IVRでよくある失敗10選|顧客が離脱するメニューの共通点
「番号を押しても押しても、話したい相手にたどり着かない」。IVR(自動音声応答)に対するこうした不満は、多くの人が一度は感じたことがあるでしょう。IVRは、電話を用件ごとに振り分け、担当者の負担を減らす便利な仕組みです。ところが、設計や運用でつまずくと、電話をかけた人を迷わせ、途中で電話を切らせてしまう原因にもなります。
IVRでよく起きる失敗には、共通する型があります。メニューの組み立て方、案内の文章と音声、人への出口、そして運用と改善。この四つのどこかで、つまずきが起きているのです。
この記事では、IVRでよくある失敗を十個取り上げ、それぞれについて、起きていること、原因、直し方を、書き直しの例とともに解説します。最後に、どこから直すかの優先順位と、見直しのチェックリストも紹介します。今のIVRを見直すときの点検表として使ってください。
失敗1〜3:メニュー構造
失敗1:選択肢が多すぎる
起きていること
最初のメニューで、七つも八つも選択肢が読み上げられる。電話をかけた人は、最後の選択肢を聞き終わるころには最初のほうを忘れてしまい、もう一度聞き直すか、当てずっぽうで番号を押します。
原因
すべての用件を最初のメニューで分けようとすることです。用件が増えるたびに選択肢を足していくと、いつの間にかメニューが長くなります。
直し方
- 最初のメニューの選択肢は、多くても五つ程度に絞る
- 電話の記録を見て、件数の多い用件を上位に残し、件数の少ない用件はまとめる
- 細かな用件の分類は、二段目のメニューか、担当者との会話に任せる
書き直しの例
書き直し前:
新規のご注文は1を、ご注文の変更は2を、キャンセルは3を、配送状況の確認は4を、返品は5を、請求書の再発行は6を、お支払い方法の変更は7を、その他は8を押してください。
書き直し後:
ご注文や配送については1を、お支払いや請求書については2を、その他のご用件は0を押してください。
1を押した人には、「新しいご注文は1を、ご注文済みの商品は2を」と二段目のメニューで分けます。
自社で確認する質問
- 最初のメニューを声に出して読むと、最後の選択肢までにどれくらいかかるか
- 選択肢の中に、月に数件しか選ばれないものはないか
- 似た意味の選択肢が並んでいないか(「ご注文の変更」と「キャンセル」など、電話をかけた人が迷いそうな組み合わせ)
失敗2:階層が深すぎる
起きていること
最初のメニューで番号を押し、次のメニューでまた押し、さらに次のメニューで押す。何度押しても担当者にたどり着かず、電話をかけた人は「いつまで続くのか」と感じて電話を切ります。
原因
選択肢を減らそうとして、階層を重ねすぎることです。失敗1を直そうとして、失敗2に陥ることがよくあります。
直し方
- 階層は二段まで、多くても三段までを目安にする
- 件数の多い用件は、最初のメニューから一回の選択でたどり着けるようにする
- 階層ごとに「前のメニューに戻る」方法を案内する
見直しの手順
用件ごとに、担当者にたどり着くまでに番号を何回押すかを数えてみましょう。
| 用件 | 押す回数 | 件数の多さ | 見直し |
|---|---|---|---|
| 配送状況の確認 | 3回 | 多い | 最初のメニューから2回以内に |
| 請求書の再発行 | 2回 | 中程度 | このまま |
| 取材の依頼 | 3回 | 少ない | 「その他」にまとめてもよい |
件数の多い用件ほど、押す回数を少なくするのが基本です。二段目以降のメニューでは、「前のメニューに戻るには9を」のように、戻る方法を最後に添えておくと、選び間違えた人がやり直せます。最初からやり直すために電話をかけ直す、という手間を省けます。
失敗3:社内の組織で分けている
起きていること
「営業部は1を、カスタマーサクセス部は2を、管理部は3を」。電話をかけた人は、自分の用件がどの部署の担当なのかがわかりません。結局、当てずっぽうに選び、違う部署につながって、転送されることになります。
原因
メニューを社内の組織図に合わせて作っていることです。社内の人には自然でも、社外の人には部署の役割がわかりません。
直し方
- 選択肢は部署名ではなく、電話をかけた人の用件の言葉で書く
- 一つの用件が複数の部署にまたがる場合は、用件の側で分け、社内で振り分ける
書き直しの例
書き直し前:
営業部は1を、カスタマーサクセス部は2を、管理部は3を押してください。
書き直し後:
サービスの導入をご検討中の方は1を、ご利用中のサービスについては2を、ご請求やお支払いについては3を押してください。
用件の言葉に置き換えるには、電話を受けている担当者に「お客様は最初に何と言うか」を聞くのが近道です。担当者の答えを集めると、「請求書がほしい」「使い方がわからない」「届かない」など、お客様が実際に使う短い言葉が並びます。その言葉をそのまま選択肢に使うと、電話をかけた人は自分の用件を見つけやすくなります。メニュー全体の組み立て方はIVRメニュー設計のコツで解説しています。
失敗4〜6:案内文と音声
失敗4:本題までの前置きが長い
起きていること
電話がつながると、まずあいさつ、次に録音の告知、続いてキャンペーンのお知らせ、ホームページの案内、個人情報の扱いの説明。メニューが始まるまでに長い時間がかかり、電話をかけた人は、用件を言う前からいらだってしまいます。
原因
「念のため伝えておきたいこと」を最初の案内に足していくことです。一つひとつは短くても、積み重なると長い前置きになります。
直し方
- 最初の案内は、名乗りと、必要なら録音の告知を一文にまとめる程度にとどめる
- キャンペーンや宣伝は、最初の案内に入れない。どうしても伝えたい場合は、待ち時間の案内に回す
- ホームページの案内は、「よくある質問はホームページでもご覧いただけます」と一文にする
書き直しの例
書き直し前:
お電話いただき誠にありがとうございます。株式会社〇〇でございます。当社では現在、新しいサービスの受付を開始しております。詳しくは当社ホームページをご覧ください。また、よくあるご質問はホームページのサポートページにまとめておりますので、あわせてご利用ください。なお、この通話はサービスの品質向上のため録音させていただいております。
書き直し後:
お電話ありがとうございます。〇〇でございます。サービス向上のため、通話を録音しています。
新しいサービスの案内は、待ち時間の案内に回しました。よくある質問の案内は、ボイスメールや待ち時間の案内の中で一言添えれば十分です。
確かめ方
電話がつながってから、最初の選択肢が聞こえるまでの時間を計ってみましょう。計った時間を短くするために、どの文を削れるか、どの文を後ろに回せるかを考えます。
削るときの考え方
- その一文がなくても、電話をかけた人は困らないか
- その情報は、電話をかけた人全員に必要か(一部の人にだけ必要なら、該当する選択肢の先で伝える)
- その情報は、ホームページなど電話以外の場所でも伝えられないか
失敗5:聞き取りにくい
起きていること
案内が早口で聞き取れない。ガイダンスによって音量が違い、ある部分だけ急に大きくなったり小さくなったりする。保留の音楽が大きすぎて、案内の声がかき消される。
原因
案内を作った後に、実際の電話で聞いて確かめていないことです。パソコンのスピーカーで聞くと問題なくても、電話を通すと声がこもり、細かな音が聞き取りにくくなります。複数回に分けて録音したり、録音と音声合成を混ぜたりすると、音量や声の調子がばらつきます。
直し方
- 案内は、ふだん話すより少しゆっくりめに読む
- 選択肢と選択肢の間に、少し間を置く
- すべてのガイダンスを続けて聞き、音量をそろえる
- 携帯電話と固定電話の両方で、実際に電話をかけて聞く
- 騒がしい場所で聞いても、選択肢の言葉が聞き取れるかを確認する
録音と音声合成の使い分けや、読み上げの速度と間の取り方は、IVR音声ガイダンスの作り方で詳しく解説しています。
失敗6:古い案内が流れている
起きていること
夏季休業が終わったのに、休業の案内が流れている。もう終わったキャンペーンのお知らせが流れ続けている。営業時間を変えたのに、案内では前の時間を伝えている。部署の統合でなくなった窓口が、メニューに残っている。
原因
案内を変えるきっかけと、変える担当者が決まっていないことです。期限のある案内を作るときに、終わる日を決めていないことも原因になります。
直し方
- すべての案内の原稿を一つの表で管理し、最終更新日と担当者を記録する
- 期限のある案内は、作るときに終了日を決め、予定表に入れる
- 営業時間、組織、サービスの変更の手続きに、「IVRの案内を変える」を加える
よくある見落とし
| 変更のきっかけ | 見落としやすい案内 |
|---|---|
| 営業時間の変更 | 時間外の案内、部署ごとの受付時間の案内 |
| 部署の統合・新設 | メニューの選択肢、転送先 |
| 休業の終了 | 休業の案内、時間外のボイスメールの案内 |
| サービスの終了 | メニューの選択肢、お知らせ |
| 電話番号の変更 | 案内の中で読み上げている番号 |
案内の中で別の電話番号やホームページのアドレスを読み上げている場合は、その番号やアドレスが変わったときにも、案内を変える必要があります。ホームページのアドレスは、電話で聞いて書き取るのが難しい情報です。読み上げる場合は、「〇〇で検索してください」のように、短く伝えられる方法を検討しましょう。
失敗7〜8:出口と引き継ぎ
失敗7:人につながる道がない
起きていること
メニューのどこを探しても、担当者と話す選択肢がない。0を押しても何も起きない。用件がメニューのどれにも当てはまらない人は、行き場を失い、電話を切るしかなくなります。
原因
担当者の負担を減らしたいあまり、人につながる道をあえて隠したり、作り忘れたりすることです。IVRで解決できる用件を増やすことは大切ですが、人につながる道をふさぐと、電話をかけた人の不満は大きくなり、別の窓口や別の手段で問い合わせが重なって、かえって負担が増えることもあります。
直し方
- 「その他のご用件は0を」など、人につながる選択肢を最初のメニューに必ず入れる
- 0番はどのメニューからでも押せるようにし、そのことを案内で伝える
- 担当者が出られない時間帯は、0番の行き先をボイスメールや折り返しの依頼にする
案内の例
担当者とお話しになりたい場合は、いつでも0を押してください。
人につながる道があることを最初に伝えておくと、電話をかけた人は安心してメニューを聞けます。安心してメニューを聞いてもらえれば、メニューで解決できる用件は、メニューで解決されやすくなります。
自社で確認する質問
- 最初のメニューで、人につながる方法が案内されているか
- 二段目のメニューで0を押すと、どこにつながるか
- 営業時間外に0を押すと、どこにつながるか
- 0番の先で担当者が全員話し中のとき、どうなるか
失敗8:行き止まりがある
起きていること
- 何も押さずに待っていると、同じメニューが何度も繰り返され、抜け出せない
- 転送先の担当者が出ないと、呼び出し音が鳴り続ける
- 範囲外の番号を押すと、何の案内もなく電話が切れる
- 営業時間外の案内が流れた後、何もできずに電話が切れる
どの場合も、電話をかけた人は、次に何をすればよいのかわからないまま取り残されます。
原因
うまくいったときの流れだけを設計し、うまくいかなかったときの流れを決めていないことです。
直し方
IVRのすべての分かれ道について、「うまくいかなかったとき」の行き先を決めます。
| 場面 | うまくいかなかったとき | 行き先の例 |
|---|---|---|
| メニュー | 何も押されない | 一回だけ繰り返し、二回目は代表の窓口へ |
| メニュー | 範囲外の番号 | 「番号が確認できませんでした」と案内し、メニューを繰り返す |
| 転送 | 担当者が出ない | 一定時間で部署のボイスメールへ |
| キュー | 長く待っている | 折り返しの依頼を案内する |
| 時間外 | 用件がある | ボイスメール、または急ぎの番号 |
ボイスメールと折り返しの依頼の使い分けは、IVRのコールバックとボイスメール活用法で詳しく解説しています。
行き止まりの見つけ方
IVRの流れを図に書き出し、すべての分かれ道に「ここで何も押さなかったら」「ここで誰も出なかったら」と書き込んでいきます。行き先が書けない場所が、行き止まりです。図を書くときは、営業時間内と営業時間外を別々に書くと、時間外だけに残っている行き止まりにも気づけます。たとえば、営業時間内は0番で代表の窓口につながるのに、営業時間外は0番を押しても何も起きない、という状態は、図を分けて書くとはっきり見えてきます。
失敗9〜10:運用と改善
失敗9:記録を見ていない
起きていること
IVRを作ってから何年も、どの番号がどれくらい押されているのか、どこで電話が切られているのかを、誰も確かめていない。メニューがわかりにくくても、誰も気づかないまま放置されています。
原因
IVRを「一度作れば終わり」の設定だと考えていることです。電話の用件は、季節、サービスの変更、お客様の層の変化によって移り変わります。最初に作ったメニューが、今の電話の用件に合っているとは限りません。
直し方
月に一度など、決まった時期に、次の点を記録で確認します。
- 各選択肢がどれくらい選ばれているか
- どの案内の途中で電話が切られているか
- 「その他」や0番が選ばれた電話は、どんな用件だったか
- 担当者が別の部署に転送し直した電話は、どの選択肢から来たか
記録の読み方と、改善の進め方は、IVRの分析と改善方法で詳しく解説します。
記録がない場合
使っている仕組みで記録が取れない場合でも、担当者に一定期間メモを取ってもらうだけで、手がかりは得られます。「間違った選択肢から来た電話」と「その他から来た電話の用件」をメモしてもらいましょう。一週間ほどメモを続けるだけでも、どの選択肢の言葉がわかりにくいのか、どんな用件がメニューから漏れているのかが見えてきます。
失敗10:変更をテストしない、担当者がいない
起きていること
メニューの選択肢を一つ追加したら、別の番号の転送先が変わってしまった。営業時間を変えたら、祝日の設定が消えていた。IVRの設定を知っている人が異動して、誰も変更できなくなった。
原因
変更の手順と、変更した後の確認の手順が決まっていないことです。設定を一人だけが知っている状態も、変更の失敗や放置の原因になります。
直し方
- 変更の前に、変更の内容と影響する範囲を書き出す
- 変更の後に、すべての選択肢を実際に押して確かめる
- 時間帯によって変わる設定は、その時間帯に電話をかけて確かめる
- 設定の内容と変更の手順を文書に残し、二人以上が変更できるようにする
変更の前に書き出すことの例
変更の内容:最初のメニューに「配送について」を3番として追加する影響する範囲:最初のメニューの案内、3番の転送先(物流の窓口)、これまで3番だった「その他」を0番に移す確かめること:1番から3番と0番の行き先、物流の窓口が出ないときのボイスメール、営業時間外の3番の扱い切り替える日時:火曜日の十四時(電話の少ない時間帯)
このように書き出しておくと、変更の作業をする人と、テストをする人が別でも、確かめる範囲を共有できます。
変更後のテスト表の例
| 確かめること | 方法 | 結果 |
|---|---|---|
| すべての選択肢の行き先 | 一つずつ押す | |
| 0番の行き先 | 各メニューで押す | |
| 何も押さないとき | 待ってみる | |
| 範囲外の番号 | 9などを押す | |
| 営業時間外 | 時間外にかける | |
| 担当者が出ないとき | 担当者に出ないよう頼んでかける |

IVRの失敗に共通すること
ここまでの十の失敗を振り返ると、共通する原因が見えてきます。
- 作る側の視点で作っている:社内の組織図に合わせたメニュー、伝えたいことを詰め込んだ前置きは、電話をかけた人ではなく、作る側の都合から生まれます。
- うまくいかなかったときを想定していない:行き止まりや、人につながらない設計は、すべてが順調に進む場合だけを考えた結果です。
- 作った後に聞いていない、見ていない:聞き取りにくさ、古い案内、記録の放置は、作った後に確かめる仕組みがないことから起きます。
逆に言えば、電話をかけた人の立場で考え、うまくいかなかったときの行き先を決め、作った後も聞いて、見て、直し続ければ、多くの失敗は防げます。
症状から原因を探す早見表
電話の記録や担当者の声から気づいた「症状」から、どの失敗が原因になっていそうかを探すための早見表です。
| 気づいた症状 | 考えられる失敗 | 最初に確かめること |
|---|---|---|
| 最初のメニューの途中で切られる電話が多い | 失敗1・4 | 最初の選択肢までの時間、選択肢の数 |
| 二段目以降のメニューで切られる電話が多い | 失敗2 | 階層の深さ、戻る方法の案内 |
| 担当者が転送し直す電話が多い | 失敗3 | 選択肢の言葉が用件に合っているか |
| 「その他」や0番の電話が多い | 失敗1・3 | 「その他」の用件の中身 |
| 「聞き取れなかった」と言われる | 失敗5 | 速度、音量、電話での聞こえ方 |
| 「案内と違う」と言われる | 失敗6 | 原稿の管理表と、実際の案内 |
| 「誰にもつながらない」と言われる | 失敗7・8 | 0番と、うまくいかなかったときの行き先 |
| 変更の後に苦情が増えた | 失敗10 | 変更後のテストの記録 |
一つの症状に複数の失敗が関わっていることもあります。最初に確かめることから順に調べ、原因を絞り込んでいきましょう。
よくある思い込み
IVRの失敗の裏には、作る側の思い込みがあることも少なくありません。代表的な思い込みと、その見直し方を紹介します。
「選択肢が多いほど親切だ」
細かく分ければ、電話をかけた人がぴったりの選択肢を見つけられる、と考えがちです。しかし、耳で聞く案内では、選択肢が多いほど覚えきれず、迷う人が増えます。親切なのは、少ない選択肢で迷わずに選べることです。
「人につなげると担当者が忙しくなる」
人につながる道をふさぐと、一時的に担当者の電話は減るかもしれません。しかし、用件が解決しないお客様は、別の番号にかけ直したり、メールや問い合わせフォームで同じ用件を送ってきたりします。結果として、対応の手間はかえって増えることがあります。
「一度作ったら変える必要はない」
電話の用件は、サービスの変更や季節によって変わります。作ったときに最適だったメニューも、時間がたてば合わなくなります。定期的に見直すことを前提に作りましょう。
「案内を聞けばわかるはずだ」
作った人は、案内の内容をすでに知っているため、わかりにくさに気づけません。設計に関わっていない人に電話をかけてもらって、はじめて見えるわかりにくさがあります。
失敗を防ぐ引き継ぎの文書
IVRの設定を知っている人が一人だけ、という状態は、失敗10の大きな原因です。担当者が変わっても同じ品質で運用できるよう、次の内容を文書にまとめておきましょう。
- 全体の流れの図:入口から、各選択肢、転送先、ボイスメール、時間外の案内までの流れ
- 原稿の管理表:すべての案内の原稿、作り方(録音か音声合成か)、最終更新日、担当者
- 営業時間と休業日のルール:曜日ごとの受付時間、祝日の扱い、年間の休業予定
- 転送先の一覧:選択肢ごとの転送先と、出ないときの行き先
- 変更の手順:変更の前に確かめること、変更の後のテスト表
- 見直しの予定:記録を確認する時期、通しで聞く時期
文書は、設定を変えるたびに更新します。文書と実際の設定が食い違っていると、かえって混乱のもとになるため、変更の手順の最後に「文書を更新する」を入れておきましょう。
改善の優先順位
十の失敗のうち、いくつも当てはまる場合は、どこから直せばよいでしょうか。優先順位は、「電話をかけた人への影響の大きさ」と「直すのにかかる手間」の二つで考えます。
最初に直すもの:出口と行き止まり(失敗7・8)
人につながる道がない、行き止まりがある、という状態は、電話をかけた人の用件が完全に止まってしまう失敗です。影響が最も大きく、しかも0番の行き先を決める、転送先が出ないときの行き先を決める、といった設定の変更で直せることが多いため、最初に取り組みます。
次に直すもの:古い案内と長い前置き(失敗6・4)
古い案内は、電話をかけた人に誤った情報を伝えてしまいます。長い前置きは、すべての電話に影響します。どちらも、原稿を書き換えるだけで直せることが多く、手間に対して効果が大きい改善です。
その次:メニューの構造(失敗1・2・3)
選択肢の数、階層の深さ、選択肢の言葉を見直します。メニューの構造を変えると、転送先や案内の文章もあわせて変える必要があるため、手間はかかりますが、電話をかけた人の迷いを大きく減らせます。電話の記録を見て、件数の多い用件から見直すと効果的です。
並行して進めるもの:聞き取りやすさ(失敗5)
音量や速度の見直しは、案内を作り直すタイミングにあわせて進めます。メニューの構造を変えるときに、新しい案内の作り方を整えておけば、二度手間になりません。
継続して取り組むもの:記録とテストの仕組み(失敗9・10)
記録を見る、変更の後にテストする、二人以上が設定を変えられる、という仕組みは、一度で終わる改善ではなく、続けていく取り組みです。最初の改善と同時に仕組みを作っておくと、改善の効果を確認でき、新しい失敗を早く見つけられます。
| 優先 | 失敗 | 影響 | 手間 |
|---|---|---|---|
| 1 | 7・8 出口と行き止まり | 大きい | 小さい |
| 2 | 6・4 古い案内、長い前置き | 大きい | 小さい |
| 3 | 1・2・3 メニューの構造 | 大きい | 中程度 |
| 並行 | 5 聞き取りやすさ | 中程度 | 中程度 |
| 継続 | 9・10 記録とテスト | 長期的に大きい | 継続的 |

見直しの例
ある会社のIVRを、ここまでの考え方で見直す例を紹介します。説明のための架空の例です。
見直し前
お電話ありがとうございます。株式会社〇〇でございます。ただいま春の新生活応援キャンペーンを実施中です。詳しくはホームページをご覧ください。なお、この通話はサービス向上のため録音させていただいております。営業部は1を、技術部は2を、管理部は3を、物流センターは4を、人事部は5を、その他は6を押してください。
- 前置きにキャンペーンの案内がある(失敗4)。しかも、キャンペーンはすでに終わっている(失敗6)
- 選択肢が部署名になっている(失敗3)
- 選択肢が六つある(失敗1)
- 「その他」を押した先は、代表の電話が鳴り続けるだけ(失敗8)
見直し後
お電話ありがとうございます。〇〇でございます。サービス向上のため、通話を録音しています。製品のご購入やお見積もりは1を、ご購入済みの製品の使い方や修理は2を、配送やお届けについては3を、その他のご用件は0を押してください。
- 前置きを名乗りと録音の告知だけにした
- 選択肢を用件の言葉にし、四つにまとめた(人事部への電話は件数が少ないため「その他」に含めた)
- 0番は代表の窓口につなぎ、出られないときは代表のボイスメールにつなぐようにした
- 見直しの後、すべての選択肢を押して確かめ、案内の原稿を管理表に記録した
見直しの効果は、選択肢ごとの件数、途中で切られた電話、転送し直した電話の記録を、見直しの前後で比べて確かめます。記録だけでなく、電話を受けている担当者に「転送し直す電話は減ったか」「お客様の最初の一言は変わったか」を聞くと、数字に表れにくい変化もつかめます。
一か月で見直す計画の例
IVRの見直しは、一度にすべてを変えようとすると、テストが追いつかず、新しい失敗を生みがちです。一か月ほどかけて、段階的に進める計画の例を紹介します。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 一週目 | 社内の人にお客様のつもりで電話をかけてもらう。担当者に聞き取りをする。記録があれば確かめる。チェックリストで点検する |
| 二週目 | 出口と行き止まりを直す(0番の行き先、転送先が出ないときの行き先、何も押さないときの扱い)。直したらテストする |
| 三週目 | 古い案内と長い前置きを直す。原稿の管理表を作る。新しい案内を電話で聞いて確かめる |
| 四週目 | メニューの構造の見直し案を作る。担当者と一緒に選択肢の言葉を決める。変更する場合は、テスト表を用意してから切り替える |
| 翌月以降 | 見直しの前後で記録を比べる。月に一度の確認を続ける |
メニューの構造を大きく変えるときは、電話の少ない曜日や時間帯に切り替え、切り替えた直後にすべての選択肢を確認します。取引先など、いつもの番号を覚えて押している人がいる場合は、メニューが変わったことを事前に知らせておくと、混乱を減らせます。
見直しの後に起きやすい新しい失敗
見直しをした直後は、別の種類の失敗が起きやすい時期でもあります。
- 覚えている番号が変わる:常連のお客様が、以前の番号を押して違う窓口につながる。メニューを変えた直後は、最初の案内で「メニューが変わりました」と一言添える方法もあります。
- 転送先の設定漏れ:新しい選択肢を作ったのに、転送先が設定されていない。変更後のテスト表で、すべての選択肢を押して確かめます。
- 担当者が新しいメニューを知らない:お客様から「何番を押せばいいの」と聞かれても、担当者が答えられない。見直しの内容を、電話を受ける全員に共有します。
- 文書が古いまま:設定は変えたのに、引き継ぎの文書が前のまま。変更の手順の最後に、文書の更新を入れます。
業種別に起きやすい失敗
業種によって、起きやすい失敗には傾向があります。自社に近い業種の例を参考にしてください。
クリニック・歯科医院
起きやすいこと:診療の開始直後に電話が集中し、キューで長く待たせる。休診日の案内の更新を忘れる。
気をつけること:予約の変更など急ぎでない用件は、折り返しの依頼やボイスメールで受け付けます。症状の相談など急ぎの用件は、メニューで分けてスタッフにつなぎます。休診日の案内は、年間の予定にあわせて事前に登録しておきます。
通信販売・EC
起きやすいこと:ご注文、配送、返品、支払いなど、用件ごとに選択肢を増やしすぎる。注文番号の入力など、操作を多く求めすぎる。
気をつけること:件数の多い配送の問い合わせを最初の選択肢にし、ほかはまとめます。ホームページで確認できる情報(配送状況など)は、待ち時間の案内で伝えると、電話そのものを減らせることがあります。
BtoBの企業
起きやすいこと:メニューを部署名で作る。担当者を名前で呼び出したい取引先が、メニューを最後まで聞かなければならない。
気をつけること:担当者の名前がわかる人のための入口を、メニューの最初に置きます。名前で担当者を呼び出す仕組みは、ダイヤル・バイ・ネームとはで紹介しています。
小さな店舗・事務所
起きやすいこと:大企業のようなメニューをまねて、選択肢を増やしすぎる。電話に出られる人が限られているのに、キューで長く待たせる。
気をつけること:選択肢は二つか三つに絞り、出られないときはボイスメールや折り返しの依頼につなぎます。小さな会社での始め方は、小さな会社のIVRで紹介します。
自治体・公共サービス
起きやすいこと:担当課ごとの選択肢が多く、階層も深くなる。制度の名前で選択肢を作り、市民にはどれを選べばよいかわからない。
気をつけること:制度の名前ではなく、「引っ越しの手続き」「子どもの手当」など、生活の場面の言葉で選択肢を作ります。迷った人のための総合窓口を、0番で必ず用意します。
不動産の管理会社
起きやすいこと:入居者からの設備の故障の連絡と、入居希望者からの物件の問い合わせが、同じメニューで混ざる。夜間の急ぎの連絡が、時間外のボイスメールに埋もれる。
気をつけること:最初のメニューで「入居中の方」と「お部屋をお探しの方」を分けます。入居者の急ぎの連絡は、時間外も番号で切り分けて当番につなぎます。メッセージには物件名と部屋番号を話してもらうよう案内します。
修理・サービスの事業者
起きやすいこと:修理の受付、部品の注文、見積もりの依頼など、用件ごとに選択肢を作りすぎる。現場に出ている担当者に転送し、誰も出ずに呼び出し音が鳴り続ける。
気をつけること:急ぎの修理とそれ以外の二つに大きく分け、急ぎでない用件はボイスメールや折り返しの依頼で受け付けます。現場の担当者に転送する場合は、出られないときの行き先を必ず決めておきます。
見直しのチェックリスト
今のIVRを、次のチェックリストで点検してみましょう。当てはまらない項目が、直すべき場所です。
メニュー構造
- [ ] 最初のメニューの選択肢は五つ以内
- [ ] 件数の多い用件は、二回以内の選択でたどり着ける
- [ ] 選択肢は部署名ではなく、用件の言葉で書かれている
- [ ] 各階層で、前のメニューに戻る方法が案内されている
案内文と音声
- [ ] 最初の選択肢が聞こえるまでの前置きが短い
- [ ] 宣伝やキャンペーンが最初の案内に入っていない
- [ ] 速度はゆっくりめで、選択肢の間に間がある
- [ ] すべてのガイダンスの音量がそろっている
- [ ] 終わったお知らせや、古い情報が流れていない
出口と引き継ぎ
- [ ] どのメニューからでも、0番で人につながる(または用件を残せる)
- [ ] 何も押さないとき、範囲外の番号を押したときの行き先が決まっている
- [ ] 転送先が出ないときの行き先が決まっている
- [ ] 営業時間外にも、用件を残す方法がある
運用と改善
- [ ] 選択肢ごとの件数や、途中で切られた電話を、定期的に確かめている
- [ ] 案内の原稿を一か所で管理し、最終更新日と担当者を記録している
- [ ] 変更の後に、すべての選択肢を押して確かめている
- [ ] 設定を変えられる人が二人以上いる
AI-SNS.IO Callで見直す場合
AI-SNS.IO Callでは、IVRのメニューと着信のルーティング、営業時間に合わせた切り替え、キューごとのボイスメール、メニューからの折り返しの依頼、名前で担当者を呼び出すディレクトリなどを組み合わせて、ここで紹介した出口や行き止まりの対策を設定できます。日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。レポートや分析の機能で、電話の傾向を確認することもできます。設定の手順は使い方ガイドを、現在利用できる機能は機能一覧をご覧ください。
失敗を見つける三つの方法
自社のIVRにどの失敗が当てはまるかは、作った人には見えにくいものです。次の三つの方法で、外から見た姿を確認しましょう。
方法1:お客様になって電話をかける
社内の人に、よくある用件を一つずつ割り当て、お客様のつもりで電話をかけてもらいます。設計に関わっていない人が理想です。かけた後に、次の点を書き出してもらいます。
- 迷わずに正しい選択肢を選べたか。迷った場合は、どの選択肢で迷ったか
- 担当者や目的の案内にたどり着くまで、どれくらいかかったか
- 聞き取りにくい言葉や、意味がわからない言葉はなかったか
- 途中で「もう切りたい」と感じた瞬間はあったか
営業時間内だけでなく、営業時間外や休業日にもかけてもらうと、時間外の案内の失敗も見つけられます。
方法2:電話を受けている担当者に聞く
電話を受けている担当者は、お客様の不満を直接聞いています。次のような質問をしてみましょう。
- 「どの番号を押せばいいかわからなかった」と言われることはあるか
- 自分の担当ではない電話が、どの選択肢から来ることが多いか
- お客様に、同じ説明を繰り返してもらうことが多いのはどんなときか
- 最初の一言で、お客様が不満を口にすることはあるか
担当者の答えは、メニューの言葉や構造を見直す、具体的な手がかりになります。
方法3:記録を読む
使っている仕組みで記録が取れる場合は、選択肢ごとの件数、途中で切られた場所、0番や「その他」が選ばれた件数を確認します。件数の多い用件がメニューの後ろのほうにある、特定の案内の途中で切られる電話が多い、といった傾向は、記録からしか見えません。
三つの方法を組み合わせると、記録で「どこで」問題が起きているかがわかり、電話をかけてみることと担当者への聞き取りで「なぜ」起きているかがわかります。見つけた問題は、一覧にして、この記事の十の失敗のどれに当たるかを書き添えておきましょう。どの領域に問題が集まっているかがわかれば、前の章で紹介した優先順位に沿って、直す順番を決めやすくなります。直した後は、同じ三つの方法でもう一度確かめ、問題が解消したかどうかを一覧に書き込んでいきます。
よくある質問
IVRがあると、お客様は嫌がりませんか?
IVRそのものより、迷わせる設計や、人につながらない設計が嫌がられることが多いと考えられます。選択肢を絞り、用件の言葉で案内し、いつでも人につながる道を用意すれば、IVRは用件に合った担当者へ早くつなぐ手段になります。
0番で人につながるようにすると、IVRの意味がなくなりませんか?
人につながる道があることで、電話をかけた人は安心してメニューを聞けます。メニューがわかりやすければ、多くの人はメニューで用件を選びます。0番を選ぶ電話が多い場合は、メニューの選択肢が用件に合っていないサインと考え、見直しに生かしましょう。
選択肢はいくつまでが適切ですか?
最初のメニューは、多くても五つ程度が目安です。それ以上になる場合は、件数の少ない用件をまとめるか、二段目のメニューに分けます。ただし、階層を深くしすぎないよう、件数の多い用件は二回以内の選択でたどり着けるようにします。
選択肢の順番はどう決めればよいですか?
件数の多い用件から順に並べるのが基本です。電話の記録を見て、よく選ばれる選択肢を前に置きます。0番の「その他」は、最後に案内します。
録音の告知は必要ですか?
通話を録音している場合は、最初の案内で伝えるのが一般的です。長くならないよう、「サービス向上のため、通話を録音しています」のように一文にまとめます。
キャンペーンの案内を入れたいのですが。
最初の案内に入れると、すべての電話で前置きが長くなります。待ち時間の案内に入れるか、ホームページなど電話以外の手段で伝えることを検討しましょう。入れる場合は、終了日を決め、終わったら必ず外します。
記録が取れない場合、改善はできませんか?
できます。担当者に一定期間、間違った選択肢から来た電話や、「その他」から来た電話の用件をメモしてもらうだけでも、手がかりになります。社内の人にお客様のつもりで電話をかけてもらう方法も効果的です。
どれくらいの頻度で見直せばよいですか?
記録の確認は月に一度など、決まった時期に行うのがおすすめです。それに加えて、営業時間の変更、組織の変更、サービスの変更があったときは、その都度見直します。半年に一度は、すべての案内を通しで聞きましょう。
改善の効果はどう確かめればよいですか?
見直しの前後で、選択肢ごとの件数、途中で切られた電話、0番や「その他」が選ばれた件数、担当者が転送し直した電話を比べます。お客様からの「わかりにくい」という声が減ったかどうかも、担当者に聞いて確かめます。
IVRをやめて、すべて人が受けたほうがよいですか?
電話の量が少なく、用件の種類も少ない場合は、IVRがなくても困らないことがあります。電話の量が多い、担当が分かれている、時間外の電話を受けたい、といった場合は、IVRを見直して使い続けるほうが、お客様にとっても担当者にとっても負担が少なくなることが多いでしょう。
AIで電話に応答すれば、こうした失敗は起きませんか?
AIが自然な言葉で用件を聞き取る仕組みでも、人につながる道がない、うまくいかなかったときの行き先がない、案内の情報が古い、といった失敗は同じように起こりえます。聞き取りの誤りという、別の種類の失敗もあります。仕組みの違いは、IVRと音声AIエージェントの違いで整理しています。
まとめ
IVRでよくある失敗は、メニュー構造、案内文と音声、出口と引き継ぎ、運用と改善の四つの領域に分かれます。
- メニューは、選択肢を五つ以内に絞り、階層を浅くし、用件の言葉で書く
- 案内は、前置きを短くし、聞き取りやすくし、古い情報を残さない
- どのメニューからでも人につながる道を用意し、行き止まりをなくす
- 記録を定期的に見て、変更の後は必ずテストし、設定を二人以上で管理する
- 直す順番は、出口と行き止まり、古い案内と長い前置き、メニューの構造の順
まずは、社内の誰かにお客様のつもりで電話をかけてもらい、チェックリストで点検するところから始めてみてください。IVRのメニュー、営業時間のルール、ボイスメール、折り返しの依頼は、AI-SNS.IO Callで組み立てられます。アカウント登録から試してみましょう。IVRの基本はIVRとは、自動応答の全体像はAI電話受付とはをご覧ください。



