業種別ガイド

ホテル旅館のAI電話対応|空室・到着案内

AI-SNS.IO 編集部 · 公開

ホテル旅館のAI電話対応|空室・到着案内(AI-SNS.IO Call ブログ)

ホテルや旅館のフロントは、一日中さまざまな用件が重なる場所です。チェックインの手続きをしている間にも、空室の問い合わせ、到着が遅れるという連絡、駅からの行き方の質問が電話で入ってきます。目の前のお客様を待たせるか、電話を鳴らしたままにするか、という選択を、フロントのスタッフは毎日のようにしています。

特に小さな旅館やペンション、少人数で運営するビジネスホテルでは、チェックインが集中する夕方や、夕食の準備と配膳の時間に、電話に出られる人がいなくなります。夜間は一人で番をしているという宿も少なくありません。

この記事では、ホテル・旅館の電話対応に、IVR(自動音声応答)やAIによる一次応答を取り入れる方法を解説します。よくある課題と問い合わせの分類、営業時間外や繁忙時の受け方、設計の例、スタッフへの引き継ぎ、個人情報の扱い、導入の進め方を順に紹介します。宿泊の予約や料金の確定はスタッフが行うこと、宿泊しているお客様の情報は電話で明かさないことを前提に、自動化してよい範囲を考えます。

ホテル・旅館の電話対応で起きがちな課題

チェックインの時間帯に電話が重なる

ホテル・旅館では、チェックインが始まる午後から夕方にかけて、フロントが最も忙しくなります。この時間帯は、到着したお客様の対応と同時に、「今から向かうが道が分からない」「到着が遅れる」といった、その日の宿泊客からの電話も増えます。どちらも急ぎの用件で、どちらかを待たせることになります。

少人数の宿では、全員が別の仕事をしている

小さな旅館やペンションでは、フロント、配膳、清掃、厨房の仕事を、少ない人数で受け持っています。夕食の時間には全員が配膳や厨房にいて、フロントに誰もいない、という時間ができます。この時間の電話は、鳴りっぱなしになるか、配膳の途中で手を止めて出るかのどちらかになりがちです。

同じ質問がくり返される

「チェックインは何時からですか」「駐車場はありますか」「駅から送迎はありますか」「夕食は何時からですか」といった質問は、毎日のようにくり返されます。答えは決まっているのに、そのたびにスタッフの手が止まります。

予約の経路が分かれている

宿泊の予約は、宿の電話やホームページだけでなく、宿泊予約サイトからも入ります。予約サイト経由の予約は、変更やキャンセルの手続きを予約サイトで行う必要がある場合があり、電話で「変更してほしい」と言われても、宿の側ではすぐに対応できないことがあります。どの経路の予約かを確認しずに答えると、行き違いが起きます。

宿泊客の在室や滞在の問い合わせ

外部の人から「〇〇さんは泊まっていますか」「部屋につないでほしい」という電話がかかってくることがあります。宿泊しているかどうかは、お客様のプライバシーにかかわる情報です。こうした問い合わせへの答え方を決めておかないと、スタッフによって対応がばらつき、意図せず情報を明かしてしまうおそれがあります。

天候や交通の乱れで電話が集中する

台風や大雪、交通機関の運休があると、「予約をキャンセルしたい」「キャンセル料はかかるのか」「送迎は出るのか」という電話が一度に集中します。フロントの電話がふさがり、本当に急ぎの連絡がつながりにくくなります。

課題の整理

課題起きること対策の方向
チェックインの時間帯の重なり目の前のお客様か電話かを選ぶ決まった答えは自動、当日の宿泊客の連絡は優先して受ける
少人数の宿夕食の時間に誰も出られない時間帯で受け方を変え、ボイスメールで受ける
同じ質問のくり返しスタッフの手が止まる自動の案内で答える
予約の経路の違い変更やキャンセルで行き違い経路を確認し、予約サイトの予約は手続きを案内
在室の問い合わせプライバシーの情報を明かすおそれ答え方を決め、自動では扱わない
天候や交通の乱れ電話が集中する臨時の案内を用意する

少人数で電話を受けるときの基本は、小さな会社の電話対応でも紹介しています。

当日の宿泊客、新規の予約、変更とキャンセル、決まった答え、食事の相談、在室の問い合わせの対応の比較
図1:ホテル・旅館の電話の分類

よくある問い合わせの分類

分類の考え方

ホテル・旅館の電話は、「今日の宿泊にかかわるか」と「自動で答えてよいか」で分けると、優先の順番と任せる範囲が決めやすくなります。

分類例急ぐか対応
当日の宿泊客の連絡到着が遅れる、道が分からない、送迎をお願いしたい急ぐフロントにつなぐ。出られなければ聞き取り、すぐ折り返す
宿泊中のお客様からの外線外出先から、忘れ物をした、部屋の鍵の件急ぐフロントにつなぐ
新規の予約・空室の問い合わせ来月の土曜に二名で空いているか急がない予約の担当。出られなければ聞き取り、スタッフが確かめて折り返す
予約の変更・キャンセル人数を変えたい、キャンセルしたい内容による予約の経路を確認し、スタッフが対応
決まった答えチェックインとチェックアウトの時刻、駐車場、送迎、アクセス、食事の時間急がない自動の案内
食事やアレルギーの相談子ども用の食事、アレルギーへの対応急がないスタッフ(厨房と確かめる)
忘れ物の問い合わせチェックアウトの後で忘れ物に気づいた急がない聞き取り、スタッフが確かめて折り返す
在室・宿泊の確認〇〇さんは泊まっているか―自動では扱わない。スタッフが決まった方針で対応
その他取材、営業、求人急がない聞き取り

電話を数える

一、二週間、分類と時間帯ごとに電話を記録します。特に、チェックインの時間帯と夕食の時間帯に、出られなかった電話がどれだけあったかを記録しておくと、どの時間帯の受け方を変えるべきかが分かります。

時間帯件数多い分類出られなかった件数
午前(チェックアウト)
昼
午後から夕方(チェックイン)
夕食の時間
夜間

宿の規模による違い

宿の規模電話の特徴気をつけること
小さな旅館・ペンション家族やごく少人数で運営、夕食の時間に手が離せない時間帯で受け方を変える、急ぎの連絡の届け方
ビジネスホテル予約サイト経由の予約が多い、夜間は少人数予約の経路の確認、夜間の受け方
部門のある大きな宿宴会、レストラン、予約の担当など部門が分かれる部門ごとの行き先の振り分け

営業時間外・繁忙時の受け方

宿の「営業時間外」は何か

ホテル・旅館は、宿泊客がいる限り、夜も営業しています。ただし、予約の受付や問い合わせの対応をする時間と、夜間の宿泊客の対応だけをする時間は、分けて考えられます。

時間帯受けるもの受け方の例
日中(予約の受付時間)すべての用件用件ごとに振り分け
チェックインの集中する時間当日の宿泊客の連絡を優先決まった答えは自動、新規の予約は聞き取り
夕食の時間(小さな宿)当日の宿泊客の連絡ほかは聞き取り、区切りで折り返す
夜間宿泊客と当日の到着の連絡予約の問い合わせは聞き取りで翌朝に折り返す

この区切りを決めておくと、営業時間のルールで、時間帯ごとに案内とつなぎ先を切り替えられます。営業時間のルールの設定は、IVRの営業時間ルーティングで詳しく紹介しています。

チェックインの時間帯の受け方

チェックインの時間帯は、最初の案内で「本日ご宿泊のお客様」を分け、フロントにつなぐ流れにします。新規の予約や空室の問い合わせは、ボイスメールで用件を受けて、時間帯が落ち着いてから折り返します。決まった答えは自動の案内で伝えます。

案内では、「本日ご宿泊のお客様で、到着が遅れる、道が分からないなどのご連絡は1を」のように、当日の宿泊客が迷わず選べる言葉にします。

夜間の受け方

夜間は、少人数のスタッフが、宿泊客の対応と館内の見回りをしています。夜間の外線は、次のように分けます。

夜間に予約の問い合わせを人が受けないことで、夜間のスタッフが、宿泊客の対応に集中できます。

天候や交通の乱れのときの臨時の案内

台風や大雪の予報が出たとき、交通機関が止まったときには、電話が集中します。前もって臨時の案内を用意しておき、すぐに切り替えられるようにします。

お電話ありがとうございます。〇〇旅館です。〇日の〇〇の影響によるご予約のご変更やキャンセルについては、〇〇のとおりご案内しています。宿泊予約サイトからご予約のお客様は、ご予約のサイトから手続きをお願いします。本日ご到着予定のお客様は1を、その他のお問い合わせは2を押してください。

キャンセル料の扱いなど、臨時の対応の内容は、宿の責任者が決めた方針を、そのまま案内します。個別の事情の判断は、スタッフが行います。

IVRとAI一次応答の設計例

小さな旅館のメニューの例

説明のための架空の例として、家族で運営する小さな旅館のメニューを示します。

お電話ありがとうございます。〇〇旅館です。本日ご宿泊のお客様は1を、ご予約、空室のお問い合わせ、ご予約の変更は2を、チェックインの時刻、駐車場、送迎、アクセスのご案内は3を押してください。

番号日中夕食の時間・夜間
1フロントにつなぐ手の空いているスタッフの電話にまとめて鳴らす。出られなければ急ぎの聞き取り
2予約の担当につなぐ。出られなければ聞き取り聞き取り。翌朝または区切りで折り返す
3自動の案内自動の案内

当日の宿泊客の連絡を最初の番号にするのは、急ぎの用件を最も早く選べるようにするためです。

部門のあるホテルのメニューの例

お電話ありがとうございます。ホテル〇〇です。本日ご宿泊、またはご滞在中のお客様は1を、ご宿泊のご予約、ご変更は2を、レストランのご予約は3を、ご宴会、ご会議のお問い合わせは4を、チェックインの時刻、駐車場、アクセスのご案内は5を押してください。

番号行き先
1フロント
2宿泊の予約の担当
3レストラン
4宴会・会議の担当
5自動の案内

部門ごとにキューを分けておくと、それぞれの部門の電話の件数や、出られなかった件数を、部門ごとに見られるようになります。

予約サイト経由の予約の案内

予約の変更やキャンセルの番号では、最初に予約の経路を確認する案内を入れると、行き違いを減らせます。

宿泊予約サイトからご予約のお客様は、ご変更やキャンセルの手続きを、ご予約のサイトからお願いします。当館に直接お電話やホームページでご予約のお客様は、このままお待ちください。

予約サイトによって、宿の側で変更できる範囲が違うことがあります。案内の言葉は、自館が使っている予約サイトの扱いに合わせて決めます。

AI一次応答を組み合わせる場合

番号を押す代わりに、AIの一次応答で用件を話してもらう方法もあります。「今日泊まる予定だが、到着が九時を過ぎそう」と話してもらえれば、AIは当日の宿泊客の連絡として分類し、名前と到着の予定時刻を聞き取ってフロントに届けられます。「駐車場はありますか」という質問には、宿が登録した情報をもとに答えられます。

ホテル・旅館でAIの一次応答を使う場合は、次の点を決めておきます。

AIの一次応答で何ができるか、どこまで任せられるかは、使うサービスごとに確かめる必要があります。仕組みの全体像はAI電話受付とはが参考になります。

外国語の電話

外国からのお客様の電話が多い宿では、外国語の電話をどう受けるかも決めておきます。どの言語に対応するか、対応できるスタッフがいる時間帯はいつか、対応できない時間帯にはどう案内するか、を決めます。自動の案内を複数の言語で用意する場合は、それぞれの言語の案内が、日本語の案内と同じ内容になっているかを確認します。メールやメッセージの窓口を案内する方法もあります。

スタッフへの引き継ぎと確定は人が行う

予約の確定

聞き取った予約の希望は、予約の担当が台帳で空きを確認し、料金とプランを確認してから、お客様に折り返して確定します。聞き取りの段階では、部屋を押さえていないことを、案内ではっきり伝えます。「ご希望をうかがいました。空室を確認して、担当からご連絡します。ご予約は、確認のご連絡で確定します」といった言葉です。

予約サイトと宿の台帳の空室を連動させている場合は、確定の折り返しの前に、予約サイトで同じ部屋が売れていないかも確かめます。

当日の宿泊客の連絡

到着が遅れる、道が分からない、送迎をお願いしたい、という連絡は、その日のうちに対応が必要です。フロントにつながらなかった場合は、聞き取りの記録が急ぎとして届くようにし、最初に折り返します。到着の予定時刻が夕食の時間や玄関を閉める時間にかかる場合は、厨房や夜間のスタッフにも伝えます。

変更とキャンセル

人数や日程の変更、キャンセルは、予約の経路と、宿のキャンセルの規定に照らして、スタッフが対応します。キャンセル料の有無や金額は、自動の案内やAIでは答えません。規定の要点を案内で伝えることはできますが、個別の予約への当てはめは、スタッフが行います。

食事とアレルギー

子ども用の食事、アレルギーへの対応、記念日の料理などの相談は、厨房と確かめる必要があります。聞き取りでは、名前、宿泊の日、人数、相談の内容を聞き、スタッフが厨房と確かめてから折り返します。アレルギーについては、対応できる範囲とできない範囲を、宿としてはっきり伝えることが大切です。聞き取った内容は、宿泊の日の前に厨房でもう一度確かめます。電話での聞き取りだけで「大丈夫です」と答えず、必ず厨房の確認を経て返事をします。

忘れ物の問い合わせ

チェックアウトの後の忘れ物の問い合わせは、聞き取りで、名前、宿泊の日、部屋の番号(分かれば)、忘れた物の特徴を聞き、スタッフが確かめて折り返します。保管していることを伝える前に、問い合わせた人が宿泊した本人であることを、宿泊の記録と照らして確かめます。

在室・宿泊の確認への答え方

外部の人からの「〇〇さんは泊まっていますか」「部屋につないでほしい」という電話への答え方は、宿として方針を決めておきます。たとえば、「宿泊のお客様についてのお問い合わせにはお答えしていません」と答える、伝言を預かって、宿泊しているお客様がいれば伝える、といった方針です。自動の案内やAIは、この種の問い合わせには答えず、方針に沿ってスタッフが対応します。

引き継ぎで伝える項目

用件聞き取る項目
当日の宿泊客の連絡名前、電話番号、用件、到着の予定時刻、送迎の希望
新規の予約名前、電話番号、宿泊の日と泊数、人数(大人・子ども)、部屋やプランの希望、食事の希望
変更・キャンセル名前、電話番号、宿泊の日、予約の経路、変更の内容
食事やアレルギーの相談名前、電話番号、宿泊の日、人数、相談の内容
忘れ物名前、電話番号、宿泊の日、部屋の番号、忘れた物の特徴

折り返しの順番

  1. 当日の宿泊客の連絡
  2. 翌日の宿泊にかかわる変更や相談
  3. 忘れ物
  4. 新規の予約
  5. その他

当日と翌日の宿泊にかかわるものを先に返すと、到着の後の行き違いを防げます。

折り返しても相手が出なかった場合は、留守番電話に宿の名前と用件の種類だけを残し、予約の内容や同行者の情報など、詳しいことは残しません。家族と共有している電話である可能性もあるためです。もう一度かける時間の目安を伝え、記録には「折り返したがつながらなかった」と時刻とともに残して、次の担当が重ねてかけられるようにします。当日の宿泊客につながらない場合は、到着の予定時刻が近づいたらもう一度かける、といった扱いも決めておきます。

個人情報と記録の扱い

宿で扱う情報

ホテル・旅館の電話では、名前、電話番号、宿泊の日、同行者の人数、食事やアレルギー、記念日の内容など、多くの個人の情報が話されます。誰と泊まるのか、いつ不在にするのか、といった情報も含まれます。電話の録音、文字起こし、要約、聞き取りの記録が残る場合は、その扱いを決めておきます。

個人の情報の扱いについては、個人情報保護委員会のウェブサイトで、法律やガイドラインの内容を確認できます。この記事の内容は一般的な情報の紹介であり、法的助言ではありません。宿泊の記録の扱いについての決まりなど、宿泊業にかかわる取り決めは、自治体や専門家などに確認してください。

決めておくこと

決めること確かめる問い
残るもの録音、文字起こし、要約、聞き取りの記録のどれが残るか
見られる人フロント、予約の担当、厨房、夜間のスタッフなど、誰が見るか
保存の期間どのくらい残し、その後どうするか
宿泊の記録との関係電話の記録と、予約の台帳の情報をどうつなぐか
お客様への伝え方録音や記録をしていることを、どう伝えるか

宿泊の有無を明かさない

先に触れたとおり、宿泊しているかどうかは、お客様のプライバシーにかかわる情報です。電話の記録や要約の中にも、宿泊客の情報が含まれます。記録を見られる人を必要なスタッフに限り、館内の共有の画面に表示したままにしないなど、扱いに気をつけます。

厨房との共有

アレルギーの情報は、厨房と共有する必要があります。共有するのは、料理の準備に必要な内容に限り、電話の録音そのものではなく、要点を書いた記録で伝えます。

導入の進め方

ステップ1:電話を記録する

一、二週間、分類と時間帯ごとに電話を記録します。チェックインの時間帯、夕食の時間帯、夜間に、出られなかった電話がどれだけあったかを特に確かめます。

ステップ2:時間帯の区切りを決める

日中、チェックインの集中する時間、夕食の時間、夜間など、宿の一日の流れに合わせて、受け方を変える時間帯の区切りを決めます。

ステップ3:任せる範囲を決める

分類ごとに、自動で案内する、聞き取ってスタッフが折り返す、すぐにスタッフにつなぐ、のどれにするかを決めます。在室の問い合わせ、キャンセル料、アレルギーの扱いも、ここで方針を決めます。

ステップ4:案内の情報を整える

チェックインとチェックアウトの時刻、駐車場の台数と予約の要否、送迎の有無と時刻、最寄りの駅からの行き方、食事の時間、キャンセルの規定の要点などを書き出します。ホームページや予約サイトに載せている情報と食い違いがないかを確認します。

ステップ5:臨時の案内を用意する

天候や交通の乱れのときの臨時の案内、年末年始や大型連休の案内を、前もって作っておきます。誰が、どのような判断で切り替えるかも決めておきます。

ステップ6:試験の電話をかける

スタッフがお客様の役になって、当日の到着の遅れ、新規の予約、予約サイト経由の変更、アレルギーの相談、忘れ物、在室の問い合わせ、夜間の電話をかけ、それぞれが決めたとおりに流れるかを確認します。

ステップ7:夜間や夕食の時間から始める

最初は、人手の少ない夜間や夕食の時間から始め、問題がないことを確認してから、ほかの時間帯に広げます。

ステップ8:記録を見て直す

出られなかった電話の件数、折り返しまでの時間、自動の案内で終わった電話の件数、お客様の声を見て、案内の言葉や振り分けを直していきます。

記録、時間帯、範囲、情報、臨時の案内、試験、夜間から、直すの八つの手順
図2:宿で導入を進める手順

ホテル・旅館ならではの工夫

到着の前日の連絡

到着の前日に、チェックインの時刻、駐車場、送迎、夕食の時間を知らせる連絡をしている宿もあります。前日の連絡で決まった答えを伝えておくと、当日の問い合わせの電話を減らせます。到着の予定時刻を前もって教えてもらえれば、送迎や夕食の準備もしやすくなります。

送迎の連絡

送迎のある宿では、「駅に着いた」「何時の電車に乗った」という電話が、決まった時間帯に集中します。送迎の連絡は当日の宿泊客の連絡として最初の番号で受け、送迎の担当に届くようにします。送迎の時刻が決まっている場合は、自動の案内で時刻と乗り場を伝えます。駅に着いてから電話をかけてくるお客様のために、乗り場の目印や、送迎の車の色や表示を案内に加えておくと、迎えの行き違いを防げます。

季節ごとの案内の更新

観光地の宿では、季節によって周辺の観光情報、道路状況(冬用タイヤ規制・チェーン規制など)、営業日が変わります。案内の文章に、季節の情報を加えたり外したりする日を、年間の予定に入れておきます。古い情報を案内し続けないよう、更新の担当を決めます。

日帰りの利用や飲食の問い合わせ

日帰りの入浴や、宿泊しない人の食事を受け付けている宿では、宿泊と別の問い合わせが入ります。日帰りの利用の時間や料金が決まっている場合は、自動の案内で伝えられます。混雑する日に日帰りの受け付けを止める場合は、その日の案内を朝のうちに切り替えておくと、来てから断る、ということを避けられます。日帰りの利用でも、タオルの貸し出しや休憩の部屋の有無など、よく聞かれる点を案内に含めておきます。宿泊の予約の電話と分けておくと、予約の担当の手間を減らせます。

チェックアウトの後の問い合わせ

チェックアウトの後には、領収書の再発行、宛名の変更、請求の内容の確認といった問い合わせが入ります。出張の多いビジネスホテルでは、特に多い用件です。これらは宿泊の記録と照らして本人であることを確認する必要があり、金額にもかかわるため、聞き取りで名前、宿泊の日、用件を受け、会計を担当するスタッフが確かめて折り返します。再発行の手順や送付の方法が決まっている場合は、その要点を自動の案内で伝えておくと、やりとりが短く済みます。会社に請求書を送ってほしいといった依頼も、同じ流れで受けられます。

宿泊中のお客様からの外線

宿泊中のお客様が外出先から電話をかけてくることがあります。「部屋に忘れ物をした」「帰りが遅くなる」「鍵をなくした」といった連絡で、急ぎのものが多くあります。当日の宿泊客と同じ番号で受け、フロントにつながるようにしておきます。

団体や宴会の問い合わせ

修学旅行、社員旅行、法事や祝いの席など、団体の宿泊や宴会の問い合わせは、人数、日程、部屋割り、料理の内容、送迎のバスなど、確かめることが多く、一回の電話では終わりません。団体や宴会の問い合わせは、一般の予約と番号を分けるか、聞き取りで用件の概要を受けて、担当者が時間をとって折り返す流れにすると、フロントの電話がふさがりにくくなります。聞き取りでは、団体の名前、代表者の名前と電話番号、希望の日程、おおよその人数、用件の概要を聞きます。

連休や年末年始の前の準備

予約や問い合わせが集中する時期の前には、次の準備をしておきます。

満室の日が分かっている場合に、その日付を自動の案内で伝えておくと、空室の問い合わせの電話を減らせます。ただし、キャンセルが出て空室ができることもあるため、案内の更新の担当を決めておきます。

長期の滞在や特別な希望の相談

連泊や長期の滞在、車いすでの利用、ペットとの同伴、記念日の演出など、個別の相談は、部屋の設備や宿の受け入れの方針と照らして答える必要があります。たとえば車いすでの利用の相談では、段差の有無、浴室の設備、駐車場から玄関までの経路など、確かめたいことはお客様によって違います。自動の案内で「対応しています」と一言で答えるより、聞き取りで具体的な希望を受けて、設備を把握しているスタッフが折り返すほうが、お客様にとっても安心です。よく聞かれる設備の情報(段差のない部屋の有無、貸し出しの備品など)は、ホームページに写真つきで載せておき、電話の案内でもそのページを伝えると、事前に確かめてもらいやすくなります。

スタッフへの伝え方と新しいスタッフの教育

電話の仕組みを変えたら、フロント、予約の担当、厨房、夜間のスタッフまで、全員に流れを共有します。特に、夜間だけ勤務するスタッフや、繁忙期だけ手伝うスタッフには、伝わりにくいことがあります。次の内容を一枚の紙にまとめ、フロントの手元に置いておくと便利です。

新しいスタッフには、実際に試験の電話をかけてもらい、記録がどこに届くか、どう折り返すかを体験してもらうと、覚えやすくなります。

案内の文章のひな形

説明のための例として、案内の文章を示します。〇の部分は、宿の情報に置き換えてください。

夕食の時間の案内(小さな旅館)

お電話ありがとうございます。〇〇旅館です。ただいま夕食のご用意のため、お電話に出られないことがあります。本日ご宿泊のお客様は1を押してください。ご予約やお問い合わせの方は、2を押して、お名前、お電話番号、ご用件をお話しください。〇時ごろまでにご連絡します。

夜間の案内

お電話ありがとうございます。ホテル〇〇です。本日ご到着のお客様、ご滞在中のお客様は1を押してください。夜間のスタッフにおつなぎします。ご予約やお問い合わせの方は、2を押して、ご用件をお話しください。明日の午前中に、予約の担当からご連絡します。

アクセスの案内

〇〇駅からは、お車で約〇分です。駐車場は〇台分あり、ご予約は不要です。〇〇駅からの送迎は、〇時から〇時までの間、ご予約のお客様にご用意しています。送迎をご希望の方は、ご到着の前日までにご連絡ください。

アクセスの案内の所要時間などは、宿が実際に確かめた目安を使います。

よくある場面の対応例

ここでは、説明のための架空の例として、ホテル・旅館でよくある場面と、電話の仕組みでの対応を示します。

場面1:夕食の配膳中に、到着の遅れの連絡

家族で運営する旅館で、夕食の配膳の最中に、「渋滞で到着が八時を過ぎそう」という電話がありました。お客様は1を選び、手の空いているスタッフの電話がまとめて鳴りましたが、全員が配膳中で出られませんでした。急ぎの聞き取りに切り替わり、お客様は名前と到着の予定時刻を話しました。配膳の区切りで、女将が記録を確認して折り返し、夕食の時間を遅らせる相談をしました。

この場面のポイントは、当日の宿泊客の連絡が、新規の予約の聞き取りと混ざらず、急ぎとして届いたことです。

場面2:予約サイト経由の予約の変更

ビジネスホテルに、「来週の予約を一泊延ばしたい」という電話がありました。お客様は2を選び、予約の経路の案内を聞いて、予約サイトでの予約だったことに気づきました。予約サイトで延泊の手続きをしようとしましたが、同じプランが満室だったため、ホテルに改めて電話をして、予約の担当と相談しました。

予約の経路の案内が最初にあったことで、担当が一から事情を聞く手間が減りました。

場面3:アレルギーの相談

旅館に、「子どもに卵のアレルギーがある。夕食で対応してもらえるか」という電話がありました。予約の担当は、名前、宿泊の日、人数、アレルギーの内容を聞き取り、「厨房に確かめてからお返事します」と伝えました。厨房と確かめた後、対応できる料理と、対応が難しい料理を伝えて、お客様に判断してもらいました。

その場で「大丈夫です」と答えず、厨房の確認を経たことで、当日の行き違いを防げました。

場面4:宿泊客についての問い合わせ

ホテルに、「知人が泊まっているはずなので、部屋につないでほしい」という電話がありました。フロントのスタッフは、宿の方針に沿って、「ご宿泊のお客様についてのお問い合わせにはお答えしていません。ご伝言をお預かりすることはできます」と答え、伝言を預かりました。宿泊しているお客様がいたため、伝言を本人に渡し、連絡するかどうかは本人に任せました。

宿泊の有無を答えなかったことで、お客様のプライバシーが守られました。

小さな旅館の一日の流れの例

説明のための架空の例として、家族で運営する小さな旅館の一日の電話の流れを示します。

時間帯電話の流れスタッフの動き
朝(チェックアウト)予約の問い合わせは聞き取り、当日の宿泊客の連絡はフロントへ夜間の聞き取りの記録を確認し、予約の希望に折り返す
昼すべての用件を受ける清掃の合間に予約の電話を受ける
午後から夕方(チェックイン)当日の宿泊客を優先、決まった答えは自動、予約は聞き取り到着のお客様の対応を優先する
夕食の時間当日の宿泊客は全員の電話にまとめて鳴らす、ほかは聞き取り配膳の区切りで急ぎの記録を確認する
夜(夕食の後)当日の宿泊客と宿泊中のお客様を夜間の担当へ、ほかは聞き取り夕食の時間の聞き取りに折り返す
深夜本日到着と宿泊中のお客様だけを夜間の担当へ宿泊客の対応と見回り

時間帯の切り替えを営業時間のルールとして設定しておけば、毎日、手で切り替える必要がありません。季節によってチェックインや夕食の時間が変わる場合は、ルールも合わせて変えます。

電話の案内とホームページの情報をそろえる

電話の自動の案内で伝える内容は、ホームページや予約サイトに載せている情報と同じでなければなりません。チェックインの時刻がホームページでは十五時、電話の案内では十四時、という食い違いがあると、お客様はどちらを信じればよいか分からなくなり、結局、確かめるための電話をかけてきます。

情報を変えるときは、次の場所をまとめて直す手順にしておきます。

  1. 宿の中で使っている案内の原本(一つの文書にまとめておく)
  2. ホームページ
  3. 宿泊予約サイトの施設の情報
  4. 電話の自動の案内
  5. 前日の連絡の文章
  6. 館内の掲示

原本を一つ決め、そこから各所に写す形にすると、どこか一か所だけ古いまま残る、ということを防ぎやすくなります。

効果の確認方法と見直し

確かめること

確かめること見る方法
出られなかった電話時間帯ごとの、出られなかった件数
当日の宿泊客の連絡聞き取りから折り返しまでの時間
決まった答えの電話自動の案内で終わった件数
スタッフの負担チェックインや配膳を中断した回数、スタッフの感想
お客様の声案内が長い、分かりにくいという声

つまずきやすいところ

つまずき起きること対策
当日の連絡が予約の聞き取りに混ざる到着の遅れへの対応が遅れる当日の宿泊客を最初の番号で分け、急ぎとして届ける
案内の情報が古い送迎の時刻や営業日の行き違い季節ごとに更新する日と担当を決める
予約サイトの扱いが違う変更の手続きで行き違い予約サイトごとの扱いを確認し、案内の言葉を合わせる
案内が長すぎる選ぶ前に切られる選択肢を絞り、急ぐものを先にする

CallでIVRと時間帯の振り分けを組む

ホテル・旅館の電話の流れは、CallのIVR、営業時間のルール、部門ごとのキュー、ボイスメール、IVRからのコールバックの受付、AIによる通話の要約、ブラウザのソフトフォンなどで組めます。チェックインの時間帯、夕食の時間、夜間で案内とつなぎ先を切り替え、部門のある宿では、部門ごとのキューで件数を見られます。設定の流れは使い方のガイドとドキュメントで紹介しています。

日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。電話回線でのAI応答を含む各機能の提供状況は機能一覧でご確認ください。この記事で紹介した流れは、IVRで用件を分け、ボイスメールや通話の内容をAIが要約して、スタッフが確認しやすくする使い方です。空室の確認、予約や料金の確定、アレルギー対応の判断は、スタッフが行います。設定を試したい場合は、登録ページから始められます。

関連する業種の記事として、不動産会社の電話対応、賃貸管理会社の電話対応もあわせてご覧ください(ホテル旅館のAI電話対応|空室・到着案内からの関連案内)。

よくある質問

AIが宿泊の予約を確定してくれますか?

聞き取りの段階では確定しません。AIや自動の案内は希望を聞き取るだけで、予約の担当が空室と料金を確かめ、確定の連絡をします。案内でも、確認の連絡で予約が確定することを伝えます。

空室があるかどうかを、自動で答えられますか?

予約の台帳とつながっていない限り、自動で「空いています」と答えるべきではありません。答えた後に満室だったと分かると、お客様との行き違いになります。希望を聞き取り、スタッフが確かめて折り返す流れが安全です。

夜間の電話は、すべて自動の案内にしてよいですか?

本日到着のお客様と、宿泊中のお客様の連絡は、夜間でも人が受けられるようにしておきます。予約や問い合わせは、ボイスメールで用件を受けて翌朝に折り返す、という分け方が一般的です。

予約サイト経由の予約の変更の電話には、どう対応しますか?

予約サイトによって、宿の側で変更できる範囲が違います。案内で予約の経路を確かめ、予約サイトでの手続きが必要な場合はそのことを伝えます。個別の事情はスタッフが相談に乗ります。

「〇〇さんは泊まっていますか」という電話には、どう答えますか?

宿として方針を決め、その方針に沿ってスタッフが対応します。宿泊の有無には答えず、伝言を預かるといった方針が考えられます。自動の案内やAIで答えないようにします。

キャンセル料について、自動の案内で答えてよいですか?

規定の要点を案内することはできますが、個別の予約にキャンセル料がかかるかどうか、いくらかかるかは、予約の内容と経路に照らしてスタッフが答えます。

アレルギーの相談は、どう受ければよいですか?

聞き取りで内容を受け、厨房と確かめてから折り返します。電話の場で「対応できます」と答えず、対応できる範囲とできない範囲を、確かめたうえで伝えます。

天候が悪いときの電話の集中に備えられますか?

臨時の案内を前もって用意しておき、すぐに切り替えられるようにしておくと備えになります。キャンセルの扱いなどの方針は、宿の責任者が決めた内容をそのまま案内します。

外国語の電話にも対応できますか?

対応する言語、対応できるスタッフのいる時間帯、対応できない時間帯の案内を、宿として決めておきます。自動の案内を複数の言語で用意する場合は、内容が日本語の案内と同じになっているかを確かめます。

録音していることは、お客様に伝えるべきですか?

録音や文字起こしをする場合は、最初の案内で伝えるのが一般的です。記録を見られる人を必要なスタッフに限り、保存の期間を決めておきます。

最初に何から始めればよいですか?

一、二週間、電話の用件と時間帯、出られなかった件数を記録することから始めます。そのうえで、人手の少ない夜間や夕食の時間から導入し、問題がないことを確かめてから広げると、無理なく進められます。

まとめ

ホテル・旅館の電話対応では、チェックインの時間帯や夕食の時間、夜間など、時間帯によって人手と電話の中身が大きく変わります。時間帯ごとに受け方を決め、当日の宿泊客の連絡を最優先で受け、決まった答えは自動の案内に任せ、新規の予約や問い合わせはボイスメールで用件を受けて折り返す、という流れにすると、目の前のお客様と電話の両方に向き合いやすくなります。

空室の確認、予約や料金の確定、キャンセル料の判断、アレルギーの対応、宿泊客についての問い合わせへの対応は、スタッフが行います。まずは電話の記録から始め、人手の少ない時間帯から少しずつ仕組みを整えていきましょう。

自社の業種に合わせた一次応答を、Callで設定してみる

デモコンソールでは、着信をシミュレーションで体験できます。

関連記事