SaaSサポートのAI電話対応|障害・契約案内
SaaSやIT企業のサポートは、メールやチャット、問い合わせのフォームが中心になりがちです。それでも、電話の窓口を求めるお客様はいます。「ログインできず、今日の仕事が止まっている」「サービスが動かないが、何が起きているのか分からない」「契約の更新について担当者と話したい」。急いでいるときや、文字で説明しにくいときほど、お客様は電話を選びます。
一方で、SaaSの会社のサポートは、少ない人数でたくさんのお客様を受け持っていることが多く、すべての電話にすぐ出るのは簡単ではありません。障害が起きたときには、同じ内容の電話が一度に集中し、ほかの用件の電話がつながらなくなります。営業の担当、技術の担当、請求の担当と、用件によって答えられる人が違うのも、IT企業の電話の特徴です。
この記事では、SaaS・IT企業の電話対応に、IVR(自動音声応答)やAIによる一次応答を取り入れる方法を解説します。よくある課題と問い合わせの分類、営業時間外や障害の時の受け方、設計の例、担当者への引き継ぎ、お客様の情報の扱い、導入の進め方を順に紹介します。アカウントの操作、障害の原因と復旧の見込みの説明、契約や請求の判断は担当者が行うことを前提に、自動化してよい範囲を考えます。
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SaaS・IT企業の電話対応で起きがちな課題
障害のときに電話が集中する
サービスに障害が起きると、使えなくなったお客様から電話が一度に入ります。多くは「サービスが動かないが、こちらの問題か」という同じ問い合わせです。担当者は障害の調査と復旧に追われていて、電話に一件ずつ答える余裕はありません。障害についての電話でふさがっている間、ほかの急ぎの用件の電話もつながらなくなります。
用件によって答える人が違う
SaaSの会社には、導入を考えている会社からの相談、使っているお客様からの操作の質問、ログインやアカウントの問題、請求や契約の問い合わせ、セキュリティについての報告など、さまざまな電話が入ります。答えられる人は、営業、サポート、技術、経理と分かれています。最初に電話を受けた人が用件を聞いて担当を探すと、その間お客様を待たせることになり、取り次ぎを何度も繰り返すと、お客様の不満につながります。
電話では説明しにくい問題が多い
画面の表示がおかしい、設定がうまくいかない、といった問題は、電話で口頭で説明してもらっても状況がつかみにくいものです。スクリーンショットやエラーメッセージ、利用環境の情報があれば早く解決できますが、電話だけではそれを受け取れません。電話の後で、メールやフォームで情報を送ってもらう流れが必要になります。
本人の確認とアカウントの守り
ログインできないという電話の中には、アカウントを乗っ取ろうとする人からの電話が混ざっている可能性があります。電話で本人の確認をせずにパスワードを変えたり、メールのアドレスを変えたりすると、お客様のデータが危険にさらされます。電話でのアカウントの操作には、慎重な決まりが必要です。
担当者がいない時間の電話
SaaSは夜中も週末も使われています。サポートの受付の時間が日中だけでも、夜中にサービスが使えなくなったお客様は電話をかけてきます。夜間の受付を設けていない場合でも、障害の状況を確認する方法と、急ぎの連絡の方法を案内で伝える必要があります。
よくある問い合わせの分類
SaaS・IT企業にかかってくる電話を、急ぎの度合いと、誰が対応するかで分けてみます。

障害や大きな不具合
サービスにつながらない、データが表示されない、といった、多くのお客様に影響する問題です。急ぎます。障害が分かっている場合は、案内の最初で知らせ、状況を確認できるページを伝えます。まだ分かっていない問題の報告は、技術の担当に届けます。
ログイン・アカウントの問題
ログインできない、二段階の認証ができない、アカウントがロックされた、といった問題です。仕事が止まっているお客様にとっては急ぎの用件です。自分でできる手順(パスワードの再設定のページなど)を案内し、それで解決しない場合は、本人の確認の決まりに沿って担当者が対応します。
アカウントの乗っ取りや不正な利用の疑い
「身に覚えのないログインの通知が来た」「知らない操作の記録がある」という連絡です。お客様のデータにかかわるため、最も急ぐ用件の一つとして、セキュリティの担当や、決めた担当者に届けます。
操作や設定の質問
使い方、設定の方法、機能があるかどうかの質問です。ヘルプのページで答えられるものは案内し、それで分からないものはサポートの担当が答えます。スクリーンショットなどが必要な場合は、問い合わせのフォームで送ってもらう流れにします。
契約・請求
プランの変更、請求書、支払いの方法、契約の更新や解約の相談です。担当の営業や経理が、契約の内容を確認して答えます。自動の案内では、手続きの方法を案内するところまでにします。
導入の相談
導入を考えている会社からの相談です。営業の担当に届けます。聞き取りで会社の名前、使いたい目的、利用する人数のおよそ、連絡先を受け、営業の担当が折り返します。
セキュリティの報告や取材、提携の相談
外部の人からの、脆弱性かもしれないことの報告、取材の申し込み、提携の相談などです。それぞれ決めた担当に届けます。セキュリティの報告は、受け付ける窓口(専用のメールのアドレスなど)を決めていれば、その案内をします。
営業時間外・繁忙時の受け方
障害のとき
障害が分かったら、電話の案内の最初に障害の知らせを入れます。案内では、障害が起きていること、状況を確認できるページ、次に知らせる方法を伝えます。復旧の時刻の見込みは、確かなことが言えるまでは案内に入れません。障害についての問い合わせは、聞き取りに残しても個別の返事はしない、と伝えたうえで、ほかの用件の番号を選べるようにします。障害の知らせは、復旧したら必ず外します。
サポートの受付の時間外
受付の時間外は、案内で受付の時間を伝え、ヘルプのページ、障害の状況のページ、問い合わせのフォームを案内します。用件はボイスメールで受け、受付の時間が始まったら担当者が確かめます。夜間や週末に急ぎの対応の体制がある契約のお客様がいる場合は、そのお客様向けの連絡の方法を、契約のときに伝えておきます。
新しい機能の公開や料金の改定の後
大きな機能の変更や、料金の改定の後は、問い合わせが増えます。変更の内容と、詳しい説明のページを、前もってお客様に知らせ、電話の案内にも短く入れておきます。
年度の変わり目
会社の年度の変わり目は、契約の更新、利用する人数の変更、請求書の宛名の変更などの相談が増えます。手続きの方法と締め切りを、前もって知らせておきます。
時間帯や状況によって案内を切り替える組み方は、IVRの営業時間ルーティングの記事が、障害のような一時的な案内の差し込み方を考えるときにも役立ちます。
IVRとAI一次応答の設計例
番号の選び方の例
SaaS・IT企業の案内では、障害があればその知らせを最初に入れ、用件の番号を並べます。
- 障害があるときの最初の案内:「現在、〇〇の機能がつながりにくくなっています。状況は、障害の状況のページでお知らせしています。」
- 1番:ログインやアカウントの問題、不正な利用の疑い
- 2番:操作や設定のご質問
- 3番:契約・請求のご相談
- 4番:導入のご相談、そのほか
AIによる一次応答に任せる範囲
SaaSの会社の電話で、自動の案内やAIが受け持つのは、誰に聞かれても同じ答えになる情報の案内と、用件の聞き取り、通話の要約です。
- 任せてよいもの:受付の時間、ヘルプのページと障害の状況のページの案内、パスワードの再設定の方法の案内、契約の手続きの方法の案内、問い合わせの内容の聞き取りと要約、担当の振り分け
- 任せないもの:アカウントの操作(パスワードやメールのアドレスの変更、ロックの解除)、障害の原因や復旧の時刻の説明、契約の変更や解約の完了、請求の金額の回答、個別のデータについての回答
AIによる一次応答で何を受け持つかの考え方は、AI電話受付とはで、IT企業以外の例も含めて説明しています。

聞き取りで確認する項目
ログインやアカウントの問題の聞き取りでは、次の項目を確認します。
- 会社の名前と、電話をかけている人の名前
- 登録しているメールのアドレス(パスワードは聞かない)
- 起きていること(ログインできない、二段階の認証ができない、ロックされたなど)
- 画面に出ている表示の文字
- いつから起きているか
- 折り返しの電話番号と、都合のよい時間帯
操作や設定の質問の聞き取りでは、会社の名前、使っている機能、やりたいこと、うまくいかない点、スクリーンショットを送れるかどうかを確認します。案内でも聞き取りでも、パスワードや認証コードは絶対に聞きません。お客様が話そうとしたら、止めてもらいます。
スタッフへの引き継ぎと確定は人が行う
アカウントの操作は決まりに沿って担当者が行う
パスワードの再設定、メールのアドレスの変更、ロックの解除、二段階の認証の解除といった操作は、担当者が本人の確認の決まりに沿って行います。電話だけで本人と決めず、登録のメールのアドレスへの連絡や、お客様の会社の管理者による確かめなど、決めた方法を組み合わせます。急いでいるお客様ほど、早く操作してほしいと求めますが、決まりを省いてはいけません。
障害の説明は技術の担当が決めた内容で
障害の原因や復旧の見込みは、技術の担当が状況を確認して決めた内容だけを伝えます。電話を受けたサポートの担当が、自分の推測で「もうすぐ直ります」と伝えることはしません。障害の状況のページの内容と、電話で伝える内容をそろえます。
契約と請求は担当の営業や経理が
プランの変更、解約、請求書の内容についての問い合わせは、担当の営業や経理が、契約の内容を確認してから答えます。解約の受付は、聞き取りだけで完了したことにせず、契約の決まりに沿って手続きをしたうえで、完了を書面やメールで伝えます。
技術的な問題は段階を決めて渡す
操作の質問から始まった電話が、調べてみるとサービスの不具合だった、ということがあります。サポートの担当で解決できない問題を、技術の担当にどう渡すか(何を記録に書くか、どこに登録するか、お客様にいつ連絡するか)を決めておくと、お客様に同じ説明を何度もしてもらわずに済みます。
個人情報と記録の扱い
お客様のデータを守る
SaaSの会社は、お客様の会社の情報や、その先の利用者の情報を預かっています。電話の記録にも、会社の名前、担当者の名前、メールのアドレス、起きている問題の内容が残ります。記録を見られる人をサポートの担当者に限り、保管の期間を決めて扱います。電話の聞き取りでは、お客様のサービスの中にあるデータ(顧客の名簿の中身など)を話してもらう必要がないように、質問の仕方を工夫します。
パスワードや認証コードを受けない
パスワード、認証コード、カードの番号のような情報は、電話の聞き取りや留守番電話で受けません。お客様が話してしまった場合に、録音や要約から消す手順も決めておきます。
録音と要約
通話を録音したり、AIで要約したりする場合は、案内の最初でそのことを伝え、会社の個人情報の扱いの方針に、使い方と保管の期間を書いておきます。法人のお客様との契約で、記録の扱いについて取り決めがある場合は、その内容に沿って扱います。
個人情報の扱いの法律や指針については、個人情報保護委員会のウェブサイトを確認してください。この記事は一般的な考え方を紹介するもので、法的助言ではありません。
導入の進め方
1. 電話の記録をとる
二週間ほど、かかってきた時間、用件、出られたかどうか、誰に取り次いだかを記録します。取り次ぎを何度繰り返したか、ヘルプのページで解決できた用件がどれくらいあったかも見ておきます。
2. 障害のときの流れを先に決める
障害が分かったときに、誰が電話の案内を切り替えるか、どの文章を使うか、復旧したら誰が外すかを決めます。障害の状況のページを持っていない場合は、まず用意することを考えます。
3. アカウントの操作の決まりを確認する
電話でアカウントの操作を頼まれたときの、本人の確認の決まりを確認します。決まりがなければ、電話の流れを変える前に決めます。
4. 案内と振り分けを決める
自動の案内で伝える情報、ボイスメールで受ける用件、すぐに担当者につなぐ用件を分け、用件ごとの担当を決めます。
5. 試験してから始める
社内の人がお客様の役になって電話をかけ、振り分けが正しいか、聞き取りの記録が担当に届くか、障害の知らせへの切り替えが速くできるかを確認します。
6. 時間外から始めて広げる
最初は受付の時間外の聞き取りから始め、問題がないことを確認してから、日中の振り分けにも広げます。
7. お客様に知らせる
電話の受け方を変えたことを、ヘルプのページやお知らせで伝えます。障害の状況のページの場所と、急ぎのときの連絡の方法を、あわせて伝えます。
8. 記録を見て直す
一か月ほどたったら、振り分けを間違えた用件がなかったか、ヘルプのページの案内で解決できた用件が増えたかを確認し、案内とヘルプのページを直します。
社員の数が少ない会社での電話の受け方は、小さな会社の電話対応で、受付の専任がいない前提でまとめています。
SaaS・IT企業ならではの工夫
障害の状況のページとそろえる
障害のときの電話を減らす一番の方法は、障害の状況のページを分かりやすく、早く更新することです。ページの更新と、電話の案内の切り替えを、同じ人が同じ手順で行うようにすると、二つの内容が食い違いません。障害の知らせの文章は、前もってひな形を用意しておき、起きている機能の名前を入れるだけで使えるようにします。
管理者と利用者を分ける
法人向けのSaaSでは、お客様の会社の中に、契約や設定を受け持つ管理者と、日々サービスを使う利用者がいます。利用者からの「権限を変えてほしい」「ほかの人のアカウントを止めてほしい」という依頼は、お客様の会社の管理者が行うべき操作であることが多く、サポートの担当が勝手に行うことはできません。聞き取りでは、電話をかけている人が管理者かどうかを確認し、利用者からの依頼は、管理者に相談してもらうよう案内します。
契約の種類によって受け方を変える
契約の種類によって、電話のサポートを受けられるかどうか、受けられる時間が違う会社もあります。その場合は、契約の種類ごとの受け方を、契約のときにお客様に伝え、電話の案内でも分かるようにします。電話のサポートの対象でないお客様からの電話も、聞き取りで用件を受け、問い合わせのフォームなどの案内をします。
導入の前の相談とサポートを分ける
導入を考えている会社からの電話と、使っているお客様からの電話では、答える人も話の中身も違います。番号を分けるか、案内の最初の番号で分けて、導入の相談は営業の担当に、使っているお客様の問い合わせはサポートの担当に届くようにします。
海外の拠点や多くの時間帯のお客様
海外にも拠点を持つお客様や、夜勤のある職場で使われているサービスでは、受付の時間外に問い合わせが集まりやすくなります。受付の時間外のボイスメールで受けた問い合わせは、翌朝の最初に、仕事が止まっているものから順に確かめます。時間外の問い合わせが多いと分かったら、受付の時間をずらす、チャットの受付の時間を広げるなど、電話以外の方法も含めて受け方を考えます。
開発者向けの問い合わせ
APIなど、開発者が使う機能を提供している会社では、技術的に詳しい問い合わせが入ります。電話で口頭のやり取りをするより、エラーの記録やコードの一部を文字で送ってもらうほうが早く解決できるため、電話では問い合わせのフォームや開発者向けの窓口を案内し、受付の番号を伝えてもらう流れにします。
使い始めたばかりのお客様
契約したばかりのお客様は、初めの設定や、社内の利用者の登録のしかたで迷い、電話をかけてくることが多くあります。この時期の問い合わせは、お客様がサービスを使い続けるかどうかを左右します。使い始めの手順をまとめたページを用意し、契約のときに案内しておくと、同じ質問の電話が減ります。電話で受けた質問のうち、使い始めのお客様に多いものは、手順のページに書き足していきます。
ほかの会社のサービスが原因の問題
SaaSは、ほかの会社のサービス(決済、メールの送信、外部の認証など)と組み合わせて動いていることが多く、そちらの障害でお客様の操作がうまくいかないことがあります。原因がほかの会社のサービスにある場合も、お客様にとっては「このサービスが動かない」という問題です。技術の担当が原因を確認したら、自社の障害と同じように状況のページと電話の案内で知らせ、ほかの会社の名前を出すかどうかは、会社の方針に沿って決めます。
解約の相談の受け方
解約の相談の電話は、サービスへの不満や、使いこなせなかった事情が背景にあることが多くあります。受付では、引き止めのための長い説明はせず、契約の決まり(解約の申し出の締め切り、データの扱い、解約の後に使えなくなる時期)を正しく伝えることを優先します。データを取り出しておきたいというお客様には、取り出しの方法を案内します。解約の理由を話してもらえた場合は、サービスを直すための大切な声として記録に残し、担当の部署に届けます。
障害のときの案内の切り替えの手順
障害のときに慌てないよう、電話の案内の切り替えを手順にしておきます。
- 技術の担当が障害を確認し、サポートの責任者に知らせる
- 責任者が、障害の状況のページに最初の知らせを載せる
- 同じ内容で、電話の案内の最初に障害の知らせを入れる(ひな形の機能の名前を書き換える)
- 障害についての聞き取りには個別の返事をしないことを、案内で伝える
- 状況が変わるたびに、ページと案内を同じ内容に直す
- 復旧したら、ページに復旧の知らせを載せ、電話の案内から障害の知らせを外す
- 障害の間にボイスメールで受けたほかの用件に、順に折り返す
切り替えを受け持つ人が不在のときに代わる人も決めておきます。切り替えの手順は年に何度か、障害が起きていないときに練習しておくと、本番で手間取りません。夜間や週末に障害が起きたときに、誰が案内を切り替えるかも、障害の対応の当番とあわせて決めておきます。
本人の確認の決まりの例
電話でアカウントにかかわる依頼を受けたときの確認方法の例です。実際の決まりは、会社のセキュリティの方針に沿って決めます。
| 依頼 | 電話で受けるか | 確かめの方法の例 |
|---|---|---|
| パスワードの再設定 | 再設定のページを案内する | お客様自身が登録のメールで行う |
| メールのアドレスの変更 | 担当者が受ける | 管理者による確かめ、登録のアドレスへの連絡 |
| 二段階の認証の解除 | 担当者が受ける | 決めた複数の確認を組み合わせる |
| 利用者の権限の変更 | 原則として受けない | お客様の会社の管理者に操作してもらう |
| 不正な利用の疑い | すぐに担当に届ける | 状況を聞き取り、セキュリティの担当が判断 |
どの依頼でも、電話をかけてきた番号や、話し方だけで本人と決めないことが大切です。
問い合わせの聞き取りシート
操作や不具合の電話を受けたときに確かめる項目を、一枚にまとめておきます。
| 項目 | 聞き方の例 | 記録のしかた |
|---|---|---|
| 会社の名前・名前 | 「会社のお名前と、お名前を教えてください」 | 会社名、氏名 |
| 立場 | 「管理者の方ですか、ご利用の方ですか」 | 管理者か利用者か |
| 使っている機能 | 「どの機能をお使いのときですか」 | 機能の名前 |
| 起きていること | 「どのようなことが起きていますか」 | 要点 |
| 画面の表示 | 「画面に出ている文字を読み上げてください」 | 表示のとおり |
| いつから | 「いつから起きていますか」 | 日時 |
| 影響の広さ | 「ほかの方も同じですか」 | 一人か、会社全体か |
| 連絡先 | 「折り返しのお電話番号とメールのアドレスを教えてください」 | 番号、アドレス |
影響の広さは、障害かどうかを見分ける手がかりになります。会社全体で使えないという報告が続く場合は、技術の担当にすぐ知らせます。
技術の担当に渡すときの記録の形
サポートの担当で解決できない問題を技術の担当に渡すときは、記録の形をそろえます。
| 項目 | 書く内容 | 技術の担当が見る点 |
|---|---|---|
| 受付の番号 | 問い合わせごとの番号 | お客様への連絡に使う |
| お客様 | 会社の名前、管理者か利用者か | 契約の種類、影響の大きさ |
| 起きていること | お客様の言葉と、サポートが確かめた事実を分けて | 再現の手がかり |
| 画面の表示・記録 | 表示の文字、送ってもらったスクリーンショット | 原因の見当 |
| 試したこと | サポートが案内して試した手順 | 同じことを繰り返さない |
| 急ぎの度合い | 仕事が止まっているか | 順番の判断 |
| お客様への約束 | 次にいつ連絡すると伝えたか | 連絡の期限 |
お客様に「次にいつ連絡するか」を伝えた場合は、技術の担当の調べが終わっていなくても、その時刻に途中の状況を連絡します。
障害の後の振り返り
障害が収まった後は、技術の振り返りとあわせて、電話の受け方も振り返ります。案内の切り替えにどれだけ時間がかかったか、障害の知らせを聞いた後もつながりを待ったお客様がどれくらいいたか、ほかの用件の電話が障害の間に取りこぼされていなかったかを確認します。案内の文章が分かりにくかった場合は、ひな形を直します。大きな障害の後は、影響を受けたお客様に、原因と再発を防ぐための取り組みを、会社として説明することもあります。その説明の内容は、技術の担当と責任者が決めます。
案内の文章のひな形
SaaS・IT企業の電話の案内に使える文章の例です。説明のための文例として示しますので、〇の部分を会社の名前や受付の時間に合わせて書き換えてください。
ふだんの案内の例:
「お電話ありがとうございます。〇〇サポートです。ヘルプのページと障害の状況のページは、サービスの画面の右上から開けます。ログインやアカウントの問題、不正な利用の疑いは1番、操作や設定のご質問は2番、契約・請求のご相談は3番、導入のご相談やそのほかは4番を押してください。パスワードや認証コードは、お電話ではお伺いしません。」
障害のときの案内の例:
「お電話ありがとうございます。〇〇サポートです。現在、〇〇の機能がつながりにくくなっています。状況は、障害の状況のページで順にお知らせしています。この件についてのお問い合わせには、個別のご返事を差し上げられない場合があります。そのほかのご用件は、番号を選んでください。」
受付の時間外の案内の例:
「お電話ありがとうございます。〇〇サポートです。お電話の受付は、平日の〇時から〇時です。ヘルプのページ、障害の状況のページ、お問い合わせのフォームは、いつでもご利用いただけます。ご用件は、番号を選んでメッセージを残してください。受付の時間に担当者からご連絡します。」
よくある場面の対応例
ここで紹介するのは、説明のための架空の例です。実際の会社の事例ではありません。
朝にログインできないという電話が続いた場面
月曜日の朝、ログインできないという電話が続きます。サポートの担当は、聞き取りの記録で、どのお客様も同じ表示が出ていることに気づき、技術の担当に知らせます。技術の担当が認証の仕組みの不具合を確認し、責任者が障害の状況のページと電話の案内に知らせを入れます。その後の電話の多くは、案内を聞いてページで状況を確認するようになります。復旧の後、責任者は案内から知らせを外します。
身に覚えのないログインの通知が来たという電話の場面
お客様の会社の管理者から、身に覚えのない場所からのログインの通知が来たという電話が入ります。管理者は1番を選び、担当者につながります。担当者は状況を聞き取り、セキュリティの担当にすぐ届けます。セキュリティの担当は、決めた手順に沿って管理者と連絡を取り、必要な対応を一緒に進めます。
利用者から権限の変更を頼まれた場面
お客様の会社の利用者から、ほかの部署の資料を見られるようにしてほしいという電話が入ります。担当者は、権限の変更は会社の管理者が行う操作であることを説明し、管理者に相談してもらうよう案内します。管理者が操作の方法を知らない場合に備えて、ヘルプのページの場所も伝えます。
導入の相談が夜に入った場面
夜、導入を考えている会社の担当者から電話が入ります。受付の時間外の案内が流れ、担当者は4番を選んで、会社の名前、使いたい目的、利用する人数のおよそを残します。翌日、営業の担当が記録を確認して折り返し、説明の打ち合わせの日時を相談します。
請求書の宛名を変えたいという電話の場面
年度の変わり目に、経理の担当者から、請求書の宛名を変えたいという電話が入ります。担当者は3番を選び、聞き取りで内容を残します。経理の担当は、契約の情報を確認し、変更を受ける方法(管理者の画面での変更、書面での申し込みなど)を案内します。
メンテナンスの日に電話が入った場面
前もって知らせていたメンテナンスの時間に、サービスにつながらないという電話が入ります。案内の最初に、メンテナンスの時間と終わる予定の時刻を入れていたため、多くのお客様は案内を聞いて電話を切ります。それでも知らなかったというお客様から、次からは前日にも知らせてほしいという声が残されます。サポートの責任者は、メンテナンスの知らせを送る時期を見直し、前日にもう一度知らせるよう手順を直します。
折り返しの電話のかけ方
サポートからの折り返しは、相手の仕事の時間に合わせて、聞き取りで聞いた都合のよい時間にかけます。次の順に話すと、短い電話で済みます。
- 会社の名前と自分の名前を名乗る
- どの問い合わせへの折り返しかと、受付の番号を伝える
- 相手が問い合わせをした本人かを確認する
- 調べた結果と、次にすることを伝える
- スクリーンショットなどが必要な場合は、送ってもらう方法を伝える
折り返した内容は、受付の番号と一緒に記録に残し、メールでも同じ内容を送っておくと、お客様が社内で共有しやすくなります。
サポートの一日の流れの例
ここでは、架空の小さなSaaSの会社のサポートの一日を例に、電話の受け方の流れを示します。
- 始業:夜の間に受けた聞き取りの記録と、障害の当番からの引き継ぎを確認する
- 午前中:ログインの問題など、仕事が止まっているお客様への折り返しを先に行う
- 昼:操作の質問への折り返しと、ヘルプのページの更新
- 午後:技術の担当に渡した問題の進み具合を確認し、お客様に連絡する
- 終業の前:その日の未解決の問い合わせを整理し、時間外の案内に切り替わったことを確認する
部署ごとの役割分担
| 役割 | サポート | 技術 | 営業・経理 |
|---|---|---|---|
| 障害 | 案内の切り替え、問い合わせの整理 | 原因の調べと復旧、説明の内容を決める | 大口のお客様への連絡を手伝う |
| ログイン・アカウント | 決まりに沿って確かめ、操作する | 仕組みの不具合を調べる | 関わらない |
| 不正な利用の疑い | 聞き取ってすぐに届ける | セキュリティの担当が判断 | 関わらない |
| 操作の質問 | 答える、ヘルプを直す | 不具合なら引き受ける | 関わらない |
| 契約・請求 | 聞き取って届ける | 関わらない | 契約を確認して答える |
| 導入の相談 | 聞き取って届ける | 技術的な質問に答える | 折り返して説明する |
電話のそばに置く一枚
電話を受けることのある社員のために、一枚の紙を用意しておきます。パスワードや認証コードを聞かないこと、アカウントの操作は決まりに沿って行うこと、障害の原因や復旧の時刻を推測で話さないこと、不正な利用の疑いはすぐにセキュリティの担当に届けること、用件ごとの担当の一覧を書いておきます。
サポートを装う電話への注意
IT企業の名前をかたって、お客様に電話をかけ、パスワードや認証コードを聞き出そうとする手口があります。お客様が「御社から電話があったが本物か」と問い合わせてくることもあります。会社としてお客様に電話でたずねないこと(パスワード、認証コード、カードの番号など)を決め、ヘルプのページや契約の案内に載せておきます。問い合わせがあったときは、その決まりに沿って答え、すでに情報を伝えてしまった場合は、パスワードの変更などの手順をすぐに案内し、セキュリティの担当に届けます。
案内の長さを確認する
IT企業の案内は、ページの案内や注意を入れたくなって長くなりがちです。急いでいるお客様は、長い案内を最後まで聞きません。ページの案内は一文にまとめ、番号の説明は四つまでにします。障害の知らせを入れたときも、全体の長さを確認し、ほかの用件の番号にたどり着くまで時間がかかりすぎないようにします。
契約の種類が多い会社の受け方
契約の種類によって受けられるサポートが違う場合、電話をかけてきたお客様の契約の種類が分からないと、どこにつなげばよいか迷います。聞き取りで会社の名前を受け、担当者が契約を確認してから折り返す形にすると、電話の最初に契約の種類をたずねる手間が省けます。決まった番号から電話をかけてくる大口のお客様がいる場合は、専用の番号を案内しておく方法もあります。
電話の記録をヘルプのページに生かす
電話で同じ操作の質問が続くときは、ヘルプのページが見つけにくいか、説明が足りないという合図です。月に一度、電話の記録から多い質問を拾い出し、ヘルプのページを直す担当を決めます。直したページの場所は、電話の案内や折り返しのときに伝え、お客様が次からは自分で調べられるようにします。
準備のチェックリスト
- 障害の状況のページがあり、電話の案内と同じ内容に保つ手順がある
- 障害の知らせのひな形と、切り替えの担当が決まっている
- パスワードや認証コードを電話で受けないことを、案内と社内の決まりで徹底している
- アカウントの操作の本人の確認の決まりがある
- 用件ごとの担当と、取り次ぎの順番が決まっている
- 技術の担当への問題の渡し方が決まっている
- 解約の受付は、手続きをしたうえで完了を伝える
- 録音や要約をすることを、案内と個人情報の扱いの方針で伝えている
電話以外の連絡の方法との使い分け
| 方法 | 向いていること | 気をつけること |
|---|---|---|
| 電話 | 仕事が止まっている急ぎの問題、不正な利用の疑い | 画面の情報を受け取れない |
| 問い合わせのフォーム・メール | スクリーンショットやエラーの記録を送る問い合わせ | 返事までに時間がかかる |
| チャット | 短い操作の質問 | 受け持つ時間を決める |
| ヘルプのページ | よくある質問、手順の説明 | 内容を新しく保つ |
| 障害の状況のページ | 障害の知らせ | 早く更新する |
案内を古くしない
受付の時間、契約の種類ごとの受け方、ヘルプのページの場所、料金の改定は、変わることがあります。変えたときは、ヘルプのページ、契約の案内、電話の案内をまとめて直します。障害の知らせを外し忘れると、復旧した後も「障害が起きている」と案内し続けることになるため、復旧の手順の最後に、電話の案内を確認することを入れておきます。
社員への共有と教育
次の点を、新しく電話を受ける社員が最初に覚えることとして伝えます。
- パスワードや認証コードは聞かない
- アカウントの操作は、決まりに沿って本人を確認してから行う
- 障害について、推測で話さない
- 不正な利用の疑いは、何よりも先に届ける
- 契約や請求は、担当の部署に渡す
効果の確認方法と見直し
電話の流れを変えた後は、記録をもとに、取り次ぎの回数が減ったか、障害のときにほかの用件の電話がつながったか、ログインの問題から折り返しまでの時間、ヘルプのページで解決できた用件が増えたかを確認します。数字は自分の会社の記録から出すもので、前の月と比べて改善できたかを見るためのものです。
CallでIVRと振り分けを組む
SaaS・IT企業の電話の流れは、CallのIVR、営業時間のルール、キューごとのボイスメール、IVRからのコールバックの受付、AIによる通話の要約、ブラウザのソフトフォンなどで組めます。用件ごとにキューを分けて担当につなぎ、障害のときは案内の最初に知らせを入れ、時間外の用件はボイスメールで用件を受けて受付の時間に確かめる流れが組めます。設定の手順は使い方のガイドとドキュメントにまとめています。
日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。電話回線でのAI応答を含む各機能の提供状況は機能一覧でご確認ください。この記事で紹介した流れは、IVRで用件を分け、ボイスメールや通話の内容をAIが要約して、担当者が確認しやすくする使い方です。アカウントの操作、障害の説明、契約や請求の判断は、会社の担当者が行います。設定を試したい場合は、登録ページから始められます。
ほかの業種の例として、タクシー・運送の電話対応、葬儀社の電話対応もあわせてご覧ください(SaaSサポートのAI電話対応|障害・契約案内からの関連案内)。
よくある質問
AIがパスワードの再設定をしてくれますか?
しません。自動の案内では、お客様自身が再設定のページで行う方法を案内します。電話でのアカウントの操作は、担当者が本人の確かめの決まりに沿って行います。
障害のときの電話は、どう減らせますか?
障害の状況のページを早く更新し、電話の案内の最初にも同じ知らせを入れます。障害についての問い合わせには個別の返事ができない場合があることを伝え、ほかの用件の番号を選べるようにします。
復旧の見込みを案内してもよいですか?
技術の担当が確かめて決めた内容だけを伝えます。確かなことが言えるまでは、時刻の見込みを案内に入れません。
電話でパスワードを伝えようとするお客様には?
すぐに話を止めてもらい、パスワードは電話では伺わないことを伝えます。録音や要約に残ってしまった場合に消す手順も決めておきます。
利用者から権限の変更を頼まれたら?
お客様の会社の管理者が行う操作であることを説明し、管理者に相談してもらうよう案内します。サポートの担当が勝手に操作することはしません。
導入の相談とサポートは分けるべきですか?
分けると、答える人に早く届きます。番号を分けるか、案内の最初の番号で振り分けます。
夜間の障害の電話はどうしますか?
夜間の受付がない場合も、案内で障害の状況のページと、急ぎの連絡の方法を伝えます。夜間の対応の体制がある契約のお客様には、その連絡の方法を契約のときに伝えておきます。
画面の情報が必要な問い合わせは?
電話では用件と受付の番号を伝え、スクリーンショットやエラーの記録は問い合わせのフォームやメールで送ってもらいます。
解約の電話を受けたら、その場で解約できますか?
聞き取りだけで完了したことにはせず、契約の決まりに沿って手続きをしたうえで、完了を書面やメールで伝えます。
通話を録音してもよいですか?
録音する場合は、案内の最初でそのことを伝え、個人情報の扱いの方針に使い方と保管の期間を書いておきます。法人のお客様との取り決めがあれば、それに沿って扱います。
不正な利用の疑いの連絡は、どう扱いますか?
最も急ぐ用件の一つとして、セキュリティの担当や決めた担当者にすぐ届けます。聞き取りに回したまま、受付の時間まで待たせることは避けます。
まとめ
SaaS・IT企業の電話は、障害のときの集中、用件ごとに違う担当、電話では説明しにくい問題、アカウントを守る必要という、いくつもの課題を抱えています。障害の知らせを案内の最初に入れる手順を決め、用件ごとに担当に振り分け、パスワードや認証コードを受けない決まりを守ると、少ない人数でも電話を受けやすくなります。
自動の案内やAIに任せるのは、決まった情報の案内と用件の聞き取り、振り分け、記録の要約までです。アカウントの操作、障害の原因と復旧の見込みの説明、契約や請求の判断は、会社の担当者が行います。障害の状況のページやヘルプのページとあわせて整え、記録を見ながら直していけば、お客様の仕事を止めない窓口に近づけます。



