小さな会社こそIVRを使うべき理由|最小構成の作り方
「IVRは、コールセンターがある大きな会社のもの」。そう考えている小さな会社の経営者は少なくありません。番号を押して担当を選ぶ自動音声の案内は、大企業の代表番号で聞くことが多いため、数人の会社には大げさに思えるかもしれません。
しかし実際には、電話に出られる人が限られている小さな会社ほど、IVRの恩恵を受けやすい面があります。作業中や接客中で電話に出られない、営業時間外の電話を取りこぼしている、取引先の電話と売り込みの電話が区別できない。こうした悩みの多くは、選択肢を二つか三つだけ用意した、ごく小さなIVRで和らげられます。
この記事では、小規模な会社がIVRを導入するときの考え方として、小さな会社の電話の悩み、IVRが役立つ場面、最小構成の例、営業時間のルールとの組み合わせ、スタッフの受け方の決め方、構成を広げるタイミングを、具体的な案内の例とともに紹介します。
小さな会社の電話の悩み
電話に出る人が「本来の仕事」を中断している
数人の会社では、電話を受けるための専任の担当者がいないことがほとんどです。電話が鳴れば、手の空いている人、あるいは電話のいちばん近くにいる人が出ます。そのたびに、見積もりの作成、現場の作業、お客様の接客といった本来の仕事が中断されます。
中断されるのは、電話に出ている時間だけではありません。用件を聞いて担当者に伝え、担当者が不在ならメモを残し、元の仕事に戻って集中し直す。一本の電話が、思った以上に時間を使っています。
誰からの、何の電話かが出るまでわからない
電話に出るまで、相手が取引先なのか、お客様なのか、売り込みの電話なのかはわかりません。急ぎの用件だと思って作業を止めて出たら、営業の電話だった、ということも少なくありません。
出られなかった電話の用件がわからない
全員が手を離せないとき、電話は鳴り続けて切れるか、留守番電話に切り替わります。着信の履歴は残っても、何の用件だったのか、急ぎだったのかはわかりません。折り返しても相手が出ず、すれ違いが続くこともあります。出られなかった電話の影響は、不在着信がもたらす損失でも整理しています。
営業時間外の電話の扱いが決まっていない
営業時間外の電話は、鳴りっぱなしになるか、代表者の携帯電話に転送されるか、のどちらかになりがちです。前者では用件が残らず、後者では代表者が休日も電話に追われます。
悩みを書き出してみる
自社の電話の悩みを、次の表に当てはめてみましょう。
| 悩み | 当てはまるか | 困っている場面の例 |
|---|---|---|
| 電話のたびに作業が中断される | 現場作業中、接客中、見積もり作成中 | |
| 出るまで相手がわからない | 営業の電話に時間を取られる | |
| 出られなかった電話の用件がわからない | 折り返しのすれ違い | |
| 営業時間外の扱いが決まっていない | 休日に代表者の携帯が鳴る | |
| 担当者への取り次ぎに手間がかかる | 担当者が外出中で伝言が増える |
当てはまる悩みが二つ以上あれば、小さなIVRを検討する価値があります。
IVRが役立つ場面
場面1:電話に出る前に、用件がわかる
最初の案内で「ご注文やお見積もりは1を、ご注文済みの件は2を」と選んでもらうだけで、電話に出る人は、どの用件の電話かを知ったうえで受けられます。担当者が決まっている用件なら、最初からその人の電話を鳴らすこともできます。たとえば、経理の担当者が一人だけの会社なら、「お支払いや請求書について」の選択肢を、その担当者の電話に直接つなげば、ほかの社員が取り次ぐ必要がなくなります。
場面2:出られないときに、用件を残してもらえる
選択肢の先で誰も出られないときは、留守番電話(ボイスメール)にメッセージを残してもらいます。「お名前、ご連絡先、ご用件をお話しください」と案内しておけば、折り返す前に用件がわかり、すれ違いも減らせます。折り返しの電話で「先ほどは〇〇の件でお電話をいただきありがとうございました」と切り出せるため、相手も話が早く進むことを喜んでくれるはずです。
場面3:営業時間外の電話を整理できる
営業時間外には、受付時間を案内し、メッセージを残してもらう流れに自動で切り替えます。代表者の携帯電話に転送するのは、急ぎの用件だけに絞れます。夜や休日に鳴る電話が減れば、代表者もきちんと休めます。休んだ分、営業時間内の電話に落ち着いて対応できるようになります。
場面4:売り込みの電話と分けられる
お客様や取引先の用件の選択肢を明確にしておくと、それ以外の電話は「その他」に集まります。「その他」の電話は留守番電話で受けて、手が空いたときに確かめる、という扱いにすれば、作業を止めて出る電話を減らせます。後で詳しく紹介するように、「その他」の中にもお客様の大切な電話が混ざることがあるため、確認は欠かさないようにします。
場面5:会社の窓口として整った印象を与える
最初に会社名を名乗る案内が流れ、用件ごとに案内される電話は、かけた人に「きちんとした窓口がある」という印象を与えます。ただし、選択肢を増やしすぎると逆効果になるため、次の章で紹介する最小構成から始めることが大切です。名乗りの声と案内の言葉づかいを整えるだけでも、会社の印象は変わります。
悩みごとに効く設定の早見表
前の章で書き出した悩みに、どの設定が効くかをまとめました。
| 悩み | 効く設定 |
|---|---|
| 電話のたびに作業が中断される | 急ぎの用件だけ担当者の電話を鳴らし、それ以外は事務所か留守番電話へ |
| 出るまで相手がわからない | 用件ごとの選択肢、「その他」は留守番電話へ |
| 出られなかった電話の用件がわからない | どの選択肢にも、出られないときの留守番電話を置く |
| 営業時間外の扱いが決まっていない | 営業時間のルールで時間外の案内に切り替える |
| 担当者への取り次ぎに手間がかかる | 担当者が決まっている用件は、最初からその人の電話を鳴らす |
すべてを一度に設定する必要はありません。最も困っている悩みに効く設定から始めましょう。
最小構成の例
小さな会社のIVRは、選択肢を二つか三つに絞った「最小構成」から始めるのがおすすめです。選択肢が少なければ、案内は短く、設定も簡単で、電話をかけた人も迷いません。業種別に三つの例を紹介します。

例1:選択肢が二つの構成(設計事務所・士業など)
お電話ありがとうございます。〇〇事務所です。新しいご相談やお見積もりは1を、ご依頼中の件については2を押してください。
| 選択肢 | 行き先 | 出られないとき |
|---|---|---|
| 1 新しいご相談 | 代表の電話(全員の電話を鳴らす) | 留守番電話 |
| 2 ご依頼中の件 | 代表の電話 | 留守番電話 |
| 何も押さない | 代表の電話 | 留守番電話 |
行き先が同じでも、どちらの用件かがわかるだけで、電話に出る人は心の準備ができます。新しい相談の電話を優先して出る、といった判断もしやすくなります。
例2:選択肢が三つの構成(工務店・修理業など)
お電話ありがとうございます。〇〇工務店です。修理のご依頼でお急ぎの方は1を、お見積もりやご相談は2を、その他のご用件は3を押してください。
| 選択肢 | 行き先 | 出られないとき |
|---|---|---|
| 1 急ぎの修理 | 現場の担当者の電話 | 代表者の電話、それでも出なければ急ぎの留守番電話 |
| 2 見積もり・相談 | 事務所の電話 | 留守番電話 |
| 3 その他 | 留守番電話 | — |
急ぎの用件だけを現場の担当者につなぎ、それ以外は事務所で受けるか、留守番電話で預かります。現場の担当者は、急ぎの電話だけに出ればよくなります。
例3:選択肢が三つの構成(小売店・サロンなど)
お電話ありがとうございます。〇〇です。ご予約は1を、営業時間や場所のご案内は2を、その他のご用件は3を押してください。
| 選択肢 | 行き先 | 出られないとき |
|---|---|---|
| 1 ご予約 | 店舗の電話 | 折り返しの依頼、または留守番電話 |
| 2 営業時間・場所 | 録音の案内を流す | — |
| 3 その他 | 店舗の電話 | 留守番電話 |
営業時間や場所の問い合わせは、録音した案内で答えられます。スタッフが電話に出る回数を減らし、予約の電話に集中できます。予約の希望は聞き取って記録し、スタッフが空き状況を確認してから確定します。
最小構成を作るときのルール
- 選択肢は三つまで:迷ったら減らします。
- 最も多い用件を1番に:多くの人が最初の選択肢で用件を選べるようにします。
- 「その他」を必ず置く:どの選択肢にも当てはまらない人の行き場をつくります。
- どの選択肢にも「出られないとき」の行き先を決める:誰も出ないまま鳴り続ける状態をなくします。
- 案内は短く:名乗りと選択肢だけにし、宣伝や注意事項は入れません。
選択肢の言葉の選び方や、メニューの組み立て方は、IVRメニュー設計のコツでも詳しく解説しています。
自社の最小構成を書き出す
次の表を埋めると、自社の最小構成の案ができます。
| 項目 | 自社の場合 |
|---|---|
| 最も多い電話の用件 | |
| 二番目に多い用件 | |
| 急ぎで、すぐに人につなぐべき用件 | |
| 録音の案内で答えられる用件 | |
| 各用件の電話に出る人 | |
| 出られないときの行き先 |
用件を思い出せない場合は、一週間ほど、受けた電話の用件をメモしてから作ると、実態に合った構成になります。
営業時間ルールとの組み合わせ
小さなIVRの効果を大きくするのが、営業時間のルールとの組み合わせです。同じ電話番号でも、営業時間内と営業時間外で、流れる案内と行き先を自動で切り替えます。
営業時間内と時間外の流れ
| 時間帯 | 流れる案内 | 行き先 |
|---|---|---|
| 営業時間内 | 名乗りとメニュー | 選択肢ごとの担当、出られなければ留守番電話 |
| 昼休み | 昼休みであることと再開の時刻 | 留守番電話 |
| 営業時間外 | 受付時間の案内 | 留守番電話、急ぎの用件のみ担当者へ |
| 休業日 | 休業日であることと再開の日 | 留守番電話 |
時間外の案内の例
お電話ありがとうございます。〇〇工務店です。本日の受付は終了しました。受付時間は、月曜から土曜の八時から十八時までです。水漏れなどお急ぎの修理は1を押してください。そのほかのご用件は、発信音の後に、お名前、ご連絡先、ご用件をお話しください。翌営業日にご連絡します。
急ぎの用件だけを担当者に転送すれば、担当者は夜間や休日に、急ぎではない電話に出る必要がなくなります。
小さな会社ならではの注意点
- 受付時間は「電話に出られる時間」で決める:店の開店時間ではなく、実際に電話に出られる時間で設定します。開店準備の時間帯や、昼の混雑時に出られないなら、その時間は留守番電話で受けるほうが確実です。
- 休業日の登録を忘れない:小さな会社では、臨時の休みや、代表者の不在で休む日もあります。休む日が決まったら、すぐに休業日の案内に切り替える習慣をつけましょう。
- 急ぎの転送先を一人に固定しない:急ぎの用件の転送先が代表者一人だけだと、代表者が休めなくなります。週ごとに交代するなど、負担を分ける方法を考えます。
祝日や年末年始、臨時休業の扱いを含めた営業時間のルールの詳しい作り方は、営業時間で着信を振り分ける方法で解説しています。
スタッフの受け方を決める
IVRを入れても、電話を受けるのは人です。小さな会社では、誰がどの電話に出るのかを決めておかないと、全員が「誰かが出るだろう」と思って、結局誰も出ない、ということが起きます。
決めておくこと
- 選択肢ごとに、最初に出る人:「1番の電話は佐藤さんが最初に出る。出られなければ鈴木さん」のように、順番を決めます。
- 全員の電話を同時に鳴らすか、順番に鳴らすか:人数が少ないなら、全員の電話を同時に鳴らして、手の空いた人が出る方法もあります。
- 留守番電話を確認する人とタイミング:「朝の始業時と昼休み明けに、鈴木さんが確認する」のように決めます。
- 折り返しの目安:留守番電話の案内で伝えた目安(翌営業日など)を守れるように、折り返しの担当を決めます。
- 電話に出たときの名乗り方:IVRで用件を選んできた電話には、「〇〇工務店の佐藤です。お見積もりのご相談ですね」と、選ばれた用件に触れて出ると、相手は正しくつながったことがわかります。
受け方の表の例
| 選択肢 | 最初に出る人 | 次に出る人 | 出られないとき | 留守番電話の確認 |
|---|---|---|---|---|
| 1 急ぎの修理 | 現場担当A | 代表者 | 急ぎの留守番電話 | 現場担当Aが一時間ごと |
| 2 見積もり・相談 | 事務B | 代表者 | 留守番電話 | 事務Bが朝と昼 |
| 3 その他 | — | — | 留守番電話 | 事務Bが朝と昼 |
この表を、電話の近くや社内の共有の場所に置いておくと、新しく入った人にも伝えやすくなります。休みの人がいる日は、誰がその人の代わりに出るのかも、朝のうちに確かめておきましょう。表に「休みの日の代わり」の欄を足しておくと、毎回考えずに済みます。
外出先でも電話を受けられるようにする
小さな会社では、社員が外出や現場作業で事務所にいないことが多いものです。パソコンのブラウザやスマートフォンで会社の電話を受けられるソフトフォンを使えば、事務所にいなくても、選択肢ごとの担当者の電話を鳴らせます。ただし、勤務時間外に電話が鳴らないよう、営業時間のルールとあわせて設定しておきましょう。
電話の数が多い日に備える
小さな会社でも、月末や繁忙期、チラシを配った直後など、電話が一時的に増える日があります。そうした日は、普段より出られない電話が増えるため、次のような準備をしておくと安心です。
- 電話が増えそうな日は、留守番電話の確認の回数を増やす
- 折り返しの担当を、その日だけ二人にする
- 留守番電話の案内で伝える折り返しの目安を、その日だけ「本日中」から「翌営業日まで」に変える
電話が増える日がわかっているなら、事前に案内を切り替える日を予定に入れておきましょう。
留守番電話の折り返しを漏らさない
留守番電話に残されたメッセージは、確認されなければ意味がありません。小さな会社では、紙のメモや個人の記憶に頼りがちですが、次のような簡単な一覧を作っておくと、折り返しの漏れを防げます。
| 受けた日時 | 名前 | 連絡先 | 用件 | 折り返す人 | 対応した日時 |
|---|---|---|---|---|---|
| 〇月〇日 19:10 | 山田様 | 〇〇〇… | 浴室の水漏れの見積もり | 事務B | 〇月〇日 9:20 |
留守番電話とコールバックの使い分けや、折り返しの管理の詳しい方法は、IVRのコールバックとボイスメール活用法で紹介しています。
小規模な会社のIVR導入の手順
最小構成のIVRは、次の手順で導入できます。大がかりな準備は要りませんが、手順を飛ばさないことが、失敗を防ぐ近道です。
ステップ1:一週間、電話の用件をメモする
受けた電話について、時刻、用件、誰が出たか、出られなかったか、を簡単にメモします。出られなかった電話は、着信の履歴から時刻だけでも書き留めておきます。
電話の用件メモの取り方
ステップ1のメモは、難しく考える必要はありません。電話の近くに次のような表を置き、受けた人が一行ずつ書き足していきます。
| 日時 | 用件(ひとことで) | 出た人 | 急ぎだったか | 出られなかった |
|---|---|---|---|---|
| 月 9:05 | 見積もりの相談 | 事務B | いいえ | |
| 月 10:40 | 不明(着信のみ) | — | 不明 | ○ |
| 月 13:15 | 水漏れの修理 | 現場A | はい | |
| 月 15:30 | 営業の電話 | 事務B | いいえ |
一週間たったら、用件ごとに数を数え、多い順に並べます。用件の書き方が人によってばらつく場合は、似た用件をまとめて数えます。上位の二つか三つが、最小構成の選択肢の候補になります。「出られなかった」に印のついた電話が多い時間帯は、営業時間のルールや受け方を見直す手がかりになります。
ステップ2:最小構成の案を作る
メモをもとに、最も多い用件、急ぎの用件、録音の案内で答えられる用件を選び、選択肢を二つか三つに絞ります。前に紹介した「自社の最小構成を書き出す」表を使います。
ステップ3:受け方の表を作る
選択肢ごとに、最初に出る人、次に出る人、出られないときの行き先、留守番電話を確認する人を決めて、表にします。
ステップ4:案内の原稿を書く
営業時間内のメニュー、営業時間外の案内、昼休みの案内、休業日の案内、留守番電話の案内を書きます。声に出して読み、長すぎないかを確認します。録音で作るか、音声合成で作るかの判断は、IVR音声ガイダンスの作り方を参考にしてください。
ステップ5:設定してテストする
設定が終わったら、実際に電話をかけて確かめます。
- すべての選択肢を押して、決めた人の電話が鳴るか
- 誰も出ないときに、留守番電話につながるか
- 何も押さないとき、どうなるか
- 営業時間外、昼休み、休業日に、それぞれの案内が流れるか
- 留守番電話のメッセージが、確認する人に届くか
ステップ6:社内と取引先に知らせる
社内の全員に、受け方の表と、留守番電話の確認の方法を伝えます。よく電話をくれる取引先には、案内が変わったことと、急ぎの場合の番号を知らせておくと、戸惑わせずに済みます。
案内の原稿のひな形
最小構成で必要になる案内の原稿を、ひな形としてまとめました。自社の名前や時間に書き換えて使ってください。
営業時間内のメニュー
お電話ありがとうございます。〇〇です。ご予約は1を、その他のご用件は2を押してください。
誰も出られないとき
ただいま電話に出ることができません。発信音の後に、お名前、ご連絡先、ご用件をお話しください。折り返しご連絡します。
昼休み
お電話ありがとうございます。〇〇です。ただいま昼休みのため、十三時から受付を再開します。ご用件は、発信音の後にお話しください。
営業時間外
お電話ありがとうございます。〇〇です。本日の受付は終了しました。受付時間は、平日の九時から十八時までです。ご用件は、発信音の後にお話しください。翌営業日にご連絡します。
休業日
お電話ありがとうございます。〇〇です。本日は休業日です。〇月〇日から受付を再開します。ご用件は、発信音の後にお話しください。
ひな形はどれも、名乗り、今の状況、次にできること、の順に並んでいます。案内で「翌営業日にご連絡します」などと約束する場合は、本当に守れるかを社内で確認してから使いましょう。
一人で営む会社・家族経営の場合
一人で営んでいる会社や、家族だけで営んでいる会社では、電話に出られる人がさらに限られます。この場合は、次のような考え方で構成を決めます。
- 選択肢は二つまで:「急ぎの用件」と「それ以外」の二つに分けるだけでも十分です。
- 急ぎ以外はすべて留守番電話:作業中は電話に出ず、手が空いたときに留守番電話をまとめて確かめる、と決めてしまいます。
- 確認の時刻をお客様に伝える:「午前と夕方にメッセージを確認し、折り返します」と案内で伝えると、お客様は待つ目安がわかります。
- 休む日をはっきりさせる:休業日の案内を使い、休む日は電話に出ないと決めます。急ぎの用件の扱いも、休業日は別に決めておきます。
一人で営む会社にとって、電話は仕事の機会であると同時に、作業を中断させる原因でもあります。IVRで「出る電話」と「後で対応する電話」を分けることで、仕事と電話の両方を守りやすくなります。
IVRを急がなくてもよい場合
一方で、次のような場合は、IVRを急いで入れる必要はないかもしれません。
- 電話の数が少なく、ほとんどの電話にすぐ出られている
- 電話の用件がほぼ一種類で、分ける必要がない
- 留守番電話だけで、用件を十分に残してもらえている
この場合は、留守番電話の案内を「お名前、ご連絡先、ご用件をお話しください」と具体的にする、営業時間外の案内を流す、といった小さな改善から始めるとよいでしょう。電話の数や用件が増えてきたら、最小構成のIVRを検討します。
始めてから一か月の運用
最小構成のIVRを始めたら、最初の一か月は、少しだけ意識して様子を見ます。
一週目:毎日、留守番電話と着信を確認する
始めたばかりの時期は、思わぬ設定の漏れが見つかりやすい時期です。毎日、留守番電話に残ったメッセージと、出られなかった電話を確認し、「その他」に入った電話の用件もメモします。お客様から「わかりにくかった」と言われたことも書き留めておきます。
二週目:受け方の表を見直す
一週目の様子をもとに、受け方の表を見直します。特定の人に電話が集中していないか、留守番電話の確認が遅れていないかを確認し、必要なら最初に出る人や確認の時刻を変えます。
三週目:案内の言葉を見直す
間違った選択肢を選んでかけてくる電話が多ければ、選択肢の言葉がわかりにくい可能性があります。電話を受けた人が聞いた「お客様の最初のひと言」を参考に、選択肢の言葉を言い換えます。
四週目:一か月を振り返る
一か月の電話の様子を、導入前のメモと比べます。作業を中断して出た電話は減ったか、出られなかった電話の用件はわかるようになったか、休日に鳴る電話は減ったか。変わったことと、まだ困っていることを書き出し、次に直すことを一つ決めます。
電話に出たときの話し方
IVRで用件を選んでからつながった電話は、相手がすでに用件を伝えたつもりでいます。出た人が「どういったご用件でしょうか」と聞き直すと、相手は「さっき選んだのに」と感じるかもしれません。選ばれた用件に触れて出ると、会話が自然に始まります。
| 選ばれた用件 | 出るときの例 |
|---|---|
| 急ぎの修理 | 〇〇工務店の佐藤です。修理のご依頼ですね。どのような状況でしょうか。 |
| 見積もり・相談 | 〇〇工務店の鈴木です。お見積もりのご相談ですね。ありがとうございます。 |
| その他 | 〇〇工務店の鈴木です。ご用件をおうかがいします。 |
どの用件から来た電話かがわかるように、選択肢ごとに着信の表示を変えられる仕組みや、担当を分けて鳴らせる仕組みがあれば活用しましょう。
取引先や常連のお客様への知らせ方
いつも電話をくれる取引先や常連のお客様は、案内が変わると戸惑うことがあります。始める前に、ひとこと知らせておくと安心です。
いつもお世話になっております。〇月〇日より、弊社の電話に音声案内を導入いたします。お急ぎの修理のご依頼は1を、お見積もりやご相談は2を押していただくと、担当者に直接つながります。担当者が出られない場合は、メッセージをお残しいただければ折り返しご連絡いたします。
メールや請求書に添える、店頭に掲示する、電話の最後に口頭で伝える、など、ふだん連絡を取り合っている方法で知らせます。
広げるタイミング
最小構成で始めたIVRは、会社の成長や電話の変化にあわせて広げていきます。ただし、広げるのは「困ったことが起きたとき」で十分です。困っていないのに選択肢を増やすと、かえって電話をかけた人を迷わせます。
広げることを検討するサイン
| サイン | 考えられる対応 |
|---|---|
| 「その他」の電話が多く、用件に共通点がある | その用件を新しい選択肢にする |
| 一つの選択肢に電話が集中し、出られないことが多い | 担当者を増やす、キューで待ってもらう、折り返しの依頼を受け付ける |
| 取引先から担当者を名指しする電話が増えた | 名前で担当者を呼び出す仕組みを加える |
| 同じ質問の電話が多い | 録音の案内で答える選択肢を加える |
| 社員が増え、部署ができた | 用件ごとの選択肢と、部署の行き先を見直す |
| 営業時間外の電話が多い | 時間外の行き先を見直す、受付時間を見直す |
広げた後の構成の例
前に紹介した工務店の例が、社員が増えて構成を広げた場合を考えてみます。
最初の構成(三つの選択肢)
- 急ぎの修理
- 見積もり・相談
- その他
広げた後の構成(四つの選択肢と名前の呼び出し)
- 急ぎの修理
- 見積もり・相談
- 工事中のお客様からのご連絡
- 担当者のお名前がわかる方
- その他
「その他」の電話を記録で確認したところ、工事中のお客様からの連絡が多かったため、新しい選択肢にしました。また、担当者を名指しする取引先からの電話が増えたため、名前で担当者を呼び出す入口を加えました。名前で呼び出す仕組みは、ダイヤル・バイ・ネームとはで紹介しています。
選択肢を増やしても、最初のメニューは五つ以内に収まっています。広げるときも、一度に一つずつ加え、加えるたびにテストしました。
売り込みの電話への対応
小さな会社には、営業や勧誘の電話も多くかかってきます。IVRで用件を分けると、こうした電話は「その他」に集まりやすくなります。「その他」を留守番電話にしておけば、作業を止めて出る必要がなくなり、用件を聞いてから折り返すかどうかを判断できます。ただし、「その他」にはお客様からの大切な電話が入ることもあるため、確認しないまま放置しないよう、確認の担当と時刻を決めておきましょう。
広げるときの注意
- 一度に一つずつ広げる:変更が一つなら、テストも簡単で、効果も確認しやすくなります。
- 最初のメニューは五つまで:選択肢を増やしても、最初のメニューは多くても五つ程度に抑えます。
- 変えたら知らせる:番号を覚えている常連のお客様や取引先がいる場合は、変わったことを知らせます。
記録がなくても効果は確かめられる
小さな会社では、電話の詳しい記録を取れる仕組みを使っていないこともあります。その場合でも、次のような簡単な方法で効果を確認できます。
- 導入前のメモと同じ表を、導入後にも一週間つける:用件ごとの件数、出られなかった電話の数を、前と比べます。
- 社員に聞く:「作業を中断して出る電話は減ったか」「休日に電話が鳴ることは減ったか」を、それぞれの社員に聞きます。
- 留守番電話のメッセージを数える:用件が残るようになった電話が、これまでは何も残らずに切れていた電話です。
数字が少しでも、変化の向きがわかれば、次に直すことを決める材料になります。
記録を見て判断する
広げるかどうかは、感覚ではなく記録で判断するのがおすすめです。選択肢ごとの件数、出られなかった電話の数、留守番電話の件数などを、月に一度確かめましょう。記録の読み方と改善の進め方は、IVRの分析と改善方法で解説します。

業種別の最小構成のヒント
前に紹介した三つの例のほかにも、業種ごとに最小構成の考え方があります。
美容室・サロン
施術中は手が離せないため、電話に出られないことが前提になります。予約の希望は留守番電話や折り返しの依頼で受け、施術の合間にまとめて折り返します。当日の予約の変更や遅刻の連絡は急ぎの用件として、受付の電話を鳴らします。
お電話ありがとうございます。〇〇です。本日のご予約の変更やご遅刻のご連絡は1を、新しいご予約は2を、その他は3を押してください。
飲食店
仕込みとピークの時間帯は電話に出にくくなります。営業時間や場所、駐車場の問い合わせは録音の案内で答え、予約の電話だけを店の電話につなぎます。ピークの時間帯は、予約の希望を留守番電話で受け、落ち着いてから折り返します。
ネットショップ
電話の多くは、注文済みの商品の配送や返品の問い合わせです。注文の前の相談と、注文の後の問い合わせの二つに分けるだけでも、担当を分けやすくなります。注文番号を留守番電話で話してもらうよう案内すると、折り返しの前に注文を確認できます。
不動産の仲介
物件の問い合わせと、契約中のお客様からの連絡に分けます。物件の問い合わせは、担当者が案内中で出られないことが多いため、物件名と希望の内見日時を留守番電話で話してもらいます。
小さなクリニック
予約の電話と、それ以外の問い合わせに分けるのが基本です。症状の相談など急ぎの用件は、スタッフにつなぐ選択肢を用意し、留守番電話に埋もれないようにします。休診日と診療時間外の案内は、医院として決めた内容を伝えます。
小さな会社がつまずきやすいこと
大企業のメニューをまねる
ふだん電話をかける大企業のメニューを参考にすると、選択肢が多くなりがちです。小さな会社では、電話の用件の種類も、電話に出る人の数も限られています。選択肢は二つか三つで十分です。
誰が出るかを決めない
IVRで用件を分けても、誰が出るかが決まっていなければ、電話は鳴り続けます。受け方の表を作り、最初に出る人と次に出る人を決めておきます。
留守番電話を誰も聞かない
留守番電話に用件が残るようになっても、確認する人とタイミングを決めなければ、メッセージはたまる一方です。確認の担当と時刻を決め、受け方の表に書いておきます。
代表者の携帯電話にすべてを転送する
出られない電話を代表者の携帯電話にすべて転送すると、代表者は休むことができず、外出先でも電話に追われます。転送は急ぎの用件だけに絞り、それ以外は留守番電話で受けます。
一度作ったら見直さない
会社の状況は変わります。新しいサービスを始めた、社員が増えた、営業時間を変えた。そのたびに、IVRの案内と行き先が今の状況に合っているかを確認しましょう。
準備にかかる手間の考え方
小さな会社では、IVRの準備に割ける時間も限られています。準備の手間を見積もるときは、次の作業を考えておきます。具体的な費用や条件は、サービスによって異なるため、各サービスの公式の案内で確認してください。
| 作業 | 内容 | 目安の考え方 |
|---|---|---|
| 電話の用件のメモ | 一週間ほど記録する | ふだんの電話対応のついでにできる |
| 構成と受け方の決定 | 選択肢、行き先、出る人を決める | 社内で一度話し合う |
| 原稿の作成 | 営業時間内・外、休業日、留守番電話の案内 | 最小構成なら数種類 |
| 設定 | 使うサービスの管理画面で設定する | サービスの手順に沿って |
| テスト | すべての選択肢と時間帯を確認する | 時間帯ごとに電話をかける |
最小構成であれば、準備する案内も、確かめる選択肢も少なく済みます。小さく始めることは、準備の負担を小さくすることでもあります。
サービスを選ぶときの確認点
小さな会社がIVRのサービスを選ぶときは、機能の多さより、自社の最小構成を無理なく作れて、自分たちで変更できるかを重視します。比べるときに確かめたい点をまとめました。
- 管理画面で自分たちで変えられるか:選択肢、案内の文章、営業時間、休業日を、社内の人が変更できるか
- 営業時間と休業日のルール:曜日ごとの受付時間、昼休み、祝日、臨時休業を設定できるか
- 留守番電話の扱い:選択肢ごとに留守番電話を分けられるか、メッセージを誰がどこで確認できるか
- 外出先で受けられるか:パソコンのブラウザやスマートフォンで、会社の電話を受けられるか
- 電話の記録:選択肢ごとの件数や、出られなかった電話を確認できるか
- 今の電話番号:今の番号をそのまま使えるか、転送などで対応するのか
- 費用の構造:月額の費用、通話の量に応じた費用など、何に費用がかかるのか
- 試せるか:本格的に使う前に、試しに設定して電話をかけてみられるか
具体的な条件や費用は、各サービスの公式の案内で確認してください。最初から多くの機能を使う必要はありません。最小構成を作れて、困ったときに広げられるかどうかを見ておけば十分です。
AI-SNS.IO Callで始める場合
AI-SNS.IO Callでは、IVRのメニューと着信のルーティング、営業時間に合わせた切り替え、キューごとのボイスメール、メニューからの折り返しの依頼を組み合わせて、ここで紹介した最小構成を作れます。日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。ブラウザのソフトフォンを使えば、事務所の外でも会社の電話を受けられます。設定の手順は使い方ガイドに、現在利用できる機能は機能一覧にまとめています。
導入前と導入後の一日の比較
最小構成のIVRで、小さな会社の電話の一日がどう変わるかを、工務店を例に描いてみます。説明のための架空の例です。
導入前
- 朝、現場に向かう途中の担当者の携帯電話に、事務所からの転送で営業の電話がかかってくる
- 現場で作業中に、急ぎではない見積もりの相談の電話が鳴り、作業を止めて出る
- 昼、事務所の担当者が昼食に出ている間の電話は鳴り続けて切れ、着信の履歴だけが残る
- 夕方、着信の履歴に折り返すが、相手が出ず、用件がわからないまま
- 夜、代表者の携帯電話に、翌日でもよい問い合わせの電話がかかってくる
導入後
- 現場の担当者の電話が鳴るのは、「急ぎの修理」を選んだ電話だけになる
- 見積もりの相談は事務所の電話に届き、事務の担当者が出られなければ留守番電話に用件が残る
- 昼休みは昼休みの案内が流れ、メッセージは昼休み明けに確かめる
- 夕方、留守番電話の用件を見てから折り返すため、折り返しの電話ですぐに本題に入れる
- 夜は時間外の案内が流れ、代表者の携帯電話が鳴るのは急ぎの修理の電話だけになる
電話の数そのものが減るわけではありません。変わるのは、誰が、いつ、どの電話に出るかを選べるようになることです。選べるようになると、作業に集中する時間と、電話に向き合う時間を分けられます。その結果、作業の質も、電話での受け答えの質も上げやすくなります。
よくある質問
社員が二、三人でもIVRは必要ですか?
必須ではありませんが、全員が作業中や接客中で電話に出られないことが多い会社では役立ちます。選択肢を二つにするだけでも、電話に出る前に用件がわかり、出られないときは留守番電話で用件を残してもらえます。
選択肢はいくつにすればよいですか?
小さな会社では、二つか三つがおすすめです。最も多い用件を1番にし、「その他」を必ず置きます。迷ったら減らしましょう。
お客様は番号を押すのを嫌がりませんか?
選択肢が多い、案内が長い、人につながらない、といった場合に嫌がられやすくなります。選択肢を少なくし、案内を短くし、どの選択肢からでも人か留守番電話につながるようにしておけば、負担は小さくできます。
営業時間外の電話はどうすればよいですか?
受付時間を案内し、留守番電話で用件を残してもらうのが基本です。急ぎの用件がある業種では、急ぎの選択肢だけを担当者の電話に転送します。
代表者の携帯電話に転送してもよいですか?
急ぎの用件だけに絞れば、代表者の負担を抑えられます。すべての電話を転送すると、代表者が休めなくなるため、急ぎの転送先も交代制にするなどの工夫を考えましょう。
留守番電話を聞く時間がありません。
確認する人とタイミングを決めて、短い時間でまとめて聞くようにします。留守番電話の案内で「お名前、ご連絡先、ご用件」を話してもらうよう伝えておくと、一件あたりの確認の時間を短くできます。文字起こしや要約に対応した仕組みであれば、一覧で内容を確かめられます。
取引先から「前の方がよかった」と言われたら?
よく電話をくれる取引先には、担当者の番号に直接かけてもらう、名前で担当者を呼び出せるようにする、などの方法を検討します。どの選択肢を押せばよいかを、あらかじめ伝えておくのも効果的です。
案内の声は誰が録音すればよいですか?
社員が録音する方法と、音声合成を使う方法があります。社員の声を使う場合は本人の同意を得て、静かな場所で録音します。休業日など内容が頻繁に変わる案内は、音声合成で作ると更新が楽になります。
一度設定したら、見直しは必要ですか?
必要です。新しいサービスを始めた、社員が増えた、営業時間を変えた、といったときに見直します。それ以外にも、月に一度ほど、選択肢ごとの電話の件数や、出られなかった電話を確かめると、見直しのきっかけがつかめます。
IVRとAIによる電話の自動応答は、どちらがよいですか?
小さな会社では、まず選択肢の少ないIVRで電話の流れを整えるほうが、振る舞いを予測しやすく、運用も簡単です。用件の聞き取りが多い場合は、AIによる応答を組み合わせる方法もあります。違いはIVRと音声AIエージェントの違いで整理しています。日本の電話番号の提供は準備中です。現在はデモで着信をシミュレーションして体験できます。
電話番号を変えずに導入できますか?
使うサービスや、今の電話の契約によって異なります。今の番号を使い続けられるか、転送で対応できるかなどを、導入を検討しているサービスの説明で確かめてください。
まとめ
小さな会社こそ、選択肢を絞ったIVRで、電話の負担を減らせます。
- 電話に出る前に用件がわかり、出られないときは用件を残してもらえる
- 選択肢は二つか三つ、最も多い用件を1番に、「その他」を必ず置く
- 営業時間のルールと組み合わせ、時間外は留守番電話、急ぎの用件だけ担当者へ
- 誰がどの電話に出るか、留守番電話を誰がいつ確認するかを、受け方の表で決める
- 広げるのは困ったことが起きたときに、一つずつ
まずは一週間、受けた電話の用件をメモするところから始めてみてください。IVRのメニューと営業時間のルールは、AI-SNS.IO Callで設定できます。アカウント登録から試してみましょう。IVRの基本はIVRとは、自動応答の全体像はAI電話受付とはをご覧ください。



