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税理士事務所のAI電話対応|顧問・繁忙期

AI-SNS.IO 編集部 · 公開

税理士事務所のAI電話対応|顧問・繁忙期(AI-SNS.IO Call ブログ)

税理士事務所の一年には、はっきりとした波があります。年末調整の時期、個人の確定申告の時期、顧問先の決算が重なる月。そうした時期には、職員の全員が書類と申告の作業に追われ、電話が鳴るたびに作業の手が止まります。顧問先からの「この領収書は経費になりますか」という質問、新しく事業を始めた人からの相談の申し込み、税務署や金融機関からの連絡、そして確定申告の時期だけ増える、一度きりの依頼の問い合わせ。電話の中身はさまざまで、それぞれ答える人も急ぎ具合も違います。

電話にすぐ出られないと、顧問先は「いつも忙しそうで聞きにくい」と感じ、新しい相談者はほかの事務所に問い合わせるかもしれません。一方で、電話に出るたびに集中が途切れ、申告の作業でのミスにつながることも心配です。

この記事では、税理士事務所の電話対応に、IVR(自動音声応答)やAIによる一次応答を取り入れる方法を解説します。よくある課題と問い合わせの分類、営業時間外や繁忙期の受け方、設計の例、税理士や担当の職員への引き継ぎ、個人情報と記録の扱い、導入の進め方を順に紹介します。税務の相談への回答は税理士が行うこと、依頼を受けるかどうかの判断は事務所が行うことを前提に、自動化してよい範囲を考えます。

なお、この記事の内容は電話の受け方についての一般的な情報の紹介であり、税務や法律についての助言ではありません。税理士の業務にかかわる決まりや、事務所の運営にかかわる扱いは、所属する税理士会の規程などに照らして、各事務所で確認してください。

税理士事務所の電話対応で起きがちな課題

繁忙期に電話が集中する

税理士事務所の繁忙期は、電話も増える時期です。確定申告の時期には、顧問先の個人事業者からの書類の提出や質問の電話に加えて、確定申告だけを頼みたいという新しい問い合わせが入ります。年末調整の時期には、顧問先の会社の担当者から、書類の書き方や提出の期限についての電話が増えます。作業が最も忙しい時期に、電話も最も多くなるのが、税理士事務所の悩みです。

担当の職員に電話が集中する

税理士事務所では、顧問先ごとに担当の職員が決まっていることが多く、顧問先は担当の職員と話したいと考えます。担当の職員が外出や打ち合わせで不在のとき、ほかの職員が電話を受けても答えられず、伝言を受けることになります。伝言が口頭やメモで伝わると、内容が抜けたり、伝わるのが遅れたりします。

税務の質問は、その場で答えにくい

顧問先からの「これは経費になりますか」「この場合の税金はどうなりますか」といった質問は、事情を確認したうえで、税理士や担当の職員が答える必要があります。受付の職員がその場で答えることはできず、自動の案内やAIで答えるものでもありません。

新しい相談の問い合わせ

開業したばかりの人、相続が起きた人、副業の収入がある人など、新しい相談の問い合わせも入ります。事務所が扱っている業務か、繁忙期でも受けられるか、どのくらいの準備が必要か、を確認してから、依頼を受けるかどうかを決める必要があります。

税務署や金融機関からの連絡

税務署から顧問先の申告についての問い合わせや、税務調査の日程の連絡が入ることもあります。金融機関から、顧問先の融資の書類についての問い合わせが入ることもあります。こうした連絡は、担当の税理士や職員に正確に、早く伝える必要があります。

課題の整理

課題起きること対策の方向
繁忙期の電話の集中作業の手が止まる、ミスにつながる決まった答えは自動、ほかはボイスメールで用件を受けて折り返す
担当の職員への集中伝言の手間、伝わる遅れ担当の名前で呼び出す、担当あての記録を届ける
税務の質問その場で答えられないボイスメールで受け、税理士や担当が答える
新しい相談受けられるか確かめる必要聞く項目を決め、事務所が判断する
税務署・金融機関の連絡伝わる遅れ関係機関の連絡を分け、担当に早く届ける

少人数の事務所での電話の整え方は、小さな会社の電話対応で紹介している考え方も参考になります。

顧問先の質問、書類の連絡、新しい相談、税務署、金融機関、決まった答えの対応の比較
図1:税理士事務所の電話の分類

よくある問い合わせの分類

分類の考え方

税理士事務所の電話は、「誰からの電話か」と「期限にかかわるか」で分けると、振り分けの設計がしやすくなります。

分類例急ぐか対応
顧問先からの質問この支出は経費になるか、給与の計算の質問内容による担当の職員。出られなければ担当あての聞き取り
顧問先からの書類の連絡書類を送った、いつまでに出せばよいか内容による担当の職員、期限の案内は自動でも可
新しい相談開業した、相続の申告を頼みたい、確定申告だけ頼みたい内容による事務局が聞き取り、税理士が受けるかどうかを判断
税務署申告の内容の問い合わせ、調査の日程急ぐ担当の税理士にすぐ伝える
金融機関・関係機関融資の書類の問い合わせ内容による担当の職員
決まった答え事務所の場所、営業時間、繁忙期の受付の状況、書類の送り先急がない自動の案内
営業・その他広告、ソフトの営業急がない聞き取り

電話を数える

一、二週間、分類と時間帯ごとに電話を記録します。できれば、繁忙期とそうでない時期の両方で記録すると、時期による違いが分かります。担当の職員が不在だった件数も記録しておきます。

分類通常の時期繁忙期担当が不在だった件数
顧問先からの質問
顧問先からの書類の連絡
新しい相談
税務署
金融機関・関係機関
営業・その他

新しい相談の電話で聞く項目

新しい相談の電話で何を聞くかは、事務所として決めておきます。一般的には、次のような項目が考えられます。

収入の金額、財産の内容などの詳しい事情は、最初の電話では聞かず、面談の場で聞きます。

営業時間外・繁忙時の受け方

繁忙期は「受付の状況」を先に伝える

繁忙期には、新しい依頼を受けられるかどうかが、問い合わせる人にとって最も知りたいことです。自動の案内の最初の方で、繁忙期の受付の状況を伝えると、問い合わせる人も事務所も、時間を無駄にせずに済みます。

ただいま、確定申告の時期のため、新しいご依頼の受付を〇日で締め切りました。〇月以降のご相談のご予約はお受けしています。

受付の状況は時期によって変わるため、案内の文章をいつ、誰が切り替えるかを決めておきます。案内の内容とホームページの内容が食い違わないよう、両方を同時に直します。

確定申告の時期や期限については、国税庁の確定申告特集で確認できます。期限は年によって変わることがあるため、案内の文章に日付を載せる場合は、その年の情報を確認してから載せます。

繁忙期の顧問先の電話

繁忙期には、顧問先からの電話も増えます。顧問先の電話は、次のように分けると、作業の手を止める回数を減らせます。

担当の職員が、一日のうち決まった時刻に聞き取りの記録を確認し、まとめて折り返すようにすると、作業に集中できる時間を確保できます。顧問先には、繁忙期は折り返しの時刻がまとまることを、前もって伝えておきます。

営業時間外の案内

営業時間外の案内では、次の点を伝えます。

  1. 営業時間外であること、次の営業日と時刻
  2. 顧問先の方の連絡は、担当あてのボイスメールで受けること
  3. 新しいご相談の予約の希望は、ボイスメールで受けること
  4. 繁忙期の受付の状況(必要に応じて)
  5. ホームページの問い合わせのフォームがある場合は、その案内

時間帯ごとに案内を切り替える方法は、IVRの営業時間ルーティングで紹介しています。

IVRとAI一次応答の設計例

職員が数人の事務所のメニューの例

説明のための架空の例として、税理士が一人、職員が四人の事務所のメニューを示します。

お電話ありがとうございます。〇〇税理士事務所です。顧問先のお客様は1を、新しいご相談、確定申告のご依頼のお問い合わせは2を、税務署、金融機関などの方は3を、書類の送り先、営業時間、繁忙期の受付の状況のご案内は4を押してください。

番号営業時間内営業時間外
1担当の職員を名前で呼び出す。不在なら担当あての聞き取り担当あての聞き取り
2事務局。出られなければ聞き取り聞き取り。次の営業日に折り返す
3事務局、または担当の税理士聞き取り
4自動の案内自動の案内

顧問先の担当の呼び出し

顧問先の電話は、担当の職員に直接つながるのが理想です。担当の職員の名前で呼び出せる仕組み(ダイヤルバイネーム)を使えば、顧問先が担当の名前を言うか、番号を押すかで、担当につなげられます。担当が不在のときは、その担当あての聞き取りに切り替わるようにしておきます。

顧問先が担当の名前を覚えていない場合や、担当が替わった場合もあるため、「担当者が分からない方は0を」のように、事務局につながる選択肢も残しておきます。担当の職員が長期の休みに入るときは、代わりの職員に記録が届くように、休みの前に設定を切り替えます。

繁忙期の追加の選択肢

確定申告の時期だけ、新しい問い合わせの番号の中に、「確定申告のご依頼の受付の状況のご案内」を加える方法もあります。受付を締め切った後は、その案内だけを聞いてもらえば済むため、事務局の電話が減ります。

AI一次応答を組み合わせる場合

番号を押す代わりに、AIの一次応答で用件を話してもらう方法もあります。「顧問をお願いしている〇〇商店ですが、担当の〇〇さんに、給与の計算のことで聞きたい」と話してもらえれば、AIは顧問先の質問として分類し、担当あてに用件を聞き取って届けられます。「書類はどこに送ればよいですか」という質問には、事務所が登録した情報をもとに答えられます。

税理士事務所でAIの一次応答を使う場合は、次の点を決めておきます。

AIの一次応答の仕組みや提供の形はサービスごとに違います。全体像はAI電話受付とはにまとめています。

スタッフへの引き継ぎと確定は人が行う

顧問先の質問への回答

顧問先の質問は、担当の職員が事情を確認し、必要に応じて税理士に相談してから答えます。聞き取りでは、質問の要点だけを受け、詳しい事情は折り返しの電話で聞きます。質問の内容によっては、書類を見ないと答えられないこともあるため、その場合は書類を送ってもらう方法を伝えます。

新しい相談の判断

新しい相談の聞き取りの記録は、事務局が税理士に伝え、税理士が依頼を受けるかどうか、面談の日時をいつにするかを判断します。受けられない場合は、その旨を早めに伝え、問い合わせた人がほかの事務所を探す時間を確保できるようにします。特に申告の期限が近い相談では、返事が遅れると、相談者が期限に間に合わなくなるおそれがあります。

税務署からの連絡

税務署からの連絡は、受けたらすぐに担当の税理士に伝えます。税務調査の日程の連絡などは、顧問先との調整も必要になるため、聞き取りの記録だけでなく、担当の税理士が直接、税務署の担当者に折り返して内容を確認します。

税務調査の連絡を受けたときの流れ

税務調査の日程の連絡は、税務署から事務所に入る場合と、顧問先に直接入って顧問先から事務所に電話がある場合があります。どちらの場合も、事務所の中での流れを決めておくと、慌てずに済みます。

  1. 受けた職員は、税務署の名前、担当者の名前、電話番号、どの顧問先の件か、日程の候補を記録する
  2. すぐに担当の税理士に伝える。税理士が不在の場合は、急ぎの印をつけて記録を届ける
  3. 税理士が顧問先と日程を相談し、税務署の担当者に折り返す
  4. 顧問先から連絡があった場合は、税務署とのやりとりを事務所で引き受けるかどうかを、税理士が顧問先と確かめる

顧問先にとって、税務調査の連絡は不安の大きいものです。調査の前に何を準備すればよいかも、あわせて伝えると安心につながります。顧問先からの電話には、担当の税理士ができるだけ早く折り返します。

金融機関からの問い合わせ

金融機関から、顧問先の融資の審査のために、決算の書類や試算表について問い合わせが入ることがあります。顧問先の情報を金融機関に伝えてよいかどうかは、顧問先の了承が前提です。事務局は、問い合わせの内容と連絡先を受けるだけにとどめ、担当の職員が顧問先に確かめてから対応します。

社長と経理の担当の両方から電話がある場合

顧問先の会社では、社長と経理の担当者の両方から電話が入ることがあります。同じ件について別々に質問が来ることもあるため、社長に答えた内容と経理の担当者に答えた内容が食い違わないよう、聞き取りの記録や答えた内容を、顧問先ごとにまとめて残しておくと、担当の職員が経緯を把握しやすくなります。どちらに、どこまで伝えてよいかは、顧問先と取り決めておきます。

引き継ぎで伝える項目

用件聞き取る項目
顧問先の質問会社の名前または名前、電話番号、担当の名前、質問の要点、急ぐか、折り返しの希望の時間帯
顧問先の書類の連絡会社の名前または名前、送った書類、送った方法と日付
新しい相談名前、電話番号、個人か法人か、相談の種類、期限の有無、事業のおおまかな目安、知ったきっかけ
税務署税務署の名前、担当者の名前、電話番号、どの顧問先の件か、用件の概要
金融機関・関係機関名前、所属、電話番号、どの顧問先の件か、用件の概要

折り返しの順番

  1. 税務署からの連絡
  2. 期限が迫った顧問先の相談
  3. 期限が迫った新しい相談
  4. 顧問先の質問
  5. 新しい相談の予約、その他

期限にかかわる連絡は、担当の職員と税理士の両方に届くようにしておくと、見落としを防げます。

個人情報と記録の扱い

税理士事務所で扱う情報

税理士事務所の電話では、顧問先の売上や利益、従業員の給与、個人の収入や財産、相続の事情など、外に漏れてはならない情報が話されます。税理士には守秘の義務があり、事務所の職員も同様に秘密を守る必要があります。電話の録音、文字起こし、要約、聞き取りの記録が残る場合は、その扱いを慎重に決めておきます。

個人情報の扱い全般は、個人情報保護委員会のウェブサイトで法律やガイドラインを確認できます。マイナンバー(個人番号)を含む情報には、特に厳しい決まりがあります。ここで紹介するのは一般的な考え方であり、法的助言ではありません。事務所の扱いは、所属する税理士会の規程や専門家の意見などに照らして確かめてください。

マイナンバーを電話で扱わない

マイナンバーは、電話の聞き取りや自動の案内では聞かないようにします。電話で話されると、録音や文字起こし、要約にマイナンバーが残ってしまうおそれがあります。顧問先から電話でマイナンバーを伝えようとされた場合は、決まった方法(書類での提出など)で受け取ることを伝えます。口座の番号やパスワードなども同様です。

外部のサービスを使うときに確かめること

確かめること確かめる問い
保存の場所録音や文字起こしは、どこに、どのように保存されるか
利用の範囲提供元が、保存した情報を何に使うか
見られる人事務所の中で、誰が記録を見られるか。担当ごとに分けられるか
保存の期間と削除どのくらい残り、事務所の判断で削除できるか
録音の有無録音をせずに、聞き取りの記録だけを残す設定にできるか

顧問先の担当者が替わったとき

顧問先の会社の経理の担当者が替わった場合、新しい担当者からの電話に、どこまで答えてよいかを確認する必要があります。顧問先の代表者に、新しい担当者を事務所の連絡の相手として認めてもらう手順を決めておくと、行き違いを防げます。

導入の進め方

ステップ1:電話を記録する

一、二週間、分類と時間帯ごとに電話を記録します。繁忙期の前に記録を始めると、繁忙期の電話の状況も確かめられます。

ステップ2:担当の呼び出しの方法を決める

顧問先の電話を担当の職員につなぐ方法を決めます。担当の名前で呼び出すか、担当ごとの番号を持つか、事務局が受けて振り分けるかを決めます。担当が不在のときの聞き取りの届け方も決めます。

ステップ3:任せる範囲を決める

分類ごとに、自動で案内する、聞き取って担当が折り返す、すぐに担当や税理士につなぐ、のどれにするかを決めます。

ステップ4:記録の扱いを決める

録音、文字起こし、要約、聞き取りの記録のどれを残すか、誰が見られるか、どのくらい残すかを決めます。マイナンバーを電話で扱わないことを、職員全員で確認します。

ステップ5:案内の情報を整える

事務所の場所、営業時間、書類の送り先、繁忙期の受付の状況、新しい相談の流れなどを書き出します。ホームページの情報と食い違いがないかを確認します。

ステップ6:試験の電話をかける

職員が顧問先や相談者の役になって、顧問先の質問、書類の連絡、新しい相談、税務署の連絡、営業時間外の電話をかけ、それぞれが決めたとおりに流れるかを確認します。

ステップ7:繁忙期の前に始める

繁忙期の最中に仕組みを変えると、職員にも顧問先にも負担がかかります。繁忙期の前の落ち着いた時期に始め、流れに慣れてから繁忙期を迎えるようにします。

ステップ8:記録を見て直す

繁忙期が終わったら、電話の件数、折り返しまでの時間、顧問先の声を振り返り、次の繁忙期に向けて案内や振り分けを直します。

記録、担当の呼び出し、範囲、記録の扱い、情報、試験、繁忙期の前に始める、直すの八つの手順
図2:税理士事務所で導入を進める手順

税理士事務所ならではの工夫

年間の電話の予定表をつくる

税理士事務所の電話は、時期によって中身が大きく変わります。年間の予定表に、電話の案内を切り替える時期を書き込んでおくと、切り替えを忘れずに済みます。

時期の例増える電話案内の工夫
年末調整の時期顧問先の会社からの書類の問い合わせ書類の送り先と提出の目安を案内に加える
確定申告の時期個人の顧問先の書類の連絡、新しい依頼の問い合わせ受付の状況を案内の最初に伝える
顧問先の決算が多い月決算の書類の連絡、質問担当あての聞き取りを中心にする
落ち着いた時期新しい相談、開業の相談面談の予約を受けやすくする

事務所の顧問先の決算の時期は、事務所ごとに違います。自分の事務所の一年を振り返って、予定表をつくります。

年末調整の時期の電話

年末調整の時期には、顧問先の会社の担当者から、従業員から集めた書類の書き方、提出の期限、従業員の家族の状況が変わった場合の扱いなどの問い合わせが増えます。書類の送り先や事務所への提出の目安など、決まった答えは自動の案内で伝え、個別の従業員の扱いについての質問は担当あてのボイスメールで受けます。年末調整の時期の前に、顧問先に提出の目安と、よくある質問への答えをまとめた案内を送っておくと、電話の件数を減らせます。

繁忙期の前の準備

繁忙期の前には、次の準備をしておきます。

高齢の顧問先

長く顧問を務めている個人事業者の中には、高齢の顧問先もいます。番号を押す操作が難しい人もいるため、最初の案内の後で番号を押さなかった場合に、事務局につながるように設定しておきます。家族が代わりに電話をかけてくる場合は、顧問先本人の了承を得て、家族を連絡の相手として記録しておくと、行き違いを防げます。

顧問先への周知

電話の仕組みを変えたら、顧問先に知らせます。担当の名前で呼び出す方法、繁忙期の折り返しの時刻、書類の送り先、マイナンバーなどを電話で伝えないでほしいこと、を一枚の案内にまとめて送ります。

書類の受け取りの連絡

「書類を送りました」という連絡は、繁忙期に特に増えます。書類が届いたかどうかを確認する電話も増えます。書類を受け取ったら事務所から連絡する、という決まりにしておけば、確かめるための電話を減らせます。受け取りの連絡は、届いた書類の名前と、足りない書類があればその名前を添えると、顧問先が追加で送るものを把握できます。

新しい相談の受付の基準を決めておく

新しい相談を受けるかどうかの判断を、税理士が毎回一から考えると、時間がかかります。事務所が扱う業務、受けられる時期、事業の規模の目安など、受付の基準をあらかじめ決めておけば、事務局が聞き取りの段階で、受けられそうか、税理士の判断が必要かを分けられます。基準に合わない相談には、早めにその旨を伝えます。受付の基準は、事務所の体制や時期によって見直し、見直したら案内とホームページにも反映します。

開業したばかりの人の相談

事業を始めたばかりの人からの相談は、何から手をつければよいか分からない、という段階のことが多くあります。最初の電話では、事業の種類、始めた時期、個人か法人か、今困っていること(届け出、記帳、申告など)の概要を聞き、面談で詳しく聞く流れにします。開業の時期によっては、届け出などに期限がある場合もあるため、急ぐ事情がないかも聞いておきます。期限の判断そのものは、税理士や担当が行います。

相続の相談

相続の相談は、身内を亡くしたばかりの人からの電話であることが多く、言葉づかいに特に配慮が必要です。最初の電話では、亡くなった方との関係、亡くなった時期、相談の概要だけを聞き、財産の内容などの詳しい事情は面談で聞きます。相続にかかわる手続きには期限のあるものがあるため、亡くなった時期は必ず聞いておき、税理士が急ぐかどうかを判断できるようにします。相続の手続きのうち、登記や法律の問題にかかわる部分は、司法書士や弁護士と連携が必要になることもあります。

ほかの事務所からの変更の相談

今の顧問の事務所から変更したい、という相談もあります。変更の理由や、今の事務所との契約の状況、決算の時期などを、面談で聞きます。最初の電話では、変更を考えていること、事業の種類と規模の目安、決算の時期を聞いておくと、税理士が受けられるかどうかを判断しやすくなります。今の事務所についての評価は求めず、相談者の話を受け止めるだけにします。

電話以外の連絡手段との使い分け

顧問先とのやりとりには、電話のほか、メール、チャット、書類の共有の仕組みなど、さまざまな手段があります。それぞれの手段の向き不向きを整理し、顧問先に伝えておくと、電話の件数を減らせます。

手段向いていること向いていないこと
電話急ぐ相談、言葉で伝えたい事情書類の内容の確認、数字のやりとり
メールやチャット急がない質問、書類の送付の連絡急ぐ相談(すぐに読まれるとは限らない)
書類の共有の仕組み書類や資料の受け渡し相談
面談込み入った相談、新しい依頼急ぐ連絡

数字や書類にかかわる質問は、電話よりもメールや書類の共有のほうが、記録が残り、行き違いも少なくなります。電話の案内で、こうした手段があることを伝えておきます。

答えられることと答えられないこと

質問の例答える人答え方
事務所の場所、営業時間、書類の送り先事務局・自動の案内決まった情報を伝える
繁忙期の受付の状況事務局・自動の案内事務所の決めた状況を伝える
書類が届いたか事務局・担当確かめて伝える
この支出は経費になるか税理士・担当事情を確認して答える
税金はいくらになるか税理士・担当書類を見たうえで答える
依頼を受けてもらえるか税理士確かめた後に連絡する

「答えられないこと」を聞かれたときは、「その点は、担当から確認してご連絡します」と伝えれば、相手を突き放さずに済みます。

案内の文章のひな形

以下は説明のための文例です。〇の部分を、事務所の情報に置き換えて使ってください。

繁忙期の案内の冒頭

お電話ありがとうございます。〇〇税理士事務所です。ただいま確定申告の時期のため、新しいご依頼の受付は〇日で締め切りました。顧問先のお客様は1を押してください。担当者が不在の場合は、ご用件をうかがい、本日〇時ごろまでにご連絡します。

担当あての聞き取りの案内

担当者はただいま席を外しております。会社の名前またはお名前、お電話番号、ご用件の要点をお話しください。マイナンバーや口座の番号は、お電話ではお話しにならないでください。担当者からご連絡します。

新しい相談の聞き取りの案内

新しいご相談をうかがいます。お名前、お電話番号、個人か法人か、ご相談の種類をお話しください。申告の期限が近いなど、お急ぎの事情があればあわせてお話しください。詳しい内容は、面談の際にうかがいます。

よくある場面の対応例

ここでは、説明のための架空の例として、税理士事務所でよくある場面と、電話の仕組みでの対応を示します。

場面1:確定申告の時期の新しい依頼

確定申告の時期の終わりごろ、「副業の収入があって、確定申告を頼みたい」という電話がありました。電話をかけてきた人は、案内の冒頭で、新しい依頼の受付を締め切ったことを聞きました。続けて、次の時期の相談の予約は受けていることを聞き、今年は自分で申告することにして、来年に向けた相談の予約を聞き取りで申し込みました。

受付の状況を案内の最初に伝えたことで、事務局は締め切った依頼の電話に時間をとられずに済みました。

場面2:担当が不在のときの顧問先の質問

顧問先の会社の経理の担当者から、「従業員の通勤手当の扱いについて聞きたい」という電話がありました。経理の担当者は1を選び、担当の職員の名前を言いましたが、担当は別の顧問先を訪問中でした。担当あての聞き取りに切り替わり、経理の担当者は質問の要点を話しました。担当の職員は、訪問の後に記録を確認し、事情を聞くために折り返しました。

場面3:税務署からの連絡

税務署の担当者から、顧問先の申告について確かめたいことがある、という電話がありました。税務署の担当者は3を選び、事務局が受けました。事務局は、税務署の名前、担当者の名前、電話番号、どの顧問先の件かを記録し、すぐに担当の税理士に伝えました。税理士は、顧問先の資料を確認してから、税務署の担当者に折り返しました。

場面4:電話でマイナンバーを伝えようとする顧問先

個人の顧問先から、「扶養に入れる家族のマイナンバーを伝えたい」という電話がありました。担当の職員は、電話ではマイナンバーを受け取らず、決まった方法で提出してもらうことを伝え、提出の方法を案内しました。

録音や要約にマイナンバーが残ることを防げました。

期限にかかわる連絡を見落とさない

税理士事務所の仕事は、申告や納付、届け出の期限と切り離せません。電話で受けた連絡の中に、期限にかかわる内容が含まれていることがあります。たとえば、顧問先が「来週、銀行に決算の書類を出さなければならない」と話した場合や、新しい相談者が「申告の期限が近い」と話した場合です。

聞き取りの記録や通話の要約に、日付や「までに」といった言葉が含まれる場合は、担当の職員が特に注意して確かめ、事務所の期限の管理の仕組みに反映します。口頭の伝言だけで済ませず、誰が、いつまでに、何をするかを記録に残します。期限の判断そのものは、税理士や担当の職員が行います。

繁忙期の事務所の一日の流れの例

説明のための架空の例として、確定申告の時期の事務所の一日を示します。

時間帯電話の流れ職員の動き
朝営業時間外の案内から日中の案内に切り替わる事務局が前の夜の聞き取りを確認し、担当ごとに振り分ける
午前顧問先は担当の呼び出しへ、新しい依頼は受付の状況の案内へ担当の職員は申告の作業に集中する
昼同上担当の職員が聞き取りの記録を確認し、急ぐものに折り返す
午後同上申告の作業。事務局は書類の受け取りの連絡
夕方同上担当の職員がその日の質問にまとめて折り返す
営業時間外自動の案内と聞き取りへ翌朝に返すものを確認しておく

折り返しの時刻を一日に二回程度に決め、それ以外の時間は作業に集中できるようにします。

折り返しの電話のかけ方

担当あての聞き取りへの折り返しは、次の点に気をつけると、一度の電話で用件が済みやすくなります。

  1. 記録を読み直してからかける:質問の要点を確認し、必要な資料を手元にそろえてからかけます。
  2. 名乗りと用件の確認:「〇〇税理士事務所の〇〇です。本日お電話いただいた、通勤手当の件でご連絡しました」と、用件を確認します。
  3. その場で答えられない場合:事情を聞いたうえで、税理士に確かめてから改めて連絡すること、その時期の目安を伝えます。
  4. 答えた内容を記録に残す:誰に、何を答えたかを記録に残し、ほかの職員にも分かるようにします。
  5. つながらない場合:留守番電話には事務所の名前と用件の種類だけを残し、金額などの詳しいことは残しません。

スタッフへの共有と新しいスタッフの教育

電話の仕組みを変えたら、税理士と職員の全員に流れを共有します。新しい職員には、次の内容を伝えます。

担当の職員が替わったときは、呼び出しの設定と聞き取りの届け先を直し、顧問先にも新しい担当を知らせます。

効果の確認方法と見直し

確かめること

確かめること見る方法
作業への集中作業を中断して電話に出た回数、職員の感想
折り返しの早さ聞き取りから折り返しまでの時間
顧問先の満足顧問先の声、担当につながらないという不満の件数
新しい相談の機会新しい相談の件数と、面談につながった件数
決まった答えの電話自動の案内で終わった件数

つまずきやすいところ

つまずき起きること対策
受付の状況の案内が古い締め切った後も依頼の電話が続く、または受けられるのに断る切り替えの時期と担当を決める
担当が替わったのに設定が古い前の担当に記録が届く担当の変更のたびに呼び出しの設定を直す
電話でマイナンバーが話される記録に残る案内で注意し、職員も受け取らない
繁忙期の最中に仕組みを変える職員と顧問先が混乱する落ち着いた時期に始める

CallでIVRと担当への振り分けを組む

税理士事務所の電話の流れは、CallのIVR、営業時間のルール、名前で担当を呼び出すディレクトリ、キューごとのボイスメール、AIによる通話の要約、ブラウザのソフトフォン、レポートなどで組めます。顧問先、新しい相談、関係機関の電話を分け、担当あての連絡をボイスメールで用件を受けて届ける流れが組めます。録音や要約を使うかどうかは、事務所の方針に合わせて決めてください。設定の流れは使い方のガイドとドキュメントで紹介しています。

日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。電話回線でのAI応答を含む各機能の提供状況は機能一覧でご確認ください。この記事で紹介した流れは、IVRで用件を分け、ボイスメールや通話の内容をAIが要約して、担当の職員や税理士が確認しやすくする使い方です。税務の相談への回答、依頼を受けるかどうかの判断は、税理士と事務所が行います。設定を試したい場合は、登録ページから始められます。

関連する業種の記事として、司法書士・行政書士事務所の電話対応、保険代理店の電話対応もあわせてご覧ください(税理士事務所のAI電話対応|顧問・繁忙期からの関連案内)。

よくある質問

AIが税務の質問に答えてくれますか?

答えません。税務の相談への回答は税理士が行います。AIや自動の案内が扱うのは、事務所の場所や書類の送り先などの決まった答えと、用件の聞き取りまでです。

繁忙期の新しい依頼の電話を減らせますか?

受付の状況を案内の最初に伝えると、受付を締め切った後の依頼の電話に、事務局が時間をとられにくくなります。ホームページの案内も同時に直します。

顧問先の電話を担当の職員に直接つなげますか?

担当の名前で呼び出す仕組みを使えば、担当につなげられます。担当が不在のときは担当あての聞き取りに切り替え、担当が分からない顧問先のために事務局につながる選択肢も残しておきます。

繁忙期に、作業を中断せずに済む方法はありますか?

顧問先の質問を担当あてのボイスメールで受け、一日に決まった時刻にまとめて折り返すようにすると、作業に集中できる時間を確保しやすくなります。顧問先には、繁忙期の折り返しの時刻を前もって伝えておきます。

マイナンバーを電話で受け取ってもよいですか?

電話の聞き取りや録音、要約に残るおそれがあるため、電話では受け取らず、決まった方法で提出してもらうのが無難です。案内でも、電話で話さないよう伝えます。

税務署からの電話は、どう扱えばよいですか?

関係機関の番号で分けて受け、すぐに担当の税理士に伝えます。内容は、税理士が税務署の担当者に直接折り返して確かめます。

新しい相談を受けるかどうか、事務局が判断してよいですか?

受付の基準を事務所で決めておけば、基準に明らかに合わない相談かどうかを事務局が分けることはできます。依頼を受けるかどうかの最終の判断は、税理士が行います。

録音や要約の機能を使ってもよいですか?

顧問先の情報が外部のサービスで扱われることになるため、保存の場所、利用の範囲、見られる人、削除の方法を確かめ、事務所の方針に合う場合に使います。録音をせずに聞き取りの記録だけを残す方法もあります。

確定申告の期限を、自動の案内で伝えてよいですか?

一般的な期限の案内はできますが、期限は年によって変わることがあるため、その年の情報を国税庁のウェブサイトなどで確かめてから載せます。個別の事情に当てはめた判断は、税理士や担当が行います。

顧問先の経理の担当者が替わったら、どうすればよいですか?

顧問先の代表者に、新しい担当者を連絡の相手として認めてもらう手順を決めておきます。そのうえで、新しい担当者からの電話に答えるようにします。

最初に何から始めればよいですか?

一、二週間、電話の用件と、担当が不在だった件数を記録することから始めます。そのうえで、担当の呼び出しの方法と記録の扱いを決め、繁忙期の前の落ち着いた時期に導入すると、無理なく進められます。

まとめ

税理士事務所の電話対応では、時期によって電話の量と中身が大きく変わること、顧問先は担当の職員と話したいことの二つを前提に、仕組みを考えることが大切です。最初の案内で顧問先、新しい相談、関係機関を分け、顧問先は担当の呼び出しと担当あてのボイスメールで受け、繁忙期は受付の状況を最初に伝える、という流れにすれば、作業に集中しながら、顧問先や相談者の用件を受け止められます。

税務の相談への回答、依頼を受けるかどうかの判断は、税理士と事務所が行います。マイナンバーなどの情報は電話で扱わず、記録の扱いは守秘の義務を踏まえて決めます。まずは電話の記録から始め、繁忙期の前に少しずつ仕組みを整えていきましょう。

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