IVR音声ガイダンスの作り方|録音とTTS(音声合成)の使い分け
電話をかけたとき、最初に聞こえてくる声は、その会社の印象を大きく左右します。早口で聞き取れない案内、途中で音量が変わる案内、季節外れのお知らせが流れ続ける案内。どれも、電話をかけた人に「この窓口は大丈夫だろうか」という不安を抱かせます。
IVRの音声ガイダンスは、人の声を録音して作る方法と、TTS(テキスト読み上げ、音声合成)で文章から声を作る方法の二つに大きく分かれます。どちらにも長所と短所があり、案内の種類や更新の頻度によって向き不向きが変わります。
この記事では、IVRの音声ガイダンスを作成するときの考え方として、ガイダンスの役割、録音とTTSの比較、原稿の書き方、読み上げの速度と間の取り方、多言語の案内、更新の運用までを順に解説します。原稿の書き直しの例や、収録の前に確かめるチェックリストも紹介しますので、自社の案内を作るときや見直すときに役立ててください。
IVRの音声ガイダンスの役割
音声ガイダンスが担う四つの仕事
IVRの音声ガイダンスには、主に次の四つの仕事があります。
- 名乗る:電話をかけた人に、正しい相手につながったことを伝えます。
- 状況を伝える:営業時間外である、混み合っている、休業中である、といった今の状況を伝えます。
- 選択肢を示す:用件ごとに押す番号を伝え、電話をかけた人が自分で行き先を選べるようにします。
- 次に起きることを伝える:「担当者におつなぎします」「翌営業日にご連絡します」など、この後どうなるのかを伝えます。
どの仕事も、電話をかけた人が迷わずに次の行動を選べるようにするためのものです。案内が長すぎたり、言葉が難しかったりすると、この仕事を果たせなくなります。
ガイダンスは窓口の「顔」になる
電話をかけてくる人の多くは、窓口の担当者と話す前に、まずガイダンスを聞きます。ガイダンスが聞き取りやすく、行き先がわかりやすければ、担当者につながったときの会話もスムーズに始まります。反対に、ガイダンスで迷った人は、担当者につながった時点ですでにいらだっていることがあります。ガイダンスの改善は、担当者の対応のしやすさにもつながるのです。
画面と違って、聞き返せない
ウェブのページなら、読み飛ばした部分に戻って読み直せます。音声の案内は、流れていく言葉を一度で聞き取るしかありません。聞き逃せば、案内を最後まで聞いてから繰り返してもらうか、電話をかけ直すことになります。
このため、音声ガイダンスでは、文字で読む文章とは違う書き方が必要になります。一文を短くする、大事な言葉を文の最初に置く、似た音の言葉を並べない、といった工夫です。具体的な書き方は、後の章で詳しく紹介します。
ガイダンスの種類を洗い出す
IVRで使うガイダンスは、思ったより多くの種類があります。作り始める前に、必要なガイダンスを一覧にしておきましょう。
| 種類 | 流れる場面 | 更新の頻度 |
|---|---|---|
| あいさつ | 電話がつながった直後 | 低い |
| メインメニュー | あいさつの後 | 中程度(メニューの変更時) |
| サブメニュー | メニューで番号を選んだ後 | 中程度 |
| 待ち時間の案内 | キューで待っているとき | 中程度 |
| 時間外の案内 | 営業時間外 | 中程度(営業時間の変更時) |
| 休業日の案内 | 祝日、年末年始、臨時休業 | 高い |
| ボイスメールの案内 | メッセージを残してもらうとき | 低い |
| 折り返しの受付の案内 | コールバックを受け付けるとき | 低い |
| エラーの案内 | 入力がない、範囲外の番号が押されたとき | 低い |
| お知らせ | キャンペーン、障害の告知など | 高い |
更新の頻度は、録音で作るかTTSで作るかを判断するときの大切な手がかりになります。次の章で詳しく見ていきます。
録音とTTSの比較
録音の特徴
録音は、人がガイダンスの原稿を読み上げ、その声を録音して使う方法です。社内の人が読む場合と、プロのナレーターに依頼する場合があります。
長所
- 声の温かみや抑揚があり、聞く人に安心感を与えやすい
- 社名や固有名詞の読み方を、意図したとおりに伝えられる
- 会社の雰囲気に合った声を選べる
短所
- 内容を変えるたびに、録音し直す必要がある
- 同じ人に頼めないと、ガイダンスごとに声が変わってしまう
- 録音の環境によって、音量や音質がばらつく
- 外部に依頼する場合は、費用と日数がかかる
TTS(音声合成)の特徴
TTSは、文章を入力すると、仕組みが声を合成して読み上げる方法です。
長所
- 文章を書き換えるだけで、すぐに案内を変えられる
- すべてのガイダンスを同じ声で統一できる
- 日付や時刻など、変わる部分を差し替えやすい
- 収録の手配や録音の環境が要らない
短所
- 社名、人名、地名、専門用語などの読みを誤ることがある
- 抑揚や間の取り方が、人の声ほど自然でない場合がある
- 声の種類や品質は、使う仕組みによって差がある
TTSの読み間違いは、ひらがなで書き直す、言い換える、読みを指定できる機能があれば使う、などの方法で直せることがあります。使っている仕組みでどこまで調整できるかを確認しておきましょう。
TTSの読みを直す例
TTSで起きやすい読み間違いと、直し方の例です。実際にどう読まれるかは仕組みによって異なるため、直した後は必ず電話で聞いて確かめてください。
| 起きやすいこと | 例 | 直し方の例 |
|---|---|---|
| 社名の読み違い | 「〇〇工業」を別の読みで読む | 原稿の社名をひらがなやカタカナで書く |
| 数字の読み違い | 「1F」を「いちエフ」と読む | 「一階」と書く |
| 記号の読み上げ | 「〜」「/」を読まない、または記号の名前を読む | 「から」「または」と言葉で書く |
| 英字の略語 | 略語を一文字ずつ読む、または単語として読む | 読ませたい形をカタカナで書く |
| 時刻 | 「9:00」を想定外の読み方にする | 「九時」と書く |
| 電話番号 | 長い数字を一つの数として読む | 区切りごとに読点を入れる |
原稿を書くときから、記号や数字の表記をTTS向けにしておくと、直す手間が減ります。録音で作る場合でも、読み手が迷わない表記にしておくことは役立ちます。
比較表
| 観点 | 録音 | TTS |
|---|---|---|
| 声の自然さ | 高い | 仕組みによって差がある |
| 固有名詞の読み | 意図どおりに読める | 誤ることがあり、調整が必要 |
| 変更のしやすさ | 録音し直しが必要 | 文章を変えるだけ |
| 声の統一 | 同じ人に頼めないと崩れる | 統一しやすい |
| 変更にかかる時間 | 収録の手配しだい | すぐに反映しやすい |
| 向いている案内 | あいさつ、ブランドを伝える案内 | お知らせ、休業日、頻繁に変わる案内 |
判断の軸は「更新の頻度」と「印象の大切さ」
録音とTTSのどちらを選ぶかは、ガイダンスごとに二つの軸で考えると整理しやすくなります。
- 更新の頻度:頻繁に内容が変わる案内ほど、TTSが向いています。年に何度も録音し直すのは負担が大きく、録音し直しが間に合わずに古い案内が流れ続ける原因にもなります。
- 印象の大切さ:電話をかけた人が最初に聞くあいさつなど、会社の印象を左右する案内ほど、録音の温かみが生きます。

声の選び方
録音でもTTSでも、どんな声を使うかを決める必要があります。声を選ぶときは、次の観点で考えます。
- 聞き取りやすさ:電話の音質では、こもりやすい声や、息の多い声は聞き取りにくくなることがあります。実際の電話で聞いて比べましょう。
- 会社や窓口の雰囲気:落ち着いた声が合う窓口もあれば、明るい声が合う窓口もあります。窓口に電話をかけてくる人が、どんな気持ちでかけてくるかを想像して選びます。たとえば、故障や困りごとの窓口では、落ち着いた声のほうが安心感を与えやすいでしょう。
- すべてのガイダンスで統一できるか:あいさつとメニューで声が変わらないよう、全体で同じ声を使えるかを確認します。
候補の声で同じ原稿を作り、何人かで聞き比べて決めると、好みの偏りを減らせます。
組み合わせて使う
すべてのガイダンスを一つの方法で作る必要はありません。たとえば、あいさつは録音で作り、休業日の案内やお知らせはTTSで作る、という組み合わせがよく使われます。
ただし、録音とTTSを組み合わせると、ガイダンスが切り替わるたびに声が変わることになります。あいさつの直後にメニューの案内が別の声で流れると、聞く人は違和感を覚えるかもしれません。声が変わる場所を、案内の区切り(たとえば、あいさつとメニューの間ではなく、メニューと待ち時間の案内の間)に置くと、違和感を減らせます。
社内の人が録音する場合の注意
外部に依頼せず、社内の人が録音する方法もあります。手軽ですが、次の点に気をつけましょう。
- 録音の環境:静かな部屋で、エアコンや空調の音が入らないようにします。机をたたく音や紙をめくる音も入りやすいので注意します。
- 同じ人が続けて録る:後から追加の録音が必要になったとき、同じ人に頼めるとは限りません。異動や退職で声が変わることを考えると、頻繁に変わる案内はTTSにしておくほうが安心です。
- 本人の同意:社員の声を会社の案内に使うことについて、本人の同意を得ておきます。退職後に使い続けるかどうかも、あらかじめ決めておきましょう。
- 音量をそろえる:ガイダンスごとに音量が違うと、聞く人が受話器の音量を調整し直すことになります。
社内で録音する日の進め方
社内の人が録音する場合は、次の順で進めると、やり直しを減らせます。
- 原稿を印刷して、読み方を書き込む:区切る場所、間を置く場所、読み方に迷う言葉にふりがなを書き込みます。
- 静かな部屋と時間を確保する:人の出入りや電話の呼び出し音が入らない時間帯を選びます。
- 試しに一つ録って、電話で聞く:最初のガイダンスを録ったら、実際の電話で聞いて、音量、速度、こもり具合を確認します。ここで問題を見つけておけば、残りを録り直さずに済みます。
- ガイダンスごとに数回ずつ録る:言い間違いや雑音に備えて、同じガイダンスを何度か録り、いちばん良いものを選びます。
- ファイルに名前をつけて保存する:「あいさつ」「時間外」など、管理表と同じ名前をつけ、録音した日付も入れておきます。
- すべてを続けて聞く:最後に、全部のガイダンスを電話の流れの順に聞き、声の調子や音量が揃っているかを確認します。
原稿の書き方
録音でもTTSでも、ガイダンスの質を最も左右するのは原稿です。耳で聞いてわかる原稿を書くためのルールを紹介します。
ルール1:一文を短くする
耳で聞く文章は、一文が長いと、文の終わりまでに最初の部分を忘れてしまいます。一文には一つの情報だけを入れるつもりで書きましょう。
書き直し前
本日は弊社にお電話いただき誠にありがとうございますが、ただいまの時間は営業時間外となっておりますので、恐れ入りますが平日の午前九時から午後六時までの営業時間内に改めておかけ直しくださいますようお願い申し上げます。
書き直し後
お電話ありがとうございます。〇〇でございます。本日の受付は終了いたしました。受付時間は、平日の九時から十八時までです。
情報の量は変えずに、文を区切って並べ直すだけで、聞き取りやすさは大きく変わります。
ルール2:用件を先に、番号を後に
メニューの案内では、「1を押すと予約」ではなく「ご予約の方は1を」と、用件を先に言います。聞く人は自分の用件を探しながら聞いているため、用件が先に聞こえれば、その後の番号に集中できます。
ルール3:お客様の言葉を使う
社内の部署名や専門用語は、電話をかけた人にはわかりにくいことがあります。「カスタマーサクセス部」ではなく「ご契約中のサービスの使い方」、「債権管理」ではなく「お支払いについて」のように、電話をかけた人が自分の用件として思い浮かべる言葉に置き換えます。
ルール4:似た音の言葉を並べない
耳で聞くと、似た音の言葉は区別しにくくなります。たとえば「ご契約」と「ご解約」、「一時」と「七時」は、電話の音質では聞き間違えやすい組み合わせです。言い換えたり、間に別の言葉をはさんだりして、区別しやすくします。時刻は「十九時」のように二十四時間の表記で読むか、「午後七時」のように午前・午後をつけると、聞き間違いを減らせます。
ルール5:敬語を重ねすぎない
丁寧にしようとして敬語を重ねると、文が長くなり、意味がつかみにくくなります。「おかけ直しくださいますようお願い申し上げます」は「おかけ直しください」で十分に丁寧です。
ルール6:選択肢は多くても五つまで
メニューの選択肢が多いと、最後の選択肢を聞くころには最初の選択肢を忘れてしまいます。選択肢は多くても五つ程度に抑え、それ以上になる場合は、サブメニューに分けます。メニューの構造の考え方はIVRメニュー設計のコツで解説しています。
ルール7:数字と日付は区切って、言い方をそろえる
電話番号、日付、時刻は、聞き間違いが起きやすい情報です。電話番号は区切りごとに間をあけて読み、日付は「十二月二十九日から一月三日まで」のように、始まりと終わりをはっきり言います。同じ案内の中では、「九時」「午前九時」「九時ちょうど」のように言い方が混ざらないよう、そろえておきます。
ルール8:最後に「次に何が起きるか」を言う
案内の最後には、この後どうなるのかを伝えます。「担当者におつなぎします」「発信音の後にお話しください」「翌営業日にご連絡いたします」。次に何が起きるかがわかれば、聞く人は安心して待てます。
原稿のテンプレート
ガイダンスの原稿は、次の型に当てはめると書きやすくなります。
| 部分 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 名乗り | 会社名・窓口名 | お電話ありがとうございます。〇〇サポート窓口です。 |
| 状況 | 今の状況 | ただいま電話が混み合っております。 |
| 選択肢 | 用件と番号 | ご注文については1を、使い方については2を押してください。 |
| 次に起きること | この後の流れ | 担当者に順番におつなぎします。 |
| 戻り方 | 聞き直し・やり直し | もう一度お聞きになる場合は9を押してください。 |
すべての部分が必要なわけではありません。あいさつだけの案内なら名乗りと選択肢、時間外の案内なら名乗りと状況と次に起きること、のように、場面に合わせて組み合わせます。
録音していることを伝える案内
通話を録音している場合は、最初のあいさつの中で伝えるのが一般的です。告知を長くすると、あいさつ全体が長くなるため、一文にまとめます。
サービス向上のため、通話を録音しています。
録音の目的を一言添えると、電話をかけた人は理由を理解したうえで話せます。録音の扱いについての詳しい説明は、ホームページなどに載せ、電話の案内では要点だけを伝えます。
AIの音声応答との違い
最近は、音声AIが電話に応答する仕組みも増えています。AIの音声応答では、話す内容がその場で作られるため、決まった原稿を読み上げるガイダンスとは考え方が違います。それでも、名乗りや、自動の応答であることを伝える最初のひと言、聞き取れなかったときの案内など、決まった言葉で伝える部分は残ります。ここで紹介した原稿のルールは、そうした部分にもそのまま使えます。仕組みの違いは、IVRと音声AIエージェントの違いで整理しています。
読み上げ速度と間
速度の目安は「ゆっくりめ」
電話の音声は、対面で話すときより聞き取りにくくなります。音の帯域が限られていること、周囲の雑音、受話器を耳から離していることなど、聞く側の条件はさまざまです。ガイダンスは、ふだん話すより少しゆっくりめに読むのが基本です。
ただし、遅すぎると案内全体が長くなり、聞く人がいらだちます。実際に電話を通して聞き、速すぎず遅すぎない速度を探しましょう。録音の場合は読み手に、TTSの場合は速度の設定で調整します。
間を置く場所
聞き取りやすさは、速度だけでなく、間の置き方でも変わります。次の場所で、少し間を置くと効果的です。
- 名乗りの後:電話がつながったことを相手が理解する時間をつくります。
- 選択肢と選択肢の間:「ご予約の方は1を。(間)営業時間のご案内は2を。」と区切ると、選択肢の区別がつきやすくなります。
- 大事な情報の前:電話番号や日付の前に少し間を置くと、聞く人が集中できます。
- 案内の最後:番号を押すまでの時間を確保します。
TTSでは、句読点の位置で間が変わることがあります。読点を加えたり、文を分けたりして、間を調整してみましょう。
音量と音質をそろえる
ガイダンスごとに音量が違うと、聞く人は受話器の音量を調整し直すことになります。特に、録音とTTSを組み合わせる場合や、複数回に分けて録音した場合は、音量の差が出やすくなります。すべてのガイダンスを続けて聞き、音量がそろっているかを確認しましょう。
保留中や待ち時間に音楽を流す場合は、音楽と案内の音量の差にも注意します。音楽が大きすぎると、案内の声が聞き取りにくくなります。
実際の電話で聞いて確かめる
パソコンのスピーカーやヘッドホンで聞いたときと、電話を通して聞いたときでは、聞こえ方が大きく違います。音の高い部分や低い部分が削られ、声がこもったり、子音が聞き取りにくくなったりします。ガイダンスを作ったら、必ず実際に電話をかけて、携帯電話と固定電話の両方で聞いて確かめましょう。
多言語の案内
多言語の案内が必要かを確認する
外国語を話す人からの電話が多い場合は、多言語の案内を検討します。ただし、案内を多言語にしても、その先の対応が日本語だけでは、電話をかけた人は結局困ってしまいます。案内を多言語にする前に、次の点を確認しましょう。
- 外国語を話す人からの電話は、どのくらいあるか。どの言語が多いか
- 案内の先で、その言語で対応できる担当者はいるか
- 対応できない場合、ボイスメールや、ウェブの問い合わせ窓口など、ほかの手段を案内できるか
言語の選び方の案内
多言語の案内では、最初に言語を選んでもらうのが一般的です。言語の選択肢は、それぞれの言語で案内します。
お電話ありがとうございます。〇〇でございます。日本語の案内は、このままお待ちください。For English, please press 8.
日本語の案内を待っている人には、そのまま日本語の案内が流れるようにすると、日本語の利用者の負担が増えません。言語の選択肢は、対応できる言語だけに絞ります。
翻訳の注意点
案内の原稿を翻訳するときは、機械的に直訳するのではなく、その言語で自然な案内になっているかを、その言語を話せる人に確かめてもらいましょう。社名やサービス名の読み方、番号の押し方の言い回しは、言語によって慣習が違います。TTSで多言語の案内を作る場合も、その言語での読み上げが自然かを、話せる人に聞いてもらうと安心です。
多言語の案内を作る手順
- 外国語の電話の記録を取り、多い言語と用件を確認する
- その言語で対応できる担当者や手段を決める
- 日本語の原稿を短く整えてから翻訳する(長い原稿を翻訳すると、翻訳後も長くなる)
- その言語を話せる人に、翻訳と読み上げを確認してもらう
- 言語ごとの原稿を管理表に加え、日本語の案内を変えたときに一緒に変える
最後の手順は忘れられやすい点です。日本語の案内だけ営業時間を変えて、外国語の案内が古いまま、ということがないようにしましょう。
対応できない言語への配慮
対応できない言語の人からの電話には、少なくとも、ウェブの問い合わせ窓口やメールなど、別の手段を案内できるようにしておくとよいでしょう。案内の中で、対応できる言語を正直に伝えることも大切です。
更新の運用
音声ガイダンスは、一度作ったら終わりではありません。営業時間の変更、休業日、メニューの変更、お知らせなど、内容を変える場面は一年の中で何度も訪れます。更新の運用を決めておかないと、古い案内が流れ続ける原因になります。
原稿を一か所で管理する
すべてのガイダンスの原稿を、一つの表で管理します。
| ガイダンス | 原稿 | 作り方 | 最終更新日 | 担当 | 次の見直し |
|---|---|---|---|---|---|
| あいさつ | お電話ありがとうございます。〇〇でございます。 | 録音 | 〇年〇月〇日 | 総務 佐藤 | メニュー変更時 |
| 時間外の案内 | 本日の受付は終了いたしました。… | TTS | 〇年〇月〇日 | 総務 佐藤 | 営業時間変更時 |
| 年末年始の案内 | 十二月二十九日から一月三日まで… | TTS | 〇年〇月〇日 | 総務 鈴木 | 毎年十一月 |
| お知らせ | ただいま〇〇の受付を… | TTS | 〇年〇月〇日 | 営業 田中 | 期間終了日 |
原稿を表にしておけば、今流れている案内の内容を、電話をかけなくても確かめられます。担当者が異動しても、表を引き継げば、どの案内をいつ誰が変えたのかがわかります。表には、ガイダンスがどの場面で流れるか(メニューの何番の後か、営業時間外か)も書いておくと、変更の影響が及ぶ範囲を確認しやすくなります。新しい案内を加えたときも、まず表に一行足してから作り始める習慣にすると、管理の漏れを防げます。録音で作ったガイダンスも、原稿を残しておくと、録音し直すときに役立ちます。
期限のある案内には終了日を決める
お知らせ、キャンペーン、障害の告知、休業日の案内など、期限のある案内は、作るときに必ず終了日を決めます。終了日を過ぎても流れ続ける案内は、電話をかけた人を混乱させ、会社への信頼を損ないます。終了日を予定表に入れ、その日に案内を外したことを確認する手順にしておきましょう。
変更の手順を決める
ガイダンスを変更するときの手順を決めておきます。
- 原稿を書く:管理表の原稿を書き換えます。
- 読み合わせる:別の人に原稿を声に出して読んでもらい、わかりにくい点がないかを確認します。
- 作る:録音するか、TTSで作ります。
- 電話で聞く:実際に電話をかけて、新しい案内が流れること、音量や速度に問題がないことを確認します。
- 記録する:管理表の最終更新日と担当を更新します。
特に4の「電話で聞く」は省略されがちですが、設定のミスや音質の問題は、実際に聞かないと気づけません。
急ぎの差し替えに備える
障害や悪天候による臨時休業など、急に案内を変えなければならない場面があります。そのときに慌てないよう、次の準備をしておきましょう。
- 臨時休業、障害のお知らせなど、急ぎで使う案内のひな形を、原稿の管理表に用意しておく
- 案内を差し替えられる人を二人以上決め、手順を書き残しておく
- 差し替えた後に電話で確認する人と、元に戻す日時を決める
ひな形があれば、日付や状況を書き換えるだけで、TTSならすぐに案内を変えられます。
定期的に通しで聞く
半年に一度など、決まった時期に、すべてのガイダンスを通しで聞く時間をつくります。メニューの選択肢をすべて選び、時間外や休業日の案内も聞きます。通しで聞くと、次のような問題に気づけます。
- 終わったはずのお知らせが流れている
- 部署名や担当の窓口が、今の組織と合っていない
- ガイダンスごとに声や音量が違う
- 案内が長くなりすぎている
AI-SNS.IO Callで案内を組み立てる場合
AI-SNS.IO Callでは、IVRのメニューと着信のルーティング、営業時間に合わせた切り替え、キューごとのボイスメール、メニューからの折り返しの依頼などを組み合わせて、ガイダンスが流れる場面を設計できます。日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。案内の音声の作り方を含め、設定の手順は使い方ガイドとドキュメントで確認してください。

収録・作成の前のチェックリスト
ガイダンスを作る前に、次の点を確認しましょう。
原稿
- [ ] 一文は短く、一つの情報だけを入れている
- [ ] メニューは用件を先に、番号を後に言っている
- [ ] 社内の部署名や専門用語を、お客様の言葉に置き換えている
- [ ] 似た音の言葉を並べていない
- [ ] 数字、日付、時刻の言い方がそろっている
- [ ] 最後に、次に何が起きるかを伝えている
- [ ] 期限のある案内に、終了日が決まっている
声と音
- [ ] 録音かTTSかを、更新の頻度と印象の大切さで選んだ
- [ ] 社名や固有名詞の読みを確認した
- [ ] 速度はふだんより少しゆっくりめにした
- [ ] 選択肢の間や大事な情報の前に、間を置いた
- [ ] すべてのガイダンスの音量をそろえた
確認
- [ ] 実際の電話で、携帯電話と固定電話の両方で聞いた
- [ ] 原稿を管理表に記録した
場面別の原稿例
ここまでのルールを使って、場面ごとの原稿の例を紹介します。自社の名前や時間、番号に書き換えて使ってください。
あいさつとメインメニュー
お電話ありがとうございます。〇〇株式会社でございます。新しくご注文をお考えの方は1を。ご注文済みの商品については2を。お支払いやご請求については3を。その他のご用件は0を押してください。
あいさつとメニューを分けて作っておくと、メニューだけを変えたいときに、あいさつを作り直さずに済みます。同じように、メニューの選択肢も一つずつ別のファイルや文章に分けておけば、選択肢を一つ追加するときに、全体を作り直さずに済む場合があります。
待ち時間の案内
ただいま電話が混み合っております。順番におつなぎしておりますので、このままお待ちください。
お待たせしております。折り返しをご希望の場合は1を押してください。担当者からお電話いたします。
待ち時間の案内は繰り返し流れるため、二種類以上を用意して交互に流すと、同じ言葉を何度も聞かされる感覚を和らげられます。
待ち時間の案内を組み立てる
キューで待っている間の案内は、時間の経過に合わせて内容を変えると、待っている人の不安を和らげられます。
| 待っている時間 | 流す内容 |
|---|---|
| 待ち始め | 順番におつなぎしていること |
| しばらく待った後 | ホームページのよくある質問など、ほかの手段の案内 |
| さらに待った後 | 折り返しの依頼の案内 |
同じ内容を短い間隔で繰り返すより、段階的に内容を変えるほうが、「放っておかれている」という感覚を減らせます。各段階に切り替える時間は、自社の待ち時間の傾向を見て決めます。
時間外の案内
お電話ありがとうございます。〇〇株式会社でございます。本日の受付は終了いたしました。受付時間は、平日の九時から十八時までです。ご用件のある方は、発信音の後に、お名前、ご連絡先、ご用件をお話しください。翌営業日にご連絡いたします。
休業日の案内
お電話ありがとうございます。〇〇株式会社でございます。誠に勝手ながら、十二月二十九日から一月三日まで、年末年始の休業をいただいております。一月四日の九時から受付を再開いたします。
休業日の案内は日付が入るため、TTSで作ると毎年の更新が楽になります。
入力がなかったとき、範囲外の番号が押されたとき
恐れ入ります。番号が確認できませんでした。もう一度メニューをご案内します。
恐れ入ります。担当の窓口におつなぎします。
入力がなかったときの案内は一回までにし、二回目は代表の窓口やボイスメールにつなぐと、電話をかけた人が同じ案内の繰り返しから抜け出せなくなるのを防げます。
障害や緊急のお知らせ
お電話ありがとうございます。〇〇でございます。現在、〇〇のサービスがご利用しにくい状態となっております。復旧の状況は、当社ホームページでお知らせしております。ご不便をおかけし、申し訳ございません。
障害のお知らせは、状況が変わるたびに内容を変える必要があります。お知らせの後には、通常のメニューに進めるようにして、障害と関係のない用件の人を待たせないようにします。TTSで作り、復旧したらすぐに外す担当者を決めておきます。復旧の見込みが不確かなときは、時刻を約束しない言い方にします。
外部に録音を依頼するとき
あいさつなど、会社の印象を大切にしたいガイダンスは、プロのナレーターに録音を依頼する方法もあります。依頼するときは、次の準備をしておくと、やり直しを減らせます。
依頼の前に用意するもの
- 確定した原稿:社内の確認を終えた最終版を渡します。録音の後で原稿を変えると、録音し直しになります。
- 読み方の指定:社名、商品名、人名、地名など、読み方を間違えやすい言葉に、ふりがなを振ります。アクセントが気になる言葉は、例を示します。
- 声の雰囲気の希望:落ち着いた声、明るい声など、会社の雰囲気に合う声の希望を伝えます。
- ファイルの形式:使っている電話の仕組みで使えるファイルの形式や、長さの上限を確認して伝えます。
- ファイルの分け方:あいさつ、メニュー、時間外など、ガイダンスごとにファイルを分けてもらうと、後から一部だけ差し替えやすくなります。
追加の録音に備える
後からメニューを一つ追加したいときなどに、同じ声で録音してもらえるかを、依頼のときに確かめておきます。同じ人に頼めない場合に備えて、変わりやすい部分はTTSで作る、という分担もあらかじめ考えておきましょう。
権利の確認
※ここでの説明は一般的な注意点であり、法的助言ではありません。契約の内容は、依頼先との取り決めや専門家の助言で確認してください。
録音した音声を、どの範囲で、どれくらいの期間使えるかを、依頼先との取り決めで確認しておきます。電話の案内以外(動画など)にも使いたい場合は、その旨も伝えておきます。
案内を短くする練習
ガイダンスは、書いた直後がいちばん長くなりがちです。三つの例で、案内を短くする手順を見てみましょう。
例1:あいさつ
書き直し前
お電話いただき誠にありがとうございます。こちらは株式会社〇〇、お客様サポートセンターでございます。より良いサービスのため、この通話は録音させていただいております。あらかじめご了承ください。
書き直し後
お電話ありがとうございます。〇〇サポートセンターです。サービス向上のため、通話を録音しています。
社名の「株式会社」を省く、録音の告知を一文にまとめる、という二つの工夫で、伝える内容を変えずに短くしています。
例2:メニュー
書き直し前
製品の購入をご検討中のお客様で、資料の請求やお見積もりのご依頼、または購入前のご相談をご希望の方は、1を押してください。
書き直し後
ご購入前のご相談は1を。
「資料の請求」「お見積もり」などの細かな用件は、1を押した後のサブメニューや、担当者との会話で扱えば十分です。メニューの一つひとつは、用件の大きな分類だけを伝えます。
例3:待ち時間の案内
書き直し前
大変申し訳ございませんが、ただいま電話が大変混み合っており、つながりにくい状況となっております。恐れ入りますが、このまましばらくお待ちいただくか、時間をおいておかけ直しくださいますよう、お願い申し上げます。
書き直し後
ただいま混み合っています。このままお待ちいただくか、折り返しをご希望の場合は1を押してください。
「おかけ直しください」を「折り返しの依頼」に変えると、電話をかけた人の負担も減らせます。
短くするときの手順は、次の三つです。
- 原稿を声に出して読み、時間を計る
- 「なくても意味が通じる言葉」に線を引いて削る
- 削った後の原稿をもう一度読み、伝えるべきことが残っているかを確認する
業種別のあいさつの例
あいさつは、会社の印象を決める最初の言葉です。業種ごとの例を紹介します。
クリニック
お電話ありがとうございます。〇〇クリニックです。ご予約の方は1を、それ以外のご用件は2を押してください。
飲食店
お電話ありがとうございます。〇〇でございます。ご予約は1を、営業時間や場所のご案内は2を押してください。
BtoBの企業
お電話ありがとうございます。〇〇株式会社でございます。担当者のお名前がわかる方は1を、製品のお問い合わせは2を、その他のご用件は0を押してください。
士業の事務所
お電話ありがとうございます。〇〇事務所です。ご相談のお申し込みは1を、ご依頼中の方は2を押してください。
業種にかかわらず、名乗りは短く、最初の選択肢は最も多い用件にする、という点は共通しています。
聞き手の立場で見直す
ガイダンスを作った人は、案内の内容をすでに知っているため、わかりにくさに気づきにくいものです。最後に、聞き手の立場で見直す方法を紹介します。
初めて聞く人に聞いてもらう
設計に関わっていない人に、用件を一つ伝えて、実際に電話をかけてもらいます。「請求書の再発行を頼みたい」という用件で電話をかけてもらい、迷わずに正しい番号を選べたか、どこで迷ったかを聞きます。迷った場所が、原稿を見直すべき場所です。
用件ごとに時間を計る
電話がつながってから、目的の窓口や担当者にたどり着くまでの時間を、用件ごとに計ってみます。特定の用件だけ時間がかかっている場合は、その用件の選択肢がメニューの後ろのほうにある、サブメニューが深い、案内が長い、といった原因が考えられます。
聞き取りにくい条件で聞く
静かな部屋だけでなく、屋外や電車の中など、周囲が騒がしい場所でも聞いてみます。騒がしい場所で聞き取れない言葉があれば、言い換えや、速度、音量の見直しを検討します。
年齢や立場の違う人に聞いてもらう
案内のわかりやすさは、聞く人によって変わります。年配の方、電話の自動案内に慣れていない方、外国語を母語とする方など、自社の電話をかけてくる人に近い立場の人に聞いてもらうと、作った人が気づかなかった問題が見つかります。案内の改善の進め方は、IVRでよくある失敗でも紹介します。
よくある質問
録音とTTS、どちらを選べばよいですか?
ガイダンスごとに、更新の頻度と印象の大切さで選びます。あいさつなど印象を大切にしたい案内は録音、休業日やお知らせなど頻繁に変わる案内はTTS、という組み合わせがよく使われます。
TTSの声は機械的に聞こえませんか?
音声合成の技術は進んでおり、自然に聞こえる声も増えています。ただし、品質は使う仕組みによって差があります。実際の電話で聞いて、自社の案内に合うかを確かめてから決めましょう。
TTSが社名を読み間違えます。どうすればよいですか?
ひらがなで書き直す、言い換える、読みを指定できる機能があれば使う、といった方法で直せることがあります。直したら、必ず実際の電話で聞いて確かめます。
社員の声で録音してもよいですか?
できます。ただし、本人の同意を得ること、退職後に使い続けるかを決めておくこと、静かな環境で録音することに注意しましょう。後から追加の録音が必要になったときに同じ人に頼めないこともあるため、変わりやすい案内はTTSにしておくと安心です。
案内はどれくらいの長さにすべきですか?
一つのガイダンスは、伝えるべき情報を伝えられる範囲で、できるだけ短くします。特に最初のあいさつとメニューは、聞く人が最も急いでいる部分です。実際に電話で聞き、長いと感じたら言葉を削りましょう。
保留中の音楽は必要ですか?
無音が続くと、電話が切れたのではないかと不安になる人がいます。音楽か、待ち時間の案内を流すとよいでしょう。音楽を流す場合は、案内の声との音量の差に注意し、使う音楽の権利も確かめておきます。
多言語の案内を入れるべきですか?
外国語を話す人からの電話が多く、その先で対応できる担当者や手段がある場合に検討します。案内だけを多言語にしても、その先の対応が日本語だけでは、電話をかけた人は困ってしまいます。
ガイダンスはどれくらいの頻度で見直すべきですか?
内容を変えたときに加えて、半年に一度など決まった時期に、すべてのガイダンスを通しで聞くことをおすすめします。終わったお知らせが流れていないか、組織の変更が反映されているかを確かめます。
原稿は誰が書けばよいですか?
電話の用件をよく知っている人が書き、別の人が読み合わせて確かめる形がおすすめです。電話を受けている担当者は、お客様がよく使う言葉を知っているため、原稿づくりに加わってもらうと、わかりやすい言葉を選びやすくなります。
録音のファイルはどう管理すればよいですか?
ガイダンスごとにファイルを分け、原稿の管理表と対応させて保管します。どのファイルが今使われているかを管理表に記録しておくと、差し替えのときに迷いません。
まとめ
IVRの音声ガイダンスは、電話をかけた人が迷わずに次の行動を選べるようにするためのものです。
- ガイダンスの種類を洗い出し、更新の頻度と印象の大切さで、録音とTTSを選び分ける
- 原稿は、一文を短く、用件を先に、お客様の言葉で書き、最後に次に何が起きるかを伝える
- 速度はゆっくりめに、選択肢の間や大事な情報の前に間を置き、音量をそろえる
- 多言語の案内は、その先で対応できるかを確認してから検討する
- 原稿を一か所で管理し、期限のある案内には終了日を決め、定期的に通しで聞く
まずは、今流れているすべてのガイダンスを通しで聞き、原稿を書き出すところから始めてみてください。IVRのメニュー、営業時間のルール、ボイスメール、折り返しの依頼は、AI-SNS.IO Callで組み立てられます。アカウント登録から試してみましょう。IVRの基本はIVRとは、小さな会社での始め方は小さな会社のIVR、自動応答の全体像はAI電話受付とはをご覧ください。



