電話の顧客体験を良くする7つのポイント|CX改善
メールやチャット、問い合わせフォームなど、お客様が会社に連絡する手段は増えました。それでも、電話は「急いでいるとき」「込み入った話をしたいとき」「文字で説明するのが難しいとき」に選ばれる、特別な窓口であり続けています。言い換えれば、電話をかけてくるお客様は、困っていたり、急いでいたり、不安を抱えていたりすることが多いのです。そうしたお客様にとって、電話がつながらない、たらい回しにされる、折り返しの約束が守られない、といった体験は、会社への信頼を大きく損ないます。
電話の顧客体験を良くするというと、話し方の研修や、丁寧な言葉づかいを思い浮かべるかもしれません。もちろんそれも大切ですが、お客様の不満の多くは、話し方より前の段階、つまり「つながるまで」と「つながった後の流れ」で生まれています。仕組みと段取りを整えることで、お客様の体験は大きく変わります。
この記事では、電話の顧客体験を、お客様が電話をかけようと思った瞬間から用件が片付くまでの流れとしてとらえ、つながりやすさ、待ち時間、案内のわかりやすさ、たらい回しの防止、折り返しの約束など、七つのポイントに分けて改善の方法を解説します。最後に、自社の電話をお客様の立場で確認するためのチェックリストも紹介します。
電話の顧客体験とは
電話の顧客体験とは、お客様が電話を通じて会社とやりとりする中で感じる、手間、待ち時間、わかりやすさ、安心感などの総体です。通話の中の会話だけでなく、その前後も含まれます。
一本の電話の流れを分けてみる
お客様の側から見ると、一本の電話は、次のような段階を経ています。
- かける前:電話番号を探す。電話で聞くべきか、他の手段で調べられるかを考える。
- つながるまで:呼び出し音を聞く。自動の案内を聞き、番号を選ぶ。
- 待つ:担当者につながるまで待つ。
- 話す:用件を伝え、答えや対応を受ける。必要なら別の担当者につながる。
- 終わった後:折り返しを待つ。約束された対応が行われる。用件が片付く。
お客様の不満は、どの段階でも生まれます。番号が見つからない、案内が長い、待たされる、何度も同じ説明をさせられる、折り返しが来ない。顧客体験を良くするには、会話の質だけでなく、この流れ全体を見る必要があります。
「手間」がもっとも大きな不満につながる
電話の顧客体験で特に大切なのは、お客様の手間を減らすことです。何度もかけ直す、長い案内を聞く、同じことを繰り返し説明する、といった手間は、お客様に強い不満を残します。丁寧な言葉づかいで迎えられても、用件を片付けるまでに多くの手間がかかれば、全体の印象は良くなりません。
顧客の手間を測る考え方として、顧客努力指標(CES)という指標もあります。指標の詳細は、コールセンターのKPI一覧で紹介しています。
顧客体験を良くすると、会社の負担も減る
お客様の手間を減らす改善は、多くの場合、会社の側の負担も減らします。用件が一度で片付けば、再度の電話がなくなります。たらい回しがなくなれば、社内の取り次ぎの手間も減ります。顧客体験の改善は、コストではなく、電話対応全体の効率化でもあるのです。

ポイント1:つながりやすさを高める
最初のポイントは、つながりやすさです。電話がつながらなければ、その先の体験はすべて始まりません。
出られない時間を知る
まず、どの時間帯に、どれくらいの電話に出られていないのかを知ることから始めます。着信の記録を見て、出られなかった電話の件数を時間帯ごとに数えてみましょう。朝の始業直後、昼休み、夕方など、出られない電話が集中する時間帯が見えてくるはずです。
出られない時間に手を打つ
出られない電話が集中する時間帯がわかったら、その時間帯に手を打ちます。
- 人の配置を変える:電話が集中する時間帯に、電話を受けられる人を増やす。
- グループで受ける:一人に着信させるのではなく、複数の人に順番に、または同時に着信させる。
- 自動の案内で完結させる:営業時間や所在地など、決まった答えの問い合わせは自動の案内で答える。
- 折り返しを選べるようにする:すぐに出られないときに、折り返しの依頼を受け付ける。
- 時間外も用件を受け止める:営業時間外は、留守番電話や自動の受付で用件を記録する。
「出られなかった電話」を放置しない
出られなかった電話の中には、もう一度かけてくれるお客様もいれば、そのまま他社に連絡するお客様もいます。出られなかった電話の番号がわかる場合は、折り返すかどうかを判断する流れを作っておきましょう。出られなかった電話がもたらす影響は、取りこぼした電話の損失で整理しています。
電話番号を見つけやすくする
意外と見落とされがちなのが、電話番号の見つけやすさです。ホームページのどこに電話番号が書いてあるか、受付時間も一緒に書いてあるか、用件ごとに番号が分かれている場合はどの番号にかければよいかがわかるか、を確認してみましょう。かける前の段階で迷わせないことも、つながりやすさの一部です。
ポイント2:待ち時間を短く感じさせる工夫
どれだけ工夫しても、待ち時間をゼロにすることは難しいものです。そこで二つ目のポイントは、待ち時間そのものを短くすることに加えて、待ち時間を短く、苦痛なく感じてもらう工夫です。
待っている理由と状況を伝える
何の説明もなく保留音だけが流れていると、お客様は「本当につながるのか」「忘れられていないか」と不安になります。「ただいま電話が混み合っております。順番におつなぎします」といった一言があるだけで、待つことへの納得感は高まります。
待つ以外の選択肢を示す
待ち時間が長くなりそうなときは、待つ以外の選択肢を示しましょう。
- 折り返しの依頼を受け付ける
- 留守番電話でメッセージを残してもらう
- ホームページで答えが見つかる質問であれば、その案内をする
選択肢があることで、お客様は自分の状況に合わせて行動を選べます。「待たされた」のではなく「自分で選んだ」と感じられることが、体験を大きく変えます。
保留中のメッセージを短くする
保留中に宣伝のメッセージを長く流すと、待っているお客様のいらだちを強めることがあります。保留中のメッセージは、待っていることへのお礼と、もうしばらく待ってほしいことを短く伝える程度にとどめましょう。同じメッセージを何度も繰り返す場合は、二回目以降を短くします。
通話中の保留を減らす
担当者につながった後の保留も、お客様にとっては待ち時間です。担当者がその場で答えを調べる時間を減らすために、よくある質問の答えをまとめておく、確認が必要な事項の担当者を決めておく、といった準備をしておきましょう。保留が長くなりそうなときは、「確認に少しお時間をいただきます。折り返しお電話してもよろしいですか」と、折り返しを提案するのも一つの方法です。
ポイント3:案内をわかりやすくする
三つ目のポイントは、自動の案内や、担当者の説明をわかりやすくすることです。わかりにくい案内は、お客様の手間を増やし、誤った番号を選ばせ、たらい回しの原因にもなります。
最初の案内は短く
電話がつながったときの最初の案内は、会社名と、次にしてほしいことだけにとどめます。会社の紹介や、長いお詫びを最初に入れると、お客様は用件に入る前に疲れてしまいます。
メニューは「お客様の言葉」で作る
IVRのメニューは、社内の部署名ではなく、お客様の用件の言葉で作りましょう。「業務部」「サポート課」と言われても、お客様は自分の用件がどこに当たるのかわかりません。「ご注文済みの商品について」「使い方のご質問」のように、お客様が自分の状況に当てはめやすい言葉を使います。
選択肢は少なく、よく使う順に
一つのメニューの選択肢は、多くても五つ程度にします。よく使われる用件から順に並べると、多くのお客様が最初の数個で目的の番号にたどり着けます。どの選択肢にも当てはまらない人のために、担当者につながる番号や、もう一度聞ける番号を用意しておきましょう。メニューの作り方は、IVRとはの記事でも解説しています。
担当者の説明は、結論から
担当者がお客様に説明するときは、結論を先に伝え、その後に理由や詳細を補います。電話では、話の全体像を目で見ることができないため、結論が後回しになると、お客様は話の行き先がわからず不安になります。
専門用語を言い換える
社内では当たり前に使っている言葉も、お客様にとっては初めて聞く言葉かもしれません。専門用語や略語は、お客様にわかる言葉に言い換えて伝えましょう。
ポイント4:たらい回しを防ぐ
四つ目のポイントは、たらい回しを防ぐことです。電話を何度も転送され、そのたびに同じ説明を繰り返すことは、お客様がもっとも嫌う体験の一つです。
入口で正しく振り分ける
たらい回しの多くは、最初の振り分けの誤りから始まります。IVRのメニューがお客様の用件と合っていない、一次受けの担当者が用件を十分に聞かずに転送する、といったことが原因です。メニューの言葉を見直し、一次受けの担当者には、転送の前に用件を確認する習慣をつけてもらいましょう。
転送するときは、用件を引き継ぐ
別の担当者に電話をつなぐときは、お客様から聞いた内容を、つなぐ先の担当者に伝えてからつなぎます。「○○様から、△△の件でお電話です。□□について確認されたいそうです」と伝えておけば、お客様は同じ説明を繰り返さずに済みます。
AIや自動の受付で用件を聞き取った場合も、聞き取った内容が担当者に届くようにしておくことが大切です。通話の要約を担当者が見られるようにしておくと、引き継ぎがスムーズになります。
転送の回数に上限を決める
一本の電話で転送するのは一回まで、と決めておくのも一つの方法です。二回目の転送が必要になりそうなときは、その場で転送を重ねるのではなく、担当者から折り返す形に切り替えます。お客様に「たらい回しにされた」と感じさせないための工夫です。
「担当者がいない」で終わらせない
担当者が不在のとき、「担当者が不在です。またおかけ直しください」で終わらせると、お客様は用件を片付けられないまま電話を切ることになります。担当者の戻りの予定を伝え、折り返しを提案し、用件と連絡先を聞き取るところまで行いましょう。

ポイント5:折り返しの約束を守る仕組み
五つ目のポイントは、折り返しの約束を守ることです。「折り返します」と伝えたのに連絡が来ないことは、待たされること以上に、お客様の信頼を損ないます。
約束の内容をはっきりさせる
折り返しを約束するときは、いつまでに、誰から連絡するのかを、できるだけ具体的に伝えます。「後ほど」ではなく、「本日の午後三時までに、担当の○○からご連絡します」のように伝えると、お客様は安心して待てます。ただし、守れない時間を約束しないことが大切です。確実に守れる範囲で伝えましょう。
折り返しの依頼を一か所に集める
折り返しの依頼が、メモ、チャット、留守番電話、自動の受付の記録など、ばらばらの場所にあると、対応の漏れが起きます。折り返しの依頼は一か所に集め、誰が担当し、いつまでに対応するのかが見えるようにしておきましょう。
対応済みを記録する
折り返しが済んだら、対応済みの印をつけ、結果(つながった、つながらなかった、用件が片付いた、など)を記録します。つながらなかった場合に、何回、どのタイミングでかけ直すかも決めておきます。
未対応の依頼を毎日確かめる
一日の終わりなど、決まったタイミングで、未対応の折り返しの依頼が残っていないかを確認します。担当者が不在の場合は、代わりの担当者が対応するか、お客様に遅れることを連絡します。
ポイント6:話しやすさをつくる
六つ目のポイントは、お客様が用件を話しやすい雰囲気をつくることです。
最初に名乗る
担当者が電話に出たら、会社名と自分の名前を名乗ります。お客様は、誰と話しているのかがわかると安心し、話しやすくなります。
聞く姿勢を示す
お客様が話しているときは、相づちを打ち、話をさえぎらずに最後まで聞きます。電話では表情が見えないため、相づちが「聞いていますよ」というサインになります。
要点を復唱する
お客様の話を聞き終えたら、要点を復唱して確かめます。「○○の件で、△△をご希望ということですね」と確かめることで、聞き違いを防げるだけでなく、お客様は「わかってもらえた」と感じられます。
次に何が起きるかを伝える
電話の最後には、これから何が起きるのかを伝えます。「この後、確認してご連絡します」「手続きは本日中に完了します」のように伝えると、お客様は電話を切った後の見通しを持てます。
ポイント7:さまざまなお客様に配慮する
七つ目のポイントは、電話をかけてくるお客様の多様さに配慮することです。
聞き取りにくさへの配慮
耳が聞こえにくいお客様、高齢のお客様には、ゆっくり、はっきり話すことが大切です。自動の案内も、話す速さを少しゆっくりめにし、文と文の間に短い間を入れると聞き取りやすくなります。
電話以外の手段を用意する
電話で話すことが難しいお客様のために、メールや問い合わせフォームなど、電話以外の連絡手段を用意し、ホームページなどで案内しておきましょう。電話の自動の案内でも、他の連絡手段があることを伝えられます。
操作に慣れていないお客様への配慮
番号を押す操作に慣れていないお客様もいます。どの選択肢にも当てはまらない人や、操作がわからない人のために、何も押さずに待てば担当者につながる、あるいは留守番電話に進む、といった道を用意しておくと安心です。
外国語でかけてくるお客様
外国語でかけてくるお客様への対応が難しい場合は、外国語で書かれたホームページや問い合わせフォームなど、別の手段を案内できるようにしておくと、お客様を困らせずに済みます。
場面別に見る、よくない対応と良い対応
七つのポイントを、具体的な場面で確認してみましょう。いずれも説明のための例です。
場面1:担当者が不在
よくない対応「担当の者は外出しております。また改めてお電話いただけますか。」
良い対応「申し訳ございません。担当の○○は外出しており、午後四時ごろに戻る予定です。戻りましたら、こちらからお電話いたします。お名前とお電話番号、ご用件を簡単にお聞かせいただけますか。」
良い対応では、戻りの予定を伝え、こちらから連絡することを約束し、用件を聞き取っています。お客様は、もう一度かける手間がなくなります。
場面2:別の部署への転送
よくない対応「それは別の部署ですので、おつなぎします。」(何も伝えずに転送)
良い対応「その件は△△の担当がご案内いたします。お話の内容を伝えたうえでおつなぎしますので、少々お待ちください。」(担当者に用件を伝えてから転送)
良い対応では、お客様が同じ説明を繰り返さずに済みます。
場面3:その場で答えられない質問
よくない対応「たぶん大丈夫だと思います。」
良い対応「確認してから正確にお答えしたいので、お時間をいただけますか。本日中に、担当の者からご連絡いたします。」
あいまいな答えは、後で誤りだったときにお客様の不信を招きます。確認が必要なことは、確認してから答えます。
場面4:混雑時の電話
よくない対応保留音だけが長く流れ続ける。
良い対応「ただいま電話が混み合っております。このままお待ちいただくか、折り返しをご希望の場合は1番を押してください。」
良い対応では、お客様が待つか折り返しかを選べます。
自社の電話をお客様の立場で確認する
改善の出発点として、自社の電話を、お客様の立場で実際にかけて確かめてみましょう。社内の人がかけても、普段とは違う発見があります。
手順1:場面を決める
次のような場面を想定して、かける場面を三つから五つ決めます。
- 営業時間内に、よくある質問をする
- 営業時間内に、担当者を指名する
- 昼休みにかける
- 営業時間外にかける
- 込み入った相談をする
手順2:社外の電話からかける
社内の内線ではなく、携帯電話など社外の電話から、会社の代表番号にかけます。お客様と同じ条件で確認するためです。
手順3:観点ごとに記録する
かけながら、次の観点を記録します。
- 何回目の呼び出しでつながったか
- 最初の案内は短く、わかりやすかったか
- メニューの言葉で、自分の用件の番号がすぐにわかったか
- 待ち時間はどれくらいで、待っている間の案内はあったか
- 担当者は名乗ったか、用件を復唱したか
- 転送された場合、同じ説明を繰り返す必要があったか
- 担当者が不在の場合、折り返しの提案があったか
- 営業時間外の案内で、営業時間と次にすべきことがわかったか
- 折り返しを依頼した場合、約束の時間に連絡が来たか
手順4:結果を共有して直す
記録を社内で共有し、気になった点を直していきます。一度だけでなく、季節ごとなど定期的に確かめると、案内の情報が古くなっていないかも確認できます。
チェックリスト:お客様の立場での確認
- [ ] 社外の電話から、複数の場面でかけてみた
- [ ] つながるまでの呼び出しの回数を確認した
- [ ] 最初の案内とメニューのわかりやすさを確認した
- [ ] 待ち時間と、待っている間の案内を確認した
- [ ] 担当者の名乗りと復唱を確認した
- [ ] 転送で同じ説明を繰り返す必要がないかを確認した
- [ ] 時間外の案内を確認した
- [ ] 折り返しの約束が守られるかを確認した
お客様の声を集めて改善する
自社で確認するだけでなく、お客様の声を集めることも大切です。
- 電話の最後に一言聞く:「本日のご案内で、わかりにくい点はございませんでしたか」と聞くだけでも、改善のヒントが得られます。
- 通話の記録を読む:通話の文字起こしや要約を読むと、お客様が言いよどむ場面、同じことを何度も聞き返す場面、不満が表れる言葉などに気づけます。
- 途中で切られた電話を見る:自動の案内のどの段階で切られているかを見ると、案内のわかりにくい部分がわかります。
- 苦情や意見を分類する:届いた苦情や意見を、「つながらない」「待たされる」「たらい回し」「折り返しがない」などに分類すると、どのポイントを優先して改善すべきかが見えます。
七つのポイントのセルフチェック
自社の現状を手早く確かめるために、七つのポイントそれぞれについて、当てはまるものに印をつけてみてください。印がつかなかった項目が、改善の候補です。
- [ ] つながりやすさ:出られなかった電話の件数と時間帯を把握している
- [ ] 待ち時間:混雑時に、待つ以外の選択肢(折り返し、留守番電話)を案内している
- [ ] 案内:メニューがお客様の言葉で作られ、選択肢が五つ以内になっている
- [ ] たらい回し:転送の前に、担当者へ用件を伝えるルールがある
- [ ] 折り返し:折り返しの依頼が一か所に集まり、対応済みが記録されている
- [ ] 話しやすさ:電話に出たら名乗り、要点を復唱することが習慣になっている
- [ ] 多様なお客様:何も押さずに進める道と、電話以外の連絡手段を用意している
印がつかなかった項目が複数ある場合は、次の章で紹介する優先順位の付け方を使って、どこから手をつけるかを決めましょう。
改善の優先順位の付け方
改善したいことがたくさん見つかったら、優先順位をつけましょう。次の二つの軸で考えると、整理しやすくなります。
- お客様への影響の大きさ:その問題が、どれくらい多くのお客様に、どれくらい強い不満を与えているか。
- 改善の手間:直すのに、どれくらいの時間や費用がかかるか。
| 手間が小さい | 手間が大きい | |
|---|---|---|
| 影響が大きい | すぐに直す | 計画を立てて直す |
| 影響が小さい | 手が空いたときに直す | 後回しにする |
たとえば、案内の言葉を直すことや、折り返しの約束の伝え方をそろえることは、手間が小さく、影響が大きい改善です。まずはこうした改善から始めると、早く効果を実感できます。
不満を伝えられた電話の受け方
電話の顧客体験を考えるうえで避けて通れないのが、不満や苦情を伝えられた電話です。こうした電話の受け方しだいで、お客様の信頼を取り戻せることもあれば、さらに損なってしまうこともあります。基本の流れを決めておきましょう。
手順1:最後まで聞く
まず、お客様の話を途中でさえぎらずに最後まで聞きます。説明や弁解をしたくなっても、お客様が話し終えるまで待ちます。相づちで、聞いていることを伝えます。
手順2:不便をかけたことにお詫びする
事実関係がまだわからなくても、お客様が不便や不快な思いをしたことに対しては、お詫びを伝えます。「ご不便をおかけして申し訳ございません」という一言が、お客様の気持ちを落ち着かせます。
手順3:事実を確認する
お詫びの後に、何が起きたのかを確認します。いつ、何が、どうなったのかを質問し、要点を復唱して確かめます。
手順4:対応を伝える
その場でできる対応があれば伝えます。確認が必要な場合は、いつまでに、誰から連絡するのかを伝えます。その場しのぎで、守れない約束をしないことが大切です。
手順5:記録して共有する
電話の内容と、約束した対応を記録し、関係者に共有します。同じ問題が繰り返されないように、原因を確認して改善につなげます。
自動の案内やAIで受けている電話で不満が伝えられた場合は、早めに人に引き継ぐ設計にしておきましょう。AIに任せない場面の考え方は、AI電話受付にできないことで解説しています。
応対の手順書をつくる
七つのポイントを社内にそろえて根づかせるには、応対の手順書があると便利です。分厚いマニュアルではなく、電話の横に置ける数ページのものを目指しましょう。
手順書に入れる項目の例
- 名乗り方:電話に出たときの第一声。会社名と自分の名前。
- 用件の聞き方と復唱の仕方:要点を復唱する言い回しの例。
- 担当者が不在のときの対応:戻りの予定の伝え方、折り返しの提案、聞き取る項目。
- 転送のルール:転送前に用件を伝えること、転送は一回までにすること。
- 折り返しの約束の仕方:伝える内容、依頼を集める場所、対応済みの記録の仕方。
- 答えてよいことと、担当者に回すこと:その場で答えてよい質問の一覧。
- 不満を伝えられたときの流れ:最後まで聞く、お詫び、事実確認、対応、記録。
- 電話の終わり方:次に何が起きるかを伝え、お礼を言って終える。
手順書を育てる
手順書は、一度作ったら終わりではありません。月に一度の振り返りで見つかった改善点や、良い対応の例を、手順書に反映していきます。言い回しの例は、実際にうまくいった言葉を集めていくと、現場で使いやすいものになります。
業種別に見る顧客体験のポイント
電話の顧客体験で特に気をつけたい点は、業種によって少しずつ違います。
クリニック・歯科医院
具合が悪い人や不安を抱えた人からの電話が多いため、つながりやすさと、急ぎの相談を優先して受ける仕組みが特に大切です。予約の変更は、聞き取って折り返す形にすれば、診療の手を止める回数を減らせます。
店舗・サービス業
予約や営業時間の問い合わせが多く、混み合う時間帯が決まっていることが多い業種です。営業時間などの決まった答えを自動の案内で完結させ、予約の電話にスタッフが集中できるようにすると、待ち時間が減ります。
企業間の取引が中心の会社
取引先からの電話は、担当者を指名することが多いため、担当者に直接つながる仕組みと、不在時の折り返しの確実さが体験を左右します。担当者が代わったときの引き継ぎも、取引先の体験に大きく影響します。
不動産・住まいのサービス
入居者からの設備のトラブルなど、急ぎの連絡が時間外にも入る業種です。時間外の急ぎの連絡を受け止める仕組みと、急ぎでない連絡を翌営業日に確実に折り返す仕組みの両方が必要になります。
折り返しの電話のかけ方
折り返しの約束を守ることと同じくらい大切なのが、折り返しの電話そのものの質です。せっかく約束どおりにかけても、相手が「何の電話だったか」を思い出せなかったり、また一から説明させられたりすれば、体験は良くなりません。
かける前に準備する
- 伝言や通話の要約を読み、相手の名前、用件、希望を確認する
- 答えるべきことを調べ、その場で答えられるようにしておく
- 相手が電話に出られない場合に残すメッセージを考えておく
かけたときの流れ
- 名乗る:「○○株式会社の△△です。先ほどお電話をいただいた件で、折り返しご連絡いたしました。」
- 用件を確認する:「□□の件でお問い合わせいただいたと承っております。」と、聞いている用件を伝えて確かめます。
- 答える・対応する:準備した答えを、結論から伝えます。
- 次を伝える:追加の対応がある場合は、いつ、誰が、何をするのかを伝えます。
相手が出なかったとき
留守番電話に、会社名、名前、何の件の折り返しか、次にいつかけるか、または相手からかけてもらう場合の連絡先と受付時間を、短く残します。折り返しの依頼の記録には、かけた時刻と、つながらなかったことを書いておきます。
一か月で進める改善プラン
七つのポイントを一度にすべて改善するのは大変です。一か月を四つの週に分けて、少しずつ進める例を紹介します。
第一週:知る
- 出られなかった電話の件数と時間帯を確認する
- 社外の電話から、自社の電話をお客様の立場でかけてみる
- 届いている苦情や意見を、七つのポイントで分類する
第二週:すぐに直せることを直す
- 最初の案内とメニューの言葉を、お客様の言葉に直す
- 担当者が不在のときの言い回しと、折り返しの約束の伝え方をそろえる
- 折り返しの依頼を集める場所を一つに決める
第三週:仕組みを整える
- 電話が集中する時間帯に、グループでの着信や折り返しの依頼の受け付けを設定する
- 営業時間外の案内と、用件の受け止め方を見直す
- 転送のルール(用件を伝えてから転送、転送は一回まで)を決めて共有する
第四週:確かめて続ける
- もう一度、お客様の立場でかけて、改善を確認する
- 出られなかった電話の件数を、第一週と比べる
- 応対の手順書をまとめ、月に一度の振り返りの日を決める
七つのポイントを支える仕組み
七つのポイントは、心がけだけで実現しようとすると、忙しい時期に崩れてしまいます。仕組みで支えておくと、誰が電話を受けても一定の体験を届けやすくなります。
| ポイント | 支える仕組みの例 |
|---|---|
| つながりやすさ | グループでの着信、営業時間の切り替え、時間外の留守番電話 |
| 待ち時間 | 混雑時の案内、折り返しの依頼の受け付け |
| 案内のわかりやすさ | お客様の言葉で作ったIVRのメニュー |
| たらい回しの防止 | 用件ごとの振り分け、担当者の名前での呼び出し、通話要約の共有 |
| 折り返しの約束 | 折り返しの依頼を一か所に集める仕組み |
| 話しやすさ | 名乗りと復唱を含む応対の手順書 |
| 多様なお客様への配慮 | 何も押さずに進める道、電話以外の窓口の案内 |
AI-SNS.IO Callでは、IVRのメニューと着信のルーティング、営業時間に合わせた応答の切り替え、キューでの着信、キューごとの留守番電話、IVRのメニューからの折り返しの依頼、名前で担当者を呼び出すディレクトリ、AIによる通話の要約などを組み合わせて、こうした仕組みを作れます。日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。AIによる一次応答を含め、現在利用できる機能は機能一覧で、設定の手順は使い方ガイドで確認してください。AI電話受付の考え方は、AI電話受付とはで解説しています。
改善を続けるための社内の取り組み
電話の顧客体験は、一度改善して終わりではありません。社員の入れ替わりや、事業の変化によって、少しずつ崩れていくものです。改善を続けるための取り組みを、社内の習慣にしておきましょう。
担当者を決める
電話の顧客体験を見守る担当者を決めます。担当者は、記録や苦情を定期的に確認し、改善の提案をまとめます。小さな会社では兼務でかまいませんが、「誰の仕事か」をはっきりさせておくことが大切です。
月に一度の振り返り
月に一度、電話に関わる人が集まって、次のようなことを話し合います。
- 出られなかった電話の件数と、その時間帯
- 届いた苦情や意見の内容
- 折り返しの約束が守られなかった件数と理由
- 記録から見つかった、わかりにくい案内や、たらい回しの例
- 次の一か月で直すこと
良い対応を共有する
改善というと、問題点ばかりに目が向きがちです。お客様から感謝された対応や、難しい電話をうまく収めた対応など、良い対応も共有しましょう。どのような言葉づかいや段取りが良かったのかを具体的に共有すると、他のスタッフの参考になります。
新しく入ったスタッフへの伝え方
新しく入ったスタッフには、七つのポイントと、社内の応対の手順書を最初に伝えます。先輩スタッフの電話を横で聞く機会を設けたり、録音を一緒に聞いて振り返ったりすると、言葉だけでは伝わりにくい感覚も身につきやすくなります。
電話の顧客体験についての思い込み
改善を進めるときに、つまずきの原因になりやすい思い込みがあります。
「丁寧に話せば満足してもらえる」
言葉づかいが丁寧でも、つながるまでに何度もかけ直し、転送のたびに同じ説明をさせられれば、お客様の満足は得られません。丁寧さは大切ですが、それ以上に、お客様の手間を減らすことが体験を左右します。
「電話に出られないのは仕方がない」
人手が限られている以上、すべての電話に出ることは難しいかもしれません。しかし、出られない電話を留守番電話や折り返しの依頼で受け止め、確実に折り返す仕組みがあれば、お客様の体験は大きく変わります。出られないことと、取りこぼすことは別の問題です。
「自動の案内はお客様に嫌われる」
長くてわかりにくい自動の案内は確かに嫌われます。一方で、短く、お客様の言葉で作られた案内は、お客様を早く適切な担当者につなぎ、決まった質問にはすぐに答えられます。嫌われるのは自動の案内そのものではなく、作り方の問題であることが多いのです。
「苦情が少ないから問題はない」
不満を感じたお客様の多くは、苦情を言わずに離れていきます。苦情が少ないことは、問題がないことを意味するとは限りません。出られなかった電話の件数や、途中で切られた電話の傾向など、苦情以外の記録にも目を向けましょう。
よくある質問
電話の顧客体験とは何ですか?
お客様が電話を通じて会社とやりとりする中で感じる、手間、待ち時間、わかりやすさ、安心感などの総体です。通話の中の会話だけでなく、電話番号を探すところから、つながるまで、待つ時間、話す時間、折り返しを待つ時間まで、一本の電話の流れ全体を含みます。
顧客体験を良くするために、最初に取り組むべきことは何ですか?
まず、出られなかった電話の件数と時間帯を把握し、つながりやすさを改善することから始めるのがおすすめです。つながらなければ、その先の体験はすべて始まりません。あわせて、自社の電話をお客様の立場でかけて確かめると、手間のかかる部分が見えてきます。
待ち時間を短くできない場合はどうすればよいですか?
待っている理由と状況を伝える、折り返しの依頼や留守番電話など待つ以外の選択肢を示す、保留中のメッセージを短くする、といった工夫で、待ち時間を苦痛に感じにくくできます。お客様が自分で選べることが、体験を大きく変えます。
たらい回しを防ぐには、どうすればよいですか?
入口の振り分けを、お客様の用件の言葉で作ることが基本です。転送するときは、聞いた内容を担当者に伝えてからつなぎ、一本の電話での転送は一回までにする、といったルールも有効です。二回目の転送が必要になりそうなときは、担当者からの折り返しに切り替えましょう。
折り返しの約束を守るためのコツはありますか?
折り返しの依頼を一か所に集め、誰がいつまでに対応するのかが見えるようにすることです。約束の時間は守れる範囲で伝え、対応が済んだら記録し、一日の終わりに未対応の依頼が残っていないかを確かめます。
IVRのメニューは、顧客体験を悪くしませんか?
メニューの作り方しだいです。選択肢が多すぎる、部署名で作られていてわかりにくい、担当者につながる道がない、といったメニューは体験を悪くします。お客様の言葉で、少ない選択肢を、よく使う順に並べ、どの選択肢にも当てはまらない人のための道を用意すれば、お客様を早く適切な担当者につなげられます。
AIの自動応答は、顧客体験を良くしますか?
決まった答えの問い合わせにすぐ答えられる、時間外にも用件を受け止められる、といった面では体験を良くする可能性があります。一方で、聞き取りの誤りや、人と話したいお客様への配慮の不足は、体験を悪くする原因になります。人につながる道を必ず残し、予約や契約の確定、個別の判断は人が行う設計にしましょう。
お客様の声はどうやって集めればよいですか?
電話の最後に一言聞く、通話の記録を読む、自動の案内のどこで切られているかを見る、届いた苦情や意見を分類する、といった方法があります。集めた声は、七つのポイントのどれに当たるかで分類すると、改善の優先順位を決めやすくなります。
電話対応の研修は必要ですか?
話し方や言葉づかいの研修も役立ちますが、お客様の不満の多くは、つながるまでや、つながった後の流れで生まれています。研修とあわせて、振り分けの仕組み、転送のルール、折り返しの管理など、仕組みと段取りを整えることが大切です。
小さな会社でも、顧客体験の改善はできますか?
できます。出られない時間に留守番電話や折り返しの依頼を用意する、担当者が不在のときの言い回しを決める、折り返しの依頼を一か所に集める、といった改善は、費用をかけずに始められます。自社の電話をお客様の立場でかけてみることも、すぐにできる取り組みです。
電話の顧客体験は、どのような指標で測ればよいですか?
出られなかった電話の件数、待ち時間、転送の回数、折り返しまでの時間、用件が一度で片付いたかどうか、お客様の満足度や手間の感じ方などが参考になります。指標の考え方は、コールセンターのKPI一覧で詳しく紹介しています。
改善の効果はどれくらいで出ますか?
改善の内容によって異なります。案内の言葉の見直しや、折り返しの伝え方の統一などは、すぐに効果が表れやすい改善です。人の配置や仕組みの導入は、効果が見えるまでに時間がかかることがあります。改善の前後で記録を比べて、効果を確かめましょう。
苦情の電話は、どう受ければよいですか?
最後まで聞く、不便をかけたことにお詫びする、事実を確かめる、対応を伝える、記録して共有する、という流れが基本です。説明や弁解はお客様が話し終えてからにし、守れない約束はしないようにしましょう。自動の案内やAIで受けている場合は、早めに人に引き継ぐ設計にしておきます。
折り返しの電話で気をつけることは何ですか?
かける前に伝言や要約を読んで用件を確かめ、答えを準備しておくことです。かけたら、会社名と名前を名乗り、何の件の折り返しかを伝え、結論から答えます。相手が出なかった場合は、何の件か、次にいつかけるかを留守番電話に短く残しましょう。
自社の電話をお客様の立場で確かめるとき、誰がかけるのがよいですか?
電話の仕組みや案内の内容を知らない人がかけると、お客様に近い感覚で確かめられます。社内であれば、電話対応に関わっていない部署の人に頼むとよいでしょう。複数の人にかけてもらうと、人によって感じ方が違う部分にも気づけます。
電話の顧客体験と、メールやチャットの顧客体験は別に考えるべきですか?
窓口ごとに特徴はありますが、お客様から見れば同じ会社とのやりとりです。電話で聞いた内容とメールで届いた内容が食い違う、電話で伝えた用件がメールの担当者に伝わっていない、といったことがないよう、窓口をまたいだ情報の共有も意識しましょう。
まとめ
電話の顧客体験は、通話の中の会話だけでなく、電話番号を探すところから、用件が片付くまでの流れ全体で決まります。つながりやすさを高める、待ち時間を短く感じさせる、案内をわかりやすくする、たらい回しを防ぐ、折り返しの約束を守る、話しやすさをつくる、さまざまなお客様に配慮する。この七つのポイントを、心がけだけでなく仕組みで支えることが大切です。
まずは、自社の電話をお客様の立場でかけてみてください。つながるまでの時間、案内のわかりやすさ、担当者の対応、折り返しの約束。実際にかけてみると、普段は気づかない手間が見えてくるはずです。その一つひとつを直していくことが、お客様に選ばれ続ける電話の窓口につながります。



