法律事務所のAI電話対応|相談予約の受け方
法律事務所にかかってくる電話の多くは、かけてくる人にとって、人生の大きな出来事にかかわるものです。離婚、相続、交通事故、借金、職場のトラブル、刑事事件。初めて法律事務所に電話をかける人は、緊張しながら、どこから話せばよいかも分からないまま受話器を取っています。その電話が何度かけてもつながらなければ、別の事務所を探すか、相談そのものをあきらめてしまうかもしれません。
一方で、弁護士は期日で裁判所に出かけ、依頼者との打ち合わせや書面の作成に追われています。事務局のスタッフも、書類の準備、裁判所や相手方とのやりとり、依頼者への連絡で手がふさがっています。新しい相談の電話、依頼者からの進み具合の問い合わせ、相手方や裁判所からの連絡、営業の電話が同じ番号に入り、事務局は一日中、電話に追われることになります。
この記事では、法律事務所の電話対応に、IVR(自動音声応答)やAIによる一次応答を取り入れる方法を解説します。よくある課題と問い合わせの分類、営業時間外や繁忙時の受け方、設計の例、弁護士や事務局への引き継ぎ、個人情報と記録の扱い、導入の進め方を順に紹介します。法律相談への回答は弁護士が行うこと、相談を受けるかどうかの判断や利益相反の確認は事務所が行うことを前提に、自動化してよい範囲を考えます。
なお、この記事の内容は電話の受け方についての一般的な情報の紹介であり、法的助言ではありません。弁護士の職務にかかわる規律や、事務所の運営にかかわる扱いは、所属する弁護士会の規程などに照らして、各事務所で確認してください。
法律事務所の電話対応で起きがちな課題
新しい相談の電話は、長く、重い
初めての相談の電話では、かけてくる人が状況をうまく整理できていないことがよくあります。話が前後し、感情が高ぶり、一件の電話が長くなります。事務局のスタッフは、相談の内容に深入りせず、予約に必要なことだけを聞く、という難しい役割を担っています。ここで法律についての答えを求められても、スタッフは答えられません。
弁護士が電話に出られない
弁護士は、期日、打ち合わせ、移動で、事務所にいない時間が長くあります。依頼者からの「先生と話したい」という電話は、弁護士が戻るまで待ってもらうことになり、伝言の内容が正確に伝わるかどうかが、依頼者の安心にかかわります。
利益相反の確認が必要
法律事務所では、新しい相談を受ける前に、相手方がすでに事務所の依頼者でないかなど、利益相反の確認が必要です。そのためには、最初の電話で相手方の名前を聞いておく必要があります。一方で、相談の内容を詳しく聞く前に確認を済ませたい、という事情もあります。最初の電話で何を聞くかは、事務所として決めておくべきことです。
急ぐ相談が混ざる
家族が逮捕された、明日までに書類を出さなければならない、相手から差し押さえの通知が来た、といった急ぐ相談も入ります。また、身の危険を感じている人からの電話もあります。急ぐ相談をほかの電話と同じ流れで受けていると、対応が遅れるおそれがあります。身の危険が迫っている場合は、法律事務所への電話より、警察(110番)への連絡が先です。
相手方や関係者からの電話
事件の相手方、相手方の代理人、裁判所、関係する機関からの電話も入ります。相手方からの電話に、事務局のスタッフが不用意に事件の情報を話してしまうことがないよう、受け方を決めておく必要があります。
取り扱っていない分野の相談
法律事務所にも、広告の営業や、事務所の取扱いのない分野の相談が入ります。取り扱っていない分野の相談に長く時間をかけてしまうと、本来の相談者の電話に割く時間が減ります。
課題の整理
| 課題 | 起きること | 対策の方向 |
|---|---|---|
| 新しい相談の電話が長い | 事務局の時間がふさがる | 聞く項目を決め、予約に必要なことだけを聞く |
| 弁護士が不在 | 伝言の手間、依頼者の不安 | 聞き取りの記録を正確に届ける |
| 利益相反の確認 | 確認の前に詳しく聞いてしまう | 最初に聞く項目を決める |
| 急ぐ相談 | 対応が遅れる | 急ぐ相談を分け、優先して受ける |
| 相手方からの電話 | 不用意に情報を話す | 相手方の電話の受け方を決める |
| 取り扱っていない分野 | 時間がかかる | 取扱いの分野を案内で伝える |
少人数の事務所での電話の整え方は、小さな会社の電話対応の考え方も役立ちます。

よくある問い合わせの分類
分類の考え方
法律事務所の電話は、「誰からの電話か」と「急ぐか」で分けると、振り分けの設計がしやすくなります。
| 分類 | 例 | 急ぐか | 対応 |
|---|---|---|---|
| 新しい相談の予約 | 離婚について相談したい、相続の相談をしたい | 内容による | 事務局が予約に必要なことを聞く。出られなければ聞き取り |
| 急ぐ新しい相談 | 家族が逮捕された、明日が期限 | 急ぐ | 事務局にすぐつなぐ。弁護士に早く伝える |
| 依頼者からの連絡 | 進み具合を知りたい、書類を送った | 内容による | 担当の事務局、または弁護士 |
| 相手方・代理人 | 相手方の代理人からの連絡 | 内容による | 担当の弁護士や事務局。事務所の決まりに沿う |
| 裁判所・関係機関 | 期日の調整、書類の件 | 内容による | 担当の事務局 |
| 決まった答え | 事務所の場所、営業時間、相談の予約の方法、取扱いの分野 | 急がない | 自動の案内 |
| 取り扱っていない分野 | 事務所が扱わない種類の相談 | ― | 取扱いの分野を伝え、ほかの窓口を案内する |
| 営業・その他 | 広告の営業 | 急がない | 聞き取り |
電話を数える
一、二週間、分類と時間帯ごとに電話を記録します。弁護士あての電話のうち、弁護士が不在だった件数、新しい相談の電話の平均の長さを記録しておくと、どこを変えるべきかが分かります。
| 分類 | 件数 | 弁護士が不在だった件数 | 平均の長さの目安 |
|---|---|---|---|
| 新しい相談の予約 | |||
| 急ぐ新しい相談 | |||
| 依頼者からの連絡 | |||
| 相手方・代理人 | |||
| 裁判所・関係機関 | |||
| 営業・その他 |
新しい相談の電話で聞く項目を決める
新しい相談の電話で何を聞くかは、事務所として決めておきます。一般的には、次のような項目が考えられます。
- 名前と、連絡のつく電話番号、連絡してよい時間帯
- 相談の分野(離婚、相続、交通事故、借金、労働、刑事など)
- 相手方の名前(利益相反の確認のため)
- 期限が迫っている事情があるか(裁判所からの書類の期限など)
- 相談の希望の日時と、来所か、ほかの方法か
- 事務所を知ったきっかけ
相談の中身の詳しい事情は、最初の電話では聞かず、弁護士との相談の場で聞きます。電話で詳しく聞くと、電話が長くなるだけでなく、利益相反の確認の前に事情を聞いてしまうことにもなります。
連絡の方法への配慮
離婚の相談などでは、家族に相談していることを知られたくない、という人もいます。折り返しの電話を、いつ、どの番号にかけてよいか、事務所の名前を名乗ってよいか、留守番電話に伝言を残してよいか、を最初の電話で確認しておくと、相談者の安心につながります。
営業時間外・繁忙時の受け方
営業時間外の案内
法律事務所の営業時間外の電話は、自動の案内とボイスメールで受け、営業日に事務局が折り返す流れが基本です。案内では、次の点を伝えます。
- 営業時間外であること、次の営業日と時刻
- 身の危険が迫っている場合は、110番への連絡を先に
- 新しい相談の予約の希望は、ボイスメールで受け、次の営業日に連絡すること
- ホームページの相談の予約のフォームがある場合は、その案内
- 公的な相談の窓口の案内(必要に応じて)
経済的な事情で弁護士への相談が難しい人のために、公的な窓口として、日本司法支援センター(法テラス)があります。営業時間外の案内や、取り扱っていない分野の相談の案内で、こうした窓口を紹介する事務所もあります。紹介する場合は、窓口の受付の時間や内容が変わることがあるため、最新の情報を確認してから案内の文章に載せます。
時間帯ごとに案内を切り替える設定の考え方は、IVRの営業時間ルーティングで解説しています。
刑事事件の急ぐ相談
刑事事件を取り扱う事務所では、家族が逮捕された、という急ぐ相談が、夜間や休日に入ることがあります。こうした相談を夜間や休日にも受けるかどうかは、事務所の方針で決めます。受ける場合は、夜間の案内で刑事事件の急ぐ相談を分け、当番の弁護士の電話につなぐ、ボイスメールで用件を受けて当番の弁護士に急ぎで知らせる、といった流れを組みます。受けない場合は、そのことを案内で正直に伝え、ほかの窓口を紹介します。
期日の多い日の受け方
弁護士が期日で出かけている時間帯は、弁護士あての電話を、聞き取りに切り替えます。依頼者には、弁護士が戻る時刻の目安を伝え、折り返しの時間帯の希望を聞きます。事務局のスタッフは、相談の予約や書類の受付など、自分で対応できる用件に集中します。
新しい相談の電話が多い時期
事務所が広告を出した直後や、季節によって、新しい相談の電話が増えることがあります。電話が増えた時期ほど、一件ごとの聞き取りの質が落ちやすいため、聞く項目を書いた手元の用紙を事務局の全員で同じものにしておきます。この時期は、次の工夫をします。
- 取扱いの分野、相談の予約の方法、初回の相談の流れを、自動の案内で伝える
- 新しい相談は、聞き取りで予約に必要な項目を受け、事務局が確かめて折り返す
- ホームページの相談の予約のフォームを案内する
- 聞き取りの記録を確認する時刻を、一日に何回か決めておく
IVRとAI一次応答の設計例
一般民事を扱う事務所のメニューの例
説明のための架空の例として、弁護士が三人の一般民事の事務所のメニューを示します。
お電話ありがとうございます。〇〇法律事務所です。初めてのご相談のご予約は1を、ご依頼中のお客様は2を、裁判所、関係機関、ほかの法律事務所の方は3を、事務所の場所、営業時間、取り扱っている分野のご案内は4を押してください。
| 番号 | 営業時間内 | 営業時間外 |
|---|---|---|
| 1 | 事務局。出られなければ聞き取り | 聞き取り。次の営業日に折り返す |
| 2 | 担当の弁護士を名前で呼び出す、または事務局。不在なら担当あての聞き取り | 聞き取り |
| 3 | 事務局 | 聞き取り |
| 4 | 自動の案内 | 自動の案内 |
相手方からの電話は、3の「ほかの法律事務所の方」や、事務局の受付を経て、担当の弁護士の判断で対応します。相手方本人からの電話の受け方は、事務所の方針で決めておきます。
刑事事件も扱う事務所のメニューの例
お電話ありがとうございます。〇〇法律事務所です。ご家族が逮捕されたなど、刑事事件のお急ぎのご相談は1を、そのほかの初めてのご相談のご予約は2を、ご依頼中のお客様は3を、事務所の場所、営業時間のご案内は4を押してください。
急ぐ刑事事件の相談を最初の番号にするのは、急ぐ相談を最も早く選べるようにするためです。営業時間外の1の行き先は、事務所の方針に合わせて、当番の弁護士か、聞き取りかを決めます。
初めての相談の聞き取りの例
初めてのご相談のご予約をうかがいます。お名前と、ご連絡のつくお電話番号をお話しください。続けて、ご相談の分野(離婚、相続、交通事故など)と、相手の方のお名前をお話しください。相手の方のお名前は、ご相談をお受けできるかどうかの確認のためにうかがっています。ご相談の詳しい内容は、ご相談の当日にうかがいます。
相手方の名前を聞く理由を伝えておくと、相談者が戸惑いにくくなります。「詳しい内容は当日に」と伝えておくのは、電話で長く話さなくてよいことを伝え、相談者の負担を減らすためです。
AI一次応答を組み合わせる場合
番号を押す代わりに、AIの一次応答で用件を話してもらう方法もあります。「相続のことで相談の予約をしたい」と話してもらえれば、AIは新しい相談の予約として分類し、名前、電話番号、分野、相手方の名前、希望の日時を聞き取って、事務局に届けられます。「事務所はどの駅から近いですか」という質問には、事務所が登録した情報をもとに答えられます。
法律事務所でAIの一次応答を使う場合は、次の点を決めておきます。
- 法律の質問に答えない:「この場合は慰謝料をもらえますか」「時効はいつですか」といった質問には、答えません。法律相談への回答は弁護士が行います。
- 相談を受けると約束しない:利益相反の確認や、事務所の取扱いの範囲の確認が済むまで、相談を受けると約束しません。
- 見込みを言わない:勝てるか、どのくらいの期間がかかるかなど、事件の見込みについては答えません。
- 詳しい事情を聞きすぎない:予約に必要な項目に絞り、相談の中身は相談の場で弁護士が聞きます。
- 答える範囲を限る:登録した事務所の場所、営業時間、取扱いの分野、相談の予約の方法などに限り、推測では答えません。
AIの一次応答の仕様は、サービスによって異なります。AI電話受付の基本的な考え方はAI電話受付とはを参照してください。
スタッフへの引き継ぎと確定は人が行う
相談の予約の確定
聞き取った相談の予約の希望は、事務局が利益相反の確認と、事務所の取扱いの範囲の確認を済ませてから、弁護士の予定と合わせて確定します。聞き取りの段階では、相談を受けることも、日時も決まっていないことを、案内ではっきり伝えます。「ご予約のご希望をうかがいました。確認のうえ、事務局からご連絡します」といった言葉です。
確かめた結果、相談を受けられない場合は、その旨を伝えます。理由を詳しく説明できない場合もありますが、相談者が次の行動をとれるように、ほかの窓口を案内するなどの配慮をします。
急ぐ相談の引き継ぎ
期限が迫っている、家族が逮捕された、といった急ぐ相談は、事務局が受けたらすぐに弁護士に伝えます。弁護士が期日などで出られない場合でも、休憩の時間などに確かめられるように、急ぎの印をつけた記録を届けます。弁護士が相談を受けられるかどうか、いつ受けられるかを判断し、事務局から相談者に折り返します。
依頼者からの連絡
依頼者からの連絡は、担当の弁護士や事務局に届けます。進み具合の問い合わせには、事務局が答えられる範囲(書類が届いたか、次の期日の日時など)は事務局が答え、事件の見通しや方針にかかわる質問は、弁護士が答えます。弁護士が不在のときは、聞き取りで用件を受け、弁護士が戻ってから折り返します。
相手方からの電話
相手方本人や相手方の代理人からの電話は、担当の弁護士の判断で対応します。事務局のスタッフは、事件の内容や依頼者の情報を話さず、用件と連絡先だけを受けて弁護士に伝えます。相手方からの電話であることを、記録にはっきり残します。相手方本人が、依頼者の代理人である弁護士を通さずに直接連絡してきた場合の扱いも、弁護士の判断によります。事務局は、その場で事件について話し合わず、弁護士から連絡する旨を伝えるにとどめます。
予約の確定の連絡で伝えること
相談の予約を確定するときは、次の点を伝えると、当日の行き違いを防げます。
- 相談の日時と、相談の時間の目安
- 事務所の場所と行き方、建物の入り口や受付の場所
- 持ってくるとよい資料(関係する書類、経緯を書いたメモ、相手方からの書面など)
- 相談の料金の扱い(事務所として決まっている内容を正確に)
- 都合が悪くなったときの連絡の方法
- 相談の後に依頼するかどうかは、その場で決めなくてよいこと
確定の連絡を電話で行う場合も、伝えた内容を書面やメールで送っておくと、相談者が後から見返せます。送る先と方法は、最初の電話で確認した連絡の方法への配慮に沿って決めます。
相談の予約の変更とキャンセル
相談者から予約の変更やキャンセルの連絡が入ることもあります。営業時間外でもボイスメールで受けられるようにしておき、事務局が確かめて折り返します。キャンセルの連絡を受けたときは、再び予約を希望するかどうかも聞いておくと、相談者がそのまま相談をあきらめてしまうことを防げる場合があります。
引き継ぎで伝える項目
| 用件 | 聞き取る項目 |
|---|---|
| 新しい相談の予約 | 名前、電話番号、連絡してよい時間帯と方法、分野、相手方の名前、期限の有無、希望の日時、知ったきっかけ |
| 急ぐ新しい相談 | 名前、電話番号、分野、急ぐ事情の概要(逮捕された場所、期限の日付など)、相手方の名前 |
| 依頼者からの連絡 | 名前、電話番号、担当の弁護士、用件の概要、折り返しの希望の時間帯 |
| 相手方・代理人 | 名前、所属、電話番号、どの事件の件か、用件の概要 |
| 裁判所・関係機関 | 名前、所属、電話番号、事件の番号など、用件の概要 |
折り返しの順番
- 急ぐ新しい相談
- 裁判所や関係機関からの期日や期限にかかわる連絡
- 依頼者からの急ぎの連絡
- 新しい相談の予約
- その他
期限にかかわる連絡は、弁護士と事務局の両方に届くようにしておくと、見落としを防げます。
事務局が答えられること、答えられないこと
事務局のスタッフや自動の案内が答えてよいことと、弁護士が答えることを、一覧にしておくと、新しいスタッフも迷わずに済みます。
| 質問の例 | 答える人 | 答え方 |
|---|---|---|
| 事務所の場所、営業時間 | 事務局・自動の案内 | 決まった情報を伝える |
| 相談の予約の方法、当日の持ち物 | 事務局・自動の案内 | 決まった情報を伝える |
| 書類が届いたか、次の期日の日時 | 事務局 | 依頼者本人であることを確認して伝える |
| 相談料の扱い | 事務局・自動の案内 | 事務所の決まった扱いを正確に伝える |
| この場合は慰謝料をもらえるか、時効はいつか | 弁護士 | 相談の場で弁護士が答える |
| 勝てるか、どのくらいかかるか | 弁護士 | 相談の場で弁護士が答える |
| 依頼するといくらかかるか | 弁護士 | 事件の内容を聞いたうえで弁護士が説明する |
| 相談を受けてもらえるか | 事務所 | 確認の後に事務局から連絡する |
「答えられないこと」を聞かれたときの言い方も決めておきます。「その点は、ご相談の際に弁護士からご説明します」と伝えれば、相談者を突き放さずに済みます。
個人情報と記録の扱い
法律事務所で扱う情報
法律事務所の電話では、名前や電話番号のほか、家族の関係、借金の額、病気、犯罪にかかわる事情など、最も立ち入った情報が話されることがあります。弁護士には守秘の義務があり、事務局のスタッフも、事務所の一員として秘密を守る必要があります。電話の録音、文字起こし、要約、聞き取りの記録が残る場合は、その扱いを特に慎重に決めておきます。
個人情報の扱いの全般については、個人情報保護委員会のウェブサイトに法律やガイドラインがまとめられています。弁護士の職務にかかわる秘密の扱いは、所属する弁護士会の規程などに照らして、事務所で確認してください。ここでの説明は一般的な考え方の紹介であり、法的助言ではありません。
外部のサービスを使うときに確かめること
電話の仕組みやAIの要約を外部のサービスで使う場合は、相談者や依頼者の情報が、事務所の外のサービスで扱われることになります。次の点を確認します。
| 確かめること | 確かめる問い |
|---|---|
| 保存の場所 | 録音や文字起こしは、どこに、どのように保存されるか |
| 利用の範囲 | 提供元が、保存した情報を何に使うか |
| 見られる人 | 事務所の中で、誰が記録を見られるか。権限を分けられるか |
| 保存の期間と削除 | どのくらい残り、事務所の判断で削除できるか |
| 録音の有無 | 録音をせずに、聞き取りの記録だけを残す設定にできるか |
確かめた結果、事務所の方針に合わない場合は、録音をしない、要約を使わない、といった設定にするか、使う範囲を絞ります。
聞く情報を絞る
先に触れたとおり、最初の電話では予約に必要な項目だけを聞きます。聞く情報を絞るほど、記録に残る情報も少なくなり、守るべき情報も少なくなります。
家族が代わりに電話をかけてくる場合
逮捕された人の家族、高齢の親の代わりに子が電話をかけてくる、といった場合もあります。電話をかけてきた人と、相談をする本人が違う場合は、そのことを記録にはっきり残します。相談の予約は、できるだけ本人の意思を確認したうえで確定します。依頼者の事件について、家族からの問い合わせにどこまで答えるかは、依頼者本人の意向に沿って、弁護士が判断します。
導入の進め方
ステップ1:電話を記録する
一、二週間、分類と時間帯ごとに電話を記録します。弁護士が不在だった件数、新しい相談の電話の長さ、営業時間外の件数を確認します。
ステップ2:最初の電話で聞く項目を決める
新しい相談の電話で聞く項目を、弁護士と事務局で話し合って決めます。利益相反の確認に必要な項目、期限の有無、連絡の方法への配慮を含めます。
ステップ3:急ぐ相談の扱いを決める
急ぐ相談を、営業時間内と営業時間外でどう受けるかを決めます。刑事事件の急ぐ相談を夜間や休日に受けるかどうかも、ここで決めます。
ステップ4:記録の扱いを決める
録音、文字起こし、要約、聞き取りの記録のどれを残すか、誰が見られるか、どのくらい残すかを決めます。外部のサービスを使う場合は、先に挙げた点を確認します。
ステップ5:案内の情報を整える
事務所の場所、営業時間、取扱いの分野、相談の予約の方法、初回の相談の流れ、当日の持ち物などを書き出します。ホームページの情報と食い違いがないかを確認します。
ステップ6:試験の電話をかける
事務局のスタッフや弁護士が相談者の役になって、新しい相談、急ぐ相談、依頼者の連絡、相手方の電話、取り扱っていない分野の相談、営業時間外の電話をかけ、それぞれが決めたとおりに流れるかを確認します。
ステップ7:営業時間外から始める
最初は、営業時間外の案内と聞き取りから始め、問題がないことを確認してから、営業時間内の振り分けに広げます。
ステップ8:記録を見て直す
聞き取りから折り返しまでの時間、新しい相談の予約になった件数、相談者の声を見て、案内の言葉や聞く項目を直していきます。

法律事務所ならではの工夫
取扱いの分野をはっきり伝える
事務所の取扱いの分野を、自動の案内とホームページではっきり伝えておくと、取り扱っていない分野の相談の電話を減らせます。取り扱っていない分野の相談が来た場合に紹介できる窓口(弁護士会の法律相談の窓口、法テラスなど)を、事務所として決めておくと、断るだけで終わらずに済みます。取扱いの分野は、「離婚」「相続」のように、相談者が自分の悩みと結びつけやすい言葉で伝えます。「家事事件」のような専門の言葉だけでは、相談者が自分の相談が当てはまるかどうかを判断しにくいためです。
相談の当日の流れを案内する
初めて法律事務所に相談する人は、当日に何が起きるのか、何を持っていけばよいのかが分からず、不安に感じています。初回の相談の流れ(受付、相談の時間の目安、相談の後に依頼するかどうかはその場で決めなくてよいことなど)と、持ってくるとよい資料(関係する書類、経緯を書いたメモなど)を、自動の案内や予約の確定の連絡で伝えると、相談者の不安を減らせます。相談の料金の扱いは、事務所の方針に沿って、正確に伝えます。
依頼者への連絡を先回りする
依頼者からの「どうなっていますか」という電話は、依頼者が不安を感じているときにかかってきます。期日の後や、相手方から書面が届いたときなど、節目ごとに事務所から連絡をしておくと、依頼者からの問い合わせの電話を減らせるだけでなく、依頼者の安心にもつながります。
弁護士あての電話の折り返しの時間を決める
弁護士あての聞き取りの記録に、いつ折り返すかの目安を決めておきます。たとえば、期日の日は夕方にまとめて折り返す、事務所にいる日は昼休みと夕方に折り返す、といった決め方です。依頼者に折り返しの時間の目安を伝えられると、依頼者は待つ時間の見通しを持てます。折り返しが予定より遅れる場合は、事務局から「本日は夕方以降になります」と一言連絡を入れるだけでも、依頼者の不安はやわらぎます。
期限にかかわる連絡を見落とさない
法律事務所の仕事では、裁判所に書面を出す期限、相手方に回答する期限など、守らなければならない期限が数多くあります。期限にかかわる連絡は、電話で受けた場合でも、口頭の伝言だけで済ませず、必ず記録に残して、事務所の期限の管理の仕組みに反映します。
聞き取りの記録や通話の要約に「期限」「期日」「〇日まで」といった言葉が含まれる場合は、事務局が特に注意して確かめ、担当の弁護士に伝えたことを記録に残します。新しい相談者が「明日までに返事をしなければならない」と話した場合も、急ぐ相談として扱い、弁護士がすぐに判断できるようにします。期限の判断そのものは、弁護士が行います。
外国語での相談の問い合わせ
外国籍の人からの相談の問い合わせが入ることもあります。外国語での相談に対応しているかどうか、通訳を手配できるかどうかは、事務所によって違います。対応していない場合は、そのことを案内で伝え、外国人向けの相談の窓口を紹介できるようにしておくと、相談者が行き場を失わずに済みます。
声のトーンと言葉づかい
法律事務所に電話をかけてくる人は、不安や怒りを抱えていることが多くあります。自動の案内の言葉は、事務的になりすぎず、落ち着いた、ていねいな言葉にします。「ご相談をお受けできるかどうかの確認のため」のように、理由を添えると、相談者が納得しやすくなります。
高齢の相談者や、電話が苦手な相談者
相続や成年後見の相談では、高齢の相談者からの電話も多くあります。番号を押す操作が難しい人もいるため、最初の案内の後で番号を押さなかった場合に、事務局や聞き取りにつながるように設定しておきます。案内の選択肢を少なくし、ゆっくりとした話し方の音声にすることも配慮の一つです。電話が苦手な人や、耳の聞こえにくい人のために、ホームページのフォームやファクスなど、電話以外の予約の方法を用意しておくと、相談の入り口を広げられます。
広告を出すときの電話の準備
ホームページの改装や広告の掲載の直後は、新しい相談の電話が増えることがあります。広告を出す前に、次の点を確認しておきます。
- 広告に載せる取扱いの分野と、電話の案内の取扱いの分野が同じか
- 新しい相談の聞き取りの記録を確認する時刻と担当が決まっているか
- 広告を見て電話をかけてきた人を、知ったきっかけとして記録できるか
- 営業時間外の電話の件数が増えても、翌朝に折り返しきれるか
弁護士の名前で呼び出す
依頼者が担当の弁護士に直接連絡したい場合に、弁護士の名前で呼び出せる仕組み(ダイヤルバイネーム)を使う方法があります。弁護士が不在のときは、その弁護士あての聞き取りに切り替わるようにしておきます。新しい相談者が特定の弁護士を名指ししてくる場合もあるため、名前で呼び出したときの流れも、利益相反の確認の前提に沿って決めておきます。
案内の文章のひな形
以下は説明のための文例です。〇の部分を、事務所の情報に置き換えて使ってください。
営業時間外の案内
お電話ありがとうございます。〇〇法律事務所です。本日の受付は終了しました。次の受付は〇曜日の〇時からです。身の危険が迫っている場合は、110番にご連絡ください。初めてのご相談のご予約は、このあと、お名前、お電話番号、ご相談の分野をお話しください。次の営業日に事務局からご連絡します。
取り扱っていない分野の案内
当事務所では、〇〇、〇〇、〇〇の分野のご相談をお受けしています。そのほかの分野のご相談は、お近くの弁護士会の法律相談の窓口などをご利用ください。
弁護士が不在のときの案内
ただいま担当の弁護士は外出しております。お名前、お電話番号、ご用件をお話しください。弁護士が戻りしだい、ご連絡します。
よくある場面の対応例
ここでは、説明のための架空の例として、法律事務所でよくある場面と、電話の仕組みでの対応を示します。
場面1:夜間の離婚の相談の予約
夜、離婚を考えている人から電話がありました。営業時間外の案内で、相談者は名前、電話番号、分野、相手方の名前を話し、折り返しは平日の昼休みの時間に携帯にほしい、事務所の名前は名乗らないでほしい、と話しました。翌朝、事務局は利益相反の確認を済ませ、昼休みの時間に、事務所の名前を名乗らずに折り返して、相談の日時を確定しました。
この場面のポイントは、連絡の方法への配慮が、聞き取りの記録に残っていたことです。
場面2:期日中の依頼者からの電話
弁護士が期日で裁判所にいる間に、依頼者から「相手から手紙が届いた」という電話がありました。依頼者は2を選び、弁護士の名前を言いましたが、弁護士は出られなかったため、弁護士あての聞き取りに切り替わりました。弁護士は期日の後で記録を確認し、手紙の内容を確認するため、依頼者に折り返して、写しを事務所に送ってもらうよう伝えました。
場面3:急ぐ刑事事件の相談
刑事事件を取り扱う事務所に、休日の朝、「夫が昨夜逮捕された」という電話がありました。相談者は1を選び、休日の当番の弁護士につながりました。弁護士は、逮捕された場所と夫の名前を聞き、利益相反の確認を事務局の当番に頼んだうえで、接見に向かう段取りを相談者に伝えました。
場面4:取り扱っていない分野の相談
一般民事の事務所に、特許の相談の電話がありました。相談者は4を選んで取扱いの分野の案内を聞き、取り扱っていない分野であることが分かりました。案内で紹介された弁護士会の窓口に連絡することにしました。
事務局は、取り扱っていない分野の電話に時間をとられずに済みました。
事務所の一日の流れの例
説明のための架空の例として、弁護士が三人、事務局が二人の事務所の一日を示します。
| 時間帯 | 電話の流れ | 弁護士と事務局の動き |
|---|---|---|
| 朝 | 営業時間外の案内から日中の案内に切り替わる | 事務局が前の夜の聞き取りを確認し、急ぐ相談を弁護士に伝える。新しい相談の利益相反を確認する |
| 午前 | 新しい相談は事務局、依頼者の連絡は担当へ | 弁護士の一人は期日で外出。その弁護士あての連絡は聞き取りへ |
| 昼休み | 事務局が交代で受ける | 外出中の弁護士が記録を確認し、急ぐものに折り返す |
| 午後 | 同上 | 相談と打ち合わせ。事務局は相談の予約の折り返し |
| 夕方 | 同上 | 弁護士が依頼者への折り返しをまとめて行う |
| 営業時間外 | 自動の案内と聞き取りへ | 急ぐ刑事事件の相談は、方針に沿って当番へ |
期日の予定を事務局が把握しておくと、依頼者に弁護士が戻る時刻の目安を伝えやすくなります。弁護士の予定表を事務局と共有し、外出の予定が変わったら更新してもらうよう、事務所の中で決めておきます。
スタッフへの共有と新しいスタッフの教育
電話の仕組みを変えたら、弁護士と事務局の全員に、流れを共有します。新しい事務局のスタッフには、次の内容を伝えます。
- 番号ごとのつなぎ先と、営業時間外の流れ
- 新しい相談の電話で聞く項目と、聞かない項目
- 法律の質問、事件の見込み、相談を受けるかどうかには、答えないこと
- 相手方からの電話で、事件の内容や依頼者の情報を話さないこと
- 急ぐ相談の印のつけ方と、弁護士への伝え方
- 連絡の方法への配慮(事務所の名前を名乗るか、伝言を残すか)の確認方法
効果の確認方法と見直し
確かめること
| 確かめること | 見る方法 |
|---|---|
| 新しい相談の機会 | 新しい相談の電話の件数と、予約になった件数 |
| 折り返しの早さ | 聞き取りから折り返しまでの時間 |
| 事務局の負担 | 新しい相談の電話の長さ、取り扱っていない分野の電話にかかった時間 |
| 依頼者の安心 | 依頼者からの進み具合の問い合わせの件数、依頼者の声 |
| 急ぐ相談の扱い | 急ぐ相談が弁護士に伝わるまでの時間 |
つまずきやすいところ
| つまずき | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 聞き取りで詳しく聞きすぎる | 電話が長くなる、確認の前に事情を聞く | 聞く項目を絞り、案内で「詳しくは当日に」と伝える |
| 連絡の方法への配慮が抜ける | 家族に知られて相談者が困る | 聞き取りの項目に入れ、折り返しの前に必ず確かめる |
| 急ぐ相談が埋もれる | 期限に間に合わない | 急ぐ相談を最初の番号で分け、印をつけて届ける |
| 取扱いの分野の案内が古い | 取り扱っていない相談が増える | 分野が変わったら案内とホームページを直す |
CallでIVRと聞き取りの流れを組む
法律事務所の電話の流れは、CallのIVR、営業時間のルール、名前で弁護士を呼び出すディレクトリ、キューごとのボイスメール、AIによる通話の要約、ブラウザのソフトフォンなどで組めます。新しい相談、依頼者の連絡、関係機関の連絡を分け、弁護士あての連絡をボイスメールで用件を受けて届ける流れが組めます。録音や要約を使うかどうかは、事務所の方針に合わせて決めてください。設定の流れは使い方のガイドとドキュメントで紹介しています。
日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。電話回線でのAI応答を含む各機能の提供状況は機能一覧でご確認ください。この記事で紹介した流れは、IVRで用件を分け、ボイスメールや通話の内容をAIが要約して、事務局や弁護士が確認しやすくする使い方です。法律相談への回答、相談を受けるかどうかの判断、利益相反の確認は、弁護士と事務所が行います。設定を試したい場合は、登録ページから始められます。
関連する業種の記事として、税理士事務所の電話対応、司法書士・行政書士事務所の電話対応もあわせてご覧ください(法律事務所のAI電話対応|相談予約の受け方からの関連案内)。
よくある質問
AIが法律相談に答えてくれますか?
答えません。法律相談への回答は弁護士が行います。AIや自動の案内が扱うのは、事務所の場所や営業時間などの決まった答えと、相談の予約に必要な項目の聞き取りまでです。
最初の電話で、相手方の名前を聞くのはなぜですか?
相談を受ける前に、利益相反の確認をする必要があるためです。案内で理由を伝えておくと、相談者が戸惑いにくくなります。
最初の電話で、相談の内容を詳しく聞くべきですか?
予約に必要な項目に絞るのが無難です。詳しい事情は、利益相反の確認を済ませた後、相談の場で弁護士が聞きます。
家族に知られたくないという相談者には、どう配慮しますか?
折り返しの時間帯、電話番号、事務所の名前を名乗ってよいか、伝言を残してよいかを、最初の電話で確かめて記録に残します。折り返しの前に、必ずその記録を確かめます。
夜間の刑事事件の相談は、受けるべきですか?
事務所の方針で決めます。受ける場合は、夜間の案内で急ぐ相談を分け、当番の弁護士につなぐ流れを組みます。受けない場合は、そのことを案内で伝え、ほかの窓口を紹介します。
相手方から電話がかかってきたら、どうしますか?
事務局は事件の内容や依頼者の情報を話さず、用件と連絡先だけを受けて、担当の弁護士に伝えます。対応は弁護士の判断で行います。
依頼者からの「どうなっていますか」という電話を減らせますか?
期日の後など、節目ごとに事務所から連絡をしておくと、問い合わせの電話を減らせます。弁護士あての連絡について、折り返しの目安時間を決めて伝えることも役に立ちます。
録音や要約の機能を使ってもよいですか?
相談者や依頼者の情報が外部のサービスで扱われることになるため、保存の場所、利用の範囲、見られる人、削除の方法を確かめ、事務所の方針に合う場合に使います。録音をせずに聞き取りの記録だけを残す方法もあります。
取り扱っていない分野の相談は、どうすればよいですか?
取扱いの分野を案内ではっきり伝え、取り扱っていない分野の相談には、弁護士会の法律相談の窓口などを紹介します。紹介する窓口の情報は、最新のものを確かめておきます。
相談料について、自動の案内で伝えてよいですか?
事務所として決まっている扱いを、正確に伝えることはできます。個別の事件の費用の見積もりは、相談の場で弁護士が説明します。
最初に何から始めればよいですか?
一、二週間、電話の用件と、弁護士が不在だった件数、新しい相談の電話の長さを記録することから始めます。そのうえで、最初の電話で聞く項目と記録の扱いを決め、営業時間外の案内から導入すると、無理なく進められます。
まとめ
法律事務所の電話対応では、相談者の不安に寄り添いながら、予約に必要なことだけを聞き、法律の判断にかかわることは弁護士に任せる、という線引きが大切です。最初の案内で新しい相談、急ぐ相談、依頼者の連絡、関係機関の連絡を分け、聞く項目と連絡の方法への配慮を決めておけば、弁護士が不在のときでも、相談者や依頼者の用件を正確に受け止められます。
法律相談への回答、相談を受けるかどうかの判断、利益相反の確認、事件の見込みの説明は、弁護士と事務所が行います。記録の扱いは、守秘の義務を踏まえて慎重に決めます。まずは電話の記録から始め、営業時間外の案内から少しずつ仕組みを整えていきましょう。



