナレッジ外・禁止事項折り返しの依頼
繰り返しの電話担当者へ、または記録で目立たせる

引き継ぐときに、AIが聞き取った内容を担当者に渡せるようにしておくと、相手は同じ説明を繰り返さずに済みます。

トリガーを検知し、引き継ぎの形を選び、聞き取った内容を渡し、担当者が対応する流れ
図2:引き継ぎのトリガーから人へ

予約・契約・支払いは人が確定する

AI電話受付に任せてはいけないことの中で、もっとも明確に線を引いておきたいのが、予約・契約・支払いの確定です。

なぜ確定を人が行うのか

予約、契約、支払いには、共通する特徴があります。

AIの聞き取りには誤りが起こりうるため、聞き違えた日時で予約を確定してしまうと、取り返しのつかない行き違いが生まれます。こうした領域では、AIは希望を聞き取って記録するところまでを担当し、確定は人が内容を確認してから行います。

AIが担う部分と、人が担う部分

予約の場合

契約の場合

支払いの場合

「まだ確定していない」ことを伝える

AIが希望を聞き取ったあとは、まだ確定していないことを、相手にはっきり伝えます。「ご希望を承りました。担当者が確認のうえ折り返しご連絡いたします。この時点ではまだご予約は確定しておりません」といった形です。この一言がないと、相手は確定したと思い込んでしまうことがあります。

AI電話にできないことを、返し方の例文で整理する

AIに任せない範囲を決めたら、その範囲の質問が来たときに、AIがどう返すかを具体的な言葉で決めておきます。返し方が決まっていないと、AIはその場で文章を作ろうとし、断定的な言い方や、確定と受け取られる言い方をしてしまうことがあります。場面ごとの返し方の例を紹介します。

予約の確定を求められたとき

相手:「じゃあ、その時間で予約しておいてください。」AI:「ご希望の日時を承りました。空き状況をスタッフが確認のうえ、本日中に折り返しご連絡いたします。この時点では、まだご予約は確定しておりません。」

ポイントは、「承った」のは希望であり、予約ではないことを言葉で示すことです。「お待ちしております」「お取りしました」といった言い方は使わないように、スクリプトで制限しておきます。

個別の判断を求められたとき

相手:「この場合、どっちのプランがお得ですか。」AI:「ご利用の状況に合わせたご案内が必要ですので、担当者から詳しくご説明いたします。お名前とご連絡先をお聞かせいただけますか。」

「一般的には○○です」と答えたくなる場面ですが、一般論が相手の状況に当てはまらないこともあります。判断に関わる質問は、一般論も含めて担当者に任せるほうが安全です。

登録していないことを聞かれたとき

相手:「そちらの近くに、子どもを預けられるところはありますか。」AI:「申し訳ございません。そのご質問には、こちらではお答えできません。ほかにご用件はございますか。」

事業と関係のない質問の場合は、折り返しを約束する必要はありません。答えられないことを伝え、本来の用件に戻ります。

感情的な言葉が出たとき

相手:「もう何度も電話してるんですけど、全然つながらないじゃないですか。」AI:「ご不便をおかけして申し訳ございません。担当者におつなぎいたしますので、少々お待ちください。」

言い訳や説明を重ねず、まずお詫びし、すぐに人へ引き継ぎます。その場でつなげない場合は、「担当者から優先して折り返しご連絡いたします」と伝え、記録を目立たせます。

本人確認が必要な内容を聞かれたとき

相手:「私の契約って、いつまででしたっけ。」AI:「ご契約の内容は、ご本人様の確認をしたうえで担当者からご案内いたします。折り返しのご連絡先をお聞かせいただけますか。」

AIが契約の情報を読み上げることは避け、本人確認の手順を持つ担当者に任せます。

返し方を決めるときの三つの約束

  1. 断定しない:確定や判断を含む言い方をしない。
  2. 次に何が起きるかを伝える:折り返し、担当者への転送など、その後の流れを示す。
  3. 守れない約束をしない:折り返しの時間は、実際に守れる範囲で伝える。

任せる範囲を社内で合意する進め方

AIに任せる範囲は、設計の担当者が一人で決めるより、関係する人たちで合意しておくほうが、運用が安定します。合意がないまま始めると、「なぜAIが答えなかったのか」「なぜAIが答えてしまったのか」といった行き違いが社内で起きやすくなります。

手順1:たたき台を作る

設計の担当者が、この記事のワークシートを使って、任せる範囲と任せない範囲のたたき台を作ります。用件ごとに、AIの役割(案内、聞き取り、引き継ぎ)と、引き継ぎ先を一覧にします。

手順2:現場の目で確認する

実際に電話を受けているスタッフに、たたき台を見てもらいます。「この用件は、実はこういう聞き方をされることが多い」「この質問は答えが毎回違う」といった現場の知識は、境界線を引くうえで欠かせません。

手順3:責任者が線を確定する

誤りが起きたときの影響を判断できる責任者が、最終的な線を確定します。特に、予約・契約・支払い、専門的な判断に関わる部分は、責任者が明確に「人が行う」と決めておきます。

手順4:文書にして共有する

確定した範囲は、一枚の文書にまとめ、関係するスタッフ全員が見られる場所に置きます。文書には、次の項目を入れておくと便利です。

手順5:見直しの場を持つ

運用を始めたら、定期的に文書を見直します。記録から見つかった境界線上の電話や、お客様の声をもとに、線を引き直していきます。線を変えたら、文書も更新し、変更点をスタッフに伝えましょう。

業種別に見る「任せない」ことの例

AIに任せてはいけないことは、業種によっても変わります。代表的な業種の例を挙げておきます。自社の業種に近いものを参考に、任せない範囲を書き出してみてください。

医療機関・歯科医院

AIは、予約の希望や用件を聞き取り、急ぎの相談をスタッフに優先してつなぐ役割にとどめます。

士業の事務所

相談の内容は慎重な扱いが必要な情報を含むことが多いため、AIには相談の申し込みの受け付けと、分野の聞き取りまでを任せます。

不動産会社

物件の空き状況は日々変わるため、AIが「その物件はまだ空いています」と答えるのも避けたほうが安全です。

飲食店

食材やアレルギーに関する質問は、お客様の健康に関わるため、必ず人が答えます。

修理・工事の事業者

AIは、症状や場所、希望の日時を聞き取り、急ぎの依頼を担当者につなぐ役割を担います。

ネットショップ

注文の状況を確認するには本人確認が必要なことが多いため、個別の注文に関する対応は担当者が行います。

運用で気をつけること

任せる範囲とトリガーを決めても、運用の中で境界線が崩れていくことがあります。運用で気をつけたい点を挙げておきます。

「うまくいっているから」と範囲を広げすぎない

AIの対応がうまくいっていると、もっと多くのことを任せたくなります。範囲を広げること自体は悪いことではありませんが、広げるたびに、新しい範囲で起こりうる誤りと、その影響を考え、テストしてから広げましょう。予約・契約・支払いの確定や、専門的な判断は、範囲を広げても人に残します。

記録から境界線上の電話を探す

運用を始めたら、AIの対応記録を定期的に読み、境界線の上にある電話を探します。

前者が見つかったら、ナレッジやトリガーを見直して、AIが答えないようにします。後者が多ければ、AIで対応できる範囲を少し広げることを検討します。

ナレッジの更新を止めない

事業の情報は変わっていきます。ナレッジの更新が止まると、AIは古い情報を案内し始めます。ナレッジの担当者と更新の手順を決め、情報が変わるたびに更新しましょう。

引き継ぎ先が機能しているか確かめる

AIがトリガーに反応して人に引き継いでも、引き継ぎ先の担当者が対応できなければ意味がありません。

引き継ぎの後の対応まで含めて、定期的に確認しましょう。

お客様の声を聞く

AIの対応について、お客様から「わかりにくかった」「人と話したかった」といった声が届いたら、それは境界線を見直すきっかけです。声の内容を記録し、どの場面で、何が問題だったのかを確認して、設計を直していきます。電話の体験全体を良くする考え方は、電話の顧客体験を良くするポイントで紹介しています。

チェックリスト:運用

任せる範囲を決めるワークシート

最後に、自社のAIに任せる範囲を決めるための、簡単なワークシートを紹介します。紙に書き出しながら進めてみてください。

ステップ1:電話の用件を書き出す過去一週間から二週間の電話を思い出し、よくある用件を十個ほど書き出します。

ステップ2:用件ごとに三つの質問に答えるそれぞれの用件について、次の三つの質問に「はい」「いいえ」で答えます。

  1. 答えが事前に決まっているか(誰が答えても同じ答えになるか)
  2. 誤った答えをしたときの影響は小さいか
  3. 相手の感情に配慮する必要は少ないか

ステップ3:分類する

ステップ4:境界線をナレッジとトリガーに反映する分類の結果をもとに、答えてよい質問と答えてはいけない質問をナレッジに書き、引き継ぎのトリガーを設定します。

このワークシートは、導入時だけでなく、運用を始めてから範囲を見直すときにも使えます。少人数の会社での電話の受け方全体については、中小企業の電話対応を効率化する方法で解説しています。

番号選択(IVR)と組み合わせて境界線を守る

AIの聞き取りに頼らずに、確実に人へつなぎたい用件がある場合は、番号を押してもらうIVRと組み合わせる方法が有効です。

たとえば、最初の案内で「お急ぎのご用件は1番、それ以外のご用件は2番を押してください」と選んでもらい、1番は担当者の電話に直接つなぎ、2番はAIが用件を聞き取る、という形です。急ぎかどうかの判断をかけてきた人自身にしてもらうため、AIが急ぎの用件を聞き逃す心配がなくなります。

同じように、「ご予約の変更は1番」「担当者とお話しになりたい方は0番」といった選択肢をIVRで用意しておけば、AIに判断させたくない用件を、最初から決めた流れに乗せられます。番号の選択は聞き取りの誤りが起きにくく、引き継ぎの境界線を確実に守りたい場面に向いています。

ただし、選択肢を増やしすぎると案内が長くなります。IVRで分けるのは、確実に人へつなぎたい用件や、AIに扱わせたくない用件に絞り、それ以外はAIの聞き取りに任せる、というように役割を分けるとよいでしょう。

AI-SNS.IO Callでの考え方

AI-SNS.IO Callでは、IVRのメニューと着信のルーティング、営業時間に合わせた応答の切り替え、キューごとの留守番電話、IVRのメニューからの折り返しの依頼、AIによる通話の要約などを組み合わせて、AIに任せる範囲と人に引き継ぐ道を設計できます。日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。番号を押してもらって用件を振り分けるIVRは、聞き取りの誤りが起きにくいため、確実に人へつなぎたい用件の振り分けに向いています。IVRの仕組みは、IVRとはで解説しています。

予約・契約・支払いの確定は、どの設計でも自社のスタッフが行います。AIによる一次応答を含め、現在利用できる機能は機能一覧で、設定の手順は使い方ガイドで確認してください。

境界線を確認するテスト質問リスト

任せる範囲を決めたら、AIがその線を守れるかをテスト通話で確認します。ここでは、そのまま使えるテスト質問の例を、確かめたい観点ごとにまとめました。自社の業種に合わせて言葉を置き換えて使ってください。

確定をしないかを確認する質問

期待する反応:希望を聞き取り、確定していないことと、担当者が確認して折り返すことを伝える。

判断をしないかを確認する質問

期待する反応:判断を示さず、担当者に引き継ぐ。急ぎの可能性がある質問は、優先して人につなぐ。

推測で答えないかを確認する質問

期待する反応:登録した情報にないことは答えず、案内できないことを伝えるか、折り返しを案内する。

引き継ぎのトリガーが働くかを確認する質問

期待する反応:決めた形で人につなぐか、折り返しの依頼に切り替える。聞き返しは決めた回数で止まる。

テストの結果は、質問ごとに「期待どおり」「期待と違う」を記録し、期待と違ったものはナレッジ、スクリプト、トリガーのどこを直すかを決めて直します。直したら、同じ質問でもう一度確かめましょう。

起こりがちな失敗のパターンと対策

ここでは、AIに任せる範囲の決め方を誤ったときに起こりがちな失敗を、架空の場面で紹介します。いずれも説明のための例ですが、設計の段階で防げるものばかりです。

パターン1:確定したと受け取られた

場面:あるサロンで、AIが予約の希望を聞き取ったあと、「○日の○時でお待ちしております」と答えてしまった。実際にはその時間は埋まっており、当日来店したお客様の施術ができなかった。

原因:予約の希望を受け付けたあとの締めくくりの言葉が決まっておらず、AIが自然な会話として「お待ちしております」と答えてしまった。

対策:予約に関する電話の終わり方を、「確認のうえ折り返します。まだ確定していません」という形にスクリプトで固定する。テストで、確定と受け取られる言い方をしないかを確認する。

パターン2:推測で答えた

場面:ある事務所で、「土曜日に相談できますか」と聞かれたAIが、「はい、土曜日もご相談いただけます」と答えた。実際には、土曜日は月に一度だけの予約制だった。

原因:ナレッジに土曜日の対応についての情報がなく、AIが一般的な事務所の傾向から推測して答えた。

対策:営業日に関する情報は、例外も含めて一問一答で書く。書いていない日時について聞かれたら、担当者から案内する設定にする。

パターン3:人につながらなかった

場面:ある工事会社で、お客様が「水が止まらないので、すぐに来てほしい」と話したのに、AIが通常の見積もり依頼として聞き取り、翌営業日の折り返しを案内した。

原因:急ぎの用件を見分けるトリガーが設定されておらず、「すぐに」「止まらない」といった言葉に反応しなかった。

対策:自社の急ぎの用件の例と、それを示す言葉を具体的に挙げてトリガーを設定する。IVRで「お急ぎの方は1番」と最初に選んでもらう方式を組み合わせると、聞き取りに頼らずに振り分けられる。

パターン4:聞き返しが続いた

場面:騒がしい場所から電話をかけてきたお客様に、AIが「もう一度お話しください」と四回繰り返し、お客様は怒って電話を切った。

原因:聞き返しの回数に上限がなかった。

対策:聞き返しは二回までとし、それでも聞き取れなければ、メッセージを残してもらうか、折り返しの依頼に切り替える。

パターン5:古い情報を案内した

場面:年末年始の休業期間が終わったあとも、AIが「ただいま年末年始休業中です」と案内し続けていた。

原因:期間限定の情報に有効期限が書かれておらず、休業明けに削除する担当者も決まっていなかった。

対策:期間限定の情報には必ず有効期限を書き、更新の担当者と手順を決めておく。

よくある質問

AI電話受付にできないことは何ですか?

個別の状況を踏まえた判断、登録していない情報についての回答、感情への配慮が必要な対応、あいまいな用件の整理、本人確認が必要な手続き、そして予約・契約・支払いの確定などは、AIに任せるべきではありません。AIは、決まった答えの案内と、用件の聞き取り・記録、人への引き継ぎを担う、と考えると線を引きやすくなります。

AIが知らないことを聞かれたら、どうなりますか?

設定によっては、AIが推測でもっともらしい答えを作ってしまうことがあります。これを防ぐために、登録した情報の範囲でだけ答える、情報にないことは答えずに担当者からの折り返しを案内する、と設定しておくことが大切です。テストで、実際に答えないかを確かめましょう。

どのタイミングで人に引き継げばよいですか?

相手が人を希望したとき、急ぎの用件だとわかったとき、感情の高まりを示す言葉が出たとき、聞き取りの失敗が続いたとき、ナレッジにない質問や答えてはいけない質問が来たときなどが、引き継ぎのトリガーの例です。自社の電話に合わせて、具体的な言葉や状況を挙げて設定しましょう。

AIに予約を確定させてはいけないのはなぜですか?

予約は取り消しにくく、空き状況や担当者の都合など確認すべき条件が多く、事業者とお客様の間の約束になるからです。AIの聞き取りには誤りが起こりうるため、聞き違えた内容で確定すると、取り返しのつかない行き違いが生まれます。AIは希望を聞き取り、人が確認して確定する形にします。

支払いに関する電話は、AIで対応できますか?

支払い方法の一般的な案内は、登録した情報の範囲で行うことができます。ただし、個別の請求内容の確認や、支払いの手続き、支払いのトラブルへの対応は、本人確認や個別の判断が必要なため、担当者が行うべきです。AIは、支払いに関する問い合わせであることを聞き取って引き継ぐ役割にとどめましょう。

苦情の電話をAIが受けても大丈夫ですか?

苦情の電話では、相手の気持ちを受け止めることが大切で、AIには限界があります。苦情や強い不満を示す言葉が出たら、早めに人に引き継ぐトリガーとして設定しておくことをおすすめします。その場でつなげない時間帯は、折り返しの依頼として目立つように記録しましょう。

医療や法律の相談の電話はどう扱えばよいですか?

医療、法律、お金に関わる個別の判断は、AIに任せてはいけません。AIは相談の申し込みや用件の分野を聞き取り、専門の担当者に引き継ぎます。相談の詳しい内容は、担当者が直接聞くようにすると、慎重な扱いが必要な情報を記録に残しすぎることも防げます。

AIに任せる範囲は、後から広げてもよいですか?

広げてもかまいません。ただし、広げるたびに、新しい範囲で起こりうる誤りとその影響を考え、テストしてから広げましょう。予約・契約・支払いの確定や専門的な判断は、範囲を広げても人に残すことをおすすめします。

AIが誤った案内をしてしまったら、どうすればよいですか?

まず、誤った案内を受けたお客様に連絡し、正しい情報を伝えます。そのうえで、記録から原因(ナレッジの不足、あいまいな書き方、トリガーの不足など)を特定し、ナレッジやスクリプトを直します。同じ質問でテストして、誤りが再び起きないかを確かめましょう。

「人と話したい」と言われても、人が出られない時間はどうすればよいですか?

その場でつなげない時間帯でも、人に届く道を残しておくことが大切です。「担当者から折り返しご連絡します」と伝えて名前と連絡先を聞き取る、メッセージを残してもらう、といった形です。折り返しの目安を伝える場合は、守れる範囲にしておきましょう。

AIで対応できる電話と、人が対応すべき電話の割合はどれくらいですか?

業種や電話の内容によって大きく異なるため、一概には言えません。自社の電話の用件を書き出し、この記事のワークシートで分類してみると、自社の場合の目安が見えてきます。

テスト通話では、何を重点的に確かめればよいですか?

答えてよい質問に正しく答えるかより、答えてはいけない質問に答えないか、人に引き継ぐべき場面で引き継ぐかを重点的に確かめましょう。予約などを確定しないこと、判断をしないこと、推測で答えないこと、「人と話したい」に応えることの四点は、本番の前に必ず確認してください。

急ぎの用件をAIが聞き逃さないようにするには、どうすればよいですか?

自社の急ぎの用件の例と、それを示す言葉を具体的に挙げてトリガーを設定し、テストで確かめます。より確実にしたい場合は、最初の案内で「お急ぎの方は1番」と番号で選んでもらうIVRを組み合わせると、聞き取りに頼らずに急ぎの電話を人につなげます。日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。

まとめ

AI電話受付は、決まった答えの案内と、用件の聞き取り・記録、人への引き継ぎを得意としています。一方で、個別の判断、登録していない情報、感情への配慮、あいまいな用件、聞き取りの条件が悪い電話、本人確認が必要な手続きは苦手です。そして、予約・契約・支払いの確定は、どのような場合でも人が行います。

AIを上手に使うためには、できることを広げるより先に、任せない範囲をはっきりさせることが大切です。答えてよい質問と答えてはいけない質問をナレッジに書き分け、人に引き継ぐトリガーを具体的に決め、運用の中で境界線を見直していく。この積み重ねが、AIの誤案内を防ぎ、お客様と事業者の両方にとって安心できる電話の受け方につながります。

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