IVR・自動音声応答

IVRの分析と改善方法|離脱ポイントと選択率を読む

AI-SNS.IO 編集部 · 公開

IVRの分析と改善方法|離脱ポイントと選択率を読む(AI-SNS.IO Call ブログ)

IVR(自動音声応答)のメニューは、作った時点では「これでわかりやすいはずだ」と考えて設計されています。けれども、電話をかけてくる人が本当に迷わずに用件を選べているのか、どこかで電話を切ってしまっていないのかは、作った人の感覚だけではわかりません。

そこで役立つのが、IVRのデータです。どの選択肢がどれくらい選ばれているか、どの案内の途中で電話が切られているか、番号の押し間違いや、担当者と話したいという要求がどれくらいあるか。こうしたデータを読むと、メニューのどこに問題があるのかが見えてきます。

この記事では、IVRの分析と改善の方法として、データが必要な理由、見るべき指標とその計算の仕方、離脱ポイントの見つけ方、通話の内容から読み取る方法、改善の進め方、改善後の検証までを順に解説します。分析のための表の例や、仮説の立て方のワークシートも紹介します。

IVR改善にデータが必要な理由

作った人には、わかりにくさが見えない

IVRのメニューを作った人は、選択肢の意味も、その先の行き先も知っています。そのため、案内を聞いても迷うことがありません。ところが、初めて電話をかけてくる人は、選択肢の言葉を手がかりに、自分の用件がどれに当たるかを推測しながら聞いています。作った人が「わかりやすい」と感じる案内でも、電話をかけてくる人にとってはわかりにくいことがあるのです。

不満の声は届きにくい

IVRで迷った人の多くは、不満を伝えずに電話を切ります。担当者につながった人が「わかりにくかった」と言ってくれることもありますが、それは迷いながらも担当者までたどり着いた人の声です。途中であきらめた人の声は、窓口には届きません。データは、声にならなかった不満を見つける手がかりになります。

電話の用件は変わり続ける

メニューを作ったときに最も多かった用件が、今も最も多いとは限りません。新しいサービスを始めた、季節が変わった、ホームページの案内を充実させた。こうした変化で、電話の用件の構成は少しずつ変わっていきます。データを定期的に見ていれば、メニューが今の用件に合わなくなってきたことに気づけます。

改善の効果を確認できる

メニューを変えたとき、本当に良くなったのかどうかは、変える前と後のデータを比べなければわかりません。データを見る習慣があれば、改善の効果を確認し、うまくいかなかった変更を元に戻す判断もできます。

見るべき指標

IVRの分析で見る指標は、たくさんあります。最初からすべてを見る必要はありません。ここでは、まず押さえたい基本の指標と、その意味、計算の仕方を紹介します。使っている仕組みで取れるデータによって、見られる指標は変わります。

分析の前に決めておくこと

データを集め始める前に、次の点を決めておくと、後で比べやすくなります。

数え方を途中で変えると、指標の変化が実際の変化なのか、数え方の変化なのかがわからなくなります。最初に決めた数え方を、記録表の欄外に書いておきましょう。

基本の指標一覧

指標意味計算の例
選択率各選択肢が選ばれた割合選択肢ごとの件数 ÷ そのメニューを聞いた件数
離脱率メニューの途中で電話が切られた割合そのメニューで切られた件数 ÷ そのメニューを聞いた件数
入力なしの割合何も押されなかった割合入力がなかった件数 ÷ そのメニューを聞いた件数
入力の誤りの割合範囲外の番号が押された割合範囲外の入力の件数 ÷ そのメニューを聞いた件数
繰り返しの割合メニューの繰り返しが選ばれた割合繰り返しの件数 ÷ そのメニューを聞いた件数
人への要求の割合0番など、担当者と話す選択肢が選ばれた割合0番の件数 ÷ そのメニューを聞いた件数
転送し直しの割合つながった担当者が別の担当に転送した割合転送し直した件数 ÷ その選択肢から担当につながった件数
待っている間の放棄キューで待っている間に切られた割合待っている間に切られた件数 ÷ キューに入った件数

割合で見るのは、電話の総数が日や月によって変わるためです。割合とあわせて件数も記録しておくと、件数が少なすぎて判断できない場合にも気づけます。件数だけを見ると、電話が多かった月に問題が増えたように見えてしまいます。

選択率、離脱率、転送し直しの割合と、それぞれでわかること
図1:最初に見る三つの指標

指標ごとの読み方

選択率

選択率は、電話をかけてくる人の用件の構成を映す指標です。選択率の高い選択肢がメニューの後ろのほうにあるなら、前に移すと、多くの人が案内を聞く時間を短くできます。反対に、選択率がとても低い選択肢は、ほかの選択肢とまとめる候補になります。

ただし、選択率は「選ばれた」割合であって、「正しく選ばれた」割合ではありません。選択肢の言葉がわかりにくいと、本来は別の選択肢を選ぶべき人が、なんとなく選んでいることがあります。選択率を読むときは、後で紹介する転送し直しの割合とあわせて見ます。

離脱率

離脱率は、メニューの途中で電話を切った人の割合です。離脱率が高いメニューは、案内が長い、選択肢がわかりにくい、自分の用件に当てはまる選択肢がない、といった問題を抱えている可能性があります。

離脱には、問題のない離脱もあります。営業時間の案内を聞いて用件が済んだ人や、間違えて電話をかけた人が切るのは自然なことです。離脱率を読むときは、どの案内の後で切られているかを確認し、用件が済んで切られたのか、迷って切られたのかを区別することが大切です。

入力なし・入力の誤り・繰り返し

何も押されない、範囲外の番号が押される、メニューの繰り返しが選ばれる。これらは、電話をかけてきた人が案内を聞き取れなかったか、選ぶべき選択肢がわからなかったサインです。特定のメニューでこれらの割合が高ければ、そのメニューの案内の速度、長さ、言葉を見直す候補になります。

人への要求

0番など、担当者と話す選択肢がどれくらい選ばれているかを見ます。この割合が高い場合、メニューの選択肢が用件に合っていない、またはメニューを聞くより人と話したほうが早いと感じさせている可能性があります。人への要求が多いこと自体は悪いことではありませんが、その用件の中身を確認すると、メニューに加えるべき選択肢が見つかることがあります。

転送し直し

ある選択肢から担当者につながったのに、担当者が別の担当に転送し直した割合です。この割合が高い選択肢は、選択肢の言葉が用件と合っておらず、違う用件の人が選んでいる可能性があります。選択率だけでは見えない「選び間違い」を見つける、大切な指標です。

待っている間の放棄

担当者につながるまでのキューで、待っている間に切られた割合です。メニューの問題というより、担当者の人数や配置、待っている間の案内の問題であることが多い指標です。放棄が多い時間帯には、折り返しの依頼を案内する、担当者の配置を見直す、といった対策が考えられます。

時間帯と曜日で分けて見る

どの指標も、全体の平均だけを見ると、問題が隠れてしまうことがあります。時間帯や曜日で分けて見ると、次のような傾向が見つかります。

時間帯ごとの傾向は、メニューの改善だけでなく、営業時間のルールや担当者の配置を見直す手がかりにもなります。営業時間のルールの考え方は、営業時間で着信を振り分ける方法で解説しています。

コールセンター全体の指標とのつながり

IVRの指標は、コールセンター全体の指標ともつながっています。たとえば、IVRで選び間違いが多いと、担当者の転送が増え、一件あたりの通話時間が長くなります。IVRの改善が、窓口全体の効率にも影響するのです。窓口全体で見る指標は、コールセンターのKPI一覧で整理しています。

最初に見る三つの指標

指標が多くて迷う場合は、まず次の三つから始めましょう。

  1. 最初のメニューの選択率:用件の構成をつかむ
  2. 最初のメニューの離脱率:入口で迷わせていないかを確認する
  3. 転送し直しの割合:選び間違いが起きていないかを確認する

この三つを月に一度確かめるだけでも、メニューの大きな問題の多くは見つけられます。三つの指標に慣れてきたら、二段目のメニューの離脱率や、待っている間の放棄など、見る範囲を少しずつ広げていきましょう。最初から多くの指標を集めようとすると、集計の手間が増えて続かなくなりがちです。続けられる範囲で見ることが、何より大切です。

離脱ポイントの見つけ方

離脱ポイントとは、電話をかけてきた人が電話を切ってしまう場所のことです。IVRの改善では、この離脱ポイントを見つけることが出発点になります。

流れの図に件数を書き込む

まず、IVRの流れを図に書き出します。入口の案内、最初のメニュー、各選択肢の先のメニュー、キュー、担当者、ボイスメールまで、電話がたどる道をすべて書きます。そのうえで、それぞれの場所に「そこに来た件数」と「そこで切られた件数」を書き込みます。

場所来た件数切られた件数次に進んだ件数
入口の案内AaA − a
最初のメニューA − ab…
選択肢1の先のメニュー…c…
キュー…d…

図にすると、電話がどこで減っているかがひと目でわかります。切られた件数が多い場所、あるいは来た件数に対して切られた割合が高い場所が、離脱ポイントの候補です。

切られたタイミングを見る

使っている仕組みで、案内のどの時点で切られたかがわかる場合は、さらに詳しく見ます。

切られたタイミングによって、考えられる原因と、直すべき場所が変わります。

用件が済んだ離脱と、迷った離脱を分ける

前に触れたように、離脱には、用件が済んだ離脱もあります。営業時間や場所の案内を聞いて切った電話は、IVRがうまく働いた結果です。こうした「案内で用件が済む」選択肢の後の離脱は、迷った離脱とは分けて数えます。

分けて数えるには、案内の最後まで聞いてから切られたか、途中で切られたかを見るのが一つの方法です。案内を最後まで聞いて切られた電話は、用件が済んだ可能性が高いと考えられます。

離脱ポイントの優先順位

離脱ポイントが複数見つかった場合は、次の順で優先順位をつけます。

  1. 件数が多い場所:入口の案内や最初のメニューなど、多くの電話が通る場所の離脱は、影響が大きくなります。
  2. 割合が高い場所:件数は少なくても、来た電話の多くが切られている場所は、何らかの問題がある可能性が高い場所です。
  3. 大切な用件の道:新規の申し込みや、急ぎの用件など、取りこぼすと影響が大きい用件の道にある離脱ポイントを優先します。

繰り返しかけてくる電話を見る

同じ人が短い間に何度も電話をかけてきている場合、一度目の電話で用件が解決しなかった可能性があります。使っている仕組みで、同じ番号からの繰り返しの着信がわかる場合は、次の点を確認します。

一度目にメニューの途中で切り、二度目に0番を押してきた、という流れが多ければ、最初のメニューで用件を見つけられなかった人が多いと考えられます。繰り返しの着信は、IVRで解決できなかった用件を見つける手がかりになります。ただし、電話番号は個人を特定できる情報です。分析に使う範囲や、確かめられる人の範囲は、社内のルールにあわせて決めておきましょう。

通話の内容から読み取る

数字のデータは、「どこで」問題が起きているかを教えてくれますが、「なぜ」起きているかまでは教えてくれません。なぜを知るには、通話の内容や、担当者の声を手がかりにします。

担当者につながった電話の最初のひと言

担当者につながった電話の最初のひと言には、IVRの問題のヒントが詰まっています。

こうした声を、担当者に一定期間メモしてもらいます。メモの負担を軽くするため、記入欄は「どの選択肢から来たか」「最初のひと言」「本来の用件」の三つ程度に絞り、電話の近くに置いておきます。忙しい時間帯は書けなくても構わない、と伝えておくと、続けてもらいやすくなります。どの選択肢から来た電話で、どんな声があったかを記録すると、選択肢の言葉や待ち時間の問題が具体的に見えてきます。

「その他」と0番の用件を分類する

「その他」や0番から担当者につながった電話の用件を、一定期間記録して分類します。同じ用件が繰り返し出てくるなら、その用件はメニューの新しい選択肢の候補です。メニューの選択肢から漏れている用件を見つける、もっとも直接的な方法です。

用件の分類件数メニューのどこに入れられるか
例:請求書の再発行「お支払いや請求書」の選択肢に含める案内を加える
例:採用の問い合わせ件数が少なければ「その他」のまま
例:配送の日時の変更「配送について」の選択肢に含まれることを案内で明確にする

転送し直した電話の理由

担当者が転送し直した電話について、「どの選択肢から来たか」と「本来はどの選択肢を選ぶべきだったか」を記録します。特定の組み合わせが多ければ、二つの選択肢の言葉が紛らわしい可能性があります。

通話の要約や記録を活用する

通話の内容をAIで要約したり、文字に起こしたりできる仕組みを使っている場合は、それらの記録から用件を分類する作業を効率化できます。ただし、要約や文字起こしには誤りが起こりうるため、分類の結果は担当者の実感とも照らし合わせましょう。通話の要約の活用法は、AI通話要約の使い方で紹介しています。

改善の進め方

データと通話の内容から問題が見えてきたら、改善に取りかかります。思いつきで変えるのではなく、仮説を立て、一つずつ変え、効果を確認する、という手順で進めます。

ステップ1:問題を一文で書く

見つけた問題を、データに基づいて一文で書きます。

問題を一文で書くと、何を直すのかがはっきりします。

ステップ2:原因の仮説を立てる

問題の原因として考えられることを書き出し、もっとも可能性が高いものを仮説にします。

問題考えられる原因仮説
最初のメニューの途中で切られる前置きが長い/選択肢が多い/用件がない前置きが長く、選択肢までたどり着く前に切られている
「ご契約について」の転送し直しが多い「ご契約」と「ご解約」が聞き分けにくい/新規と既存が混ざる新規の申し込みの人も「ご契約」を選んでいる
月曜朝の放棄が多い担当者が少ない/待ち時間の案内がない週明けに電話が集中し、担当者が足りない

仮説を立てるときは、データだけでなく、担当者の声や、自分で電話をかけてみた体験も手がかりにします。考えられる原因が複数あるときは、確かめやすいものから順に一つずつ検証していきます。最初の仮説が外れても、次の仮説を試す材料が残っていれば、改善は止まりません。

仮説のワークシート

仮説を立てるときは、次のワークシートを埋めると、考えが整理しやすくなります。

項目記入例
問題(データで一文)「ご契約について」から担当につながった電話の転送し直しが多い
根拠のデータ転送し直しの割合が、ほかの選択肢より高い
根拠の声担当者のメモ:「新しく申し込みたい」という用件の人が多い
考えられる原因新規と既存が同じ選択肢に混ざっている/「ご契約」と「ご解約」が聞き分けにくい
仮説新規の申し込みの人も「ご契約について」を選んでいる
変更の案選択肢を「新しくお申し込みの方」と「ご契約中の方」に分ける
狙う指標転送し直しの割合
あわせて見る指標最初のメニューの離脱率、入力の誤りの割合
判断の時期変更から一か月後

「根拠の声」の欄が埋まらない場合は、担当者への聞き取りや、通話の記録の確認を先に行います。データと声の両方がそろった仮説ほど、当たる見込みが高くなります。

ステップ3:変更を一つに絞る

仮説に基づいて、変更の案を作ります。このとき、一度に変えるのは一つだけにします。前置きを短くし、同時に選択肢の順番も変えると、効果があったとしても、どちらの変更が効いたのかがわかりません。

変更の例

ステップ4:変更して、テストする

変更したら、すべての選択肢を押して確かめます。変更した場所だけでなく、変更の影響を受けそうな場所も確かめます。メニューの選択肢を変えた場合は、番号の行き先がずれていないかを特に注意して確かめましょう。

ステップ5:一定期間データを取る

変更した後、同じ指標を一定期間取ります。期間は、比べられるだけの件数が集まる長さにします。電話の数が少ない窓口では、数週間から一か月ほど必要になることもあります。

改善の記録をつける

改善を続けていくと、いつ、何を、なぜ変えたのかがわからなくなってきます。変更のたびに記録をつけておきましょう。

日付問題仮説変更結果
〇月〇日最初のメニューの途中の離脱前置きが長い宣伝の文を削除離脱率が下がった
〇月〇日「ご契約」の転送し直し新規と既存が混ざる選択肢を二つに分割転送し直しが減った/新しい選択肢の選択率を確認中

記録は、担当者が変わったときの引き継ぎにも役立ちます。

改善の結果を社内に伝える

改善の結果は、電話を受けている担当者だけでなく、経営者や関係する部署にも伝えると、次の改善の協力を得やすくなります。伝えるときは、次の四つを短くまとめます。

  1. 何が問題だったか:「最初のメニューで、選択肢を聞く前に切られる電話が多かった」
  2. 何を変えたか:「前置きの宣伝を削った」
  3. 何が変わったか:「同じ長さの期間で比べて、最初のメニューで切られる割合が下がった」
  4. 次に何をするか:「次は、転送し直しの多い選択肢の言葉を見直す」

数字だけを並べるより、問題と変更と結果を一続きの話として伝えるほうが、IVRに詳しくない人にも伝わります。

自動の聞き取りを組み合わせた場合

IVRに、音声AIなどによる自動の聞き取りを組み合わせている場合は、番号の選択とは別の指標も見る必要があります。たとえば、聞き取りがうまくいかずに聞き返した回数、聞き取った用件と担当者が確かめた用件が違っていた件数、自動の聞き取りから人に引き継いだ件数などです。番号の選択と自動の聞き取りでは、迷い方や誤り方が違うため、それぞれの指標を分けて見ます。仕組みの違いはIVRと音声AIエージェントの違いで整理しています。

問題別の改善の打ち手

指標から見つかった問題に対して、よく使われる改善の打ち手をまとめました。どの打ち手が合うかは、仮説によって変わります。

見つかった問題打ち手の例
入口で切られる電話が多い前置きを短くする、宣伝を待ち時間の案内に回す
選択肢の読み上げ中に切られる選択肢を減らす、よく選ばれる選択肢を前に置く
入力なし・入力の誤りが多い読み上げの速度を落とす、選択肢の間に間を置く、言葉を言い換える
繰り返しが多い選択肢の言葉をわかりやすくする、選択肢を減らす
0番や「その他」が多い多い用件を新しい選択肢にする、既存の選択肢の言葉を広げる
転送し直しが多い紛らわしい選択肢の言葉を変える、選択肢を分ける
待っている間の放棄が多い折り返しの依頼を案内する、担当者の配置を見直す、待ち時間の案内を工夫する
時間外の電話が多い受付時間を見直す、時間外の案内とボイスメールを整える

一つの問題に複数の打ち手が考えられる場合は、手間が小さく、元に戻しやすいものから試すのがおすすめです。案内の言葉を変える、順番を入れ替える、といった変更は、メニューの構造を大きく変えるより手軽で、効果がなければすぐに戻せます。

改善後の検証

前後で同じ指標を比べる

変更の前と後で、同じ指標を、同じ条件で比べます。条件をそろえるために、次の点に気をつけます。

狙った指標以外も見る

ある指標が良くなっても、別の指標が悪くなっていることがあります。たとえば、選択肢を分けたことで転送し直しは減ったが、メニューが長くなって離脱が増えた、という場合です。狙った指標だけでなく、関連する指標もあわせて確かめます。

変更狙った指標あわせて見る指標
前置きを短くする最初のメニューの離脱率録音の告知など、削った情報に関する問い合わせ
選択肢を分ける転送し直しの割合メニューの離脱率、入力の誤りの割合
選択肢の順番を変えるよく選ばれる選択肢までの時間常連のお客様の入力の誤り
折り返しの依頼を加える待っている間の放棄折り返しまでの時間、折り返しの件数

効果がなかったときは

変更しても指標が変わらない、あるいは悪くなった場合は、仮説が間違っていた可能性があります。変更を元に戻すか、別の仮説を立てて、次の変更を試します。効果がなかったことも、改善の記録に書いておきましょう。同じ変更を繰り返さずに済みます。

指標を読むときの落とし穴

データは強力な手がかりですが、読み方を誤ると、間違った改善につながります。よくある落とし穴を紹介します。

件数が少ないのに結論を出す

電話の数が少ない窓口では、数件の違いで割合が大きく変わります。たとえば、ある選択肢を選んだ電話が週に数件しかない場合、そのうち一件が切られただけで、離脱率は大きく見えます。件数が少ないときは、期間を長くとって件数を集めてから判断しましょう。

平均だけを見る

全体の平均では問題がなくても、特定の時間帯や曜日、特定の選択肢に問題が集中していることがあります。前に紹介したように、時間帯や曜日で分けて見る習慣をつけましょう。

選択率を「人気」と読み違える

選択率が高い選択肢は、用件が多いから選ばれているとは限りません。選択肢の言葉があいまいで、いろいろな用件の人が「とりあえず」選んでいることもあります。選択率が高い選択肢ほど、転送し直しの割合や、担当者の声とあわせて確かめます。

離脱をすべて悪いものと考える

案内で用件が済んで切られた電話も、離脱として数えられます。離脱率を下げることだけを目標にすると、案内で用件を済ませる選択肢を減らすなど、かえって電話をかけてきた人に不便な変更をしてしまうおそれがあります。

数字だけで判断する

数字は「どこで」を教えてくれますが、「なぜ」は教えてくれません。数字だけで原因を決めつけず、担当者の声や、自分で電話をかけてみた体験と組み合わせて判断します。

データが取れないときの代わりの方法

使っている仕組みで、IVRの詳しいデータが取れない場合もあります。その場合でも、次の方法で改善の手がかりを集められます。

担当者のメモ

一定期間、担当者に次の点をメモしてもらいます。

一週間から二週間のメモでも、選び間違いの多い選択肢や、メニューから漏れている用件が見えてきます。

自分たちで電話をかける

社内の人に、よくある用件を割り当てて電話をかけてもらいます。迷った場所、聞き取りにくかった言葉、目的の窓口にたどり着くまでの時間を書き出してもらいます。設計に関わっていない人にかけてもらうのがポイントです。

着信の履歴を見る

詳しいデータがなくても、着信の履歴から、時間帯ごとの電話の数や、出られなかった電話の数はわかることがあります。出られなかった電話が多い時間帯は、担当者の配置や、折り返しの依頼の案内を見直す手がかりになります。

お客様の声を集める

ホームページの問い合わせフォームやアンケートで、電話の窓口についての声を集める方法もあります。「電話がつながりにくい」「どの番号を押せばよいかわからなかった」といった声は、IVRの改善の手がかりになります。

改善の例

データを読んで改善した流れを、二つの例で紹介します。説明のための架空の例です。

例1:最初のメニューの途中で切られる電話が多い

気づいたこと:流れの図に件数を書き込んだところ、最初のメニューで切られる電話の割合が、ほかの場所より高かった。切られたタイミングを見ると、選択肢の読み上げが始まる前に切られている電話が多かった。

仮説:前置きが長く、選択肢が聞こえる前にあきらめている。

変更:前置きにあったキャンペーンの案内と、ホームページの案内を削り、名乗りと録音の告知だけにした。この内容は一般的な情報であり、法的助言ではありません。

検証:同じ長さの期間で比べたところ、最初のメニューで切られる割合が下がった。あわせて、削ったキャンペーンについての問い合わせが増えていないかを確認し、増えていないことを確認した。

例2:ある選択肢から転送し直す電話が多い

気づいたこと:「ご利用中のサービスについて」から技術の担当につながった電話のうち、契約の担当に転送し直す電話が多かった。担当者のメモでは、「契約の内容を変えたい」という用件の人が、この選択肢を選んでいた。

仮説:契約の変更を希望する人は、自分の用件を「ご利用中のサービスについて」だと考えている。

変更:最初のメニューの選択肢を「サービスの使い方や不具合」と「ご契約内容の変更」に分けた。選択肢の数が増えたため、件数の少なかった別の選択肢を「その他」にまとめ、最初のメニューの選択肢の数は変えなかった。

検証:転送し直しの割合が下がった。あわせて、最初のメニューの離脱率と入力の誤りの割合が増えていないことを確認した。

例3:月曜日の朝、待っている間に切られる電話が多い

気づいたこと:時間帯と曜日で分けて見たところ、月曜日の朝だけ、キューで待っている間に切られる電話の割合が高かった。メニューの離脱率や転送し直しの割合には、曜日による違いはなかった。

仮説:メニューの問題ではなく、週末の間にたまった用件の電話が週明けに集中し、担当者が足りていない。

変更:月曜日の朝だけ、キューで一定時間待った人に「折り返しをご希望の場合は1を」と案内するようにした。あわせて、月曜日の午前中は、折り返しの担当を一人増やした。

検証:月曜日の朝の放棄の割合が下がった。あわせて、折り返しの件数と、折り返しまでの時間を確認し、案内で伝えた目安を守れていることを確認した。

この例のように、IVRのデータからは、メニューの問題だけでなく、担当者の配置の問題が見つかることもあります。折り返しの依頼の設計は、IVRのコールバックとボイスメール活用法で紹介しています。

メニューの組み立て方の考え方はIVRメニュー設計のコツで、よくある失敗とその直し方はIVRでよくある失敗で解説しています。

問題を一文で書く、仮説を立てる、変更を一つに絞る、テストする、前後で比べるの流れ
図2:IVR改善の進め方

毎月の記録表の作り方

月に一度の振り返りのために、指標を同じ形式で記録していく表を用意しておくと、変化を追いやすくなります。

月総着信最初のメニューの離脱率選択肢1の選択率選択肢2の選択率0番の割合転送し直しの割合待っている間の放棄その月の変更
〇月なし
〇月前置きを短縮

「その月の変更」の欄を設けておくと、指標が変わったときに、どの変更の影響かを確認しやすくなります。電話に影響しそうな出来事(キャンペーン、ホームページの変更、長期の休業など)も、この欄に書いておきましょう。

電話以外の窓口とのつながり

IVRのデータを読むときは、電話以外の窓口の変化にも目を向けます。たとえば、ホームページによくある質問を充実させると、営業時間や手続きの問い合わせの電話が減り、IVRの選択率が変わることがあります。反対に、ホームページで手続きがわかりにくくなると、電話が増えることもあります。

IVRの待ち時間の案内で、ホームページやメールの窓口を知らせている場合は、その案内がどれくらい使われているかも確かめると、電話の窓口とほかの窓口の役割分担を見直す手がかりになります。

分析の体制と頻度

IVRの分析と改善は、一度で終わるものではありません。続けるための体制と、見直しの頻度を決めておきましょう。

役割を決める

役割主な仕事
データを集める人決まった時期に指標を集め、表にまとめる
声を集める人担当者のメモや、お客様の声を集めて分類する
改善を決める人データと声をもとに、問題と仮説、変更の案を決める
設定を変える人変更を設定し、テストする

小さな窓口では、一人が複数の役割を兼ねても構いません。大切なのは、誰が何をするかが決まっていることです。

月に一度の振り返りの進め方

月に一度、三十分ほどの振り返りの時間をとり、次の順で進めます。

  1. 基本の指標を確認する:最初のメニューの選択率と離脱率、転送し直しの割合を、前の月と比べます。
  2. 担当者の声を共有する:担当者のメモや、気になった電話を共有します。
  3. 前回の変更の効果を確認する:前の月に変えたことがあれば、狙った指標と関連する指標を確認します。
  4. 次に直すことを一つ決める:問題、仮説、変更の案を一つに絞り、担当と期限を決めます。
  5. 改善の記録を更新する

毎月一つずつでも改善を続ければ、一年で十を超える改善が積み重なります。振り返りの時間がとれない月は、基本の指標を確認して記録表に書き込むだけでも続けましょう。記録が途切れないことが、次の改善の土台になります。

臨時で見直すタイミング

月に一度の振り返りに加えて、次のようなときは臨時で見直します。

AI-SNS.IO Callで分析する場合

AI-SNS.IO Callでは、レポートや分析の機能で通話の傾向を確認できます。通話にはAIによる要約を残せるため、「その他」や0番から来た電話の用件を分類する作業にも役立ちます。IVRのメニュー、営業時間のルール、キューごとのボイスメール、折り返しの依頼の設定とあわせて、改善の結果を確認しながら運用できます。どの指標を確認できるかを含め、現在利用できる機能は機能一覧で、設定の手順は使い方ガイドで確認してください。日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。

よくある質問

IVRの分析では、まず何を見ればよいですか?

最初のメニューの選択率、最初のメニューの離脱率、転送し直しの割合の三つから始めるのがおすすめです。用件の構成、入口での迷い、選び間違いの三つがわかり、大きな問題の多くを見つけられます。

離脱率はどれくらいなら問題ですか?

業種や用件、案内の内容によって大きく変わるため、一律の基準はありません。自社の過去の数字と比べて増えていないか、ほかのメニューと比べて特に高い場所はないか、という見方で判断するのが現実的です。

電話の数が少ないのですが、分析する意味はありますか?

あります。ただし、件数が少ないと割合が大きくぶれるため、期間を長くとって件数を集めてから判断します。担当者のメモや、社内の人が電話をかけてみる方法と組み合わせると、少ない件数でも手がかりを得られます。

データが取れない仕組みを使っています。

担当者に一定期間メモを取ってもらう、社内の人に電話をかけてもらう、着信の履歴から時間帯ごとの傾向を見る、といった方法で手がかりを集められます。詳しいデータが必要になったら、データを取れる仕組みへの切り替えを検討しましょう。

改善は一度にいくつも行ってはいけませんか?

一度に複数を変えると、どの変更が効いたのかがわからなくなります。急いで直す必要がある問題(人につながらない、行き止まりがあるなど)を除いて、変更は一つずつ行い、効果を確かめてから次に進むのがおすすめです。

変更の効果は、どれくらいの期間で判断すればよいですか?

比べられるだけの件数が集まる期間が必要です。電話の多い窓口なら数日から一週間、少ない窓口なら数週間から一か月ほどを目安に、変更前と同じ長さの期間で比べます。

選択率の低い選択肢は、削除してよいですか?

まとめる候補にはなりますが、件数が少なくても大切な用件(急ぎの用件など)は残すべきです。削除する場合は、その用件の電話がどこに行くようになるかを決め、変更後に転送し直しが増えていないかを確かめます。

0番を選ぶ人が多いのは、悪いことですか?

必ずしも悪いことではありません。人と話す道があることは大切です。ただし、0番の電話の用件を分類すると、メニューに加えるべき選択肢や、言葉がわかりにくい選択肢が見つかることがあります。

AIによる通話の要約は、分析に使えますか?

用件の分類の手がかりとして役立ちます。ただし、要約には誤りが起こりうるため、分類の結果は担当者の実感とも照らし合わせて判断しましょう。

担当者の声と、データが食い違うときは?

両方とも大切な情報です。データは全体の傾向を、担当者の声は個々の電話の具体的な様子を表しています。食い違うときは、期間や対象をそろえて確かめ直す、社内の人が電話をかけて体験してみる、といった方法で、どちらが実態に近いかを確かめます。

分析の結果は、誰と共有すればよいですか?

電話を受けている担当者と共有するのがおすすめです。改善の理由がわかれば、担当者はメモの協力もしやすくなり、変更後の案内についてお客様から聞かれたときにも説明できます。

まとめ

IVRの改善は、データを読み、仮説を立て、一つずつ変え、効果を確認する、という繰り返しです。

まずは、IVRの流れを図に書き出し、それぞれの場所に件数を書き込むところから始めてみてください。IVRのメニュー、営業時間のルール、ボイスメール、折り返しの依頼は、AI-SNS.IO Callで組み立てられます。アカウント登録から試してみましょう。IVRの基本はIVRとは、自動応答の全体像はAI電話受付とはをご覧ください。

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